Posted on 2017.03.18 by MUSICA編集部

BOOM BOOM SATELLITES、
オールタイムベスト『19972016』を発表。
中野雅之との対話から、彼らの旅路の足跡を辿る

本当に長い時間を同じ場所で一緒に過ごしたし、
話し合ったことの中には生き方から何からすべてのことがあった。
毎日の生活のすべての営みが、
自分が音を作ったり川島くんが歌ったりすることに
帰結していく日々を繰り返してきた

『MUSICA 4月号 Vol.120』P.90より掲載

 

■この『19972016』は、ベストアルバムというよりも、オリジナルアルバムと呼ぶべき作品であり、中野さんがBOOM BOOM SATELLITESというものを作品として4枚の形で提示したものになったなと思うんですけど。

「僕もいわゆるベスト盤とは感触が違うものだと思っていて。細かいことを置いておけば、曲を並べただけとも言えるわけですよ。でも、不思議なことに、曲を並べていった時に既に作品としてのフィーリングを感じられるものになっていて。ベスト盤って基本的にはリードシングルや代表曲を並べたものだから、スタンスとしては1曲ごとに対しての思いがあって聴くっていう感覚になるものだと思うんですが、僕らの場合は不思議とストーリーを感じてしまう作品になるんだなって思いました。もちろん、作品性のあるものにしよう、作品として聴かせるものにしようという意図はあったんだけどね。ただ、意図してストーリー性や作品性を注ぎ込まなくても、自然とそう仕上がるんです、並べてみると。もちろん馴染みがいいように音は調整していくんですけど、曲が勝手に導いてくれることのほうが大きかったんじゃないかなっていう感じがあって。それがこのバンドの特色なんじゃないかな。何かを終えて次のステップに向かうっていうのが、どの曲にも何かしら感じられる楽曲を作ってきているから、そういう作品性なりストーリー性なりっていうものを必然的に帯びてくる曲達だったんじゃないかなと自分では分析していて。あと自分でもびっくりしたのは、初期の曲も不思議なくらい古くないんですよ」

■そうなんですよね。このアルバムの曲達は2017年に全部作りましたって言われてもすんなり頷ける、古びれなさがありますよね。

「そう、自分でもそれにちょっと驚いていて。いろんな理由があると思うんだけど、主にふたつあるんじゃないかと自分では感じていて。ひとつは、ビートミュージックはトレンドでできてるので、そのトレンドの扱い方によって、あとそのトレンドを利用した以外の音楽の本質的なところの扱い方によって、古くなったり古くならなかったりする、そこが僕らはしっかりできてたんだなってこと。もうひとつは、精神論みたいになっちゃうけど、その楽曲やひとつひとつの音に対してどんな姿勢をもって接していたかでだいぶ変わってきそうな気もするなって。これはちょっと観念的な話ですけどね。ただ、そうとしか説明できないんじゃないかなっていうのは自分の作品を振り返って感じたことです。それはやっぱり誇らしいことだし、ちょっと自分達のことが不思議な感じがします」

■それはどういう意味で不思議なんですか?

「自分が作ってる時は目の前にあることに全力で取り組んでいるだけで、そこまで作為的ではないわけですよ。でも今聴いてみると、こんなにいろいろ考えてたのかとか、どんなエネルギーの量を注ぎ込んだらこれができるんだろうっていう不思議さがあって。その間、川島くんとの関係性も変わっていくし。ただの大学の同級生の友達から……ほんとにただの大学生の友達だったんですよ、学校の帰り道にふたりでパチンコ屋に寄ったり、レコード屋行って一緒にレコード買ったり」

■同じジャズ・バーでバイトをしたり。

「そうですね、とても近所で過ごしながら川島くんの部屋で音楽を作ってて。それから音楽が仕事になって……僕自身は、お金を1円でももらい始めたらそれは仕事で、誰かに対しての責任が発生していて、だから遊びとしてやってた今までとこれからは責任が全然違うんだっていう頭の切り替わりが早かったんだけど、川島くんはその切り替わりが不思議なくらいゆっくりだったんですよ。だから川島くんの場合は、デビューした後から年々少しずつ少しずつ聴いてくれる人がいることの重みが増していったんですけど、その変化が楽曲に表れていて。重みが増していくに従って言葉遣いも変化してくるし、自分とリスナーとの関係性も、どこまでも問いただしていくような感じになっていって。で、川島くんが人生の中で人間的に成長していくのと連動して、バンドの音楽も豊かになっていく。そういう道筋を辿っていたんだなってわかりますよね」

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text by有泉智子

『MUSICA4月号 Vol.120』