Posted on 2015.05.25 by MUSICA編集部

MUSICA presents
降谷建志スペシャルトークセッション&爆音先行試聴会
at Red Bull Studio Hall

たくさんの方にご応募いただいた「MUSICA presents 降谷建志スペシャルトークセッション&爆音先行試聴会」、2015年5月23日(土)に青山にある「Red Bull Studio Hall」にて開催し、おかげさまで大盛況の中、とても楽しく貴重なひと時を過ごすことができました。

 この企画は、Dragon AshのKjこと降谷建志がソロプロジェクトをスタートするにあたり、その第一声を表紙巻頭で伝えたMUSICA2015年4月号の購入者特典として応募を募り、抽選で100名様をご招待して開催したスペシャルイベント(MUSICA4月号はこちらから)。

降谷建志としては今回が初めてであるのはもちろん、Dragon Ashとしても普段こういった形で公開トークセッションや試聴会をすることがほとんどない中で、とても貴重な機会を一緒に作ることができました。

 今回のイベントは、6月17日にリリースされるファーストアルバム『Everything Becomes The Music』収録楽曲から、MUSICA4月号でいち早くその詳細を語った5曲プラス1曲という全6曲の試聴と、降谷本人を迎えてのトークライヴという形で構成。みなさんに爆音試聴していただいた楽曲のうち、配信シングル“Swallow Dive”とシングル“Stairway”以外の4曲は未だ世の中に発表されていない、まさにこの場が初公開となる楽曲でした! 

イベント開始と同時に、何はともあれまずは3曲を試聴。“Swallow Dive”に始まり、変則的に組み上げつつも疾走感のあるリズムに乗って伸びやかな歌が舞い踊る“P Board”、壮大なサウンドスケープの上で柔らかで美しい歌が響く“Wish List”と、MUSICAでも語ってもらった楽曲群を特設スピーカーから爆音再生。全国各地から集まってくれた参加者の皆さんは誰もが初めて耳にするその音に真剣な面持ちで聴き入っていて、高い集中力の中にもその興奮と喜びが伝わってきました。

 

その後、建志を呼び込んでトークセッションに突入すると、場内は一気に昂揚!(トークのお相手は編集長の有泉が務めさせていただきました)。「ひとりの人間という最小単位から生まれていく宇宙を提示したかった」等、ソロプロジェクトの意図に関する話題はもちろん、プライヴェートスタジオ「チェンバース」の写真やジャケット&アーティスト写真撮影時のオフショットなどのレアな写真をモニターに公開しつつ、すべての楽器の演奏やアートワークまで自ら手掛ける、その制作行程や秘話を交えつつ、音楽家・表現者としての降谷建志のこだわりや、彼の中に一貫して流れる思想をたっぷりと語ってもらいました。チェンバースの内部を写した写真をモニターに出した際は、建志から「え、これ何!? セクハラ!?」なんて言われたりもしましたが(笑)、たとえば「ドラムを録る時は、ここでRECボタンを押して、そのままドラムのところに走って行って、急いで叩き始めるんだよ!」といった具体的な話も語られ、本当に建志が日々ひとりきりで紡ぎ出した音が今回のソロの音楽になっているのだということが実感と共に伝わったと思います。笑顔も溢れつつ楽しそうに、かつ真摯に語ってくれる建志の姿に、最初はやや緊張気味だった雰囲気も次第にリラックスしたものになり、とても有意義な時間を過ごすことができました。

 

トークセッション終盤には会場内のお客さんから直接質問を募るコーナーも。「せっかくだから何でも答えるよ!」と言いながら参加者の問いに答えていった建志は、ソロプロジェクトのロゴに描いている黄金長方形の意味について熱く語ったり、Dragon Ashにおける作曲とソロでの作曲の違いを語ったり、あるいはラップやヒップホップはもうやらないのか?といった鋭い質問に答えたりと、建志自身も貴重なファンとのコミュニケーションを楽しんでいる様子が感じられました。

その後、本人もその場で一緒に再び3曲を試聴。こちらも初公開となる“One Voice”、“Angel Falls”、そして先行シングルとして5月20日にリリースされたばかりの“Stairway”の3曲という、最初に聴いた3曲とはまた違ったタイプの楽曲群を爆音で再生。建志も「こうやって一番近いファンに最初に聴いてもらうのはすげぇ誠実な形だと思うし、いい機会だね。恥ずかしいけど(笑)」と言いながら、自ら参加者に「ねぇ、英語詞と日本語詞だと、みんなはどっちのほうがいいの?」と問いかけるなど、そのダイレクトなリアクションを興味深く受け取りながら試聴を楽しんでいました。

最後はお客さんとの記念撮影も行い、イベントは終了。終了後、建志は「すげぇ楽しかった!」と満面の笑みで言ってくれましたが、参加してくれた皆さんはいかがでしたか? 最初に書いたように彼とファンがこういう形で交流する機会はほとんどないので、建志本人にとっても参加してくれた方々にとっても、ライヴとはまた違う形でお互いの「同志」を認識することができた貴重な機会となったのではないかと思います。そしてもちろん、我々MUSICAにとっても。本当に楽しく、有意義なひと時でした。

建志さん、集まってくれた皆さん、そしてご協力いただいたRed Bullの皆さん、レコード会社ならびにマネジメントのスタッフの皆さん、本当にありがとうございました!

なお、4月号のソロ第一声に続き、完成したアルバム『Everything Becomes The Music』についてのインタヴューを、次号6月15日発売のMUSICA7月号に掲載します! こちらも是非お楽しみに!!

 

Posted on 2015.05.20 by MUSICA編集部

KEYTALK、大舞台を見据えて視野を広げた
必然の野心作、『HOT!』完成!

世の中にヤバい音楽っていろいろあるじゃないですか。
聴いた時に「なんかヤバい」って思うもの。
その「ヤバい」っていうところだけに注目して
そのヤバさをパンクとかロックで
アウトプットするのがカッコいいなって思ったんです

『MUSICA 6月号 Vol.98』P.86より掲載

 

■1曲目の“YURAMEKI SUMMER”からいきなりこの夏のアンセムになっていきそうなアゲアゲのサマーチューンで始まって、アルバムを通して勢いもあるし、「俺もこのバンドに入りたい!」って思わせられるようなノリとグルーヴ感のある、凄く振り切れたアルバムが完成したなと思うんですけど。

小野武正(G)「そうですね。3枚目のアルバムで、KEYTALKがメジャーに行ってから2枚目っていうことで、『OVERTONE』の時は新たなお客さんに向けて『KEYTALKってこんなバンドなんだよ』って再提示できるような大まかなコンセプトだったんです。今までのインディでの活動を経た総集編っていうか。そんな中、フェスにたくさん出させてもらったり僕ら主導のイベントもどんどんキャパが上がっていく中で、今まで以上にたくさんのお客さんを目の当たりにする場所で演奏することが増えて。だから、今後、数千人規模の大きい会場でも一人ひとりに届くような曲を作りたいっていうコンセプトから、今回のアルバムの制作が始まって」

首藤義勝(Vo&B)「そうだね。広い会場でっていうスケールの大きいものっていうのは一番意識したところで」

■つい先日、日本武道館ワンマンも発表されましたけど、そうやって大っきいハコでやることをイメージしながら作っていったってこと?

小野「まぁ、大きいハコっていうか、たくさんの人に届けられるもの――っていうことは、必然的にリリースした際により多くの人に届きやすいっていうことに繋がると思うんですけど。だから、今までずっと大事にしてきたメロディを今回も大事にしつつ、四つ打ちだったりビート感っていうのも義勝とか巨匠の曲だと今までよりちょっと落ちてきたりとか……具体的な曲で挙げていくと、“MONSTER DANCE”とか“YURAMEKI SUMMER”みたいな、いわゆるパンチがあるKEYTALKの武器がひとつと、もうひとつ“エンドロール”とか“バイバイアイミスユー”みたいに完全に歌で聴かせるっていうKEYTALKのもう一面の武器を今まで以上に強化したアルバムっていうのがあるかな」

寺中友将(Vo&G)「歌詞もね、今までのように曲のメロディに合った言葉だったり、耳触りのいいスピード感が生まれる言葉とか、そういう選び方ではなく、今までにやってこなかったストーリー性を作ってみたり、ちょっと特定の人に絞って考えた曲だったり、今回は歌詞で曲を押していくっていうことにチャレンジしてみて。そうやって大きいステージや椅子のあるようなホールでのライヴで特に力を発揮できるんじゃないかって思える曲も入れ込むことができたなって思います」

■アゲるところはアゲて、聴かせるところは聴かせるっていうね。

八木優樹(Dr)「そうですね。そういう意味では振り切れてるアルバム。めっちゃ歌モノだったり、すげぇ変な曲の時はみんな変な感じになって」

小野「うん。今までもやってきたところではあるんですけど、よりその精度を上げられたっていう感じですね」

八木「ビートに関しても大きいノリを出すっていうか。今までの曲って点が凄く近くて、体力使って聴かないと聴けない曲が多かったと思うんですよ」

■点が近いっていうのは、要するに手数が多いってことだよね。

八木「そういうことですね。情報量が多いっていうか。でも今回は、歌がメインに聴こえて、なおかつ大きなノリで聴こえるような曲とかも上手くできたんじゃないかと思いますね。今までのKEYTALKのよさも残しつつ、大きなノリに挑戦できたんじゃないかなと思います」

首藤「スケール感って、ビート感だったり音の作り方だったりいろいろあるんですけど、そこは曲によりけりで。あんまり激しい曲と歌モノの曲みたいな線引きは作ってる時はしてなかったんですけど。ただ、大きなテーマとしてスケール感を大きくするっていうのを凄く意識して、結果的にどっちにも振り切れたって感じですね。個人的に気にしたのはサウンドで、今回は打ち込みの音がいっぱい入ってるんですけど。特に音で作れる広がりみたいなのを意識して、ギターだけだと賄えない部分に積極的に打ち込みを入れてみたりしたんですけど」

■今おっしゃったように打ち込み的な音が非常に多く入ってきて、そのカラフルさも含めて派手さがあったり、終盤のメロウな曲達についてはドラマティックになっていて。

首藤「そうですね。打ち込みを入れないカッコよさもあれば、打ち込みを入れるカッコよさもあると思ってて。僕は、曲が引き立つならそこには入れようっていう考え方で。純粋に奥行きを出したいから入れた部分もあれば、“YURAMEKI SUMMER”とかは歌詞が最後の最後にできて、夏の歌詞ができたから急遽夏っぽいフレーズを打ち込みで入れてみたりして。そういうのってあんまり今までやってこなかったところなんで、新しいかもしれないですね」

■ただ、打ち込みとか同期音みたいなものって、バンドによってはライヴで再現したいからあんまりやりたくないって人達もいたりして。もちろんスタジオはスタジオ、ライヴはライヴっていう考え方で「曲がよくなるんだったらそれでいい」みたいな人達もいるんだけど。KEYTALKとしては、割とそういう部分の躊躇いもなく、打ち込みも全然やっちゃおうぜ!って感じでやれた感じだったんですか?

首藤「うーん……実は、そこに関しては正直そんなにすんなりはいってないですね」

■それは――。

小野「俺が割と反対で。俺がバンドサウンドだけの音楽のほうが凄い好きなんで、結構話し合って。1個前の『FLAVOR FLAVOR』のカップリングで3曲目に入ってた“Stand By Me”っていう巨匠の曲もオルガンから始まってるんですけど、その辺もライヴでどうするか?っていう話があって。僕は凄く同期モノに反対派だったんですけど、でも作詞作曲してるふたりの世界観を尊重するっていうのが一番だと思うんで、そこを大事にしていきたいなっていう」

(続きは本誌をチェック!

text by 寺田宏幸

『MUSICA5月号 Vol.98』

Posted on 2015.05.20 by MUSICA編集部

cero、シーンも時代をも超越する
大傑作『Obscure Ride』誕生!

この2015年って、とても美しいものではないじゃないですか。
なかなかいい未来を想像できそうにもないし、暗さも全然あるし。
そういう暗さや危なさも含めて、
都市の音楽として表せたらいいんじゃないかと思ってます

『MUSICA 6月号 Vol.98』P.78より掲載

 

■昨年末に出したシングルの『Orphans/夜去』のインタヴューの時に、今作ってるアルバムは影っていうのがひとつのテーマになっていくだろうっていう話をしていただいて。

髙城晶平(Vo&G&Flute)「そうでしたね」

■表と裏があって、裏の裏は表になるんだけど、その裏は元々の表とは少し違う表になってるんだ、と。そうやってパラレルワールドに行って帰ってきた人間っていうのは、一見同じように見えてるけど実は影がないっていう、そういう話を描きたいんだって言ってて。

髙城「そこまで話してましたか(笑)」

■はい(笑)。で、実際にでき上がった3枚目のアルバムを聴いてみると、なんとなく記憶っていうものをイメージして――。

荒内佑(Key&B&Sampler)「あぁ……」

■記憶って、どんどんあやふやになっていって、自分の中で書き換えられたり、忘却するんじゃなくても自分の中でまた違うストーリーになっていったりするじゃないですか。そういうものが全体として語られてることなのかなと感じました。サウンド的には、ビートやリズム感みたいなものはもの凄く洗練されていて、一方で上音はもうちょっと猥雑な感じになってる。そういうのも、記憶の深層と表層で別々のストーリーが進行していくイメージとして映ったんですが。

髙城「このアルバムに向かう契機となったのは、音楽的なことで言うと――前も話したかもしれないですけど――『Yellow Magus』っていうシングルがあって。その楽曲に合わせて、ドラマー、ベーシストに光永渉さんと厚海義朗っていう専門的なふたりを迎えて。で、これまでドラムを叩いていたあだち(麗三郎)くんをサックスに変えたりして」

■新しい編成になったよね。

髙城「はい。本当にバンドをリニューアルするつもり、新しいバンドを始めるつもりでやって、“Yellow Magus”っていう曲を再現できるように自分達をヴァージョンアップしていって。そこからできることが増えたっていうか、ガラッと変わってきたんですよね。『このアイディアでアルバム1枚作れちゃうんじゃないの?』っていうぐらいのエンジンのかかり方をしていって。それで、“Orphans”の時に言ったように、初めて合宿をして曲を貯めていったんですよね」

■具体的に言っていくと、前の編成だった時と現状の編成って、自分達の中で何が一番違っていて、どういうことができるようになったっていう感じなんですか?

髙城「それに関してはさ――光永さんと義朗さんを入れようって最初に話したのはあらぴーだったっけ?」

荒内「うん」

髙城「今サックス吹いてるあだちくんがやってるあだち麗三郎クワルテットで、別バンドとして荒内くんが鍵盤弾いてたんですよね。そこのベースとドラムが義朗さんとみっちゃんで、そっちのほうであらぴーと彼らとの会話があったんだよね?」

荒内「そうそう。『My Lost City』も出して、それまで貯めてた持ち曲のストックが出払って、新たに1から楽曲を作っていこうってなった時が2012年ぐらいで。その頃にクロスオーヴァージャズっていうか、昨今の新しいジャズの潮流がちょうど隆盛してきて、そこら辺の音楽を聴き始めたのと、リズム隊のふたりと出会ったんですよね。ふたりはブラックミュージックをたくさんプレイしてきた人間で、彼らにどうやって演奏したり、どう聴いたら面白いかみたいなことを聞き……そういうふたつの要素が重なったのが『My Lost City』を作った後だったんですよね。結果、“Yellow Magus”ができて、そこからまた新しいジャズの潮流に影響を受けて。それまで高城くんがベース&ヴォーカルで、僕もベース弾いたり鍵盤やったり――いわゆるUSインディバンド的な楽器の持ち替えの手法でやってたんですけど、それだと再現できないような楽曲が増えてきたんで。よりリズムが強固になって、より高城くんが歌に専念できる、さらにライヴだとパフォーマーとしての特性も生かせるような、そんな編成への変化がありましたね」

■それって、単純に音楽的な面白さや新しい発見がそこあったからっていうことなのか、それとももうちょっと積極的に自分達で表現できることの幅を広くしていきたいっていう表現欲求みたいなものがあったのか。どんな感じだったんですか?

荒内「両方ですね。純粋な音楽的な面白さのほうが割合は断然大きいですけど。幅を広げたいというよりかは、今やりたい楽曲だったり方向性のために変えたっていう感じで、前の編成でしかできないようなことも多々あるし……だから、必ずしも手を広げたいっていうよりは、アップデートしたいっていうか。自分達がやりたいことをやるために変えたって感じで」

髙城「あと、これまでやってきたようなスティールパンを含めた日本語のポップスだったり、あだちくんのサックスだったり――まぁ主にスティールパンかな。そういう楽器って、いわゆるブラックミュージックっていう音楽に、使われることもあるんですけど、少なめで。ビル・ウィザースの“(Just the)Two of Us”とかは、何気にスティールパン入ってたりするんだけど――」

荒内「え、そうなの?」

髙城「入ってる入ってる。でも、まぁブラックミュージックで使われることは少ないんですよね。だから、自分達がそうやってアップデートはするんだけど、前の楽曲との距離ができ過ぎておかしなことにならないように、これまで通りMC. sirafuだったりあだち麗三郎だったり、ああいう特殊な音楽家を活かした上で、ビートの強いブラックミュージックにするっていう折衷の仕方が自分達の立ち位置になるだろう、と。やり様によってはかつて自分達が作ってきたブランディングが足枷にもなっちゃうし、ともすれば新しいものがより面白いものになるし。その辺のやり方を探りながら、楽曲を作る時も『この楽曲に対して、sirafuさん、あだちくんにどう動いてもらおう?』とか考えて。それがなかったら、本当にただただ演ってて楽しいR&Bだったり、新しいジャズをそのままゴックン呑み込んだものになったかもしれないけど、微妙にそうはならなくて結局自分達のものになっていくっていうのが結構面白かったですね」

■じゃあ、最初から狙って両義的なものを作っていったというよりは、どちらかって言うと結果的に折衷的なものになっていった感じなんだ?

髙城「それもまぁ、曲によりけりですけどね。“ticktack”とかはいいスティールパンの入り方してんなって思いますし、かつ、今までのceroにはなかったところに落とし込まれてる気もしますし……っていうか、全部ですね。別に“ticktack”に限らず、すべての楽曲がそうなんですけど」

橋本翼(G&Cl)「うん。変わっていく中で新しい曲も出てくるんですけど、ライヴでは前の曲もやるし、そのままやるとちょっと変な雰囲気になって合わないものがあるのをリアレンジして今の雰囲気にするっていう。それでまた新たに楽曲を通して面白さが見えてくるんですよね」

(続きは本誌をチェック!

text by 寺田宏幸

『MUSICA5月号 Vol.98』

Posted on 2015.05.19 by MUSICA編集部

SiM、「WE HATE COLD TOUR 2015」の
最終公演に完全密着!
新作『ANGELS and DEViLS』最速インタヴューも奪取!!

シーン云々をぶっ飛ばし、孤高の場所へと爆走モードに入ったSiM、
その音楽と魂を刻みに赴いた灼熱の北海道ツアー、密着!
さらに、より深く自身の内面と本質を刻んだ
シングル『ANGELS and DEViLS』、
明確なる新アンセム“EXiSTENCE”最速インタヴュー!
ラウドロックの雄からロックのど真ん中を背負う者へ――
目を離すなよ、こっからが「一番スゲぇSiM」だ!

『MUSICA 6月号 Vol.98』P.52より掲載

 

 昨年の12月3日、「i AGAINST i TOUR」のZepp Tokyo公演でMAHは「ラウドロックシーンを作ったバンドとして、次は、ラウドロックシーンをぶっ壊します!」と吼えた。その後、自身の主催する「DEAD POP FESTiVAL」を彼らの地元・神奈川にて野外大規模フェスに拡大することを発表し、昨年の秋からTVアニメ「神撃のバハムート GENESIS」のオープニングテーマとなっていた“EXiSTENCE”を収録したシングル『ANGELS and DEViLS』を6月10日にリリースするとアナウンス。「DEAD POP FESTiVAL」のラインナップからもわかる通り、パンク/ラウド/ミクスチャーといった親和性の高いシーンに限らない求心力、さらにアニメのオープニングテーマという「お茶の間」への発信――「ラウドロックシーンをぶっ壊します」という言葉の通り、4人が新たな勝負の季節に入ったことは明らかだ。

 ここまで徐々に開示してきたレゲエ、スカ、ダブステップ、パンク、ヘヴィロックの要素が滑らかに融合しながら雄大な情景を描いていく 新曲“EXiSTENCE”は、そんな彼らの新たなアンセムと呼ぶべき1曲として象徴的だし、4月に彼らが初めて行った北海道ツアーでこれまでなかなか赴くことができなかったライヴハウスを回ったことも、ラウドシーンの外へ向けて一気に活動のスタンスを開いている現在のSiMを物語っていると言っていいだろう。そんな状況を踏まえ、今月のMUSICAでは初めてSiMのライヴに密着し、同時に彼らの「今」を多角的に捉えるインタヴューも敢行した。ロックとは一体何なのか? 今の時代のレベルミュージックとは何なのか? どこまでも真摯にその生き様をロックに投影し続けてきたバンドの素顔と展望を紐解く――。

 

4月22日(水) 函館・club COCOA

 

 旭川、北見、帯広、苫小牧、そして函館の5ヵ所を約1週間で回る北海道ツアー(間に組み込まれた札幌でのイベントも含めると6ヵ所)。まとまった本数の北海道ツアーを回るのはSiMにとって初めてのことだ。その最終公演となった函館、その会場となるclub COCOAは函館駅から車で10分ほどのところにあった。前日の苫小牧から連戦だったため、SiMは比較的ゆっくりと14時にCOCOA入り……すると聞いていたのだが、予定よりもかなり早く、メンバーは13時35分に到着。ローディーふたりが次々に機材を運び入れていく中、「よろしくお願いします!」とライヴハウスのスタッフに挨拶をしてメンバーは楽屋に入っていった。前日の苫小牧公演は今回のツアーでも最少キャパで、文字通りの灼熱ライヴになったと聞いていたが、メンバーは至って元気そうだ。それはメンバーからも話が出て――。

SIN(B)「ライヴ自体がスゲぇ久々な中で始まったツアーだったから、最初は鈍ってたんだけど、タイトなスケジュールだから逆に鍛えられてよかったですね。アルバムとは関係ないツアーだから久しぶりにやる曲も多いし、練習できてない曲もあるくらいで(笑)。ただ、それも新鮮で楽しいし、お客さんの反応を見てると『初めまして』っていう人も多くて。だから、自分達としても凄く原点の気持ちでやれてるツアーだと思う。……でも、昨日の苫小牧のライヴは特に凄かったなぁ」

■チラッと聞きましたけど、どういうふうに?

SIN「いや、ほんとに暑いし空調も効かないくらいで、SHOW-HATEが酸欠になって、倒れちゃったんだよね。お客さんの中にも具合が悪くなっちゃった子もいて心配でさ――」

すると、SHOW-HATEが楽屋から出てケータリングを物色し始めた。顔色もよさそうだし、フラついている様子でもない。大事には至らなかったようで、ひと安心だ。

 夜のクラブ営業時にはBARになる広いスペースがライヴハウス営業時は楽屋ということで、4人はそれぞれのんびりと過ごしている。SINはタバコをゆっくりと吸いながらソファでまったり、SHOW-HATEはギターの弦を張り替えてジャカジャカと鳴らし始めたり、GODRiは、函館のグルメマップをスタッフと一緒に観ながら「あの県では何食べたっけ?」と談笑したり、もの凄いリラックスムードだ。

 MAHはと言うと、BARスペースで照明スタッフと細かい打ち合わせをしている。たとえば、この日のセットリストに入っている“Faster Than The Clock”のキメ部分、フロントの3人のジャンプをよりハッキリと見せるために的確な照明の明るさをオーダーしていく。「初めてのお客さんにも、ジャンプとかはカッコいいと思って楽しんで欲しい」という言葉の通り、セットリストにも代表曲がずらりと並んでいる。初めて出会うお客さんを意識した、強烈な名刺代わりとしてのライヴが意図されているのは明白だ。

(続きは本誌をチェック!

text by 矢島大地

『MUSICA5月号 Vol.98』

Posted on 2015.05.19 by MUSICA編集部

MAN WITH A MISSION、
Zebraheadとのコラボシングル『Out Of Control』
で再確認した己の衝動の原点と自らのロックの明日

「超エル/超エナイ」トカ物議ヲ醸ス方モイマスケド、
凄イ無意味ナ気ガシテテ。
ソウデハナク、ソノ音楽ガ精神的ナ拠リ処ニナッテ、
音楽ノ系譜トシテ引キ継イデイクコトノホウガ、
ヨッポド大切ナンジャナイカナト思イマス

『MUSICA 6月号 Vol.98』P.46より掲載

 

■紙資料に「狼vs縞馬!!食物連鎖の頂点を決める戦いが、今始まる…!!」っていう、もの凄いコピーがついてますけど(笑)。

「ソノコピー、ヤバイデスヨネ(笑)。マ、ドウ考エテモネ、肉食動物ト草食動物デスカラ、食物連鎖上ハ我々ノ勝チナンデスケド(笑)」

■確かに(笑)。どういった経緯で一緒に制作することになったんですか?

「昨年ノ12月ニ、私トカミカゼ・ボーイデ2~3週間ホドアメリカニ行ッテ、様々ナ海外ノアーティストヤプロデューサートソングライティングノセッションヲ行ウトイウ期間ガアッタンデスケド。デモ、Zebraheadハソノリストニハマッタク載ッテナカッタンデス。デ、オフ日ガ――」

――早速ですが毎度恒例、オオカミの片言日本語は活字にすると読みづらいので、僭越ながら滑らかな日本語へと翻訳してお届け致します!――

「――オフ日が何日かあったんですけど、Zebraheadと我々の共通の知人がオレンジカウンティに住んでおりまして、その方から『せっかくオフなんだし、よかったらZebraheadの連中と会ってみないか』という連絡をもらいまして。ちょうど彼らもスタジオでデモ作りをしていた時期だったので、だったら!と思い立ち、ビールを手みやげに訪ねたら案の定喜んでくれまして。『おー、ビール! お前ら最高にいいヤツらじゃねーか!』と」

■ははははは、ビールでシマウマを釣ったんだ!(笑)。

「イェス(笑)。それで即効打ち解けて『曲でも書く?』って感じになりまして。だから始まりはほんと、凄い軽いノリでしたね。で、その時カミカゼがまだやってなかったというか、やれてなかった曲を持ってたんで、『ちなみにこういうのがあんだけど』って言ったら『じゃあ早速それやってみようよ!』ってことで、スルスルと進んでいったという」

■なんか凄い始まりですねぇ。

「はい、もうなんとなくですよ(笑)」

■でも一番素敵なケースですね。そのカミカゼさんの曲っていうのは、割とこの完成形に近い状態のものだったんですか?

「いや、実際は“Out of Control”っていうタイトルとBメロのメロディしか決まってなくて、それ以外はリフのアイディアぐらいしかなかったです。あとはもう全部、せっかくコラボでやるんだから何もかもアイディアを持ち寄ってやろうということで、それこそ、まずアリが頭のパートを自分でラップで作って、僕も僕でアリが最初に出したものを受けてラップをして、で、ギターヴォーカルのマッティが突然メロディを入れて……みたいな感じで。タイトルからイメージされたものをベースに、後はそれぞれが出してきたものに触発されながら作っていった感じでしたね。特に歌い手のパートはそれぞれのアイディアをそのままぶち込んでます。本当にお互いのアイディアをポンポン出して即決していくような制作でしたね」

■予想以上にアリさんとジャンケンさんのラップが凄く近いなと感じて。それこそ油断するとどっちのラップかわからなくなるくらい(笑)。

「アー本当ですか? 確かに実際に聴いてみるとそうかもしれない(笑)。そこはやっぱり聴いてきた音楽が近いと言いますか、お互い、ラップスタイルに90年代のミクスチャーのテイストがふんだんに込められていると思うので。そういう類似性と言いますか、共通する部分はありますね」

■今までも10-FEET のTAKUMAさんをフィーチャリングした楽曲もありましたけど、でも最初の段階から完全に共作で作り上げる機会は――。

「初めてですね。我々としてはずっと聴いてきたアーティストのひとつなので、すげぇことだなって興奮しましたよ。ま、最初はあまりの気さくさにビックリしましたけど(笑)。その共通の知人を通して随分前から我々のことを知っててくれたみたいで、サマソニで僕らが初めてマリンステージに立たせていただいた時にZebraheadが観にきてくれていたらしいんです。で、その後もLAで我々がワンマンやった時も観に来てくれて、凄い気に入ってくれてたみたいで。でも実際に彼らと会って酒を飲み、曲を作ってみると、本当にPVのまんまの、めちゃくちゃ気さくだしめちゃくちゃオープンだし、10秒に1回は冗談言ってるしって感じの人達で。我々にしてみたらめちゃくちゃ大先輩のバンドなわけですけど、『よく来てくれた!』みたいな感じで、もの凄く楽しく和気藹々と楽しくできましたね」

■MWAMの楽曲って、ダイナミクスは決して失わないながらも、制作としては非常に緻密に組み立てていくタイプの楽曲が多いと思うんですけど。Zebraheadと一緒にラフにアイディアをぽんぽん入れながら作っていくという経験の中で、新しさだったり改めて気づいたことってありました?

「一番彼らとやって新鮮だったのは、とにかく決断が早いってことですね。アイディアを出す速度もそうなんですけど、それを実行に移す速度が凄く早くて――」

(続きは本誌をチェック!

text by 有泉智子

『MUSICA5月号 Vol.98』

Posted on 2015.05.19 by MUSICA編集部

ASIAN KUNG-FU GENERATION、時代に問いかける
確信のロックアルバム『Wonder Future』に託した意志

俺は「頑張れ」とは直接言わないよ。
凄く辛辣なことを書いていくよ。
でも、その上で、だからこそなんだってみんなの背中を押すような1行を
最後に書くこと、最後の1行で「でも大丈夫だ、allright」って書くこと、
それくらいしかロックバンドがやるべきことなんかないと思ってる

『MUSICA 6月号 Vol.98』P.36より掲載

 

■本当に素晴らしい、これぞロックアルバムと言うべき名盤だと思います。

「ありがとうございます」

■人間のエネルギーがそのまま音になっているような、ロックバンドの音の鳴りそのものから生まれる力に圧倒され、昂揚させられる作品であると同時に、非常に痛烈な形で社会や我々自身への警鐘を歌いながら、それでも前に向かって背中を押していくロックという音楽のメッセージと願いが強く表れた作品で。サウンドも歌詞も、真っ向からアジカンというもの、ロックというもの、そして表現というものに向かい合った、非常に重要なアルバムが生まれたなと思うんですが、ご自分ではどうですか。

「どう響くのかまったくわからない」

■ほんとに?

「ここまでわからないのは初めてってくらい、わからないですね(笑)。はっきり言うと、流行り廃りを意識しないで作ったのは初めてかもしれない。そういうことにも敏感ではありたいなと思ってるから、これまではずっとその時々で世界的に流行ってるものに対するアジカンなりの目配せがあったし、それはソロでもそうだったんですけど。でも今回、こういうプリミティヴな音像やフィーリングに回帰してるのは、世の中の流行り廃りとか一切関係なく、今これをやったほうがいいんじゃないかっていう自分の直感だけに基づいてやったことなんですよね。だからこの作品をどう受け取ってもらえるか、特にサウンド面に関しては全然わからない。ギターとベースの音がいいなってなるとは思うけど、でもこれが懐かしいねってなるのか、新しいものとして映るのか、どっちか自分でもわかんないっていう。歌詞に関しては、9割方上手くいったと思ってるんですけど」

■歌詞に関しては、明確に新しいアジカンのロック文体を確立したなと思いましたよ。それでも9割なんだ。まぁ自己評価としては高いですけど。

「そうですね、自分が当初やろうと思ってたことに関しては9割ぐらいできたんじゃないかな。1割は、やっぱり真面目さが出ちゃった(笑)。ほんとは<僕>みたいな一人称は廃したかったんだけど、やっぱりどうしてもちょっと出てきちゃいましたね」

■でも<僕>っていう言葉が具体的に出てくるのって9曲目の“額の中の囚人”と、ラストソングの“オペラグラス”ぐらいで――。

「あと5曲目も<僕がいつか>って一瞬だけ出てくる」

■あ、そうか、“Eternal Sunshine / 永遠の陽光”のラストの部分。

「そうなんですよ。文脈的には<僕>にしなくても書けたんだけど、これは<僕>にしたほうが伝わるんじゃないかって。それを切るか切らないかは迷いましたけどね。<僕>を出すのは、いわゆるアジカンらしさに通じるところなんで切りたかったんですけど(笑)。本当は二人称と三人称だけで行きたかった、できたら三人称で全部書けたら最高だったんだけどね」

■それは“スタンダード”の頃からおっしゃってますよね。

「うん。けど、なかなかそれも難しいなっていう(笑)」

■でも私は“オペラグラス”の<僕らの舞台>と歌う、この最後の最後ではっきりと<僕ら>という言葉を出したところに凄くグッときましたよ。

「そうなんだよね。今回はそこでというか、“オペラグラス”で全部を回収してます。この曲の<覗き込んで>っていうところや、その中盤以降の展開からアルバムの1曲1曲が別の舞台だったんだっていうイメージがはっきり浮かぶし、かつ、それが僕らの街のことだったんだっていうことがわかるっていう……回りくどい出し方ですけどね(笑)。まぁでも、どう響くかはわからないけど、でも自分達がやりたかったことをきっちりやり遂げることができたっていう手応えはあります」

■まずサウンドや音楽性の部分から訊いていきたいんですけど。さっき初めて流行りを意識しなかったっておっしゃいましたが、今回のサウンドは30代以上の世代、つまり90年代までに青春を過ごしてる人達にとってはザッツ・ロックというべき王道的なロックバンドサウンドであり、逆に若い子達にとっては新鮮なものとして響くかもしれない音像で。今回のアルバムってアジカンの中でも初めてラウドロック的な匂いの強い作風ですけど、2000年代以降のラウドロックって非常にハイファイな音像だから。

「そうですね、バキバキで、粒立ちのいい」

■解像度の高い音像というかね。

「今の主流になっているコンピュータでタイミングをジャッジしていろんな音を貼っていくっていうやり方は、そもそもロックとテクノとかの真ん中ぐらいのものだと思うんだけど――」

■昔でいうとデジタルロックなんて呼び方をされたりもしましたね。

「そうそう、デジタルロックがそのままロックの主流になったから。で、このアルバムは最近のマナーも一応入ってますけど、でも基本的には昔のやり方というか、90Sのやり方で作ってますからね」

(続きは本誌をチェック!

text by 有泉智子

『MUSICA5月号 Vol.98』

Posted on 2015.05.18 by MUSICA編集部

VIVA LA ROCK 2015大特集――
最大の感謝と愛でおくる
ロックの熱狂と感動に溢れた3日間完全総括!

ロックと埼玉にこだわり、新しいステージに執着し、
日本のロックとはっきり向き合う覚悟で臨んだ
2年目の春の祝祭ビバラまでの奔走記
(TEXT by 鹿野 淳/VIVA LA ROCKプロデューサー)

『MUSICA 6月号 Vol.98』より掲載

 

 初回である去年の開催が終わった後に思ったのは、本当にラッキーなフェスであることだった。

 誰もが日々感じている「これだけいろいろやったり、いろいろ考えているのに、何で伝わらないんだろう」という葛藤。これが去年のVIVA LA ROCKではほとんどなかったからだ。

 ロックへのこだわりは参加者のライヴの楽しみ方が何よりも体現してくれていたし、埼玉の音楽シーンを活性化しようという想いは、会場内を歩いているとここかしこで「埼玉にこんなフェスができて嬉しいし感謝してます」という言葉に溢れ出ていたし、新しい音楽を見つけて欲しいという気持ちはニューカマーが中心となっているCAVEステージの数々の入場規制で証明されていたし、家族連れでも楽しんでもらいたいという思いと、さいたまスーパーアリーナ近隣の方々と触れ合える音楽フェスにしたいという気持ちの表れである屋外スペースVIVA LA GARDENは本当に好評で、このフェスの顔にさえなった。

 何しろやろうと思ったことがほとんどそのままダイレクトに伝わった初年度の開催だった。だからこそ反省点や改善点も明確だった。箇条書きにすると――。

・VIVA! STAGEとCAVE STAGEの観れる人数のギャップが多過ぎること(マックス11000人と1700人)。

・館内導線がわかり難いこと。

・オトミセなどの高層階のインフラが閑散としている時が多かったこと。

・クロークの対応力が乏しかったこと。

 2015年に向けては、まず、ここをどう修正するのかから始まった。

 一番悩んだのはステージ入場人数のギャップだった。端的に言えば、CAVE STAGEが小さいことの問題だ。ここに関しては、「フェスの中にあるライヴハウス」みたいで楽しいと言ってくれる人が大半だったが、中には出演した後で不満を漏らす方もいて、相当悩んだ。しかしこのスペースは、新しい可能性、つまりニューカマーをどんどん登用するフェスの役割の中でなくてはならないものだったし、そのまま活かすことにし、もうひとつ新しいステージをどこかに5000人規模で作れないものか?というテーマで知恵を絞り続けた。

 実際に館内をグルグル歩いて探した。このフェスはさいたまスーパーアリーナをほとんどデッドゾーンなしで使用するものなので、もうどこにもスペースはないと思いながら、実はある場所に目星をつけ、検証した。

 それは「地下駐車場」だった。

 一般駐車場をビバラで借り切り、そこにステージを組めば、まさに巨大な「GARAGE STAGE」ができ上がると踏んだのである。

 実際にそれだけのスペースは駐車場の中にあった。あったにはあったが、これがなかなか歪なスペースで。横幅10メートル、縦幅80メートル以上みたいな、割と狭い道路をそのままステージスペースにして縦長にみんな連なって壁に囲まれながらライヴを観るという、奇妙な空間になるスペースだった。音の反響も相当のものだった。

 考えるまでもなく「それじゃライヴが盛り上がらない」わけだが、僕らはもう切実にスペースを探していたので、それでも盛り上がるんじゃないか? ヴィジョンを入れるか?だのと試行錯誤したが、頭を冷やして却下した。

 そんな中。最後の最後に検討したのが今年新設した「TSUBASA STAGE」だった。

 メイン入り口の前にドーンとステージを作る。入り口の横ではなくすぐ手前に。つまり入り口が入り口ではなくなる――これは本当に規格外というか、やってはいけないフェスデザインだ。2万人以上の入場を見込んだフェスが(実際に今回は3日間のうち、2日間は22000人以上の方々が入場された)入り口を封鎖しかねない形でステージエリアを作る。踊る大走査線とレインボウブリッジからお叱りをすぐさま受けそうなこの案を、僕らは実行した。理由はただひとつ。4000人ほどの人がライヴを観られる最後のスペースがここだったからである――。

(続きは本誌をチェック!

text by 鹿野 淳

『MUSICA5月号 Vol.98』

Posted on 2015.05.18 by MUSICA編集部

こんな「僕らのアンセム」を待っていた!
星野源、約1年ぶりのニューシングル『SUN』、
果敢な音楽的挑戦をもって
ポップミュージックを更新する名曲、誕生!!!

もっと日本の音楽シーン全部の中で遊びたい、
もっと音楽そのもので遊びたいっていう欲求が形になってるんですよ。
で、その遊ぶっていうのは、
すなわち闘うっていう言葉と同じなんだと思う

『MUSICA 6月号 Vol.98』より掲載

 

■本当に素晴らしい曲が生まれましたね。

「よし! やったぜ!(ガッツポーズ)」

■今回こうしてバックカバー特集をやりたいと思ったのは、本当に“SUN”を初めて聴かせてもらった時の興奮が大きくて。これは間違いなく星野さんの新しい代表曲になる曲であると同時に、今の日本のポップスシーンに刺激と興奮をもたらすものだと思う。で、この曲で大きい特集をやらないんだったら何でやるんだろうっていう気持ちになって(笑)。そういう意味では『夢の外へ』で表紙をやった時とちょっと近い感じなんですけど。

「嬉しい、ありがとうございます」

■ご自分ではどうですか?

「『わーい!! やったーっ!!』みたいな。凄く漠然としてるけど(笑)。でも、『とにかく早く聴いて欲しい!』って思ったのは久しぶりで。“ワークソング”ができた時も、曲ができてすぐに有泉さんに持っていったけど」

■編集部まで聴かせに来てくれましたよね。

「そう。あの時もとにかく今すぐ聴いてもらいたい!と思って行ったんだけど、今回もそうだった。自分にとっては“夢の外へ”ができた時もそうだったんだけど……ほら、あの時はまだそんなに交流がなかったから(笑)」

■うん(笑)。MUSICAにはずっと出てもらってたけど、私が初めてインタヴューしたのは『夢の外へ』のタイミングでしたからね。

「だから、俺もさっき有泉さんが言ってくれた感覚と同じというか、『早く聴いて欲しい!!』っていう感じ。ただ、“夢の外へ”の時は自分でも気づいたらでき上がった感じだったんですけど、今回はちゃんと計画を練って、自分のイメージを全部実現するために緻密に組み立てて作って行ったんです。で、そうやってできたものが、最終的に自分が予想していたものをさらに飛び越える形で、凄くいいものになったっていう手応えがあって」

■“夢の外へ”は星野源の新しいポップスタンダードを作ることに挑戦した曲だったわけですが、そういう意味では今回の〝SUN〟もそうで。ただ、“夢の外へ”の時はそもそも、それまでの星野源のイメージ、そして何より自分自身の殻をどうやって破るのか?っていう挑戦も同時にあったと思うんです。

「そうでしたね」

■でも今回は、そうやって“夢の外へ”から『Stranger』までで自分の殻を破り、その後の活動の中で音楽的にも状況的にも新しいステージに立った星野さんが、その新しいステージに立ったからこそ、改めて自分の代表曲をきっちり作りにいった曲だし、そして日本のポップシーンの殻を破るっていうことに挑戦していった曲だと思う。その結果、凄く新しい僕らのポップソング、待ち望んだ今の僕らのアンセムが生まれたなぁという。そんな感動があるんですよね。

「ありがとうございます。なんかね、昔っからやりたかったことができてる感じがするんです。だから凄く楽しいんですよ」

■ご自分でも、それこそ横浜アリーナでのツービートはここまでの星野源の集大成かつ新たな始まりを宣言するものだったと思うし、このタイミングで新たな自分の代表曲となるスタンダードを作りにいこう、また新しい挑戦をしようという感覚もあったんですか?

「そうですね。やっぱり去年は復帰の年で。まぁあれからまだ1年しか経ってないのか、という気持ちもちょっとあるんです(笑)。この1年は、凄く忙しかったんだけど、とはいえ自分の中でも、おそらく周りのスタッフも、もっとできたと思うんですよ。もちろん一生懸命やっていたけど、でも、やっぱり復帰したてで体のことも心配ではあったし、なるべく無理をしないように、忙しくなり過ぎないようにっていう配慮をしながら活動をしていて。まぁ結果的には、おかげさまで凄く忙しい1年になっちゃったんですけど(笑)」

■そうですね。武道館・ツアー・横浜アリーナに、役者としても舞台にコントやドラマにと、休んでたイメージは全然ない(笑)。

 「でも、そういう意識でやっていたから、活動がやっぱりどこか限定的になっていたというか。今回のシングルって『Crazy Crazy / 桜の森』から考えると1年ぶりのシングルなんですよ。それこそ前のシングルを出してから1年も新曲をリリースしないっていうのは、なかなかあり得ないことだと思うんです。でも、去年はリリースはせず、舞台だったりツアーや横アリのツービートだったりをじっくりやっていきながら、いろんな人に『ありがとうございました』って言いに行く恩返し期間みたいな1年として自分の中でも位置づけていたから。そういう1年を経て、『2015年はもうフルスロットルで行こう!』という気持ちになって。体も検査してもらって何の問題もなかったし、『よし、行くぞ!』っていう感じになったんです。その中で、やっぱり自分の代表曲を作りたいなという想いが強くなって……だから横アリをやってからっていうよりは、『2015年、ここから本格的な活動がフルで始まりますよ!』っていう、そういうタイミングにしようと思ってたのが大きいと思います。もっと、より本気って言うと、これまで本気出してなかったみたいで、それは全然違うんだけど」

(続きは本誌をチェック!

text by 有泉智子

『MUSICA5月号 Vol.98』

Posted on 2015.05.18 by MUSICA編集部

すべてのストーリーは頂点に立つその瞬間のために――
[Alexandros]、大胆不敵にして威風堂々、
過去最高のスケールを湛える
ニューアルバム『ALXD』完成!!
その全貌を解き明かす第一声全員ソロインタヴュー!!!!

やっぱり誰にも頼りたくないから。
自分達の力で相手をねじ伏せて、奪い去っていきたい。
だからスタジオで4人だけでやってるのは [Alexandros]の聖域だと思ってて。
その聖域から生まれるものを最大限に出していきたい
っていうのはあったと思います

『MUSICA 6月号 Vol.98』P.12より掲載

 

Interview with 川上洋平

 

■遂にアルバム完成しました!

「いや~、本当についさっきですよ! 朝まで歌ってましたからね」

■明け方まで最後の“Famous Day”の歌を録ってたわけだからね(笑)。

「はい(笑)。だから正直、まだまったく客観的には見れない状況ですけど。でも今回は最後の追い上げっぷりがハンパなかったですよ!」

■……敢えて言いますけど、それ、いつもじゃない?

「そうなんですけど!(笑)。でも今回は割とずっと順調に進んでいく中で、どんどん調子が上がっていく感じがあって。やっぱりね、俺の場合、レコーディングしていく中でどんどんアイディアが湧いてくるところがあるんですけど、でも、たぶん今が一番絶好調だと思う(笑)」

■約2年ぶりとなる5枚目のアルバムですけど、このバンドの普遍的な王道性も、破天荒なアイディアを盛り込んだエキセントリックなダイナミクスも、そのすべてをこれまで以上の形で盛り込んだ「[Alexandros]とは一体なんなのか?」をはっきりと提示するアルバムになったと思います。

「まさにそうですね。この2年の間ってシングルが多かった、つまりいわゆるいろんな人に受け入れられるポップな曲が多かったじゃないですか。だからその分、アルバムでの新曲では自分の遊び心をめちゃくちゃ詰めてやろうと思って。ポップな曲も好きなんですけど、やっぱりもっと激しい曲も書きたい!っていうフラストレーション溜まってたんで、アルバムレコーディングはすっげぇ楽しかったですね」

■その辺の不敵な獰猛性は“Boo!”や“ワンテンポ遅れたMonster ain’t dead”、あるいは“Dog 3”といった、非常にエッジの効いた攻撃的な曲、ラップメタルやデスメタルみたいな曲に表れてますけど。

「そうそう、その3曲最高でしょ? 特に俺は“Boo!”のサウンドが実は今回のアルバムをの中心にあるものなのかなと思ってて」

■あのバッキバキに歪んだブースト気味のサウンドね。

「そう、あの邪悪感! カッコいいのひと言でしょ、もう。結構アルバムは[Alexandros]のこういう側面をガンッと提示したかったんですよ」

■その一方で、“can’t explain”というThe StrokesからOasisを経てUnderworldまで行くような曲があったり――。

「なるほど!(笑)。これは俺的には当時Yuckが好きだったんで、そこから思い出したブリットポップ感を自分なりにもう1回作ってみたら面白いかなって作り始めたんですけど。俺もこれ凄い好きで。“Starrrrrrr”の辺りから有泉さんに8ビートやりたいって言ってたじゃないですか。実はあの頃からあった曲なんですよ。ずっと温めてたんですけど、やっとできた」

■ラストの飛翔感ある展開含めてこれも最高。で、最後には“Coming Summer”という素晴らしいロックバラードもあって。<これ以上歩けないような気がふとして/足がすくんだ>という、珍しく弱さをぽろっと出す歌詞から始まり、<いざ飲み込めよ/我の身体ごと/今こそ捧ごう/この身体とこの奏でを>と歌いゆく名曲なんだけど。

「これ、実は大学生の時に作った曲なんですよね」

■マジで!? そうなんだ!

「Aメロは違うんだけど、それ以外は全部当時のまま。だから歌詞は、これがいい歌詞かどうかわからないまま歌いました。昔からあった曲だからこのままやりたいなと思って。でもこうして見ると歌いたいことって本当に変わってないな……ただ、この曲はちょっと癒されたい部分が出てるよね。甘えてんじゃねえよって言いたくなるけど(笑)」

■ははははは。とまぁ、非常にヴァラエティに富んだアルバムなんだけど。

「そうそう、振り幅ヤバいでしょ?」

■はい。でもそれが突飛なことではない [Alexandros]というバンドらしさが存分に出てますよね。そもそも洋平くんは、『Me No Do Karate.』の次の作品として、このタイミングでどんなものを作りたいと思ってたの?

「単純に今自分がやりたいものを今まで以上の形で出したいっていうのは変わらずなんですけど、今回はメロディラインの部分を自分の得意なモノ――それは考えながら作ったというよりも、制作しながらわかっていった感じがあって。やっぱり俺、捲し立て系がすっごい好きなんですよ」

■“ワンテンポ遅れた~”のBメロとか、とんでもなく速いよね。

「すっごい速い。だからこれ、ラップじゃないんですよ。フィラップっていう俺が作ったスタイル。ヒロには超爆笑されたけど(笑)」

■ん、フィラップ?

「fill up、埋めるってことなんですけど。ラップってリズムに乗せてくんだけど、そうじゃなくてとにかく埋めるように捲し立てる、拍のブレイクみたいなものも全部埋め尽くすっていう(笑)。でも、俺の場合はそれでもメロディを感じさせる形にできるから、新しい武器にしていきたいなと思ってて。もう、これやってる時はめちゃくちゃ気持ちいいんですよ!……まぁ話を戻しますけど(笑)、アルバムでまず録ったのは“Boo!”と“ワンテンポ~”だったんけど、ちょうど『ワタリドリ/ Dracula La』を制作した後だったんで、さぁやりたい放題やってやろう!っていう反動が凄いあって。その中でやっぱり最終的に、もの凄いロックなアルバムにしたいなっていう欲望が出てきたんですよ。“ワタリドリ”とか“Adventure”でそこまでロックに興味なかったお客さんも増えたと思うんですけど、その人達にもこういう部分を見せたいと思って。[Alexandros]のマイルドな部分だけじゃなく、奈落の底に突き落とされるような感覚も味わわせたいっていうか。俺達はもの凄いポップなこともやりたいけど、もの凄いロックなこともやりたいんだっていうのを、とにかく世にはっきりと提示したかったっていうのはあります」

(続きは本誌をチェック!

text by 有泉智子

『MUSICA5月号 Vol.98』