Posted on 2015.07.17 by MUSICA編集部

BLUE ENCOUNT、ファーストフルアルバム『≒』で
バンドが掴み獲ったひとつの答え

正直、今もライヴするのは怖いんですけどね。
だけど結局、自分が好き放題できるのはやっぱりライヴだし、
どんなリスクを背負ってもライヴっていう
生の状態で正々堂々勝負したいっていうのが強くあるんです

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.90より掲載

 

■ファーストフルアルバムです。インディーズ時代にもアルバムは出してますけど、あの作品はインディーズ・ベスト的な意味合いだったから――。

「そうですね、新曲も3曲だけで完全にベスト盤な感じだったので、フルアルバムっていうものに取り組んだのは今回が初めてだったんですけど…………まあ、フルアルバムっていうのはこんなにも作るのが大変かっていうくらい大変でしたね(苦笑)」

■あ、やっぱり違いました?

「全っ然違いましたね。年末くらいに作り始めたんですけど、当初の予定では4月末にはアルバムの全行程を終えて、5月はワンマンのリハをじっくりやろうと思ってたんですよ。その時点で曲もいっぱいあったし――既発の4曲に加えて12月の段階で候補曲も11曲くらい上がってたので、これは余裕だろうと踏んでたんですけど。で、それを1月にガッツリとプリプロしまして、2月前半のレコーディングで3曲を録り終えたところで――そこで録ったのが“JUMP”と“TAKEN”と“HEEEY!”だったんですけど、その3曲と既存4曲とを合わせて聴いてみた時に『面白くねぇな』って思っちゃったんです。『というか、これヤバくないか?』って思ってしまって……それである日、思わずメンバーとマネージャーさんに『こんなの面白くない!』って言っちゃったんですよ。そこからはもう、何かに取り憑かれたんじゃねーかっていうくらい、アルバムはもちろん現状のことまでとにかく愚痴を言い始めて。ほんと、こいつ酒飲んでんのか?ってくらいのクダの巻き方になってしまいまして(笑)。……でも、なんで愚痴になっちゃったのかと言うと、要は自分でも何が面白くないのか、何が嫌なのかがちゃんとわかってなかったんですよね。で、それがわからないままに自分の中の苛立とか焦りを棘として周りに放出してしまって」

■その苛立とか焦りっていうのは、何に対するものだったんですか。

「やっぱり、僕の頭の中ではメジャーデビューしてこれくらいの時期にはもっといいところに行ってたはずだっていうのがあったんだと思うんです。動員もそうですし、CDのセールスもそうですし……とにかく自分が思い描いていた『いい答え』に追いつけてないことに凄く焦ってて。で、散々メンバーやマネージャーさんにクダを巻いた帰り道に、ふと『俺、何してんだろうな』って思っちゃって。俺が今ここにいるのは俺だけの力じゃないし、メンバーだけの力でもないし、スタッフの方を始めいろんな人が携わってくれているからなわけで。それなのに自分勝手にこうなって当然だと思って、そこに届かないことに焦って、勝手に棘をまき散らしてた。それでまたガッツリ自分を嫌いになりまして。そこから『この気持ちをいい曲作って打破してぇな』と思って、また新しく曲を作り始めたんですけど」

■でも、その時点で“JUMP”や“TAKEN”や“HEEEY!”は録ってたということは、「面白くない」と感じたのはアルバムとしてのバラエティ感じゃないよね。“JUMP”はレゲエを取り込んだ曲だし、“HEEEY!”はアイリッシュパンクだし、“TAKEN”はマイナー調のツービートだしと、音楽的には新鮮かつ面白いものが揃ってるわけで。

「確かに“HEEEY!”や“JUMP”や“TAKEN”っていうのは音楽的にレンジが広くて、ジャンルの遊び方ができたっていうのはあったんですけど、ただ、このままだとそこだけを見せているアルバムになってしまう気がしちゃったんですよ。もちろん振り幅を見せることは凄く重要だったんですけど、そこに逃げてたっていうか、『俺ら、こんだけ引き出しあるぜ。凄いだろ』っていうところに逃げてたんじゃないかって思って。だからアルバムの新曲が全部、シングル曲の引き立て役になっちゃう感じがしたというか」

■要するに、ちゃんと自分達の真っ芯を語る曲というか、ガツンと背骨になる曲が必要だと思ったってことだよね。

「まさにそうなんですよね。やっぱり歌詞の部分でも次のステップに行かなくちゃいけないとも思ってたし、そういうのが欠けていたなって。メッセージはもちろんBLUE ENCOUNTの強みであり武器なんですけど、そこでもっと自分達にしかできないものがあるんじゃないかなっていうことも凄く考えてたし………で、まぁ散々毒をまき散らした後、その毒がスッと抜けて一発目にアウトプットできたのが“LIVER”っていう曲だったんですけど。これ、曲自体はとにかくエッジを利かせて、間の英語のところはブルエン史上最速のBPMにして、このバンドの一筋縄じゃいかない感じを出していく形で作ったんですけど、詞に関しては、毒を全部吐き出した後の自分の素直な答えを歌えてて。それがつまり、ライヴのことだったんですよね」

■ちょっと唐突な質問をしますけど、今、田邊くんがBLUE ENCOUNTというバンドをやっていて最も喜びを感じるのはいつなんですか?

「それがやっぱりライヴなんですよ。ライヴのステージって後悔も凄くしますし、超えなきゃいけない自分とか課題も見えてしまって凄く辛くなったりもするんですけど、だけど結局、自分が好き放題できるのはやっぱりライヴだし、どんなリスクを背負ってもライヴっていう生の状態で正々堂々勝負したいっていうのが強くあって。……正直、今もライヴするのは怖いんですけどね。でも、Twitterで『なんでだろう、ブルエンの時って観てるこっちも緊張する』って書いてくれてた子がいて。それを見た時に『ああ、俺らが緊張してるのはお客さんも知ってるのね』と思ってちょっと嬉しかったんですよ(笑)。そういう緊張が見えてしまうことをよしとしないバンドさんもいるだろうけど、俺らの場合はそれをちゃんと見せられるバンドでよかったというか、そういう俺らをわかってくれるお客さんがいるっていうことはすげぇありがたいし、ホッとすることでもあって………だから俺らが等身大でいられる理由がライヴであり、お客さんだと思います。そこに対して少しでも恩返ししたいなっていう素直な気持ちから、“LIVER”って曲も生まれたんだと思うんですけど」

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text by有泉智子

『MUSICA8月号 Vol.100』

Posted on 2015.07.17 by MUSICA編集部

Base Ball Bear、
3ヵ月連続エクストリーム・シングルに込めた信念と闘志

わかりやすさっていう面で、完全にロックバンドは劣る。
これからの時代が「わかりやすさ」を求めるのであれば、
僕らロックバンドは圧倒的に不利だと思ってます

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.76より掲載

 

■1年以上振りのインタヴューで楽しみにしてました。いきなりですけど、この「エクストリーム・シングル」っていうのはなんなの?

「僕がつけたんですけど……かましておこうかなって(笑)」

■シングルってマーケットに対する半分ギャグ、半分自虐みたいな?

「シングルを連発するって、このご時世ちょっとやり方が古いじゃないですか? 特にタイアップがついているわけでもなく、3ヵ月連続で3タイトルって……『いやいや無謀なんじゃないの?』ってなると思うんですよね。だからちゃんと考えたいと思って。普通はCDにDVDをつけてとかだと思うんですけど、むしろ逆にCDにCDつけて、楽曲で攻め倒そうと(笑)。しかも入っている容量が異常なんですよ。スタミナ丼みたいな」

■いや、完全にそうだよね。おまけ分のDISC.2、基本容量いっぱいだからね。容量はいいけど、要領が悪いみたいな。

「はは。まあ70分以上入ってますから」

■ここまでシングルを切り続けることには、どんな意味があるんですか?

「この企画のそもそもの部分をいえば、この先に控えるアルバムを見越したロングプロモーションをしたいからというのはあるんですよね。こうしておけば、3ヵ月は継続的に露出していけるわけなので。だけど、さっきも言ったようにプロモーション盤として1曲、2曲入りで500円で売り出すっていうのも現時代的じゃないわけで。っていうか、古いわけですよ。だから、ちゃんと大義があるシングルにしたかったんですね。だったら『エクストリーム』とか言っちゃって、アイテムとして買う価値のあるものにしたいなって。シングルが売れないとか、意味が見出せないって言うなら自分で意味をつけていけばいいんじゃないの?って思ったんです」

■定額配信がここまで出揃ったことによって、いよいよ音楽は所有するものか、否かという問題に本当の賽が投げられた感もあるけど、この状況はどう捉えているの? 

「まだAWAやLINE MUSICが始まって1ヵ月も経ってないじゃないですか? だからまだ様子を見ている段階ではあるんですけど、アメリカとかはみんなそっちに行っちゃってますよね。で、日本でも若い子はスマホに流れていってると。そこでひとつ危惧してるのは……フィジカルではなく、本格的にストリーミングで音楽を聴く流れになると、再生環境が変わるじゃないですか? 今みたいにCDで、もしくは、CDから取り込んで、という作業を飛ばして、全部をスマホで済ませて、スマホばかりで聴くことが当たり前になった場合、作り手側もそこで映える音を作ろうと考えますよね。そうなると、まず、ギターの『ジャジャジャジャーン』みたいな音って聴きにくいってなると思うんですね」

■そうだね。そのギターの歪みなどをちゃんと聴かせようとすると、今度は歌が耳に入ってこなくなるしね。

「そうなんです。だから、たとえば、歌の音量が大きくなって、Aメロはキメ主体とかで、ギターもコンプとエディットでバキバキにしたりして。スマホで聴いた時に映えるメロディとかアレンジになっていくというか、聴き方に合わせた音楽の作り方をしていくと、わかりやすいものをやろうって流れになると思っていて――実際今って『わかりやすい≒いいもの』、っていうかむしろ『わかりやすい=いいもの』っていう風潮があると思うんですよね。それはJ-POPだけじゃなくて、ロックシーンでもそうなのかなって」

■野音のMCで小出くんはアイドルとかソロのアーティストと比べて、バンドっていうスタイルは圧倒的にわかりにくくて不利だと、そういう構造をBase Ball Bearも持っているし、自分達はそれに悩んでいるって言ってたよね。小出くんの中にはロックジャンキーな部分と、それとは別に今の時代や、ポップってものを冷静に見渡していく引き出しがあるじゃない? その両方を持っている自分として、結果的に何を一番あそこで伝えたかったの?

「まず今回の一連のレコーディングで、ロックバンドでいることがこんなにもわかりにくいのかって。チューニングの話から始まるんですけど。……やっても、やってもチューニングが合ってないように感じるんですよ」

■それはどうして?

「実は当たり前のことなんですけど、同じチューナーを使ってチューニングをしたとしても、俺と湯浅(将平/G)のグリップの力強さは違うし、弦を押さえ始めたら永遠にずれ続けていくわけですよね。たとえば、コードの『A』を鳴らしたとして、ふたつが『A』の範囲には収まっていたとしても、その『A』が本当の『A』になることって一生ないんです。でも、それで成立しているのがロックバンドのサウンドなんですよね。で、もしそこに基準となるような鍵盤がいてくれると、ギターの鳴りも在り方が変わってくるし、ましてや打ち込みのみで作られていたら、そこに存在するのは理屈的には絶対のドレミなわけで。……同じ『A』でも僕らは『A』っていう範囲、打ち込みで作れば絶対的な『A』。当然、揺れのない絶対的な『A』のほうが、わかりやすさっていう面では、完全にロックバンドは劣る。だからさっき言ったみたいに、これからの時代が『わかりやすい』を求めるのであれば僕らロックバンドは圧倒的に不利だと思ってるんです」

■で、その不利な音のズレと揺れを、個性という名の有利なものに変換することを考えるよね?

「そうね。じゃあ、そもそも僕らが絶対的な『A』を求めるために、同期(のリズムや鍵盤音など)を入れるのかって言われたら、別にやりたくないしなぁって思ってて。……そもそも求めていたものが『わかりやすい』ってところってことですよね。曖昧なんだけど、音を鳴らすと1個の個体になるロックバンドの謎がカッコいいって思ってたし、白か黒かじゃなくてグレーでファジーでモヤがかかったものっていうのが表現としていけないことなのかい?と思うんです」

■要するにロックっていうものはその衝動や、カオスや、ゆらぎってものが、精神的にもそしてアンサンブル的にも生じていくことによって、ロックという不思議な音楽が生まれる。そして、その不思議さが人間の神経を刺激するが故にここまで大衆化した。……でも、「わかりやすい一体感」と、その真逆にある「圧倒的な孤独を告白する」っていうものがリスナー、送り手両方にとっての今の「バンドでやる音楽」になっていて。そうなった場合、小出くんの頭の中にあるロック観っていうものは、とても不利なものだよね。

「そうですね。……古臭い考えかもしれないんですけど、僕はこの後必ずバックトゥクラシックが起こると信じてるんです。さっきから話してる『わかりやすいほうへ』っていう動きは、芸術的な側面で見れば、形骸化そのものだと思ってて。『わかりやすさ』が求められることは、元の意味が損なわれることだと思ってるので。みんなプレイリストでわかりやすいものを集めて、そのプレイリストが自分の音楽体系になっていくとしますよね。アーティストとか、シングルとか、アルバムとかの単位がなくなって。じゃあ、その後に人は何に心酔するのかって言ったら、やっぱり音楽をやっている人とか、意味や意義、大義とかに人はまた吸い込まれていくと思うんですよ」

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text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.100』

Posted on 2015.07.17 by MUSICA編集部

flumpool、初の単独野外ライヴも控える今、
決意の発露たるサマーソング
『夏よ止めないで ~You’re Romantic~』完成

ただ共感されるだけじゃなく、みんなが気づいてるようで気づいてないこと、
知ってるようで知らないことを音楽にして提示することが、
今の時代に音楽をやってる人達の使命であり責任だと思うんですよね

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.82より掲載

 

■前作(『FOUR ROOMS』)はバリバリアコースティックだったけど、今回はバリバリサマーで。

「ははははははは、間違ってないですね」

■ですよね。これはどういうことなの?

「でも、今回の作品にもアコースティックの部分は残ってるんですよ。2曲目の“キミがいたから”もそうだし、表題曲の“夏よ止めないで ~You’re Romantic~”も12弦のアコギとかが3本くらい入ってたり、パーカッションの部分だったり、意外とアコースティックな音像はあるんですよ。やっぱりアコースティックっていう部分はいいなと思ってるし、前回の『FOUR ROOMS』という作品では、そこにちゃんと軸足は置けた気がするんですよね」

■そうだね。

「でも、flumpoolはそれだけじゃないなっていうことも見せたくて。前作はミドルテンポやバラードみたい曲が多かったし――それは敢えてそういう形で作ったんですけど――そういう曲調も含めてアコースティック・サウンドをフルに使ったわけですけど、今回はその上で夏の歌を作ろうぜ!みたいな気持ちで作ったんです。前作のような穏やかな部分もflumpoolですけど、それとは違う青くささ――そもそも僕らは幼なじみだし、そういうちょっとした青春感みたいなものもやっぱり好きなんで。特にこの夏には野外ライヴ(8月8日&9日に彼らの地元である大阪・大泉緑地で行う初の単独野外ライヴ)もあるし、そういう側面を全開に出していくタイミングじゃないかなと思ったんです」

■この曲のダンサブルな感じと「夏感」っていうのは、たとえばこれまでの楽曲で言うと“夏Dive”とか“星に願いを”といった曲を思い出すんだけど、そういうファーストフルアルバムの頃、まだバンドがフレッシュだった時期に対する原点回帰感もあるのかなと思ったんですけど。

「ああ、そうですね。まあ、僕らももう歳も歳だやし、それなりに落ち着いてるところはあるんですよ(笑)。だた、それと同時に、やっぱり人間って歳を取れば取るほど勢いを出したくなるというか、残りのエンジン全部使ってやろうっていう気持ちとの間でずっと闘ってる気がしてて――」

■いや、「歳を取れば取るほど」って言うほど取ってないだろ。

「いやいや!(笑)」

■人の顔と年齢見て話しなさい。

「はははははは! やっぱり昔とは勢いの種類が違うというかね。たとえば10代の頃はもっと自分を信じるというか、過信することも大事だと思うし、そういう勢いがあったと思うんですけど。でも歳を取れば取るほど、過信してはいけないことが多くなるし、生き方としては10代の頃とは真逆になっていくと思うんですよね。あの頃と同じように生きたい自分もいるんですけど、でも、それだけじゃリアリティや説得力がない気がするし………最近はその葛藤みたいのが凄いあって。ただ、だからと言って下手に丸くなって渋い音楽を目指していきたいわけじゃないんです。なんかドキドキワクワクするようなことはやりたい――っていうのを、今回は『夏』の感じに重ねて出そうと思って。夏が始まるワクワク感みたいなものを出したかったというか。『この夏で何か変わってやろう!』とか『この夏に何かかましてやろう!』とか、夏ってそういう気持ちが掻き立てられる独特の空気があるじゃないですか。そういう感覚を音楽として出したいな、ぶつけたいなっていうところで、一生(阪井一生/G)と相談して、夏ソングを作ろうぜってことになりました」

■さっきも曲名を挙げたけど、デビューしたばかりの頃にもサマーソングは作ってるじゃない? そこから5年を経た今、サマーソングを作る上で自分が一番変わったのはどういう部分だと思いますか?

「……一歩引いてるところですかね。完全に一歩引いてる」

■引いてる?

「はい。これは歌詞の話ですけど、“夏よ止めないで ~You’re Romantic~”は最後、<Sunset dream>って言葉で締めてるんですよ。これ、前だったら<Summer dream>にしてたと思うんです。サンセットって終わっていく感じがあるけど、それでも夏の夕日って凄く美しいじゃないですか。なんか、あれが今の自分達な気がしたし、それに、今日本の中で生きててそういう何かひとつ終わっていっていることを感じることも多いというか。……今は美しい世界の中で生きてるけど、だけど『今こそ何か始めなきゃいけない』っていうような、焦りに近いものを感じるんですよね。何かを失う前にもう1回花火のように輝かなきゃいけないというか、それぐらい燃え尽きなきゃいけないっていう、そういう焦燥感を感じることが多くて。それが5年前とは違うのかなって感じます」

■それって自分達のこの5年の成長や進化から感じるというよりも、今の日本からそういうものを感じるっていうこと?

「感じますね。僕は日本の社会がどうなってるとか、政治がどうなってるとか、深くは知らないしわからないんですけど、でも少しずつ自分で勉強したりもしていて――」

■最悪な状況になりつつあることは感じるわけで。日本は平気で戦争できる国になりそうだし、世界的にも情勢は不安定になってきていて。あらゆる意味で、日本は今、揺れてる。

「そうですよね。だから実は、そういうヒリヒリした感じも含めて、それをどうやって音楽で表現していくかが今回の裏テーマとしてはあったんです。世の中を見わたした時に戦争や平和というものに対して考えること――今年の夏は戦後70年にあたりますけど、それはひとつ考えるきっかけだと思っていて。世代が代わって戦争を体験した人がいなくなっていく中で、自分達が新しい平和に対する解釈をどう作っていけばいいのか?っていう……それに対しては僕自身も考えることがあるし。で、そういうことを考えていった時に、今の自分達は昔の人達が作ってきた平和の上に生きているんだっていう事実と、バンドとしてもこれまでプロデューサーを始めいろんな人の意見を聞きながらここまでやってきたっていう事実は、なんだか共通するものがあるなと思って。それこそ僕ら自身、デビューの頃は朝日が昇るような高揚感があったのに対して、今は何かサンセットを見ているような気分になることもあるわけで……でも、それでもその中にある美しさっていうのが一番大切なんじゃないかなっていうのは思うんですよ。自分達自身で何かを発する瞬間こそが、人生の中で輝く瞬間なんじゃないかなっていう気持ちがやっぱりある。だったら、そういう気持ちを今回の曲で伝えていこうよって思ったんですよね」

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text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.100』

Posted on 2015.07.16 by MUSICA編集部

the telephones、休止前ラストにして
エッジと本質が迸る会心作『Bye Bye Hello』を語る

俺らの「今」を出すためには作品として残さないとダメだと思ったんでしょうね。
俺らの今はライヴだけでは全部が出ないんじゃないかな、と。
で、「やりたいことを抑制しない」っていうことが、「テレフォンズの今」だった

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.68より掲載

 

■素晴らしいアルバムができ上がりましたね。

全員「(拍手)ありがとうございます!」

■the telephonesのエッジとセンチメンタル、その両方が凄くちゃんと出た最高のアルバムだと思う。どうして活動休止最後というこのタイミングでこんなに素晴らしいアルバムを作っちゃったんですか?

石毛輝(Vo&G)「ははははは。でも、やっぱ休止前ラストだったからじゃないかなと思う。言い方が難しいんだけど、いい意味でファンのことを考えなかったというか…………最初はね、今までの曲を振り返ったようなものを作ったほうがいいんじゃないかと思ってたんだけど」

■セルフカヴァーベスト的な性格のものを作ろうとしてたっていうこと?

石毛「まぁ、言ってみれば昔の曲と似てるニュアンスの曲を作ろうと思ってたってことなんだけど。でも、書いてるうちにイライラしてきて(笑)。なんか違うな、これはカッコよくないと思ってさ。the telephonesは元々常に挑戦というか、シーンをリードするような、誰もやってなかったことをやってたバンドだから、その精神でいったほうがいいなと思って、そういう気持ちで改めて曲を作っていったんだよね。で、特にDISCOっていうことも考えず、いい意味でもう過去のことはどうでもいいかなと思えた状態で作ったから……だから自由に作れたんだと思います」

松本誠治(Dr)「どこか大前提みたいなところで休止前ラストっていう部分はあったんですけど、最終的にはいつも通り、またレベルを上げて新しいことに挑戦するっていうところに挑めたし、結果的にそれは今までよりも一番いい形で出たんじゃないかと思いますね。それが非常に僕ららしいアルバムになったという一番の要因なのかなとは思いますけどね」

■ノブくんはどうですか?

岡本伸明(Syn)「やっぱり、なかなかこういう状況で13曲入りのフルアルバム作るバンドってそんなにいないと思うんですよ」

石毛「俺ら、よくそんな体力あったよね(笑)」

岡本「だから凄い貴重なアルバムだと思うんです。いつも通りなんですけど、そういう状況だからっていうのはやっぱりあったし、その空気があったからこそ自然とこういうアルバムになったのかなって感じですけどね」

長島涼平(B)「レコーディングに向かう姿勢みたいなものがだいぶ違ったんじゃないかなっていうのは思いますね。自分達の中で話し合って……そもそも、まずアルバムを本当に出すのか出さないのかっていうところから話し合ったんですよ。自分達は出したいのか出したくないのか、出すならどういうものを作るのか?っていうところから話し合って。今まではもう出すことが決まってる中でそこに向かってやってたから、そういう話をちゃんとしたのはかなり久々な気がして」

石毛「そうだよね、アルバム出したいなら出せるし、でも出さなくてもいいよ、みたいなのは久しぶりの選択だよね」

長島「そう。その時に、やりたくなかったら出さないって言ってたかもしれないし。けど、最後のオリジナルアルバムをっていう話をいただけて、それに向かって行こうってなったから……そういう意味でのやる気は今までとちょっと違うかもしれないですね」

■そこもうちょっと詳しく訊きたいんだけど。活動休止を発表した3日後に石毛くんにインタヴューした時(MUSICA2月号に掲載)、すでに「アルバムを1枚作りたいと思ってる」っていう話はしてたんだけど、実際はどういう流れだったんですか?

石毛「あの時にアルバムの話はあったけど、でも話し合う前だったよね」

長島「うん。アルバムを出そうかっていう話はその時にもうあって、年明けてから制作に入っていったんですけど。でも、その最初の段階でちょっとみんなモヤモヤしてたというか……僕の個人的な意見を率直に言うと、最初にアルバムでやる曲を選ぶというか、石毛さんが持ってきたものをプレイしてみたり聴いてみたりした時に、自分が思ってたのと違くて。それはたぶん、まだ石毛さんが最初に言ってた『振り返るようなもの』を作ってた時期だったんだと思うんですけど。で、それを聴いてなんか違うんじゃねえかって言って。そういうことがあって『そもそも、これ作るのか作らないのか、どうしたいの?』ってことになり……それでみんなで話し合った結果、やっぱり出したいよねっていう話になったんですよね」

■やっぱり出したいよねってなったのはなんでだったの?

長島「自分達の今を出したかったんじゃないですかね。活動休止発表してるけど、でも休止までにはまだ期間があるし。きっと『SUPER HIGH TENSION!!!』じゃない、もっと別の――去年は去年の今があって、今年は今年の今があるから。その『今』を出すためには作品として残さないとダメだ、俺らの今はライヴだけでは全部が出ないんじゃないかな、と」

石毛「そうだね。あと今回のアルバムって振り幅が凄いあるけど、こういう『結局このバンドって何がしたいんだろうね?』っていうところで終わるのが超いいと思うんだよね。なんか『やっぱなんでもやりてえんだな、こいつら』みたいなのは伝わると思うし」

岡本「『Bye Bye Hello』はまさにそういうアルバムだよね」

石毛「アルバムとしてコレっていうのが何も明確じゃないもんね」

松本「それこそ『JAPAN』作った時もそんな感じだったよね」

長島「そういう、『やりたいことを抑制しない』っていうことが、たぶん『the telephonesの今』だったんでしょうね」

石毛「元々そうだったものが、ここにきて爆発してるっていうか。やっぱ、いろんな人が絡むといろんな想いが入るけど、今回は割と4人の想いだけで成り立ってる感じが一番強いんじゃないですかね」

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text by有泉智子

『MUSICA8月号 Vol.100』

Posted on 2015.07.16 by MUSICA編集部

SHISHAMO、
まだ誰もSHISHAMOの本当の姿は知らない
と語る真意を“熱帯夜”から紐解く

私以外の人は誰もSHISHAMOの音楽をわかってないと思うんですよ。
もっとSHISHAMOでできる音楽が私の中でたくさん順番待ちしてるんです。
今までの曲から「SHISHAMOらしいね」
って決められるのは嫌だし、違うなって思う

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.52より掲載

 

■初めてのファッションポートレートを撮らせてもらいましたけど、どうだった? 今までと少し雰囲気が違ったと思うけど。

「恥ずかしかったです……私なんかがこんなふうに撮ってもらって……カメラマンさんが凄い人だったから、いつもは美人な人をいっぱい撮ってるんだろうなぁって……(笑)」

■いや、そういう話をしたかったんじゃない(笑)。今回の撮影は我々にとっての“熱帯夜”のイメージだったんです。そこはどう? 的は外れてた?

「いや、特に。……あ、『特に』って言い方はよくないですね(笑)。全然外れてないです。とってもよかったです。素晴らしいイメージです」

■要はムードのある曲だから、ムードのある写真を撮りたいなと思って。だってさ、1年前は“君と夏フェス”って言ってたんだよ?

「ふふふふふふふ、ほんとそうですね。そこが比べるところとしては一番大きいですよね」

■そうだね、音楽的にも夏フェスの曲から、湿った夜に独り思う歌に変わって、必然的にトラックもリズムも大きく変化した、というか成熟した。今回もコンセプトはサマーソングだけど、これはサマーソングの必需品的な抑揚がなくて、何しろ上がらない曲っていう。

「そうです! 上がらないんです」

■そういう曲をシングルにしたわけですけど、その辺思っていること教えてください。

「……特にないんですよね。確かに曲を聴くと変わったって感じる人が多いと思うんですけど、そこは私はあんまり重要視してなくて。……やっぱりシングルを出すのは曲が一番だし、今の私が作ったからちょっと雰囲気が違っていたってだけで、やることは変わってなくて。でもちょっと考えていたのは、去年“君と夏フェス”が出ていろんな人が聴いてくれてて、SHISHAMOの夏の歌は“君と夏フェス”ってなっているのが嫌っていう程じゃないんですけど、別にそうじゃないんだけどなぁ……って(苦笑)。別に『SHISHAMOと言えばこの曲!』って代名詞にできる曲は、まだ持ってないと思ってるんで」

■1曲で自分達の音楽性やバンドのことが語られるのが嫌だってこと?

「そうですね。私以外の人は誰も SHISHAMOの音楽をわかってないと思うんですよ。私だってSHISHAMOがどこまでできるのかわからないところもあるし。……なんかそういうのって周りが勝手に決めちゃうところってあるじゃないですか? それ以上にもっとSHISHAMOでできる音楽っていうのが私の中でたくさん順番待ちしているんです。実際にはその全部をバーンって出せるわけじゃないから、今までの曲で判断されるのはしょうがないんですけど、そこから『SHISHAMOらしいね』って決められるのは嫌だし、なんか違うなぁってずっと思ってて。“君と夏フェス”とかは特にそう思います」

■今話してくれたことが、“熱帯夜”を作る上ではどう影響していたの?

「うーん……作る時にはそんなに考えてないです。嫌だなとかそういう気持ちは全然なかったです。別にシングルにしようと思って作ったわけじゃなかったですし。……いつもシングルを作る時って、シングルを作ろうと思って作れないんですよ。大体はそういうのは関係なく作っていた曲がシングルになっていることが多くて」

■“君と夏フェス”も? あれは狙いに行ったでしょ?

「あの時は何曲か作っていて、最後の最後にできた曲なんです。今回は特に何にも考えないで、どんな曲にしようって悩んではいたんですけど……去年よりさらにパーンとした曲を作ろうっていうのも考えていたし、逆に裏切るのもいいよなって思って。でも作ったきっかけは全然そういうのとは関係なかったです。なんか夜にベランダに出たらぬるい感じの気温になってて『あぁ、熱帯夜が来るんだな』って思って。私、熱帯夜が好きなんですけど、その時のベランダの空気感をそのまま曲にしたいなって思ってすぐに作った曲だったんです。だから全然シングル作ろう!って考えて作った曲じゃなかったんですけど、いろんな人に聴いてもらったら『これいいね』ってなったんで、じゃあ(シングルでも)いいのかなって(笑)」

■去年は「夏フェス」って言葉も使って勝ちにいった曲を出したし、あの曲がもたらしてくれたものは大きかったっていう現実もあるよね。そこから1年経ってそことは違う、とてもアンニュイで、お洒落なコード進行とカッティングに、後半にはボサノヴァのリズムアレンジまであって。こういう引き出しもあるってことを提示した楽曲だよね。

「そうですね。やっぱり“君と夏フェス”があったのは大きいと思うし、あの曲があったから “熱帯夜”は引き立つのかなって思ってます。あの曲でSHISHAMOを知ってくれた人がたくさんいたからこそ、今回はこういう曲が出せるのなのかなって。……安心しているわけじゃないんですけど、ちょっとだけホッとしながらこのシングルが出せるっていうのもあります」

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text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.100』

Posted on 2015.07.16 by MUSICA編集部

東京スカパラダイスオーケストラ
feat. 尾崎世界観(クリープハイプ)、
『爆音ラヴソング/めくったオレンジ』
レコーディング現場に独占密着!

東京スカパラダイスオーケストラ、
尾崎世界観と新しいページをめくる!
その第一声、そして隠密レコーディングにグイグイと密着した独占企画!!

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.58より掲載

 

 これは、7月29日にドロップされる、東京スカパラダイスオーケストラの新しい両A面シングル『爆音ラヴソング/めくったオレンジ』の制作ドキュメンタリーとインタヴューである。

 この号が発売される日に、今回のスカパラのシングルがクリープハイプの尾崎世界観によって2曲とも歌われていることが告知されるのだが、すでに2曲ともラジオなどでのオンエアは始まっていて、一聴した人はすぐに「もう、言わずもがな、誰が歌ってるか明瞭じゃないですか!」という声が響き続けている。そうです、尾崎世界観、その人です。

 この話が最初に届いたのは通常の仕事の流れではなく、メンバーからのお話だった。いや、というか振り返ればそれは今年の1月29日まで遡る。

 この日、Zepp Tokyoで開催されたクリープハイプのライヴで、僕はばったりギターの加藤と出逢った。彼やドラマーの欣ちゃんこと茂木とはライヴ会場でよく逢うのだが、この日は目が合うと加藤のほうから寄ってきてくれて、「本当に凄いバンドだよねえ」と目を輝かせながら話して来たのだ。僕も呼応して談笑し、話題が変わると、その度に「でもさあ、本当に大好きなんだよね」、「今、一番愛してるバンドなんだよ」と、すぐにクリープハイプ愛に話を戻し、まるでその様は初恋を友人にミスドで語るようなものだったのだ。加藤が言うには、メキシコ&南米ツアーの時にはいつもクリープハイプを聴いていて、他のメンバーにも聴かせて懇切丁寧にバンドのことを語ったらしい。

 ならばスカパラだからして、「ご一緒して、歌ってもらえばいいじゃない。とても新鮮なセッションになると思うし、尾崎の世界観はどっちかと言えば、スカパラぐらいのキャリアの人と波長が合うと思うし」と言うと、「そりゃやりたいよ、尾崎くんと。夢のようだよ。だからまずはマネージャーをクリープのマネージャーに紹介しようと思ってて」と、実務的な部分に踏み込もうとしていると話してくれたのだった。ちなみにその日、別れてから加藤から5通のラインが届いたが、恋の熱にうなされたものばかりで、これが実現したら花束ぐらいでは済まされないなと思った夜だった。

 その後、この愛が現実のものとなり、今度は尾崎から「こんなチャンスもないし、なかなか自分もゲストとか踏み切れないし、何しろ加藤さんが凄い愛してくれるんですよ、丁寧に。だから信用して飛び込むことにしました」という話を聞いた。

 その後、尾崎と加藤と欣ちゃんと、バリトンサックスの谷中と、さらに芸人にして10-FEETのNAOKIにそっくりなサバンナの高橋さんと一緒に飲み明かし、このコラボレーションの決起集会もし、そこで、歌詞を谷中と尾崎のふたりで詰め始めていることを聞いた。谷中が今まで他のシンガーと歌詞を共作したことがなかったわけではない。10-FEETの時はTAKUMAと、アジアン・カンフー・ジェネレーションとの時は後藤と、共に言葉の積み木を重ね合ったわけだが、本来、谷中の詞も尾崎の詞も、個人的な美学がこってり練り込まれている、パーソナリティの濃度が言葉の一つひとつの中で溢れているもので、それが共作として合わさること自体が楽しみだなあと思った次第である。

 というわけで、いざレコーディングの日程も決まり、あとはきっちりと音出して歌って、そして楽しむように闘う(by 谷中)だけ。その時が遂に来た。

 

6月10日水曜、横浜 LANDMARK STUDIO

 

 横浜みなとみらいにあるスタジオでこの日のレコーディングは行われた。この日と次の日の2日間で、ダブルAサイドの2曲共にオケ、つまりスカパラ9人の鳴らす音を録音し、尾崎の仮歌を録って、歌詞を完璧に詰める予定である。メンバーは13時集合。駐車場でトロンボーンの北原さんとバッタリ。車から北原さんがデッカいスイカを取り出し、重そうに持ちながらスタジオに向かう。これだけでもう、レコーディングが楽しくなるのがわかるでしょ?

 13時からスカパラ9名はそれぞれのサウンドチェックをしながら、だんだんテンションを高め合っている。9名みんなが誰かに合わせたりするわけではなく、それぞれ勝手に音を出したフレーズを弾いている。何で合わせないの?と訊ねると、谷中が「レコーディングはなるべく最初の一発をオッケーテイクにしたいんですよ。ミスがなければ最初の一発が一番いいに決まってるんだから」と話す。「その最初の一発がいいのは初めて気合いが入った者同士の音が合わさるからでしょ。その時まで簡単に音は合わせないんですよ」と話す。

 14時、尾崎世界観が来場。なんか微妙な表情で入ってくる。

「下の立体駐車場で、マネージャーが車をぶつけちゃって。縁起悪くてすいません!」と苦笑いをしている。体は無傷だったので、ここはスカパラメンバーみんな大爆笑。「嬉しいよね、こうやってちゃんとネタを持ってきてくれるからね」とみんなで盛り上がる。その盛り上がる野郎っぷりを前に、若干尾崎が引き気味になり、これもまたスカパラとクリープハイプの表向きな表情の見事なコントラストがのっけから浮き彫りになる。

 14時43分、モニターチェックがすべて問題なしということで、レコーディング開始!という号令が、エンジニアの渡辺省二郎さんから発される。その声に呼応するスカパラの面子は、それぞれ「そっか、早く終わらせて中華街行こう」、「いや、野毛の店がいいらしい」だの、飲みのことしか考えてないワークロッカーらしい声で返す。ひたすらみんな、ガハハガハハガハハと賑わいが途絶えない。その様子をちょっとだけ輪の外で尾崎が眺めている。

 そんな尾崎に、今回の企画の発起人でもある加藤が、「遂にきたな、尾崎くん。この日が」と、まるで『スクール☆ウォーズ』の山下真司ばりに胸を張って語りかけ、尾崎が照れながら「嬉しいです」と答える。尾崎世界観は、こういう熱さを自分は持たないが、人から浴びせかけられると、思いの外喜ぶアーティストである。彼は常に「信用したいしされたい」という壁と相対している人なので、その信用をスカパラのようにストレートに浴びせかけると、本当に安らぐのだろう。一歩二歩三歩引きながらも、とても調子がよさそうだ。

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text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.100』

Posted on 2015.07.15 by MUSICA編集部

サカナクション、いよいよ本格再始動!
混沌を抜け次なる航海へと乗り出した山口一郎、
その新しき世界と未来を一気に独白

シーンに影響を与える存在としてもう一回、俺は日本一になりたい。
リスナーにもメディアにも
やっぱりこのバンドが大事だって思われるような存在に。
今のシーンでそういうチャレンジできる人って、少ないと思うんですよ

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.12より掲載

 

Chapter1「NF(ナイトフィッシング)」という、実はサカナクション史上最大にして新たな構想と、その第一歩

 

「今日はMUSICAの100号記念だし、僕らのことだけじゃなくて、いろいろ話せたらいいなと思って、楽しみに来たんですよ」

■ありがとう。100号って、それなりに考えるわけですよ。別にてめえの雑誌の100号を祝ってもらったってしょうがないし、そういうもんでもないし。でも考えるわけ。で、苦楽を共にしたバンド、アーティストが、この雑誌には何組かいて。いろいろな苦楽は共にしてきたんだけど、苦しみをここまで共にしてきたバンドはひとつしかいないなと思って。

「はははははははははは」

■それがサカナクションで(笑)。100号だから今までを振り返るっていうよりは、これから100号続けるために音楽シーンがどう続くのか、よりよく続けるためにはどうしたらいいか?ってことのほうがよっぽど大きなテーマだなと思って。そこに向けての話をしたいなと思うんだけど。

「100号って凄いですね。最近凄い思うのは、たとえば今回僕らリリースするじゃないですか。NFというイベントもそうだけど、こういうことをやるっていうプレスリリースを出すじゃないですか。内容を考えていろいろニュース出しして、いろんなウェブ媒体が情報をバーッと流してくれますよね。でも、最近、それが拡散してないんですよ」

■え?

「そのニュースしてくれた媒体をリツイートする人はいるけど、内容は拡散してないんですよ。みんなあんまり読まないんですよね」

■それは見出しだけで終わってるってこと?

「そう」

■つまりは「サカナクションが新譜をリリースして、そのまま復活していくんだな、わかった。じゃあ次は何?」みたいな。

「そう、リンクを押さないんですよ。だから中に書いてあることの質問とかがTwitter上に来たりするんですよね。で、一番拡散する方法って個人のメディアなんですよ。僕が持ってるTwitterやインスタとか、Facebookとかで内容を説明するほうがみんな見るんですよ。かつ、僕がそのリンクを貼るほうがその内容を見るんですよ。ウェブ媒体の強みって拡散力だったのに、拡散しないってなった時、次に問われるのって内容の重要性じゃないですか。紙媒体って、それこそ鹿野さんがMUSICAやり始めた頃ってそんなにまだ僕は音楽シーンのことを知らなかったけど、鹿野さんが100号やっていく中で結局メディアってウェブになっていったし、紙媒体っていうのはCDとかレコードとかと一緒で時代によって変化していくのかな?と思ったけど、紙媒体ってずっと残るんだろうなって思いました。内容を知りたい人がより濃く知るっていうことって、やっぱり物じゃないと駄目なんだなって。それを手に入れようとする力があるものじゃないと入ってこないんだろうなと思って。WEBは風で、雑誌や鹿野さんのような強い意見は森なんだなっていうか」

■今の話を聞いて思うのは、世の中の人がメディアと言われてるものから情報をどういうふうに求めるのかって、「個人」だと思う。ウェブがどうで紙がどうでより、個人。個人の情報というものを、彼らが必要としてる。何故ならば、それが自分という個人とサイズ感が合うし、共有しやすいからなんじゃないかと思うんだけど。

「ああ、それはそうですね。そうだと思います。やっぱり信頼関係ですよね。あと1個思ったのが、音楽の媒体って、音楽に対するメディアの中でしか拡散しない。たとえばファッションプレスとか、Fassionsnap.comとか、ファッション系のウェブ媒体のアカウントとかが音楽に対してまったく無関心なんですよ」

■それはなんで?

「音楽っていうものが孤立してるんだと思います。そこに何よりも限界を感じてて。前に鹿野さんとVIVA LA ROCKでクラブイベントやりたいって言ってて。ロックって凄いんですっていう体験からもっと違った体験を増やしていかないと、これからのシーンが閉鎖的になってしまうし、フェスを体験した後に、次に聴く音楽がなくなって、音楽を聴かなくなるっていう現象が今起き始めてて。それが凄く危ないんじゃないかって、鹿野さんとそういう話をして。ビバラの後に深夜帯からオールナイトでアフターパーティとしてやらせて欲しいって話して、結果的にいろんな問題があって実現しなかったんですけど。その時からずっと感じてたのは、音楽っていうものを好きな人達って、音楽が好きなんですよ。音楽っていろんなものに関わってていろんな要素があるのに、それに対するリテラシーとか、そういうところも含めてあんまりみんな関心持ってないんですよね。つまり他のカルチャーとの結びつきみたいなものが音楽というものの醍醐味だったはずが、それがなくなったせいで、音楽が好きな人にしか音楽の情報が届かなくなっちゃってるんですよ。音楽から何か他のものが得られなくなっちゃってるんですよね。このままだと音楽っていう文化が縮小していくか、このままアンダーグラウンドだったり、サブカルチャーよりももっとサブな、アナーキーなものとしてしか社会の中での位置を見つけられなくなるような気がして、なんか危ないなと思ったんですけど」

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text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.100』

Posted on 2015.07.15 by MUSICA編集部

KANA-BOON、『TIME』以降の
確かな自信と新たな挑戦の始まり

人のせいにしたところで変わらない
ってことを知ってるからやと思います。
なんぼ悔しかろうがなんだろうが、
そもそも人は関係ない、自分の問題やと思ってるんで

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.32より掲載

 

■取材は武道館の時も『なんでもねだり』の時もしてるけど、こうやって鮪くんにサシでインタヴューするのは2月号の表紙巻頭の時、つまりライフストーリーを語ってもらって以来ですね。

「そっか、そうですね。よろしくお願いします」

■今回の“ダイバー”は、『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』の映画主題歌として書き下ろした楽曲ですけど。アニメのオープニングテーマに続いて映画ですよ。

「もう最高ですね。自分が好きな作品なんで、ほんまに嬉しいです」

■楽曲はどんな想いで書きましたか?

「映画に向けて作った曲なんで、ちゃんと作品に相応しいものを作りたいと思って作りましたね。そういう部分でも自分に課した課題はちゃんとクリアできたなと思ってます。いくつかタイアップを経験して上達したというか、今までよりも自然にやれるようになったなと思いますし。だから、曲としてはもちろん、シングルとしても凄く自信があります」

■KANA-BOONは本当に、ここぞという時にちゃんといい曲を書いてきますよね。今言ってた自分に課してたことってどういうものなんですか?

「まず、映画のエンディングに流れた時に『この曲すげぇ!』って思えるものっていうのが第1条件で。主題歌って、下手すると映画で芽生えた感情が曲によって台無しになってしまうこともあるわけじゃないですか」

■そうですね。エンドロール次第で余韻が全然違うよね。

「だからそこはちゃんと映画の感動を増強させられる曲を作らなあかんと思ったし、そういうものを作りたいと思って。で、それと同時に、映画を抜きにしてもKANA-BOONの新曲としてちゃんとベストなものになってるかというか、KANA-BOONの『今』にちゃんとフィットしているかっていうのはいろいろ考えて………そういう目線で作りました」

■言ってみれば、この前のシングルの“なんでもねだり”はアネッサというCMタイアップだからこそのあの楽曲だったし、『TIME』を作り上げてひとつ肩の荷が下りたKANA-BOONがより自由かつ無邪気に音楽で遊んだ曲だったわけで。だから『TIME』以降のKANA-BOONの新章という意味で言うと、実は今回の『ダイバー』というシングルが始まりの第一弾であるっていう、そういう重要なタイミングの曲ですよね。

「はい、気を引き締め直した感は強くあります。『TIME』で1回肩の荷が下りたところから、また新たに何かを背負い始めたなっていうリスタート的な感覚は自分でもありますね」

■同じ『NARUTO』のタイアップというところで“シルエット”と比較すると、“シルエット”が少年期から大人への転換点であり、そこから踏み出していく瞬間の気持ちを歌っていたのに対し、今回の“ダイバー”はその先の物語――いざ踏み出して走り始めたからこそ感じる苦悩や厳しさが歌われていて。疾走感のある楽曲なんだけど、より地に足がついたメッセージソングになったなと思ったんだけど。

「………『前に、前に』っていう感覚は強くありましたけど、でも“シルエット”の時よりも振り返る部分が具体的っていうか……この曲は、悔しさとかそういう部分を凄く感じる曲にしてるんですけど」

■そうですね。今までよりもそこが強く具体的に出てるよね。

「はい。今までは曲の中で悔しいっていう気持ちとか、寂しさみたいなものを歌うことはあんまりなかったんですよね。でも、今回の映画の主人公は幼い子供で、そういうものを抱いている子なんで、そこに自分が上手くシンクロできたというか。まぁ僕が振り返ったのはそんなに子供の頃じゃなくて、部活っていうものから離れて1バンドとしてやり始めた時のことなんですけど。あの時感じてたバンドが認めてもらわれへん悔しさとか、見つけてもらわれへん寂しさみたいなことを歌ってて。そういう自分の体験と映画の主人公を上手く重ね合わせられたなと思うんですけど」

■これ、2番の歌詞が凄くいいよね。<強がって強がって、こわいもの知らずだって/また笑ってごまかして、本音は言えないまま(中略)ダメだって立ち止まってしまう>っていう歌詞とか凄く胸に来る。

「あ、嬉しいです。僕もこの2番の歌詞は、今までで一番表に出してなかった部分を書けたかなと思います」

■本当にそうだよね。心の底にある想いをこういう形で書けたのは、やっぱり『TIME』っていうアルバムを作れたこと、特に“愛にまみれて”や“パレード”で自分自身の過去の想いを初めてちゃんと綴れたことが大きいんじゃないかと思ったんだけど。『NARUTO』の主題歌ではあるけど,鮪くん自身の歌っていうものが強く出てきてる印象があります。

「うん、そうですね。ただ、あの時は今ある幸せとか、今抱いている期待が先に先に出てきてたんですけど、そこで味わえるものはもう一旦お腹の中に入ったっていうか。だから、今はまた『TIME』の頃のモードとは違ってきてるんですけど」

■表紙の取材の時、鮪くんは初めて自分の生い立ちを話すということに踏み切ってくれたわけですけど。ああやってそれまでほぼ誰にも語ることのなかった自分の半生を話し、それを公表するということは、おそらく自分にとって凄く勇気が要ることだったと思うし、怖さもあったと思うんです。

「そうですね」

■それこそTwitterでも鮪くんのところに直接感想を送っている子もたくさんいたけど、きっとあのインタヴューに対していろんなリアクションをもらったと思うんです。そのリアクションも含めて、ああいう形で自分の半生を語ったことで、何か感じたことはあった?

「リアクションは、同じような環境の子達からのメッセージが多かったですね。Twitterだけじゃなく、手紙でも『聞いてください、実は私も……』っていう内容のものをもらうことが増えて。そういう人達に何かプラスになるものが与えられたっていうか、その人達の中に何かを芽生えさせてあげられたかなと思って、それは凄くよかったなと思うし……あと、何より自分自身が凄くスッキリしました。前に『TIME』でひとつ肩の荷が下りたって言ったのはバンドとしてのことですけど、あのインタヴューをやったことで、自分自身の肩の荷が下りたような気がしましたね」

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text by有泉智子

『MUSICA8月号 Vol.100』

Posted on 2015.07.15 by MUSICA編集部

キュウソネコカミ、
己の武器をビルドアップした痛快な初シングル!

もしかしたらもう二度とシングル出さないかもしれないし、
キュウソネコカミがシングル出したっていうのが
燦然と輝くような曲にしないといかんなって。
実際、これでダメだったら、
俺らはもうシングル出しませんって言うつもりなんで

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.46より掲載

 

■いやー、めちゃくちゃ最高のシングルになったね!

全員「お~~、よかったぁ!」

■特に“MEGA SHAKE IT !”がほんっとに痛快。キュウソのストロングポイントが炸裂した、自分達の武器を更新する会心の出来だと思います。

ヨコタシンノスケ(Key&Vo)「それ、ほんとに嬉しいな」

オカザワカズマ(G)「報われましたね」

ヤマサキセイヤ(Vo&G)「めっちゃ大変やったんですよ、この曲」

ヨコタ「最初はCMになってるサビの部分しかなかったんですよ。あれ以外の想定はまったくの0っていう状態から始まってて。で、そこから曲にしようってなった時に、めちゃくちゃ苦労したんですよね」

■その時は、シングルになるっていうことは決まってたの?

ヤマサキ「決まってなかったっすね」

カワクボタクロウ(B)「1回全部作り切るところまでは決まってなかったよね。で、その作り切ったところからも凄く変わったっていう(笑)」

ヨコタ「これはダメだと思ってサビ以外ほぼリセットしたんですよね」

ヤマサキ「その時、めっちゃ苦しかったんですよ。もうスタジオからの帰り道、ご飯食えなくなるぐらい」

■曲調も今の完成形とは全然違ったの?

ヨコタ「イメージが一緒なのは、ノレるビートの部分の後にノリにくいビートの部分があって、またノリやすいビートに戻るっていう流れくらい。それも実際シングルになったのと比べるとだいぶ違うことをやってましたね。あと、全体的に暗かったよね」

ヤマサキ「暗かったな、歌詞のテーマも。当時の時勢を歌い過ぎてた。バンド界に休止が多いとか――」

ヨコタ「あと踊って楽しむだけでいいのか?とかね。ちょっと問題提起もしつつ、『その渦中にいる俺達は今』みたいなノリの歌詞を書いてて。言ってることは凄いセイヤっぽいというかキュウソっぽいし、別に背伸びしてるわけでもなく、すげぇいい歌詞だったんですけど」

ヤマサキ「ある日突然目が覚めるっていう歌やったんですよ。踊ってたんだけど急に『あれ? なんで私ここにいるんやろ?』みたいになって、次から1回もライヴ行かなくなるっていう、そういう曲やったんですけど」

ソゴウタイスケ(Dr)「それはそれで全然悪くないんだけど、シングルとしてはちょっとって感じだったよな」

ヨコタ「初めて聴く人にそういう印象ばかり持たれると、ちょっともったいないなって。そもそも僕らはアンチシングル派だったじゃないですか」

■はっきり「シングルは出したくない」って言ってたもんね。だから短いスパンでもミニアルバム以上の曲数で出してきたわけで。

ヨコタ「そう。だから今回も最初は断る感じだったんですけど。でもスタッフから『1回ぐらいやってみようよ』って言われて」

■そもそもなんでシングルは嫌だったの?

ヨコタ「今はみんな、たくさん曲が入ってるやつかダウンロードでしか買わないんじゃないかっていうイメージがあって。そういう中で果たしてシングルを出す意味ってあるのか……みたいな」

カワクボ「YouTubeがあるからほとんど意味がないというか。正直今も、カップリング聴くために買うの?みたいな感じはあるんですよ」

(中略)

■言ってみれば“MEGA SHAKE IT !”は、インディーズの頃のキュウソの得意技をビルドアップさせた感じだからね。でも、その自分達のど真ん中をめちゃくちゃしっかりと更新していて、その姿勢が潔くていいし、何よりとにかく楽曲としての突破力とワクワクさせられる痛快感がもの凄くあるから。たとえば『ハッピーポンコツランド』は“GALAXY”を筆頭によりポップソングライクなものを作るっていう挑戦をしたり、このバンドは作品を出す度にいろんなことを試してると思うんだけど、今回の“MEGA SHAKE IT !”はそういうストーリー抜きに一聴して「これはキタッ!」ってぶち上がる。正直これが聴きたかったんだよ!と思う曲。

ヤマサキ「まぁ『ハッピーポンコツランド』は若干暗いっていう評価もあったしな。メロディというか曲調が哀愁漂ってたし」

ヨコタ「僕らってその時の自分らの雰囲気が素直に出るんですよね。それに抵抗しなくていいぐらい短いスパンで出してるんで。だから『ハッピーポンコツランド』はその時聴いてる音楽とか、影響を受けたものがそのまま出てて。『チェンジ ザ ワールド』もそうだったし。でも今回の“MEGA SHAKE IT !”はそうじゃなく、二転三転しながらいろいろ試行錯誤して……今のモードだけじゃなくて、キュウソの集大成じゃないですけど、今までのものを全部詰め込むみたいなことをやりたかったんですよ」

ヤマサキ「やっぱ作ってる時は前に作ったヤツと攻め方似てるなとか思う部分もあるんですけど……でも、もうこれはアイデンティティにしていこう、みたいな感じにならへん?」

ヨコタ「なるな。俺らは曲が似るっていうことに対してもアンチなところがあるんで、もう偶然でそういう曲を作ることは絶対できないんですよ。だから言い方変えると、自分達のいいところを自分達でわかってないと、こういう集大成の曲って作れないわけで。だから今、これを敢えて作ることができたっていうのは、なかなか成長したんじゃないかなと思います」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA8月号 Vol.100』