Posted on 2017.03.18 by MUSICA編集部

Dragon Ash、デビュー20周年に突入!
シングル『Beside You』から、Kjの胸中を覗く

このタームの最初の時期は、
音楽人生で一番ってくらいTDとか音とかやり直した。
こうじゃねえ、こうじゃねえって何回もやり直してきた中で、
やっと“Beside You”でカチンってハマった音が聞こえた。
その感動は大きかった

『MUSICA 4月号 Vol.120』P.98より掲載

 

■デビュー20周年であると同時に、去年の春、実に3年ぶりに行われたツアーからDragon Ashは新しいタームをスタートさせているわけですけど。当時は、しばらくDragon Ashはバッキバキにモッシュできるラウドな楽曲しかやらない!と宣言してましたけど、『光りの街』に続き、今回の『Beside You』も心に寄り添うような曲で。この曲を20周年のアニバーサリーシングルとして選んだのは何故なんでしょう?

「まず、みんな反対してるわけじゃないんだけど、ラウド一辺倒で行くっていうのを望んでるのは単純に俺だけだったっていうのが大きくて」

■はははははははははははははは。

「そうなんだよね、実は(笑)。でも、作品を出す順番とかどんな曲をシングルにするかをみんなで考えていくのは、いいことだと思ってるから。そのほうが責任をみんなで負えるじゃん。全部俺が作って全部俺が決めてたら、バックバンドかよってなるわけで。それぞれ役割があって、それぞれを信頼してやっていくのが俺らのいいところだし、俺もそういう意見があったほうが曲作りやすかったりもするから。『光りの街』があのタイミングで出たのはそういうことで。でも『Beside You』は、珍しく俺がこれをシングルにしたいって言ったんだよね」

■あ、そうなんだ。それはめちゃくちゃ珍しいですね。

「うん。そもそもは、デビュー日に何か出すかって話になったんだよ」

■まぁバラしちゃうと、年末までは、デビュー日の2月21日に記念シングルをCDで出すという話になってましたよね。

「そうなんだよね。で、“Mix It Up”と“Beside You”を作ってて。録る前は“Mix It Up”にしようと思ってたし、みんなも“Mix It Up”がいいって言ってたんだけど。でも、俺のデモからDragonの演奏に変えていく過程で、“Beside You”は久々に俺が持ってったアイディアと、それを解釈して自分なりの表現をするメンバーがカチンとハマる音が聞こえたんだよね。特にドラムとベースなんだけど。デモは結構エレクトロに寄ったつもりだったんだけど、サク(桜井誠)が叩いて賢輔が弾くとこんなグルーヴィーになっちゃうの!?みたいな驚きがあって。そういう快感が久々にあった。それで、“Mix It Up”にしようって言ってたけど、やっぱり“Beside You”にしたいと思って。でも、これは90%無理だろって感じのタームになってたから――」

■2月21日にシングルCDを出すには、スケジュール的に間に合わないっていう意味の無理ね(笑)。

「そう。じゃあ、“Mix It Up”は記念日に配信して、別日に“Beside You”を出そうよっていうアイディアを珍しく俺から出したんだよね。だから久々に曲のリアクションで出すものを変えた。そういうことを俺が言うのは滅多にないことだし、そもそもこれをシングルにしたいとか言うことも滅多にないから、俺がそう言ったら、メンバーも『お、おう。Kjが言うならそうしたら? っていうか、そんなこと言うんだ!?』みたいな感じだった(笑)」

■Kjは、いつもシングルに関してはスタッフやみんなの意見で決めればいいっていうスタンスですもんね。にもかかわらず、自分から“Beside You”と主張したってことは、それだけ久々にカチンとハマッたこと、つまり制作過程で起こったメンバーとの化学反応に感動したっていうこと?

「そうそうそう。すげぇアガッた。20年やってて何百曲も作ってるけど、未だにカチッとハマるのってムズいのよ。だって基本、すでに普通のバンドよりも全然カチッとハマってるわけだからさ。にもかかわらず、もうひと段階余白があったんだっていうか、こんなガチャーンとハマるんだ!?みたいな感動を久々に味わえて。それは俺にとってもメンバーにとってもめちゃくちゃ喜ばしいことなんだよ。たぶんそれを味わうためにやってるんだけど、ここまでやってきた上でそれを起こすのはめっちゃ難しいから」

■だから今の話って、別にいつもはカチッとハマッてないという意味ではなく、いつも以上、自分の想定以上の化学反応が起こった、と。

「うん、まさに。まだこの先があったんだっていう喜びがあった」

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text by有泉智子

『MUSICA4月号 Vol.120』

Posted on 2017.03.18 by MUSICA編集部

東京スカパラダイスオーケストラ、
20枚目の新作『Paradise Has NO BORDER』発表!
鮮烈な衝動を打ち鳴らす本作を9人で語る

黄金期は迎えたいですよ。それは毎日考えてる。
もちろん若い子達の反骨精神から
新しいポップスが生まれてくるものだし、それは当たり前のことなんだけど、
僕らの中にある「変わりたい」という気持ちは、
若い子達と同じだと思う(加藤)

『MUSICA 4月号 Vol.120』P.82より掲載

 

■もの凄い歴史ともの凄い男気を感じるアルバムで、本当に素晴らしい楽曲を刻み続けたこの2年間が凝縮されていると思いました。まずは恒例の9人インタヴューの儀式として、このアルバムへの想いをおひとりずつ語っていただければと思います。

GAMO(Tenor sax)「いつもなら『アルバム作るぞ!』っていうことでシングルを刻みながらリリースしていって、最後にアルバムドカン!みたいな感じだったんですけど、2年前の武道館(「Live at Budokan ~The Last~」)以降、もっと自由にやりたいようにやろうってことになって。結果的にここまでの歩みがこのアルバムに詰まってるなっていう感じがしますね。今までとちょっと違う感じというか、やりたい人とやりたいことをやりつつ、でき上がったアルバムと言いますか」

沖祐市(Key)「僕も2010年以降ぐらいのスカパラをようやくここで作ることができたのかなと思ってます。『The Last』の武道館ライヴとアルバムの後って全然先が見えてなくて、何があるのか全然わからなかったんです。でも、年下のバンドとかアーティストと交流してる中で、自分達のことも見据えることができたし、そこを今回のアルバムでブレイクスルーできたのかなって気がしてて。……90年代からずっとスカパラをやってる中で、やっぱり時代の雰囲気とか音楽業界も凄く変わってきたと思うんですよ。インターネットも出てきたし、世界情勢で言うとテロとか、日本で言うと大地震があったり、原発事故があったりしたところで、2011年とかは言葉にするところでも、言葉にならないところでもみんな共感するところがあると思うんですよね。そういう意味でも、スカパラがみんなの前で演奏をしてる時に感じてることを谷中が言葉にしてくれたりして、一つひとつ育んできたことが今、また見えてきたなっていう感じなんです」

川上つよし(B)「やっぱり20年以上やってくると、どうしても『新曲をやって、そこにまた流し込んで終わり』っていうフォーマットになっちゃいがちなんですけど、今回はそれを否定して、あえて壊していって、今までのフォーマットじゃないもので、一番妥協しないで作ったアルバムだなと思っていて。20枚目だと、そんな簡単に新しいものが出てこないはずなんですけど、新しいチャレンジがいっぱいできたアルバムだなと思ってます」

大森はじめ(Percussion)「僕は、愛がいっぱい詰まったアルバムになったなと思っていて。9人以外の人達の愛を凄く感じたんですよ。みんなコラボレートを快く引き受けてくれましたし、そこで男気を見たりして。コラボしてくれたミュージシャンのみならず、エンジニアさんとかスタッフの愛も凄く入ってるんで。そういう意味でも、愛溢れるアルバムになったんじゃないかと思いますね」

■それは、「東京音楽シーン1のジゴロ」と呼ばれている大森さんでも――。

全員「あはははははははははははははは!」

大森「そんなこと言われてましたっけ!?(笑)」

■はい。そういう大森さん達が、何故愛を溢れさせることができたんでしょう?

大森「なんでしょうね? でも、スカパラの魅力って凄いなって思うんですよ。1週間ぐらい前に掃除してたら、たまたま片平里菜ちゃんの手紙が出てきたんです。それはちょうどシングルを発売する前にもらった手紙なんですけど。あ、僕だけじゃないですよ? みんなもらってたんですけど」

川上「あれ? もらってたっけ?(笑)」

大森「いやいやいや、もらったって!(笑)」

加藤隆志(G)「GAMOさん(作曲者)だけかと思ってた(笑)」

GAMO「はははははははは」

大森「その手紙に凄く愛のある言葉が書いてあって、凄く嬉しかったんですよ。そういうのを見て、みんなの愛を感じるなと。東京1のジゴロだとはあくまでも思わないですけど(笑)」

茂木欣一(Dr)「僕は、やっと9人体制になってから、本当の最高傑作ができた!って感じかな。それこそ2、3年前に『FOREVER』(『SKA ME FOREVER』)とか『LAST』(『The Last』)とか言ってたけど――さっき川上さんがフォーマットって言ってたけど、たぶん今回はそれまでのフォーマットと決別したかったんだよね。今まではフォーマット化されていたことで、どこか煮え切らない部分があったから」

■それはいつぐらいから?

茂木「9人体制になってからかな。今までもアルバム出す度に『最高傑作』とか言ってきたけど、もっと行けるでしょ!?って、ずっと心の中で思ってたっていうか。今回はそれこそ『NO BORDER』っていう感じで、やっとその壁を壊せたし、その気分を音で示せたなって――」

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text by鹿野 淳

『MUSICA4月号 Vol.120』

Posted on 2017.03.18 by MUSICA編集部

BOOM BOOM SATELLITES、
オールタイムベスト『19972016』を発表。
中野雅之との対話から、彼らの旅路の足跡を辿る

本当に長い時間を同じ場所で一緒に過ごしたし、
話し合ったことの中には生き方から何からすべてのことがあった。
毎日の生活のすべての営みが、
自分が音を作ったり川島くんが歌ったりすることに
帰結していく日々を繰り返してきた

『MUSICA 4月号 Vol.120』P.90より掲載

 

■この『19972016』は、ベストアルバムというよりも、オリジナルアルバムと呼ぶべき作品であり、中野さんがBOOM BOOM SATELLITESというものを作品として4枚の形で提示したものになったなと思うんですけど。

「僕もいわゆるベスト盤とは感触が違うものだと思っていて。細かいことを置いておけば、曲を並べただけとも言えるわけですよ。でも、不思議なことに、曲を並べていった時に既に作品としてのフィーリングを感じられるものになっていて。ベスト盤って基本的にはリードシングルや代表曲を並べたものだから、スタンスとしては1曲ごとに対しての思いがあって聴くっていう感覚になるものだと思うんですが、僕らの場合は不思議とストーリーを感じてしまう作品になるんだなって思いました。もちろん、作品性のあるものにしよう、作品として聴かせるものにしようという意図はあったんだけどね。ただ、意図してストーリー性や作品性を注ぎ込まなくても、自然とそう仕上がるんです、並べてみると。もちろん馴染みがいいように音は調整していくんですけど、曲が勝手に導いてくれることのほうが大きかったんじゃないかなっていう感じがあって。それがこのバンドの特色なんじゃないかな。何かを終えて次のステップに向かうっていうのが、どの曲にも何かしら感じられる楽曲を作ってきているから、そういう作品性なりストーリー性なりっていうものを必然的に帯びてくる曲達だったんじゃないかなと自分では分析していて。あと自分でもびっくりしたのは、初期の曲も不思議なくらい古くないんですよ」

■そうなんですよね。このアルバムの曲達は2017年に全部作りましたって言われてもすんなり頷ける、古びれなさがありますよね。

「そう、自分でもそれにちょっと驚いていて。いろんな理由があると思うんだけど、主にふたつあるんじゃないかと自分では感じていて。ひとつは、ビートミュージックはトレンドでできてるので、そのトレンドの扱い方によって、あとそのトレンドを利用した以外の音楽の本質的なところの扱い方によって、古くなったり古くならなかったりする、そこが僕らはしっかりできてたんだなってこと。もうひとつは、精神論みたいになっちゃうけど、その楽曲やひとつひとつの音に対してどんな姿勢をもって接していたかでだいぶ変わってきそうな気もするなって。これはちょっと観念的な話ですけどね。ただ、そうとしか説明できないんじゃないかなっていうのは自分の作品を振り返って感じたことです。それはやっぱり誇らしいことだし、ちょっと自分達のことが不思議な感じがします」

■それはどういう意味で不思議なんですか?

「自分が作ってる時は目の前にあることに全力で取り組んでいるだけで、そこまで作為的ではないわけですよ。でも今聴いてみると、こんなにいろいろ考えてたのかとか、どんなエネルギーの量を注ぎ込んだらこれができるんだろうっていう不思議さがあって。その間、川島くんとの関係性も変わっていくし。ただの大学の同級生の友達から……ほんとにただの大学生の友達だったんですよ、学校の帰り道にふたりでパチンコ屋に寄ったり、レコード屋行って一緒にレコード買ったり」

■同じジャズ・バーでバイトをしたり。

「そうですね、とても近所で過ごしながら川島くんの部屋で音楽を作ってて。それから音楽が仕事になって……僕自身は、お金を1円でももらい始めたらそれは仕事で、誰かに対しての責任が発生していて、だから遊びとしてやってた今までとこれからは責任が全然違うんだっていう頭の切り替わりが早かったんだけど、川島くんはその切り替わりが不思議なくらいゆっくりだったんですよ。だから川島くんの場合は、デビューした後から年々少しずつ少しずつ聴いてくれる人がいることの重みが増していったんですけど、その変化が楽曲に表れていて。重みが増していくに従って言葉遣いも変化してくるし、自分とリスナーとの関係性も、どこまでも問いただしていくような感じになっていって。で、川島くんが人生の中で人間的に成長していくのと連動して、バンドの音楽も豊かになっていく。そういう道筋を辿っていたんだなってわかりますよね」

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text by有泉智子

『MUSICA4月号 Vol.120』

Posted on 2017.03.16 by MUSICA編集部

クリープハイプ、必殺の新曲“イト”完成!
尾崎世界観の今の胸中、そして新曲に迫る

「ここに飛び込めばいい」っていうのは
わかってるんだけど、怖かったり、
なかなか飛び込めなかったんです。
でも“イト”はやっとそこに飛び込めました。
いつも準決勝で負け続けてたけど、
久しぶりに決勝まで来たなって感じがするんですよね

『MUSICA 4月号 Vol.120』P.76より掲載

 

(前半略)

■そして、本作“イト”のお話です。この映画『帝一の國』とのタイアップの話は、だいぶ前からあったお話なんですか?

「去年の秋くらいに話をもらいましたね。……なんでだったかは覚えてないんですけど、監督(永井聡)との初めての打ち合わせの時に、ヤバいくらいの二日酔いだったんですよ。震えるくらい酔っ払ってて(笑)」

■え……めちゃくちゃ大事な打ち合わせでしょ?

「そうなんですよ(苦笑)。それなのに、打ち合わせの時にエレベーターに映った自分の顔を見て『ヤバい……』と思ったぐらいで。どうしようぅぅ……と思いながら、打ち合わせが始まって。絶対にこれは曲で恩返しをしたいと思って……もう本当に『なんでこうなっちゃったんだろう』っていう後悔の嵐の中から曲作りが始まり……」

■はははははははははははははは。

「ずっと『申し訳ない……』って思っていましたね(笑)。でも、このことは絶対に覚えておこうと思って。ミュージシャンなんだから曲で返そうと決意しました。……で、やっと1月の頭くらいにサビができて。それまでは『どうしても詰まっちゃって、ここから先にメロディが行けないなぁ』っていう感覚があったんですけど、急に思い出せたんですよね」

■メロディがパーンと抜ける感覚を?

「そうです。『あぁ、これだったな!』って。今まで触ったこともないけど、懐かしい感じというか。遅れたことも申し訳なかったし、自分の中で後悔の残る打ち合わせが、これでチャラにできるくらいのサビだなって思えて」

■僕はとても攻めている曲だと思いました。何に対して攻めているかというと、一番はお茶の間に対して攻めている曲だってこと。この曲ほど、意を決して「ただのポップス」をやろうと。みんなのど真ん中に行こうとしているのって、僕が知る限りでは“憂、燦々”の時しかなかったと思うんです。で、あの時は――。

「あの時は単純に『いい曲を作らないといけない』、『爪痕を残さないといけない』っていうのがあったので、ガムシャラに限界まで振り絞った結果、少し届いたのかなって感覚だったんですよね。今回はあの時よりもいろんなことをやってる分、『ここだな』っていうのは感覚としてわかってて。『ここに飛び込めばいい』っていうのはわかってるんだけど、怖かったり、なかなか飛び込めなかったんです。でも今回はやっとそこに飛び込めました。だから、“憂、燦々”の時よりは意識的にポップという概念を狙ってやれたのかなって。あと、あの時は『もっと行ける』という可能性を感じてたんですよね。だからあの曲で『あぁ、ここか。ここまでやってもこんなもんか』って落ち込みもしたし。今のところの自分達のピークだったし、大切な曲なんですけど、それ以上に悔しい曲でもあるんですよ。そうやって天井が見えてしまった曲でもあるから。だから、今回はもう一度その天井を壊そうと意識してそこに行きました。だから2度目の挑戦っていう感じですかね」

■『帝一の國』は今年のゴールデンウィークの目玉映画だと聞いているんだけど、それも含めて尾崎は「あ、ここで賽は投げられたんだな」ってきっと思ったと思うんですよ。そこで「このチャンスを逃しちゃいけない」っていう悲壮感が漂うものではなく、「この椅子に座らせるのはどういう音楽なんだろう」っていうことをフラットに考えられたのが、功を奏していると思う。曲自体から、そういう批評能力がビンビンに響いてくる。

「そこは“鬼”での経験が大きかったかもしれないですね。ドラマの主題歌っていうのも初めてだったし、いろんなことをやり尽くして、最後の手段でああいう手法————とことんドラマの内容にも向き合って、変な曲だけど、癖になる感じで勝負しようと思って、考え抜いて到達できたので。でも、『あれでもなかったけど、これでもないのか……』とも思いましたし」

■でも“鬼”は、寄り添ったドラマ自体が世の中に対してのダークネスを出していくものだったし、それが必然的に音楽にも求められていたと思うのね。そういう意味では癖を全面的に大衆に出さないといけない曲だったし、そもそものベクトルが今回とは違うと思うんです。僕はこの映画の原作をまだ読めてないけど、プロットを見ながらこの曲を聴いていると、もっと楽しくて素直に人の中に入り込んでいける作品なのかなって思っていて。それってクリープハイプらしくはないけど、でもそれをこの楽曲はある意味忠実に表していると思うんですよね。そういうテーマの曲を尾崎がやるっていうことは結構頑張らなくちゃいけなかっただろうし、今まではそこに対してここまでど真ん中の直球を投げられなかったと思うんだよ。

「本当にそうですね。そこは頑張りましたね。何よりも嬉しかったんですよね。“破花”の時もそうでしたけど、“破花”はああいう曲だったからわかりづらかったのもあるし。だから、今回はもっとわかりやすく真ん中でやれたのかなって」

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text by鹿野 淳

『MUSICA4月号 Vol.120』

Posted on 2017.03.16 by MUSICA編集部

04 Limited Sazabys、初の日本武道館公演。
完全レポートと全員インタヴューで、
その胸中と新たな野望に迫る

「リスナー」でも「ファン」でもなく、
同じ熱と同じ衝動をその胸に宿した「仲間」を増やし続けてきた
フォーリミだからこそ描き出せた、
体の奥底から突き上がる興奮が、熱狂が、そして感動が、
眩いばかりの自由と共に溢れ返った、
これぞまさにライヴハウス武道館たるあの光景――
後日インタヴューと共に、初の武道館公演を振り返る

『MUSICA 4月号 Vol.120』P.50より掲載

 

(前半略)

■飾ることないバンドの姿と楽曲が生き生きと躍動する、素晴らしいライヴでした。まずはそれぞれの実感から教えてください。

GEN「なんか、あんまりゴール感なくやれたんでよかったなと思います」

■それ最近みんな言うけど、武道館がゴールになってしまう怖さって凄くあるんですか?

GEN「ありましたね。お客さんも燃え尽きちゃうんじゃないかっていう気がして(笑)」

KOUHEI「最近みんな武道館やるじゃないですか。昔はやっぱりほんのひと握りの人しか立てないような場所だった気がするんですけど、今は割とフェスに出てるようなアーティストだったらたってもおかしくない場所になってるとこがあって。だから武道館やってもまだまだ次があるんだなってところを見せなきゃいけないし」

■ただ武道館をやり切るのではなく、そこでその先を感じさせるライヴができなければある意味負けだという感覚は、この世代は結構持ってるよね。

KOUHEI「まぁ当日はそこまで力入ってる感じも緊張してる感じもなかったんですけど、翌日みんな筋肉痛になって(笑)。ってことは、やっぱ気が張ってたり、力が入ってたんだなっていうのは思いましたね。でも次の日から普段と何も変わらず仕事入ってたんで、気持ち的には大きくなったかもしれないですけど、さらにまた次を見なきゃみたいな感じになれてたんで、僕ら的にはいい通過点にできたのかなって思いました」

■当日のライヴはどうでした?

KOUHEI「やってる最中は大丈夫かな?みたいな、ちょっと不安なところがあったんですけど」

GEN「いつものライヴハウスに比べると音が広がって、締まってない感じに聴こえたので結構やりにくかったんですよ。僕ら楽曲も速いしドラムも細かいんで、これ、ちゃんと伝わってるかな?って思いながらやってたところがあったんですよね」

KOUHEI「でも、3日後くらいに録音したライン音源を聴いた時に、『あ、思いのほかできてるな』と思えて、そこでようやく安心したっていうか(笑)。でも完璧じゃなかったんで、それも踏まえて通過点になったのかな。また武道館でやりたいと思えたし、その時は絶対に今回のライヴを超えていかなきゃいけないと思ったので。そう思えたのが一番大きかったかもしれないです」

HIROKAZ「会場入りするまでは凄いデカいのかなって想像してハードル上がってたんですけど、フェスで大きいステージに出させてもらってたこともあって、リハの時にこれは見たことある感じだな、イケるなと思って。それでいつも通りできたと思います。ただ、自分達はいつも通りだったけど、周りの雰囲気がもの凄くおめでとうっていう感じだったので、やっぱ凄いとこなんだなと思って(笑)。まぁ僕ら自身はまたすぐにYON FESがあるんで、終わった後はそこに向けてシフトチェンジしてるんですけど。逆に、YON FESがあるからゴールじゃない感じにもなったと思います」

RYU-TA「僕も緊張しなかったですね。紗幕が落ちる前まではちょっとドキドキはしてたんですけど、“monolith”で紗幕が落ちてお客さんの顔を見て、これはテンション上がってきたなと思って。だから凄くやりやすかったです。フェスとかで大勢の前でやるってことが凄く気持ちよくなったので、それが武道館でも気負いなくできたことに繋がってたのかなと。でもやっぱり、ワンマンであの大きさでできたのは自信にはなりましたね」

■GENくん自身はライヴはどうだったの?

GEN「まあ、普通よりちょっといいぐらいです。75点ぐらいですかね(笑)。悪くないライヴなんですけど、『今日はカマしたなぁ!』っていうライヴでは全然なくて……でも、それもよかったなっていう感じですね。逆にあそこでオリンピック決勝戦、世界新記録とか出しちゃってたら、僕ら的にも『あー、やり切った!』みたいな気持ちになってたかもしれないし。でも、もっとできたなっていう気持ちがあったんで、またやりたいなっていう気持ちにもなりましたし――」

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text by有泉智子

『MUSICA4月号 Vol.120』

Posted on 2017.03.15 by MUSICA編集部

エレファントカシマシ、デビュー30周年に到達!
念願のメンバー全員取材で、その軌跡を解く

運命的な出会いって言っちゃうと口幅ったいけど(笑)、
他に言いようがない関係だと思う。
何かをやろうと思って集まったわけじゃなくて、
自然発生で仲よくなってるだけなんだよね。
それが30年以上バンドをやっている……
やっぱり音楽を超えた何かを感じますよね(宮本)

『MUSICA 4月号 Vol.120』P.30より掲載

 

■バンドがデビューから30年続くというのはなかなかない、本当にもの凄いことなんですけど。まずは宮本さん、ご自分の中ではどれくらい凄いことだという実感を持ってらっしゃいますか?

宮本浩次(Vo&G)「いやぁ…………まぁ凄いかどうかは置いておいてですね、僕らは長い時間やってきたんだっていうことを、しみじみと思う瞬間は前よりも増えましたね。たとえば6枚目の『奴隷天国』(1993年リリース)を出した時に、赤羽のリハスタでリハーサル終わった後に4人で喫茶店に行って、そこでみんなで有線放送でヒット曲を聴きながら、なんで『奴隷天国』は売れないんだろうって――まぁ『奴隷天国』ってアルバムを出しておいてなんで売れないんだろう?って悩むのもどうかと思うんだけどさ(笑)。でも、その時は年齢はまだ25~26歳だったですけど、(EPICとの)契約が切れる寸前で、凄い焦りと八方塞がりな感じがあって……でも現段階、今こうやって鹿野さんとインタヴューをしている2017年2月の中旬の段階では、当時と比べると、僕らが長くバンドを続けているということを、僕達よりもむしろファンのみんなやレコード会社、事務所のみんなが温かく受け止めてくれているように感じられて。そういうところで、非常にしみじみと思うことはありますね」

■3人は、デビュー30周年ということに対してどう感じますか。

石森敏行(G)「嬉しいですね。凄く嬉しいです。貴重な経験をしてきたなと思うんですけれども、その積み重ねがあっての今の嬉しさだと思います」

冨永義之(Dr)「ちゃんと今もこうやってコンサートをしたり、CDを出したりできているということが、何より嬉しいですよね。やっぱり昔はあんまり先のことを想像してなかったですし。でも今こうやって4人がちゃんといるというか、存在しているっていうことにも喜びを感じますし」

■それこそ近年は体調を壊されたりもしましたけど、でも回復して――。

冨永「はい、たぶんそういうことがあったことも大きいと思います」

■その上で、今も相変わらず3時間を超えるコンサートも叩けてしまうご自分というのを、どう思ってますか?

冨永「いや、そこは何も思ってないです(笑)。やるしかないですから」

■成ちゃんはどうですか?

高緑成治(B)「自分の中では、この30年っていうのは単純に日々の積み重ね、1年1年の積み重ねっていうことだと思ってるんですけど。でも、みんながお祝いしてくれることに対しては、凄くありがたいなっていう気持ちがあります」

■昔から、ここまで長くバンドをやるということを想像していたり、あるいは願っていた部分はあるんですか?

高緑「いやぁ、考えてもなかったですね。最初のうちはただただバンドが好きで、だからやりたいと思ってただけなんで、先のことなんて全然考えてなかったです。だから改めて30年ってことを考えると、これは凄いことなんだなっていうふうに自分でも思いますね」

■たとえば、続けてくる中で、「ここまで続けたんだから、もっと長くやりたいな」というように先のことを考え始めた時期はあったりしたんですか。

高緑「うーん………いや、先のことは全然考えてこなかったですね。体が動く限りできたらいいなと思うことは今もありますけど」

冨永「もちろん長くできたらいいとは思ってましたけど、でも具体的にどうなりたいみたいなことはわからなかったよね」

宮本「まぁ長く続けてこれた理由はいろいろあると思うんですけどね。でも長く続く人達って、友達から始まってる人達が多いよね。ゆずも幼稚園の頃から一緒だったらしいし、それこそミック・ジャガーとキース・リチャーズも昔から仲よしだったりとか。で、僕らもそういう、運命的な出会いって言っちゃうとちょっと口幅ったいけど(笑)、でもやっぱり他に言いようがない関係だと思うんですよ。僕とトミとイシくんは(中学の)1年6組の同級生で、トミと成ちゃんは高校の友達なわけでさ。それって別に何かをやろうと思って集まったわけじゃなくて、自然発生で仲よくなってるだけなんだよね。でもそれが、結果としてこうやって30年以上一緒にバンドをやっているという……そういうところに、やっぱり音楽を超えた何かを感じますよね。僕とイシくんは中学の始業式の日に一緒に帰ってるわけですけど、つまりイシくんとトミとは12歳の時からもう38年の付き合いになるわけですよ。で、成ちゃんとも18、19の頃から知り合いだから、30年以上の付き合いになるわけで………だから、何故エレファントカシマシがここまで続いたのかってことを考えると、まずひとつにはそうやって自然に出会ってることが大きい。で、かつ、僕が歌うことが大好きで、しかも筋金入りのバンドマンであるっていうことも大きい。バンドマンっていう言葉はあんまり好きじゃないんだけどさ、でも、僕は骨の髄までバンドマンなんだなっていうことは凄くしみじみと思うわけです。これは最近になって特によく思う。たとえばThe Rolling Stonesの最近出たブルースのニューアルバムを聴くと、ミック・ジャガーとキース・リチャーズとチャーリー・ワッツが一緒にやっている、その音がしてるんですよね。ベックはどんなバンドとやってもソロワークだし、プリンスも本当に素晴らしいバンドとやってたけど、結局はソロワークだなと思うんです。でもストーンズはバンドの音がするんですよね。リハーサルの空気が聴こえてくるっていうか。それはSigur Rosの若い頃のアルバムもそうだし、U2もそうだし、Radioheadの新しいレコードもまさにそうだったし。ナイジェル・ゴドリッチっていう同じプロデューサーがいても、トム・ヨークのソロとRadioheadのレコードではまったく違うわけです。そういう、筋金入りのバンドマン達のレコードっていうものがあって……で、エレファントカシマシのレコードもそういうものだし、僕もやっぱりバンドマンなんだなって思う。バンドマンであるからこそ、この人達と一緒にやることで自分の最大限の力を発揮できてるんだなっていうのは常に思いますね。いい緊張感もなぁなぁな部分も全部引っ括めて、自分のいいところをこの人達と一緒にやることで出せてるっていう」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA4月号 Vol.120』

Posted on 2017.03.15 by MUSICA編集部

BIGMAMA、集大成的作品にして、
金井政人真骨頂の仮想現実『Fabula Fibula』完成!
メンバー全員&金井単独取材で本作を徹底解明
――Interview2:金井政人、『Fabula Fibula』全曲解説

Interview 2
この「架空世界の物語」に秘められた、
いつも以上に生々しく本音だらけの人間観&人生観――
金井政人、その脳内奥深くを探る全曲解説インタヴュー

『MUSICA 4月号 Vol.120』P.24より掲載

 

1 ファビュラ・フィビュラ

 

■全員インタヴューのほうで、これは音ができ上がった時に発明だと思った、だから発明をキーワードに歌詞を書こうと思い立ち、それによって「嘘」がテーマになって行ったという話をしてくれましたけど。

「そうです。人類の一番の発明品ってなんだろうな?と考えると、火を起こす道具だとかナイフだとか言う人もいると思うんだけど、僕は嘘という概念だなと思って。僕は自分の人生においてたくさん嘘をついてきましたけど、凄く後悔してるんですよ。嘘をつくことによってどんどん不幸になっていったと思っていて。そう考えると、嘘をついた人は本人も気づかぬ間に罰せられてるんじゃないか、そういえば人の不幸は蜜の味って言うなと思って、それで<甘い甘い飴玉に 他人の不幸は蜜の味>っていう歌詞を書いたんですよね」

■つまり、嘘をついた人はいつの間にか不幸=蜜の味の飴をなめさせられていると。

「そうですね。で、『嘘をつく=裏切る』だから、裏切りっていうテーマも出てきて。僕の中で裏切りのワードとして一番強く思い浮かぶのが<ブルータスお前もか>っていう言葉なんですけど、あれを覆して欲しいってずっと思ってたんですよ。<ブルータス私もだ>って言って欲しいなと思ってて。自分が何か裏切られた瞬間とか、信じてたものが壊れた瞬間とかに、それでずっと痛い目に遭い続けるのも癪じゃないですか。もう二度と同じ失敗なんてしたくない。だから、次に同じことが起きた時には<ブルータスお前もか>じゃなく、<ブルータス私もだ>って言い返すっていう、それを描きたいなと思って。物語としてもそのほうが面白いでしょ?って思うし」

■<ブルータス私もだ>っていうのは、つまりブルータスに裏切られているように見せかけて、自分もブルータスを欺いていたっていうこと?

「いや、『知ってたよ』ってこと。もちろん欺き返しの意味も含まれてはいるんだけど、でもそれよりも、お前に裏切られることはわかってたよ、だからの準備はしてあったよっていう、そういう意味合いでのこの言葉ですね。この世界って大概の場合、真面目な人がバカを見るじゃないですか」

■真面目で、かつ人を信じる人よりも、ちょっと小狡くて人を信用してない人間のほうが上手く行くケースは多々ありますよね。

「でも、その真面目さは絶対に間違ってないぞと思うので、そんな方に贈る私なりのメッセージ(笑)。まぁ僕の人生において何がどうこじれてこういう話になってるのかはご想像にお任せしますけど、でもこの1行に何か汲んでくれた人って、たぶん忘れないんじゃないかなっていう気持ちがある」

■裏切りというものがテーマになったのは何故なんでしょうね。

「それはもう単純に、裏切られたなっていう瞬間が多かったから(笑)。最近は特に、裏切られることを覚悟した上で信じてることが多くて。元々、裏切ってきたほうの人間だという自戒の念もあるというか。ずっと大切にするべきことを大切にできてなかった人生だと思っているので、逆に自分の番になった時に裏切られること前提でも自分が信じていくみたいなスイッチが入ってるんですよね。それが強くなってるのは、ここ数年、自分の音楽を信じてきつつも、裏切られたなっていう瞬間が多かったんでしょうね」

■それはごくプライベートなこと? それともBIGMAMA的なこと?

「どっちもありますね。単純にBIGMAMAを取り巻く状況へのフラストレーションだって絶対にあるし、何も納得いってない部分もあるし。あと、それ以上に自分の作ってる歌の人間像に対しての自分の裏切りみたいなところがあるのかもしれない」

■それってもうちょっと説明できる?

「“Sweet Dreams”とかで<夢を見よう>と歌っていますけど、それを歌う自分自身は本当に夢を見れているのか?みたいな。『そこ、俺ちゃんと乗っかれてるのかな、裏切ってないのかな?』みたいな、どこかでそういうものを迷いとして持っていて、それってバレてるんだろうなとか思ってて。………まぁでもやっぱり一番は、ここ数年で自分が大切にしてたものがどんどん崩れてきてしまったのが大きいのかな。ベタな話ですけど、人間関係の事故みたいなもんがあったんで。今までだったら逆を逆をって書いてきたけどーー僕は破滅的な状況の時にはハッピーなものを書いてバランスを取ったりするんですけど、とうとうこうならざるを得なかった感じ。そういう時期もあるのかなと思って、えいって書いてみました」

■さっき言ってくれた、裏切られることを 覚悟した上で信じるっていう――つまり人は嘘をつくものである、裏切るものである、それでも自分が信じることでそんな状況の中でもサヴァイブしてやる、そうやって幸福になろうっていう、そういう基本理念みたいなものは金井くんの中に強くあるのかなと思うんですけど。

「幸福になるじゃなくて、『不幸にならない』っていうのが理念としてありますね。幸せになるっていうことを実感するのは難しいけど、不幸せではないっていうのは割と確かなものだと感じやすい瞬間としてあるなと思ってて。それはちょいちょいMUSICAの連載でも出てくるキーワードなんだけど。あなたを幸せにするとは言えないけど、絶対に不幸にはしないっていう。『おまえ何ぬるいこと言ってんだよ』って思われるかもしれないけど、それって僕の中では誠実なんですよ。仮に僕とリスナーの間で約束できるのは、幸せにするっていうのは嘘なんですよ。不幸を遠ざけることができるっていうのは正しいんですね。座右の銘って括られると違う気がするんだけど、『自分がこの人生を歩んできて人に何か残せる言葉ありますか?』って言われたら、『不幸にはしない』だと思う。それは親父からもらったものを自分で解釈しただけなんだけど、その言葉は凄く大事にしていて。で、この言葉が姿かたちを変えてこのアルバムの随所に散りばめられてると思う」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA4月号 Vol.120』

Posted on 2017.03.15 by MUSICA編集部

KEYTALK、アルバム『PARADISE』リリース!
彼らが掴み取った新たな核を、
首藤&八木、寺中&小野のタッグ取材で紐解く

自分の道を自分で見つけたっていうよりは、
他の3人のことがわかってきたんですよね。
どうしても誰もいないスペースがあるはずなんで、
そこに自分が収まれたらいいなって思って(首藤)

『MUSICA 4月号 Vol.120』P.42より掲載

 

Interview 1

首藤義勝×八木優樹

 

■前作の『HOT!』を上回るぐらいの音楽的なチャレンジを果たされていると思うし、それがちゃんと「今のKEYTALK」っていうアップデートされた形で表されたアルバムだなと思いました。ご自分達では、どんなアルバムに仕上がったなと思いますか?

首藤「確かに前作より自由度が高まったなっていう印象はあります。4人が作曲するっていう前提はありつつ、4者4様のやりたいこととか自分的にアツいと思ってる音楽を詰め込めたアルバムだなって思ってますね。それはメンバーそれぞれライヴをやったり、シングルを出していく中で、経験値が増えていったっていうのもあると思うし、それがこのタイミングで4人同時にドカンッ!とアウトプットできたんじゃないかなって。一見バラバラになりそうだったんですけど、でもひとつのアルバムに向かって作っていったし、それを今のモードに落とし込めたかなって思います」

八木「2016年って、かなりレコーディングが多かった年で。曲作ってすぐレコーディングして、また曲作って……っていう繰り返しだったんですよね。そうやってライヴして、すぐレコーディングに入ることで、新鮮さを損なわずに、クリエイティヴな気持ちでレコーディングに臨めたのが、『PARADISE』に繋がってるのかなと思います。………僕は、今回のモード的には、速くて切迫感がある感じというか、『うわー、どうしよう』みたいなものが出てきたのかなっていう気がします。最近曲を作ってきてわかってきた自分の持ち味を若干意図的に使って作ってみた上で、KEYTALKのロックを引き出せる曲を作りたいなって思ったって感じです」

首藤「僕は今回、きっちりコンセプトを考えて臨んだわけではないんですけど、個人的にはポップな感じというか、バンドサウンドでカッコいい!みたいな路線よりは、歌モノとしてメロディが綺麗な曲を書こうと意識して作ってて。そこにプラス要素として――“Summer Venus”とかは特にそうなんですけど、面白要素みたいなものを足していったりして。自分としては、平たく言うとポップ担当って感じです。まぁみんなポップではあるんですけど、僕は明るいほうの『ポップ』っていう感じというか」

■“Summer Venus”は本当にそうなんですけど、中盤で急に入ってくるEDMの部分に表れている通り、このバンドの遊び心とポップス性が一体となっている曲で。これまでのKEYTALKで言うと、“YURAMEKI SUMMER”や“MONSTER DANCE”みたいなミックス感があるんですけど、でも今回はより振り切った形でアップデートされた曲になっていますよね。

首藤「1曲こういう曲欲しいなっていうのはあったんですよね。それはライヴのことを考えてっていうところが大きくて。実際、過去にそういう意図で作った“YURAMEKI SUMMER”とか“MONSTER DANCE”とかをお客さんが面白いと思ってくれたんで………そういう上手く行った例によって今回もこういう曲ができたんで、それが自信に繋がったところはあると思います。だから、今回はより『面白い、楽しい』っていうものに注ぐエネルギーをよりデカくやれたかなって思ってて。……今思い返すと、“YURAMEKI SUMMER”は楽しいパーティチューンを作ろうと思って作ったんですけど、どこかでちゃんとした楽曲を作らなきゃ、ちゃんとバンドとして成立する楽曲を作らなきゃっていう縛りがあった気がしていて。でも今回は、単純にただただ面白いことをやろうっていうイメージで作れたんですよね。途中でEDMにガラッと変わるところとかも、考え的にはロックとEDMを融合したら面白いよねっていう音楽的な発想じゃなくて、単に『面白かったらいいや』みたいなイメージで作れたのはよかったのかなって思ってますね。お客さんが一聴して『面白い』って思う感覚って、自分の感覚とは微妙に違うと思うんですけど、そこの壁をなくしていきたいと思っていて。まず、お客さんが『KEYTALKがなんかやってる。面白いな』って思ってくれて、結果自分達でもお客さんが楽しんでくれてて、俺らも楽しいなっていうキャッチボールができるのが、こういう曲に関しては理想かなと思うんですよね」

■前作の『HOT!』で初めて同期や打ち込みを入れていって、それが前回のタイミングではある種挑戦だったと思うんですよね。そこで自信がついたっていうのもあります?

首藤「そうですね。それによって今回は如実に振り切れたというか。打ち込みとかバンドサウンド以外の音を入れようっていうのも、考え方的にはその都度その都度いいものは入れちゃえ!みたいな感じではあるんですけど。たぶんそれは僕だけじゃなくて、メンバーみんな一緒の考えだと思います。たとえば武正だったら、今までは考えられなかったけど、今回は『巨匠がラップしたら面白いよね』みたいな発想もあったし。僕が同期とかシーケンスを入れる発想も、それと一緒なんじゃないかなと思います」

(続きは本誌をチェック!

text by池上麻衣

『MUSICA4月号 Vol.120』

Posted on 2017.03.15 by MUSICA編集部

BIGMAMA、集大成的作品にして、
金井政人真骨頂の仮想現実『Fabula Fibula』完成!
メンバー全員&金井単独取材で本作を徹底解明
――Interview1:バンド全員インタヴュー

本能のアルバム。シーンの中でBIGMAMAはこうあるべきだとか、
そういうことを全部考えた上で、
自分達のフィールドで自分達のやり方で尖ろうっていう結論に達して。
その上で、本能で攻めていったアルバムだと思う

『MUSICA 4月号 Vol.120』P.12より掲載

 

Interview 1

バンド全員で語る、BIGMAMAという本能が

新たな発明として花開いた『Fabula Fibula』

 

■パッと聴くと非常にBIGMAMA的なアルバムだなと思うんですけど、じっくり聴くとこのバンドが凄く新しい場所へと行き始めてるなということを強く感じられるアルバムで。まずはひとりひとり、この作品に対する感想をもらえますか。

東出真緒(Vio)「前作の『The Vanishing Bride』が自分の中では凄く大きかったんですけど。それを受けてHYと一緒にやった1年があった上で、どうやって前作を超えていけるのか?ということが大きな課題としてあって。『The Vanishing Bride』は、初期衝動みたいなものが重なって生まれた作品だったんですね。実際、聴いていただいた方にも『初期衝動』とか『1枚目のアルバムみたいだね』とか言ってもらったりもしたし。そういう前作を超えていく時に……でも、やっぱり10年を経ているし、本当にセカンドアルバムに取り掛かる気持ちと同じようには作れないわけで、だったらもうあまり考えないようにしようというか、純粋に、素直に、自分が出したい音に向き合おうと思って。そうやって、音の鳴りたいままにという気持ちで自然体でできた作品だと思います。今回は自分が自分がっていう気張りもそこまでなかったし。そういう意味では、元々あったBIGMAMAのいい部分がもの凄く立ったアルバムだと思ってます」

柿沼広也(G&Vo)「僕も基本的には脱力してというか、自然体でできたアルバムだなと思っていて。このアルバムの制作って、2015年に“MUTOPIA”という曲ができたところから始まったんですけど」

■でも、“MUTOPIA”は全然脱力してない曲調の楽曲だよね?

柿沼「仕上がりはそうかもしれないですけど、作ってる時の考え方はかなり脱力していて。この曲ってギターもリフしか弾いてないし、音源としてこういうふうにしなきゃ!みたいな気負いも全然ない中ででき上がった、割と新しい形で作れた曲だったんです。それをライヴでやっていく中で本当にアンセムになっていったし、今までのBIGMAMAの曲達とは違う景色を見せてくれたところもあって。その中で自然と、ライヴでこういうふうにしたいっていう想いが募っていく中で、どんどん曲ができていったんですよね。……前作の『The Vanishing Bride』は力が入ってたんですよ」

■その力みをカッキーなりに言葉にすると、どんなものだったの?

柿沼「BIGMAMAはこんなに凄いんだ!ってことを提示したい、そういう力が入ってたというか。シーンの中でラウドなバンドやフィジカルが強いバンドが盛り上がったり、売れていく中で、『いや、俺らはそういうのもできるし、技術も全然負けてないぜ』っていう想いが個人的に凄く強かったんですよね。そういう気持ちが“Flameout”みたいな曲に反映されていって。でも一方で、もちろん“A KITE”みたいな綺麗な曲も作っていって……とにかくBIGMAMAのすべてを詰め込もうとしたアルバムだったんです。その結果、凄いアルバムができたんですけど、自分的には力が入り過ぎてたなと思って。それが“MUTOPIA”からこのアルバムへと進む中では、もっと自分が弾いていてライヴでこういう景色が見たいとか、みんながこういうプレイをしていたらもっと気持ちいいなとか、そういうナチュラルな気持ちで曲を作ることができたというか。だから今回、僕的には『これが弾きたいぜ!』とかって想いは全然なかったんですよ。そうじゃなくて、俺が弾いたギターを金井なりみんなが『あ、それいいじゃん、曲にしよう』って言ってくれたものを集めていったという。そういう意味で、僕自身は凄く自然体で力を抜いて作ることができたアルバムだと思ってます」

リアド緯武(Dr)「真緒ちゃんとかカッキーが言ったように、少し自然に、肩の力を抜いて作れたのかな。そうなれたのは、このメンバーになって10年続けてきて、フルアルバムも7枚目というところで、当然といえば当然ですけど自信がついてきたからかなと思いますね。自分のドラムにしても、昔はなんか癖のあることしなきゃとか考えたり、打ち込みに抵抗があって、リズム楽器はできるだけドラムで完結させなければ美しくないみたいな、そういう頑固な部分もあったんです。でも今は他のメンバーをより信頼することができているし、このバンドが作る音楽っていうものを一番に考えた上でドラムを叩けているというか。そういうスタンスで叩けば、頑固にこだわり過ぎなくてもちゃんと自分だけのドラムになるし、BIGMAMAだけの音楽になるという、そういう考え方になってきていて。その結果、全体的には力を抜いてできた作品かなと思ってます」

■と、ここまでの3人の話を聞いていると自然体の肩の力の抜けたアルバムだという話なんですが、金井はどう感じていますか。

金井政人(Vo&G)「僕は本能のアルバムだったかな。いろんなものを俯瞰して――ロックバンドとしてとか、日本の音楽シーン、世界の音楽シーンの中でBIGMAMAとはこうあるべきだとか、そういうことを全部考えた上で本能で攻めたアルバムというか。このメンバー構成で作った作品がCDショップに並んだ時に、自分達はどこを光らせるんですか、どこを尖らせるんですかっていうこと、あるいは自分の好きな海外のロックスターや日本の憧れていたミュージシャン、あるいは文学家に対して、どうやったら自分は勝負できるんだろうっていうことは、散々考えたんですよ。その結果、そこに対して正攻法で挑むのではなく、自分だけのフィールドを見つければいいじゃないか、自分達のフィールドで自分達のやり方で尖ろうっていう結論に達して。だからこそ、自分達の本能っていうもので攻めていったという。……作品におけるBIGMAMAの在り方って、この5人が奏でる音楽の中で、僕自身が誰にも思いつかない妄想を発揮することっていうところに醍醐味があるんじゃないかと思っているし、このアルバムはそれを最大限に発揮できたと思うんです。でも、だからこそ、みんなは自然体と言ったんだけど、僕にとってこのアルバムはちょっとモンスターな感じがあるんですよ。何故かっていうと、このアルバムって自分の才能をフルに活かし切ったものだと思うので、今のままの自分だったら食われるなと思ってて。アレンジのレベルにしても、ヴォーカルのレベルにしても、あるいは歌詞を書くセンスにしても、ここで俺自分 自身を1回アップデートしておかないと次が怖いなっていうのは、このアルバムを作り終えての率直な想いとしてありますね」

■このアルバムがモンスターだっていう部分は、ソングライティングをしていく中で感じていったものなんですか。それとも、何らかの確信犯的な意識があった上で達成したものなんですか。

金井「タイミングはふたつあって。“ファビュラ・フィビュラ”という曲を完成させた時と、すべての街がひとつの地図に収まった時」

リアド「確かに、“ファビュラ・フィビュラ”という曲は、まさに金井の言うモンスターに当たる曲というか。これを自分がいかに表現していくかはハンパなく大変だったんですけど、でも、その大変を当たり前にできるだけのレベルに自分がならないと今後この曲を扱えない、ライヴで表現し切れないなと思うような曲ができちゃったなと思うんですよ。そういう意味では今までにない部分をこのアルバムで出せたし、そういうのを1曲目に持ってくることによってバンドのアティチュードというか、まだまだ攻めていくんだってことをアピールしたかった部分はありますね」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA4月号 Vol.120』