Posted on 2015.07.17 by MUSICA編集部

BLUE ENCOUNT、ファーストフルアルバム『≒』で
バンドが掴み獲ったひとつの答え

正直、今もライヴするのは怖いんですけどね。
だけど結局、自分が好き放題できるのはやっぱりライヴだし、
どんなリスクを背負ってもライヴっていう
生の状態で正々堂々勝負したいっていうのが強くあるんです

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.90より掲載

 

■ファーストフルアルバムです。インディーズ時代にもアルバムは出してますけど、あの作品はインディーズ・ベスト的な意味合いだったから――。

「そうですね、新曲も3曲だけで完全にベスト盤な感じだったので、フルアルバムっていうものに取り組んだのは今回が初めてだったんですけど…………まあ、フルアルバムっていうのはこんなにも作るのが大変かっていうくらい大変でしたね(苦笑)」

■あ、やっぱり違いました?

「全っ然違いましたね。年末くらいに作り始めたんですけど、当初の予定では4月末にはアルバムの全行程を終えて、5月はワンマンのリハをじっくりやろうと思ってたんですよ。その時点で曲もいっぱいあったし――既発の4曲に加えて12月の段階で候補曲も11曲くらい上がってたので、これは余裕だろうと踏んでたんですけど。で、それを1月にガッツリとプリプロしまして、2月前半のレコーディングで3曲を録り終えたところで――そこで録ったのが“JUMP”と“TAKEN”と“HEEEY!”だったんですけど、その3曲と既存4曲とを合わせて聴いてみた時に『面白くねぇな』って思っちゃったんです。『というか、これヤバくないか?』って思ってしまって……それである日、思わずメンバーとマネージャーさんに『こんなの面白くない!』って言っちゃったんですよ。そこからはもう、何かに取り憑かれたんじゃねーかっていうくらい、アルバムはもちろん現状のことまでとにかく愚痴を言い始めて。ほんと、こいつ酒飲んでんのか?ってくらいのクダの巻き方になってしまいまして(笑)。……でも、なんで愚痴になっちゃったのかと言うと、要は自分でも何が面白くないのか、何が嫌なのかがちゃんとわかってなかったんですよね。で、それがわからないままに自分の中の苛立とか焦りを棘として周りに放出してしまって」

■その苛立とか焦りっていうのは、何に対するものだったんですか。

「やっぱり、僕の頭の中ではメジャーデビューしてこれくらいの時期にはもっといいところに行ってたはずだっていうのがあったんだと思うんです。動員もそうですし、CDのセールスもそうですし……とにかく自分が思い描いていた『いい答え』に追いつけてないことに凄く焦ってて。で、散々メンバーやマネージャーさんにクダを巻いた帰り道に、ふと『俺、何してんだろうな』って思っちゃって。俺が今ここにいるのは俺だけの力じゃないし、メンバーだけの力でもないし、スタッフの方を始めいろんな人が携わってくれているからなわけで。それなのに自分勝手にこうなって当然だと思って、そこに届かないことに焦って、勝手に棘をまき散らしてた。それでまたガッツリ自分を嫌いになりまして。そこから『この気持ちをいい曲作って打破してぇな』と思って、また新しく曲を作り始めたんですけど」

■でも、その時点で“JUMP”や“TAKEN”や“HEEEY!”は録ってたということは、「面白くない」と感じたのはアルバムとしてのバラエティ感じゃないよね。“JUMP”はレゲエを取り込んだ曲だし、“HEEEY!”はアイリッシュパンクだし、“TAKEN”はマイナー調のツービートだしと、音楽的には新鮮かつ面白いものが揃ってるわけで。

「確かに“HEEEY!”や“JUMP”や“TAKEN”っていうのは音楽的にレンジが広くて、ジャンルの遊び方ができたっていうのはあったんですけど、ただ、このままだとそこだけを見せているアルバムになってしまう気がしちゃったんですよ。もちろん振り幅を見せることは凄く重要だったんですけど、そこに逃げてたっていうか、『俺ら、こんだけ引き出しあるぜ。凄いだろ』っていうところに逃げてたんじゃないかって思って。だからアルバムの新曲が全部、シングル曲の引き立て役になっちゃう感じがしたというか」

■要するに、ちゃんと自分達の真っ芯を語る曲というか、ガツンと背骨になる曲が必要だと思ったってことだよね。

「まさにそうなんですよね。やっぱり歌詞の部分でも次のステップに行かなくちゃいけないとも思ってたし、そういうのが欠けていたなって。メッセージはもちろんBLUE ENCOUNTの強みであり武器なんですけど、そこでもっと自分達にしかできないものがあるんじゃないかなっていうことも凄く考えてたし………で、まぁ散々毒をまき散らした後、その毒がスッと抜けて一発目にアウトプットできたのが“LIVER”っていう曲だったんですけど。これ、曲自体はとにかくエッジを利かせて、間の英語のところはブルエン史上最速のBPMにして、このバンドの一筋縄じゃいかない感じを出していく形で作ったんですけど、詞に関しては、毒を全部吐き出した後の自分の素直な答えを歌えてて。それがつまり、ライヴのことだったんですよね」

■ちょっと唐突な質問をしますけど、今、田邊くんがBLUE ENCOUNTというバンドをやっていて最も喜びを感じるのはいつなんですか?

「それがやっぱりライヴなんですよ。ライヴのステージって後悔も凄くしますし、超えなきゃいけない自分とか課題も見えてしまって凄く辛くなったりもするんですけど、だけど結局、自分が好き放題できるのはやっぱりライヴだし、どんなリスクを背負ってもライヴっていう生の状態で正々堂々勝負したいっていうのが強くあって。……正直、今もライヴするのは怖いんですけどね。でも、Twitterで『なんでだろう、ブルエンの時って観てるこっちも緊張する』って書いてくれてた子がいて。それを見た時に『ああ、俺らが緊張してるのはお客さんも知ってるのね』と思ってちょっと嬉しかったんですよ(笑)。そういう緊張が見えてしまうことをよしとしないバンドさんもいるだろうけど、俺らの場合はそれをちゃんと見せられるバンドでよかったというか、そういう俺らをわかってくれるお客さんがいるっていうことはすげぇありがたいし、ホッとすることでもあって………だから俺らが等身大でいられる理由がライヴであり、お客さんだと思います。そこに対して少しでも恩返ししたいなっていう素直な気持ちから、“LIVER”って曲も生まれたんだと思うんですけど」

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text by有泉智子

『MUSICA8月号 Vol.100』