Posted on 2019.01.28 by MUSICA編集部

カッティングエッジなセンスを持った巨大な才能と
メインストリームを撃ち抜く野心。
新たな世代による次代の音楽カルチャーが真の自由を
勝ち獲るための鍵を握る最重要バンド、King Gnu!

 

撮影=岡田貴之

世界の流れと日本が圧倒的に違うからだよ。
日本のメジャーレーベルが売ろうとしてるものに
そもそも相容れないというか、
そこに対して中指立てるのは極めて自然な流れだと思う

『MUSICA2月号 Vol.142』より引用

(前略)

■1年前とは状況が全然違うと思うし、そのスピード感も異常に速いわけですよ。そういう1年を過ごす中でその沸々としたものはどう変化してきてるの?

新井「あー……けど、言うてもまだまだじゃないですかね、っていうのは絶対的にあるんですけど、ただやっと追いついてき始めたなっていう実感はありますけど。対バンする相手も質のいいアーティストになってますし。好き嫌いは置いといて、伝わるものだったりコンセプトだったりスタイルだったりがわかる、そういう人達とやることが増えてきたから、それに対するストレスは少なくなってはきてますけど」

■逆に言うと、好き嫌いは置いておいて認めざるを得ないものが目の前に出てくるようになった時、自分達はどう勝っていきたい、あるいはどうひっくり返していきたいって思ってるんですか?

新井「でもそこは変わらずですね。ここまで上がってきて、前よりはいろんなバンドだったりシーンに対する理解が深まってきてる中で、最初に思ってたこのバンドの強みに勝ててるバンドっていないと思ってるんで」

■和輝くんが考えるこのバンドの強みってどこにあるの?

新井「みんなが思ってくれてることはもちろんですけど、King Gnu って矛盾点っていうのを内包できたまま成り立ってるんですよね。そもそも成り立ちも矛盾してるというか、セッション・シーンにいたけどオーヴァーグラウンドに行こうとしたわけで。しかも、俺と遊は同じサイドだったけど、大希はまたちょっと違うサイドにいたところからオーヴァーグラウンドに出ようとして、理もまた違うところから出てるし。その中でいろいろ混ざってて――だからサウンドとポップとの矛盾だったり、ツインヴォーカルにしてもある種の矛盾を孕んでるし、そういうの全部内包したまま成立してるっていう。しかも、それでいて歌詞がストレートだったり」

■サウンドにしても、黒い要素と現代音楽的なエクスペリメンタルなものと、他にもあらゆる角度のものが混ざってたり。

新井「そうそう。そういうカウンターというか、本来、相容れないものがいくつも入ってるバンドって、他のバンドにはほぼないと思うんですね。『こういうところにいてこれが好きだからこうなってます』みたいな、いわゆる順当なルーツの在り方のバンドがほとんどな中で、King Gnuはどこを切り取ってもいくつもの要素がある。この成り立ちでここまでなって、かつこういうスタンスでやってるバンドっていうところがもう他とは違うかな。そこは絶対的に自信あるというか、事実というか」

■そしてそこが決定的に新しいところだと思います。

新井「だと思います」

■常田くんはそういうカオス感は曲を作る時にどれくらい意識するの?

常田「そもそも自分が作る音楽に関して、矛盾がないものに面白みを感じないので。別にブラックミュージックをやろうって話でもないし」

■そもそも矛盾がないものに魅力を感じない、自分の音楽の中ではいろんなものがある種カオスにぶつかり合っていくし、それでいて美しく調和するみたいな、その美学っていつぐらいに生まれたんですか?

勢喜「大希見てると、それはもうずっとある気がする」

常田「うん、ほんと昔からそこは徹底して……たとえばすげえイカついビートでも、いわゆる西洋音楽の文脈のサウンドは入れてたり。やっぱ、そういうところでしか音楽とか芸術っていうものは発展していかないし。そこに関しては本当に初期から変わらず。調合とか出す面を変えてるだけ」

(中略)

■私はこの十数年で今が一番面白いと思ってて。もちろんその時々に面白いことはあったけど、今のKing Gnu世代や20代前半のバンドやアーティスト、ラッパーを見てると音楽的な部分におけるハングリー精神とカウンター精神が凄く強いし、実際届いてくる音も変わってきてる。日本ってもう長らくオルタナティヴな音楽、アンダーグラウンドな音楽とメジャーな音楽が混ざる瞬間が凄く少なかったし、その断絶が大きかったんだけど。

常田「いやー、ほんとそう。それが日本のメジャーレーベルの愚行というか、戦犯というか。俺らみたいなちょっと血の気の多い若者達は世界の音楽シーンではいろんな新しいことが起きてるのにって思ってると思う……だから日本のメジャーレーベルが売ろうとしてるものにそもそも相容れないというか、基本的にそこに対して中指立てるというのは極めて自然な流れだと思う。あまりに二極化してるんで。一方が規模が小さくて、一方はもう違う業界みたいな、いまだにそういう体質が残ってるわけで。だからアンダーグラウンドが栄えてるようで栄えてないからみんな頑張ってるって感じだと思いますよね」

新井「理がどっかのインタヴューで、“Slumberland”をリード曲にしてるこのアルバムが凄い売れた時に何か世界が変わるんじゃないかみたいなことを言ってたんですけど、それってそういう部分なのかなって思いますね。これが売れた時に何かが起こるっていうか」

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text by有泉智子

『MUSICA2月号 Vol.142』