Posted on 2015.10.17 by MUSICA編集部

KEYTALK、初の武道館を目前に控え、
改めてSG『スターリングスター』でこのバンドの鍵を深く掘る

僕達も以前はフラストレーションがあったんです。
踊れる4つ打ちがどうこう言われて
腑に落ちない時期も確かにあったんですけど、
最近そういう愚痴は言ってないなって思って。
本当に今が楽しいんだろうなって改めて思います(首藤)

『MUSICA 11月号 Vol.103』P.86より掲載

 

■10月28日の武道館、圧巻のソールドだそうで。

首藤義勝(Vo&B)「凄い嬉しいです! ずっと得体の知れない武道館って場所に対して、半分怖い思いがあったんですよね。でも、チケットがちゃんとはけてたり、日程が近づいてくるにつれて、だんだん現実味を帯びてきて。今は楽しみな想いのほうが強くなってきてますね」

八木優樹(Dr)「今までの最大キャパがZepp Tokyoなんで、武道館はおよそ4倍に迫るぐらいの大きさで……だから凄い怖かったんですけど、それだけの人達が僕らに期待してくれてるっていうのが凄い嬉しいなって思って。なので、最近は『やってやろう!』って気持ちになれてきましたね」

寺中友将(Vo&G)「そうだね。今までの東京でのワンマンの時も、たとえば『Zeppをやる前にこの会場が決まってる』みたいな時に、予約の時点ですでにZeppの枚数を超えてたんで――」

■常にキャパが足りない場所でやって来たし、そのスピード感で自分達も進化できてたってこと?

寺中「はい。で、Zeppの次は武道館っていうのは普通の流れだと思うんですけど、前回のZeppの時点で聞いた時の予約の人の数って1万人も来てなかったんですよ。だから最初は完全に不安しかなくて。なので、今はホッとしたっていうのが一番ですね(笑)。僕ら、ここ2~3年の雑誌のインタヴューとかで『武道館を目標にしてます』ってずっと言ってきてたんですよね。だから僕らはもちろん、きっと前からKEYTALKのこと知ってくれてた方にとっても凄く特別な場所だと思うんで、もう全国からたくさんの人が応募してくれたんだなって思いました。とりあえず初めての武道館っていうことで、みんながお祝いに来てくれるみたいな印象です」

小野武正(G)「僕は今最高の気持ちですね。『最高!』って気持ちと、『やってやるぞ』という闘争心……ですな!」

首藤・八木・寺中「『ですな!』って何なんだよ!!」

■(笑)「ですな」って言葉のオッサン臭さとは真逆のキラキラした表情で言ってますが、武道館って夢の場所だったんですか?

小野「夢のまた夢でしたね。『無理っしょ』って思ってましたけど、ちょっとずつ現実的になっていって、『絶対やってやるぞ!』っていう場所になりました。なので、満を持してやれる感じはします。『イェーイ!』って感じ……ですな(笑)」

■全部「ですな」で済まそうと思うな!

一同「ははははははははははははははは!」

小野「すいません(笑)。でも、本当によかったですね。恵まれてる環境のおかげだとも思いますし、僕らがこれまでやってきたことが報われたなっていう気持ちです」

■その武道館あっての今回のシングルの表題曲の“スターリングスター”だと思うんですが。この曲って、『ドラゴンボール』のタイアップっていうことと、武道館に辿り着いたっていうダブルミーニングなんですか?(とソングライターの首藤くんに問う)

首藤「結果的にそうなった感じですね。元々武道館をテーマにしてたし、シングルリリースも10月って前から決まってたんで、武道館に合わせるのがタイミング的にちょうどいいなって思ってたんですよね。このタイミングで自分達の今の状況を歌ってるリアリティのある曲が出せたら、武道館に向けて余計説得力が増すんじゃないかと思って作りました」

■<スター>っていう言葉も含め、歌詞には『ドラゴンボール』感も入ってますよね? 後でタイアップが決まってから歌詞を考えたってこと?

首藤「そうです。まだ歌詞が書き上がってない時にタイアップのお話をいただいたんですけど、その時点では闇に入ってる歌詞を書いてたんです。でもその歌詞を意識し過ぎたら作詞に詰まっちゃいそうだったんで、大元のテーマである武道館のことをだけ考えようと思って。でも、結果『ドラゴンボール』のほうにもはまりそうな感じになりました(笑)。曲調自体はここ1年ぐらいずっと考えて作ってたんですけど、ビートをちょっと大きめにして、体は動かせるけどメロディは犠牲にしない曲がいいなって思ってて。あと、大きい会場で映える曲が作りたいなって思ってたんです」

■それがこの雄大なグルーヴ感に繋がってくるんだ。曲を聴いてL’Arc~en~Cielの“snow drop”を彷彿としたんですけど。音からウィンターソング的な匂いを感じた部分も含めてね。

首藤「おぉ! “snow drop”大好きです。確かに、歌詞変えたらウィンターソングにもなりそうですよね。嬉しいです、ありがとうございます!」

八木「この曲を最初に聴いた時は、義勝らしいいい曲だなって思いました。最初はもうちょっとファンキーでアッパーな感じだったので、そういう勢いのあるロックに寄せたいのかなって思ってたんですよね。でも、プロデューサーのNARASAKIさん含め、みんなで話し合っていく中で、もうちょっと雄大な感じを出そうってなって、テンポをグッと落としたんです。それがいいふうにはまったのかなと思います」

寺中「歌詞に関しては――僕、自分以外の人が作った等身大の歌詞を歌うのって初めてだったんです。昨日ライヴで初めてやったんですけど、自分の曲を自分で歌うのと、義勝が作った曲で自分達のバンドのことを歌うっていうのが、似てるけど凄く大きな違いがあるだろうなって思ったんです。でも“スターリングスター”は今までになく自分の世界に入り込める曲だなって思ったし、それって初めての感覚で。もちろん世の中に向けて出す曲なんで、リスナーにどう届けるかが大事だと思うんですけど、今回のこの曲に関しては、自分に一番響いてる印象があるし、だからこそ新しい気持ちで歌えるんだなって思います」

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text by鹿野 淳

『MUSICA11月号 Vol.103』

Posted on 2015.10.17 by MUSICA編集部

04 Limited Sazabys、シングル『TOY』リリース。
苦難を乗り越え掴み取った新たな確信と次への展望

やっぱり、自分にとって「歌う」っていうのは、
失くした感覚を思い出すための手段なんだって思いました。
“monolith”みたいに一気に曲を書いてた時も思い出したいし、
小さい頃に感じていたものも無垢なまま想像したいんです

『MUSICA 11月号 Vol.103』P.80より掲載

 

■『CAVU』ツアーの名古屋ファイナルにも密着させてもらって、その後には怒涛のフェスシーズンもありました。ステージの規模もどんどん大きくなっている中で、ひとまず『CAVU』以降の状況や今の自分達の立ち位置を、どういうふうに捉えられましたか?

GEN(B&Vo)「こんなに知ってくれてるんだな、っていうことに対して、正直凄く驚きましたね。今までは、若い女の子とかに声をかけられるようなことは何度もあったんですけど――最近は、『あんまりライヴに頻繁に来るような人ではないかもな』っていう、30代後半くらいの方に『むちゃくちゃよかったです!』『好きです!』って声をかけられたりもして。ライヴに来れなくても、曲を全部知らなくても、僕達のことを知ってくれてる人が凄く増えて嬉しいなって思う機会が、今年は凄く多かったと思います」

HIROKAZ(G)「あとはやっぱり、フェスに呼んでもらえるようになったのは大きかったと思います。いろんな年代の人が観てくれる場だし」

GEN「そうだよね。ジャンルとか関係なく、今まで一緒にやってこなかった人達と同じ場所でやれるようになってきたので。それはいい機会をたくさんもらってるなっていう感じなんですけど」

■音楽的な面で言えば、『sonor』から『CAVU』までの過程で、4人が自由に自分の引き出しを開けられるようになってきたわけですよね。メロディックパンクもヒップホップもポップスモータウン調のものもスムーズに溶け合う曲が、フェスっていう多種多様のリスナーが集う場所で格好の舞台を得たっていう言い方もできますよね。

GEN「それも結果的になんですけど、ジャンルとかで音楽を聴かない人達が聴ける曲を作れてたんだなって、気づかせてもらえたというか」

■前回のツアー密着の後、GENくんが「初めて観てくれる人が一気に多くなったことで逆に気づけたのは、僕達はハイクオリティなショーを見せたいんじゃなくて、やっぱりライヴがやりたいんだっていうことなんです」と言ってくれたのが印象的だったんですが、決まり切ったものとか予測を超えるような、何が起こるかわからない生身のステージを心から楽しんでいる4人の姿に人はグッときてるんじゃないかなと思うし、その熱い遊び場感こそが、この状況の一番の核なんじゃないかなって思うんですよ。

KOUHEI(Dr&Cho)「確かに、そうやって自由になってきた自分達の曲に対して、何も予想しなかった部分で『こういうふうに乗ってくれるんだ』っていう反応もあるし、そこでの驚きとか面白さが自分達にも跳ね返ってきているような感覚はあって。逆に、『ここで行かないんだ?』っていうのもあるんですけど(笑)、それも面白いし、それが、最近よく感じられることですかね」

■なるほど。そこで、今回メジャーで初のシングルが出ます。今話してくれたような面白さ――飛べたり、キュンとする切なさがあったり、歌えたり、っていういろんな一面を1曲ずつに凝縮してきたシングルだと感じたんですが。自分達ではどういう感触を持ってますか?

KOUHEI「自分達としては、こういう状況に対してどういう曲を作ろう、みたいな話し合いとか、ライヴでこうしたいからこういう曲を作ろう、みたいな話し合いも全然なく作っていった作品なんですけど」

GEN「というか、方向性みたいなものもみんなわからなくなってたっていうのはありますね。どうしよう?みたいな」

■それは、作るのが大変だったということ?

GEN「いやー、大変でしたね。ずっと曲を作ることは作ってたんですけど――締切もタイトだったし、その焦りとかストレスがあって。だから、結構雰囲気が悪かったんですよね。それこそ、みんなが『次どういう曲をやったらいいんだ?』ってわからなくなっちゃってたんですよ」

■それは、曲のハードルが上がってて、そこをクリアするものが出てこなかったっていう話なのか、そもそも着地点がなかなか見えなかったっていう話なのか、どうだったんですか?

GEN「うーん……何が自分達の正解かわからなかった、っていう感じだったんですよね。たとえば前のシングルの『YON』の時で言えば、たくさん曲を作ってる中で、話し合わなくても『この曲が入るだろうな』っていうのが共有できてたんです。だけど今回は、『これがいいと思うんだけど』『うーん……』みたいな感じを繰り返していて、次をどういう作品にするのかっていうのが自分達で全然見えなくて」

■じゃあ逆に訊くと、今まで、フォーリミにとっての「次の作品はこういうところに向かおう」っていう指針は自分達の活動のどういう部分から生まれてきていたものだったんですか? 

GEN「うーん……たとえば『YON』の“swim”っていう曲で言うと――その前の『monolith』のリードが2ビートの“monolith”っていうカッコいい曲で、その曲である程度自分達を支持してくれる人が増えて。であれば、その次はもう少し認知を広げられるものを作ろうっていうタイミングだと思ったところから“swim”みたいにポップなアプローチの曲がいいよねって共有できてたんですよ。やっぱり、認知が広がるにつれて『こういう曲がもっとあったほうがいいんじゃないか』って考えて曲を作っていったところはあったんですよね。だけど、『CAVU』でいよいよちゃんと評価されてしまって、ツアーもやり切れたし、いい段階を昇って状況が一気によくなったからこそ、次はどうなるんだろう?っていうのが全然想像できなかったんですよ。上に上がっていきたい、っていうイメージは常に持ってましたけど――この先は全然考えてなかった」

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text by矢島大地

『MUSICA11月号 Vol.103』

Posted on 2015.10.17 by MUSICA編集部

キュウソネコカミ、猛烈に語り倒す
アルバム『人生はまだまだ続く』全曲解説!

俺らが本当に心から好きなことをやった、
最深の一番やりたいことが詰まったアルバム。
振り切れ方も相当凄いし、
このアルバムは絶対まったく媚びてない。
けど、お客さんへの愛はある

『MUSICA 11月号 Vol.103』P.66より掲載

 

■前号の表紙に続き、今月は全曲解説です。

ヨコタシンノスケ(Vo&Key)「セイヤの顔が物議を醸し出した表紙ですね(笑)」

■物議醸してたね。でも別に小顔処理したわけでもないし、特に何もしてないんだよなー。

ヤマサキセイヤ(Vo&G)「肌だけっすか?」

■いや、肌も特には。でもライトかなり強くパシッと当ててるし、あのサイズになると目立たないのよ。だからよく見るとシワあるよ?

ヨコタ「奇跡の1枚やったのか(笑)」

ヤマサキ「いや、恐竜みたいな顔してませんでした? ちょっともう1回表紙やらしてください!」

■ははははははははははは!

ヨコタ「次はもっとクリープハイプばりにセイヤの顔をアップにするってことで!(笑)」

■ま、それは置いておいて。どうですか、あれから取材でアルバムの話をすることが多かったと思うんだけど、リリースも迫ってきた今、改めて自分達にとってどんな作品だと感じています?

ヤマサキ「いろんなインタヴューで言ってるんですけど、どんなアルバムなのかは自分でもよくわかんないんですよ。やっぱね、ライヴで演奏してみないとわからん。でも、今回曲にはめっちゃ自信あります。僕らずっとカツ丼みたいな曲ばっかりのアルバムやったのが、今回はカツ定食になってるなって話になって」

■ああ、それはいいたとえだね。

ヤマサキ「箸休めもあるし、めっちゃいいアルバムになってると思うんですよ。ただ、買ってくれたお客さんの評価がどうなのかと、ライヴでの評価がどうなのかを知ってから改めて『人生はまだまだ続く』というアルバムが完成すると思う」

ソゴウタイスケ(Dr)「今回、音楽的にも今まであんまりやったことなかったことに手出してるんで、『こういうのもできるんですね』っていうことを提示できたと思っていて。『サビでこういうノリって今までなかったよな』っていうのもあるんで、個人的にはライヴでやるのが楽しみですね」

オカザワカズマ(G)「僕ら毎回制作するのがギリギリなんですけど、今回はギリギリながらも多少の余裕があって。その余裕があったから、『もっとこうしたらいいんじゃないか』っていうのを前回よりはできたのかなって思います。で、その小さいこだわりみたいなのが随所に表れてるアルバムになったんじゃないかな、と」

(中盤略)

 

1.泣くな親父

 

■これはなんと、ウチの連載での「お父さんがパソコンでこっそりアダルト動画を見てるのを知ってしまい、嫌いになりそうで悩んでる」という投稿へのトークが基になってるという曲で!

全員「ありがとうございまーす!(笑)」

ヨコタ「ほんまにMUSICAとのタイアップみたいなもんやからな(笑)」

カワクボ「しかもリードっすからね!」

■嬉しい! いやぁ連載やってよかったよ。これ、そもそもはどういうきっかけだったの?

ヤマサキ「メジャー行ってから、たとえば『メガシャキ』の曲出してみませんか?みたいな提案があるわけですよ。で、僕らはそういうの断らず、できそうならやろうという感じでトライするんですけど、これはその内の1曲で。元々は『好きな人がいるから、学校に行くの楽しい!』みたいなテーマの曲やったんですけど」

■そうなんだ。確かにサビはキラキラしてるね。

ヨコタ「そう、サビ終わりの♪パシャーンみたいなやつは、サイダーがスパークする感じですね」

ソゴウ「あれは今までにない感じでしたよね(笑)」

■それが親父の涙パシャンに変換されたのか(笑)。

一同「ははははははははははは」

ヤマサキ「でも、方向転換してからのほうが曲作るの早かったっすね」

オカザワ「イントロからサビまでのデモの部分って、今の感じとそんなに変わんなかったんすよね。でも歌詞が親父になってピッタリきた」

ヤマサキ「激しさもあるしな」

ヨコタ「で、親父の気持ちを歌うところは俺が歌ってるんですけど、これはもうセイヤが(笑)」

ヤマサキ「ここは絶対シンノスケに歌わせようと思ってて。むっちゃいいメロディなんで本当なら自分で歌いたいんすけど、ここはやっぱり、あの投稿で一番盛り上がってたシンノスケに歌ってもらったほうがいいかなって思って」

■完全に親父に感情移入して熱くなってたもんね。

ヨコタ「そうっすねぇ。いまだにその気持ちはなくなってないっすよ。それを込めて歌いました」

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text by有泉智子

『MUSICA11月号 Vol.103』

Posted on 2015.10.16 by MUSICA編集部

WANIMA、パンクシーンを超えて輝く
次なる太陽はこのバンドだ!
ファーストフルアルバム『Are You Coming?』で
さらなるバンドの本質に迫る

究極のアンチは諦めないことだと思ってるんですよ。
何もないところからでも何かできるんだって信じてるし、
人と人の繋がりがあれば、諦めない先にネクストがある。
その姿勢は絶対に変わらないんです

『MUSICA 11月号 Vol.103』P.58より掲載

 

■いよいよきた!っていう、素晴らしいファーストフルアルバムです。アタマからケツまで粒が揃ってるし、情景がどこまでも広がるようなメロディの力、歌の信頼感、メロディックパンクを超えていくソングライティング、そしてバンド3人の絆が強く乗っかる曲――WANIMAの持っている武器と輝きが、全方位に発揮されたアルバムだと思いました。

松本健太(Vo&B)「ああ、嬉しいです! もうね、その言葉だけ………♪頼りにしてたぁ~(“HOME”のメロディで)ですよ(笑)」

■はははははは。デビューして約1年っていう短い時間で、もはやメロディックパンクのシーンの外に広がるような熱狂を生んできたバンドだと思うんですが、そのタイミングにドロップするアルバムとしても、単純に音楽の煌めきしても、最高の1枚だと思います。

松本「ありがとうございます! でも、実は前回のシングル『Think That…』を録った時に同時に録ったアルバムなので、前回のシングルと気持ちはほぼ一緒なんですけど――でも、それこそお客さんが2、3人の時からやってる“1CHANCE”や“THANX”も、それ以外には新しいWANIMAもちゃんと入れられたなって思うので、自分でも凄くいいなって思います」

■藤原さんと光真さんは、今作を作ってみてどういう実感を持ててます?

松本「どうですか、光真さん! 聞かせてください!」

西田光真(G)「うーん……いい感じ、ですね(笑)。最高な出来というか、好きな曲だけを入れられたなって思います」

藤原弘樹(Dr)「今まで出してこなかったWANIMAも、たとえば“Hey yo…”とか“SLOW”では出せてると思いますし。それもいい曲になったので、それが嬉しいですね」

■“SLOW”と“Hey yo…”はめちゃくちゃいいですよね。ゆったりしたレゲエ、ボッサなアレンジで聴かせるのも新鮮で。そして、デビューから約1年経つわけですが、このアルバムに至るまでは、どういうイメージやヴィジョンを持ってやってきたんですか?

松本「実は、『Can Not Behaved!!』を出す時から、この辺で、フルアルバムを出そうっていうのは何となく考えてたんですよ。だから、1枚目の作品を作る段階から曲はどんどん作ってたんですよね。だから自分達としては、とにかく追われるよりも追っていたいっていう思いでずっとやってただけなんですよ。だから、振り返る間もないくらい、あっという間の1年だったなぁっていう感じで。ヴィジョンとかイメージとかは全然なく、とにかくライヴもツアーもやって、その合間にスタジオに入って、その中で『あ~、今のは1曲目っぽいのキタね!』とか言いながら“ここから”ができたりして――こうしよう!っていうよりは、『ああ、キタね!』っていう感覚のほうを狙ってた1年で。そういう3人の感覚だけでやって、だからこそ3人が好きな曲をちゃんと作れたなって思います」

■その感覚は凄く大事なことだし、3人が本当に楽しそうに音楽をやっている姿が曲と音に出てくるのがいいですよね。

藤原「僕ら、全然『こういうの作ろう!』みたいなのがないんですよね」

西田「たとえば僕の考えるフレーズが曲のイントロになるっていうのが多いですけど、実際はちょっとだけ考えて、あとはスタジオで弾いて、ふたりの意見を聞いて曲にしていくっていう感じなので――曲もそうですけど、WANIMAのすべてにおいて3人で作ってるなっていう感じはあります」

■それは、ライヴにしても曲にしても、3人で作らなくちゃつまらない、みたいな気持ちなんですか?

松本「どうなんですかね……? そういう星の下に生まれたんかな。まあ、僕がベースだけで作っていく曲もあるっちゃあるし、光真の弾いてるギターとか藤くんの叩いてるリズムを『それいいやん』って言って曲になっていくこともあるし、なんとも言えないところはあるんですけど」

藤原「でも、それが楽しいからね。まあ、楽しいっていうか……全部、それでできた曲達なんで、それなら間違いないっていう感じですかね。だから逆に言えば、この3人がいいと思ったことしかやってないんですよね」

■3人が「いい」と思える時っていうのは、何を共有できた時なんですか?

松本「やっぱり、曲を作ってて、ライヴでの光景をバーッと思い描いて『こうなるんじゃないか?』ってイメージできた時の感じがやっぱり一番いいのは変わらんと思いますね」

■ライヴの光景――言い換えてみると、人を巻き込んでいけるイメージが曲の中で持てた時にグッとこられるっていう?

松本「ああ、そういうのもありますね。でも、そのイメージとは全然違う感じになることもあるし、全然違うリアクションになることもあるんですけど。ただ、曲を作る時に思い描いたり想像したものの再現、みたいな感覚は結構あると思います。そこのアンテナが、3人とも近いと思うんですよ。で、音楽だけじゃなくて、笑いのツボとかも似てると思うし、逆に、そこがズレてたらキツいと思うんですけどね(笑)」

藤原「不思議なもんですよね」

松本「同じ熊本出身っていうとこなのか、なんなのかわからんけど」

西田「や、でもそれは結構あるよね」

■この1年でWANIMAを観にくる人も飛躍的に増えたと思うし、それこそライヴの光景ももの凄い熱狂になってますけど、それでも自分達が信じるのはそういう3人の空気感だっていうのは変わらないんですか?

松本「そうですね。そこはずっと素直ですね。ギターとベースとドラム、3人で歌って、3人で音楽やってるだけで……シンプルです(笑)」

■そうですよね。音楽に対しても凄くシンプルな楽しみ方をしているバンドだなぁと思うんです。たとえば今作には“Japanese Pride”という曲がありますが――。

松本「おっ! いいですねえ! “Japanese Pride”、好きですか?」

■この曲最高です。クールな演奏と押韻のリズムもサビの爆発力も凄く壮快で。

松本「やった!!!!! そう言ってもらえて嬉しいなぁ(笑)」

■ガッツポーズ出ましたね。で、話を戻すと、この曲に<今は立派な君のパパも 1度は聴いてたんだHi-STANDARD/Reggae PunkにHiphop R&B 演歌にRockも含めて/時代を超え俺たちのルーツ 次第に口遊む また必ず>っていうラインがありますけど、この歌詞にある通りのフラットな音楽への触れかたと消化のしかた、それを今の音楽に更新していってるのが、WANIMAっていうバンドそのものだなって思ったんですよ。

松本「自分達がやってきたことを振り返るヒマは全然なかったですけど――でもやっぱり、(横山)健さんに話を聞いたり、東北のAIR JAMを実際に観に行ったりしてみて、20年前のあの時代にハイスタがいて、それででき上がったムーヴメントのことを想像したら、やっぱり異常だなと思ったんですよ。そういうところから出てきた曲で」

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text by矢島大地

『MUSICA11月号 Vol.103』

Posted on 2015.10.16 by MUSICA編集部

Base Ball Bear、
ロックに警笛を鳴らす挑戦的な原点回帰
『C2』に託す意志

僕らが当たり前だと思っていたことが、
音楽ストリームサービスの登場で
やや滲んだのは事実だと思うんですよ。
その意味ではこのアルバム、とても小難しい作品だと思いますよ

『MUSICA 11月号 Vol.103』P.44より掲載

 

■3ヵ月前にアルバムの仮音源と仮資料をいただきましたけど、完成したものを聴いてそこから内容はあんまり変わってませんでした。ただタイトルが変わったね。

「そうですね。最初はセルフタイトル(『Base Ball Bear』)でやろうと思ってたんですけど、最終決定はちょっと流してたんです。そしてマスタリングやって、落ち着いてじっくり聴いた結果、セルフではなくタイトルはこれ(『C2』)かなっていうところになったんですよね」

■今回のアルバムは非常に興味深い作品で。僕の印象は新しいのか古いのかまったくわからない、だけど凄くロックアルバムって感じで。

「なるほど、ふふふふふふふ」

■実際にアルバムタイトルも、メジャーの1stアルバムの2ndヴァージョンだっていう意味合いで。これはコンセプチュアルなものなの? それとも感覚的なものなの?

「たとえば前作の『二十九歳』とか、その前の『新呼吸』とか、その前の『(WHAT IS THE)LOVE & POP?』とかもそうですけど、うちのバンドってコンセプトアルバムが多いんですよ。ずっとそういうふうにアルバムを作ってきていたし、特に『二十九歳』は長尺かつ、やり切った作品だったので、今回はタイトな作品にしたくて。なので、コンセプトアルバム的な体裁はとっていないですね。……でも、最近、音楽ストリーミングサービスのことを考えたりしているうちに、アルバムを作るということがプレイリストを作るのに近いというか、近くなっていってしまうのかなっていう想像をしていて。アーティストが作るべきなのは『プレイリストという名のアルバム』みたいな時代が来るかもしれない、と。そうなると、コンセプトアルバムっていうのは凄く有効な手段になっていくんじゃないかな、と。言い方を換えれば、確かに、アルバムという楽曲の集合体ほどまとまりがあるプレイリストはないですもんね」

■今の「アルバム=ただのプレイリスト」というコンセプトアルバムに対して小出くんはたぶんシニカルな発言をしたと思うんだけど、小出くんが言うプレイリストっていうものと、既存のアルバムっていう、この概念の違いを教えて下さい。

「全くの別物だと思っていますよ。でも、それぞれが接近してきて、ニアリーイコールになってしまうんじゃないか、っていう」

■今、話を聞いて思ったのは、プレイリストっていうのは完全にサービス、要するに聴き手に対しての、幕の内弁当のような適切な配置をされたもの。で、アルバムっていうのはもっと自己表現であるとか、作品という表現性がインクルードされてるものっていう違いに聞こえました。実際にそう思うしね。

「本質的にはそうなんですけどね。ただ、僕らが当たり前だと思っていたそんなことが、音楽ストリーミングサービスの登場でやや滲んだのは事実だと思うんですよ。だから僕らもそうですけど、理念や大義を言っていこうという反射をしているアーティストも増えましたよね。野暮ったいと思わなくはないけど、野暮ったいくらいスタンスを明らかにした方が良いと思って。そういう意味ではセルフタイトルも有効かなとは思ったんですけど、今回のアルバム全体のテーマをタイトルとしてどう還元しようかと最後に考えた結果、『C2』っていう言い方が一番適切かなって思って」

■どうして、こういった第二の再出発、みたいな、原点回帰を伴うタイトルになったんですか?

「バンドの現在が色濃く反映されたアルバムにはなりましたけど、うちのバンドにとってのセルフタイトルって、もう一段上の話だと思ったんですよね。まだここじゃないな、と。だから、バンドの現在もアルバムの内容も包括するような作品タイトルをしっかり考えようということになり、『二十九歳』というアルバムが自分達のバンド活動の中での大きなフェーズ1の最後という感じがしてたので、これからフェーズ2ですよという意味でこのタイトルっていう感じですかね」

■今話してくれたことってふたつの要素が見受けられる。それは30代になったところで新しいスタートが始まるんだっていう自意識的なもの。あとは自分の中にあるひとつのスタイルはやり切ったなという感覚。これは両方とも持ってた上でここに行き着いてるものなんですか?

「まさにそうだと思いますね」

■特に後者の部分なんですけど、小出くんはたぶん基本的に曲を作るっていうことに対して枯渇というものがない人だと思ってるんですよね。ただ目的を持って、Base Ball Bearで今何をやるべきかっていうことを考えた時に、『二十九歳』の後で結構迷ってたんじゃないかと思ってました。それがたとえばRHYMESTERや岡村靖幸などとのコラボレートシリーズとか、このアルバムに至るまで凄くいろんなことをBase Ball Bearとしてやられていたと思うんですよね。それらが迷走というわけでは全くないけど、でもバンドの筋道としては迷ってると思ってました。

「鹿野さんが言ったみたいに、僕はほんとにあんまり枯渇しないタイプというか。たとえば岡村さんと一緒にやる時みたいな感じで、単純に楽しい音楽を作りたいとか、新しい面白い作品を作りたいみたいなところには割と柔軟に飛び込んでいけるタイプだし、その場で全然音楽を楽しめる人なんですよ。でも、だからこそバンドでやる上で何が一番大事かっていったら、意義とか大義とかで。バンドっていう自分が所属しているグループで何を世の中に対して発信するか、バンドという単位で何を言っていくかっていうそのものが凄く重要というか。やっぱりバンドで、あとロックをやってるっていう、そこが一番重要なのかなと思いますね。その中でそのバンドでロックをやるというのが、とても難しいとずっと思っているんです、今も。それが加味されたのがこのアルバムなんですよねぇ。だからこのアルバム、とても小難しい作品だと思いますよ」

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text by鹿野 淳

『MUSICA11月号 Vol.103』

Posted on 2015.10.16 by MUSICA編集部

ゲスの極み乙女。、
その宇宙を辿る新作『オトナチック/無垢な季節』を機に、
川谷絵音に挑む禅問答

僕らっていわゆる「フェス出身バンド」では
なくなってきたのかなと思っていて。
ビートが速くて盛り上がれる曲がたくさんあることより、
みんなが知ってるヒット曲がたくさんあることのほうが
今は大切だと思っています

『MUSICA 11月号 Vol.103』P.52より掲載

 

■今年のラヴシャ(SWEET LOVE SHOWER)では初日のヘッドライナーを務めたわけですけど。割とフェスで大切な役割を任されることも多くなってきたよね。

「あぁ、確かに1年前の僕らって小さいステージに出て入場規制かかるみたいな感じでしたもんね」

■で、2年前はロクに呼ばれないみたいな。

「そうですそうです(笑)。……やっぱり今年になって状況は変わったんだなって実感しました」

■そういう状況の変化を感じて自分の胸にグッと来るものはあったりしたんですか?

「いや、あんまりなかったですね。だって8月はずっとレコーディングとフェスで『とりあえずやらなきゃ!』って感じで慌ただしく過ごしていたんで、感慨にふける時間がなくて(笑)」

■まあそれもすべては絵音くんの幸福な自業自得なんですが(笑)。僕は今回のラヴシャのステージを観て、フェスの中での新しいヘッドライナー感を感じたんです。ゲスの極み乙女。って「盛り上がれる」ってところで火がついた部分もあったけど、今は盛り上がり切らない音楽の中から生まれるポップ−−−−そういうクールな部分が今のこのバンドの音楽を支えているし、そもそも絵音くんの人としての本質もそこにあるんだよね。この前のアクトは、フェスに存在する独特の狂騒的感動を出すのではなく、自分達の今の気分を忠実にフェスの現場で表現している。それをヘッドライナーとして披露しているのは新鮮だったんだよね。

「正直、フェスもフェスのお客さん客もあんまり盛り上げる必要もないのかなって。ぶっちゃけて言うと、僕らっていわゆる『フェス出身バンド』ではなくなってきたのかなと思っていて。もう、あんまりそういう『盛り上がりたい』みたいなのは求めてないと思うんですよね。確かに昔はそれが求められてたし、それに応えてもいたと思うんですけど、今はそんなにそれが求められていないように感じていて。たぶん、ビートが速くて盛り上がれるってことより、お客さんが知っているヒット曲がたくさんあることのほうが今は大切だと思ってて」

■なるほど。憶えられる曲=ポップスをやっていくバンドなんだってことを、フェスの現場で受け止めて体現したステージだったんだね。

「そうですね、きっとそういうことだと思います」

■それは今回のシングル含めて今のゲスの姿勢であり、バンドとしても正論だと思います。今回の新曲達は言葉が非常に強いよね。特に“オトナチック”と“灰になるまで”はとても強い。コピーとしても裏にあるメッセージとしても何しろ強い。その流れって『ロマンスがありあまる』『私以外私じゃないの』からも感じていたんですけど、絵音くんの中でここまでのシングルの流れは3部作って意味合いがあるの?

「そうですね、それはあります。ゲスの極み乙女。流のポップス――『ゲスの極み乙女。はこういうものだ』っていうのを提示するための3曲っていう意味合いは自分の中では大きかったですね。本当は4月に『私以外私じゃないの』、6月に『ロマンスがありあまる』、8月に今回の作品を出して、3作連続・2ヵ月おきリリースって形で、より3部作っぽい見せ方にしようと思っていたんですけど、『私以外私じゃないの』が予想以上にロングヒットしてて、『ロマンスがありあまる』も凄い耳に残る感じだったので、ここで出しても、印象が弱くなってもったいないなと思ったんですよね。それでリリースの日を後ろにずらして、10月にしたんです。もうちょっとそのふたつのシングルを巷で流したほうがいいんじゃないかっていうのがあったんで」

■なるほど。過剰なアレンジや大袈裟な展開はないけど、滲み出てくるコピー性の強さが楽曲のキャッチーさになっているのがこの3部作の特徴なんじゃないかなと感じていたんですけど。

「そう、まさしくそうなんです。サビの言葉の強さ――ゲスの歌詞の黄金率がこの3部作には共通していますね。……その言葉の強さが人の頭に残ればいいなと思ったし、残るような音楽を作ろうと思っていたので。indigo(la End)の歌詞って完全に失恋に寄っているじゃないですか。だからindigoも歌詞が強いんだと思うんですけど、それとは違った歌詞の強さをゲスで出したいとずっと思っていたので、それがこの3枚のシングルで形になってよかったなと思いますね」

■indigoの歌詞って、紙の世界で言うと「書籍」とか「単行本」。方やゲスの歌詞は「雑誌」だなと思っていて。より「世相」や「今」、あとは「コピー性」っていうのが強く出ているのがそう思わせているんじゃないかなと思うんですけど。

「そうですね。雑誌っぽいし、広告のコピーでもおかしくないなと思います。ちょっとコピーライターっぽい感じで歌詞を書いているのかなって自分でも思いますし。僕、ゲスの場合はサビから歌詞を作るんですよね。indigoはストーリー性があるんで、メロから順番通りに作ったりするんですけど。そもそも作り方がふたつのバンドでまったく違うんです」

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text by鹿野 淳

『MUSICA11月号 Vol.103』

Posted on 2015.10.15 by MUSICA編集部

米津玄師、確信にして革新の傑作、
『Bremen』で切り拓いた新境地

自分とばっかり向き合って、他の人がどうだっていうことにまったく目を向けずに、
自分が思う美しさばっかりを追い求めていくうちに
気がついたら自分は荒野にひとりでポツンと立ってたんです。
そこからずっと、その荒野から抜け出すにはどうしたらいいか考えてた

『MUSICA 11月号 Vol.103』P.34より掲載

 

■『diorama』にしても『YANKEE』にしても、米津くんは毎回アルバムの度にちゃんと自分を更新する傑作を作ってくるなぁと思っているんですが、それにしても今回は素晴らしいと思います。

「ありがとうございます」

■ご自分ではどうですか?

「リリースする度に思うんですけど、いいものを作ったっていう自負だけは残ってるんですけど、でも、まだ人に聴かせてない状態だから、『果たしてこれでよかったんだろうか』という不安が入り混じっていて……あんまり客観的な判断が自分ではできないんですよね」

■そうなんだ。でも手応えはあるんでしょ?

「そうですね。いいものを作ったという自負はあります」

■『diorama』完成以降、『サンタマリア』というシングルを作った頃から、米津くんは自分の音楽を作って人に向けて放っていく、世の中に対して発信していくということに関してとても自覚的だと思うんですけど。言い換えれば、音楽を生み出すことができる自分の役割、大げさな言い方をすればそこにある使命感と真摯に向き合いながら創作活動を続けているっていう言い方ができると思うんだけど、その中で今作は、ひとつ自分が進むべき道、担うべき道をちゃんと見つけることができた、そしてそれを覚悟を持って選び取ったアルバムだというふうに感じたんですよね。で、それと同時に音楽性もアップデートされて、新しい米津玄師の音像をちゃんと手に入れたなという感じがしたんですけど。

「そうですね、音像は『YANKEE』の時もそうだったと思うんですけど、ただ、振り返ってみたら半分半分だったなと思ってて。あの時のアルバムも移民(=YANKEE)いう意味合いをつけて、違う畑に移っていく、それによって自分がやってきたことも作り変えていくという意志を込めたアルバムだったと思うんですけど、でもまだ『diorama』とか、それ以前に作り上げた方法とかもあのアルバムには入ってたし……それは自分のことしか考えずに、いかに変な音にするかとか、そういう考え方で作ってた曲が半分くらい残ってて。それはそれでよかったと思うんですけど、次に何をやるかって考えたら、その頃に培ってきたものっていうのは1回全部否定して、まったくなかったものだけで1枚全部やろうじゃないかっていうふうに思って。それは作り始める前から意識してましたね」

■その新しい音像が、世の中的にはまず“アンビリーバーズ”で出ていって。これはエレクトロニックなダンスチューンで、アルバムの中でもかなり振り切った曲ではあるんですけど、これはアルバム制作のどのくらいのタイミングで完成したんですか?

「“アンビリーバーズ”も結構難しくて」

■原曲は『YANKEE』の頃からあったと言ってましたよね。

「はい。そもそもは『YANKEE』に入るか入らないか、みたいな状態で。結果的に時間が足りなくて入らなかったんですけど、ただ、芯の状態だけはあって。で、そこから引っ越しをして、引っ越しをすることによって曲がよく書けるようになって(笑)。でもこれが完成したのは、割と最後のほうだったかなと思います」

■“アンビリーバーズ”はそれこそギターも入ってないエレクトロだけど、アルバムはもっと様々な音像の楽曲が入っていて。ジェームス・ブレイク以降のポストダブステップ的なインディR&Bもあれば、ギターとシンセが美しいアンサンブルを描く曲もあるし。でも、どのタイプの楽曲も明確にアップデートされたアプローチと景色をもったサウンドの中で、歌が美しく響いてくるものになっていて。このあと精神的な話はたっぷり聞きたいんだけど(笑)、それだけじゃなく、この純粋な音楽的な進化と開花は本当に素晴らしいと思った。ちゃんとポップミュージックとして半歩先を行くものを作ってきたなと思うし。半歩先って、とても難しいことなんだけど。

「そう言ってもらえると本当に嬉しいです。自分はそういうことをちゃんとやっていきたいとも思ってるから、そこは結構気にしてて。ポップミュージックってそういうものじゃないですか、半歩先のものじゃないですか」

■そうなんだよね。ポップっていうのは、常に更新されていくべきものなんですよね。ただ、それが何歩も先になってしまうと、それはまた違うものになっていくから。

「そうなんですよね、先に行き過ぎてもいけないなって思うから、凄い大変でしたね」

■私はこれを聴いて、トム・ヨークが思い浮かんだんですよ。それはどういうことかっていうと、あの人は常に前衛的な音楽をチェックして、それを自分やバンドの音楽に取り入れて音楽性を更新していっているけど、でも実は、ずっとフォークソング、ポップソングを歌ってるんだよね。それを、その時代に機能するもの、その時代の目を開かせるものにするために、ああやって先端的なことをやっていくという。その感覚に近いなと思って。

「それはとても恐れ多いというか、恐縮なんですけど……」

■まぁそうかもしれないですね(笑)。

「でも、『diorama』を作る前から、レディオヘッドみたいに常に変化する作品を作っていきたいと思ってたので。それは嬉しいです」

■で、それができるのは、やっぱり米津くんの歌の強さがあるからこそだとも思うんです。自分のメロディと言葉に確信があるからこそ、音楽性を変幻していっても本質が揺るがないというか。

「そうですね。自分が音楽において何を一番重視してるかっていったらやっぱり歌だし、もっと言えばメロディラインだし、言葉もそうだし。自分が作る歌があって、それに自信を持ってる自分がいる限り、どういうことをやったとしてもそれは自分になるんだろうなっていう自負みたいなものはあるんですよね。だから自分がこうやっていろいろやることを変えてやっていけてるっていうのは、自分が持ってる能力のおかげなのかなとか思ったりするし……それは一種の自信というか、自信があるからできるんだろうと思います」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA11月号 Vol.103』

Posted on 2015.10.15 by MUSICA編集部

plenty、孤独と葛藤に膝を抱えた少年が
生命の歓びを歌うまで――
到達点にして新たな始まり、名作『いのちのかたち』を
メンバー全員ソロインタヴューでディープに紐解く

最初の頃は、怒りがツタみたいに自分に絡まってたんだと思う。
でも、そのツタが徐々になくなっていって、このアルバムが作れたんです
しがらみって言ったらおかしいけど、そういうものが全部解けた感じがある

『MUSICA 11月号 Vol.103』より掲載

 

Interview with 江沼郁弥

 

■本当に素晴らしいアルバムができたので、今回はバックカバーで特集を組みました。

「嬉しいなぁ。そう言ってもらえると本当に嬉しいですよね」

■これまでの2枚のアルバム、『plenty』も『this』も本当に素晴らしかった、つまりplentyは初期の頃から常に名曲・名作を作り続けながら進化していると思うんですけど、今回は心技体のすべてが優れている作品になりましたよね。メッセージも、楽曲も、バンドの演奏も、すべてがまたひとつ高い次元に到達したアルバムだと思う。

「おぉーっ、それいいですね。やっぱりバンドになってよかったんですよね。バンドになったからこそできることが増えたし、何より制作中も『ああ、楽しみながら音楽を作ってるなぁ』って感じることが多くて。俺個人としてはそれが大きな変化だった。ずっとひとりで根詰めてやるタイプだったから。ただでさえ痩せてるのにもっと痩せるみたいな感じで、ずーっと家にこもってやってたから」

■制作を始めると、何週間もコンビニの店員かデリバリーに来たお兄さんとしか喋らないことがあるってよく言ってたよね。

「そう。だからあの頃はお弁当に割り箸つけてくれただけで泣けて、それはそれで純粋だった気もするけど(笑)。今はもう違うかな」

■というか、ちゃんとバンドで一緒に楽しんで音楽を作ったのは、デビューの頃から考えても、おそらく初めての経験ですよね。

「そうですね。どこか心に余裕があるっていうか、誰かを思いながらやるみたいなことは今までなかったから。前はもっとオレオレな感じだったし。それがなくなってきてるな。一太を入れる前に願ってたこと、それがひとつここで叶ってる感じがするんです」

■バンドになりたいっていう気持ちは一太くんが入る前、『this』のツアーが終わった後から聞いてたけど、誰かを思いながら音楽を作りたいっていうことも思ってたんだ。

「そうですね。なんで音楽をやってるんだって言われたら、自己表現だから自分のためなんだけど、そこから人、人から自分みたいな感じというか……」

■ちゃんと気持ちの循環があるってこと?

「うん。誰かのためにってわけじゃないんだけど、ひとりきりでやっちゃわない感覚というか。……それこそ〝蒼き日々″を作った時なんかは『俺が正義だよ!』って言ってたから(笑)、ずっとそう思ってたかはわからないけど……いつからかそれを願ってましたね」

■一太くんが入って初めて作ったミニアルバム『空から降る一億の星』は、まずバンドという体を作りに行った作品だったと思うんです。だからこそ、初期衝動が迸ってるところも含め、フィジカルなバンド感やアグレッシヴなエネルギーが強かったんだけど。

「うん、そういうものを詰め込みたいなって思って作ったし、それができた作品だった」

■でも、今回の『いのちのかたち』はそれとはまた全然違う作品になったよね。あれからまだ1年しか経っていないのに、バンドが一気に成熟したし洗練していて、そこに驚いたんです。もちろんこのアルバムも、バンドのダイナミクスとグルーヴは今までのどの作品よりも強く感じられるものになっているし、それが音楽的なポイントにもなっているんだけど、ただ、同時に非常に緻密だし、非常に繊細なアレンジが施されていて。アプローチも多彩だしね。郁弥くんとしては、どういうものをめざしていたの?

「最初は『this』の緻密さみたいなものを3人でやるような感じのものを考えてた。あとは『plenty』っていうアルバムよりもplentyっぽいアルバムを作りたいっていうか……」

■『plenty』は、どちらかと言うと江沼郁弥っていう感じのアルバムだもんね。

「そうそう、そうだと思う。別に独裁的に何かをやってたわけではないけど、でも聴き返すとそうですよね。『this』もそうだと思うし。けどやっぱ、この『いのちのかたち』は違う。凄くバンドのアルバムだなぁって感じがするし、今までとは別の達成感があって」

■達成感としては何が違うの?

「前だったら『あー、終わったー!』って感じだったんだけど、今回は『やったー!』って感じかな。それはたぶん、ひとりで作ったものとみんなで作ったものの違いというか。もちろん歌詞はひとりで書いてるけど、どういう楽曲、どういうアルバムを作ろうとしてるかっていうことに関しては、バンドになったことでいちいち話すようになったんですよ。『こういうイメージだから、こういうグルーヴにしたい』、『こういうことを表したいから、こういうサウンドにしたい』っていうのをメンバーと話すようになった。それも凄く大きくて。……なんか勉強とかって、人に教えると覚えるっていうじゃないですか。それと一緒で、人に話すことで自分の中でも濃くなっていくところがあって。『これはただのラヴソングじゃなくて踊れるラヴソングにしたいんだよ』って言っていくうちに、言霊じゃないけど、本当にそういうものになっていくっていう。そういうことが起こった」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA11月号 Vol.103』

Posted on 2015.10.15 by MUSICA編集部

星野 源、超待望のアルバム『YELLOW DANCER』発売決定!
レコーディング佳境の最中、
最速・最深の第一声インタヴュー敢行!

ブラックミュージックっ「ぽい」ものを作る意味は、俺はないなぁって凄く思う。
そうじゃなくて、ブラックフィーリングみたいなものをJ-POPに持っていく、
そのさじ加減は、俺にしかできないんだ!っていう、
それをやろうと決めて挑戦したんです。
「俺は日本人で、これは俺の音楽だ!」っていう、そういうアルバムになると思う

『MUSICA 11月号 Vol.103』P.16より掲載

 

(前半略)

■いよいよ新しいアルバムの発売が発表されました! 2013年の『Stranger』以来2年半ぶりとなる4枚目のフルアルバムで、タイトルが『YELLOW DANCER』と。このタイトルはもう決定なんですよね?

「うん。決定!」

■本当だったらこの表紙巻頭でアルバム完成をお祝いしたかったところなんですけど、今日10月1日現在まだレコーディングは続いていて――。

「そうなんです、あと少しで完成する予定」

■なので、今回はそのレコーディングの合間を縫ってこうしてお時間いただき、いち早く『YELLOW DANCER』に向けての第一声と、現状の途中経過をいろいろ聞いていければと思ってます。

「よろしくお願いします!……ふふ、途中経過を表紙で取り上げてもらうのって、きっと珍しいよね(笑)」

■まぁ多くはないかな(笑)。でも、アルバムはまだ完成してないけど、次々に届いてくる新曲がどれも本当に名曲揃いだから、ウチとしてはもう完全に盛り上がってて。今の段階でもう断言しちゃっていいと思うんだけど、これはよほどの間違いがない限り傑作アルバムになるとしか思えない!

「嬉しい!」

■特に、明後日(10月3日)から「めざましどようび」のテーマソングとして流れる新曲“Week End”が本っ当にヤバいなと思って、今から興奮が止まらないわけですよ。

「ははははははははは」

■Earth Wind & Fire(ディスコアンセム“September”は誰しも一度は聴いたことがあるだろう、全盛を極めた70年代から今も活動を続けるファンクバンド)の向こうを張るキレッキレのダンスナンバーでありながら、ちゃんと日本語の歌が乗っていて。これがお茶の間に普通に流れるとか、もう痛快でしかないっていう。

「これは本当にヤバいと思う。お茶の間で流れるのは俺も本当に楽しみ。しかも朝っていう時間帯もヤバい(笑)」

■“SUN”ができた時ももの凄い手応えがあったと思うんだけど、この“Week End”もあれに匹敵する手応えがあったんじゃないかと思うんですが、ご自分ではどうですか?

「ヤバいものができたなっていう手応えは、もちろんあって。でも、“Week End”に関しては、楽曲1曲としての価値っていうのももちろんあるんだけど、それよりもアルバムの中の一部っていう感覚のほうが自分では強くて。それが『めざましどようび』に出張している、みたいなイメージ。“SUN”の時は、『1曲で勝負!』っていう感じがしてたんだけど、でも“Week End”に関しては『アルバムの一部の強さみたいなものを担っている大事な曲』っていうか、そういう感じがしてるんですよね」

■…………なるほど。

「ん?」

■いや、この曲は本当に凄いと思うんですよ。こういう言い方もなんだけど、これだけファンキーでグルーヴィなダンストラックを作るのも凄いし、それがちゃんと日本語のポップソングになってるし。で、それだけのクオリティの曲を「アルバムの一部の強さ」と言えてしまうその感じが、次のアルバムのとんでもなさを物語ってる気がする。

「(笑)」

■確かに他のアルバム曲も聴かせてもらってるんだけど、どれも素晴らしい曲が並んでるし、タイプも様々だから納得ではあるんですけどね。

「もちろん“Week End”を作った時の熱量はやっぱり凄かったけど。ただ、あくまでもアルバムの構成の中の一部として作曲してるから。だから自分ではそういう印象かなぁ」

■ちなみに今回のアルバムは、全部で何曲入る予定なんですか?

「全14曲ですね」

■その内、これまでのシングルから“地獄でなぜ悪い”と“Crazy Crazy”と“桜の森”と“SUN”の4曲が入るっていうことは聞いていて。

「そうですね」

■で、さらに、現状新曲を4曲を聴かせてもらっています。それが“Snow Men”と“Week End”、そして“Friend Ship”、“夜”という曲なんですが。で、これでもまだ8曲なんだよね。あと6曲は今どういう状態なんですか?

「残り6曲のうち1曲がインストで、オケは全部できていて、歌を入れるだけっていう状態まで来てます」

■歌詞は?

「歌詞も1曲を除いて全部できてる」

■おおっ! ということはもうかなり見えてるんだ。

「うん。ただ、ドラマの撮影があるので、すぐに歌入れができないっていう状態ですね」

■実際、今はどうやって両立させてるの?

「今の時期はドラマのスケジュールが中心なので、それに合わせて大まかに予定を立てつつ、撮影スケジュールが大体2~3日前に確定するので、それからスタジオを取って、エンジニアさんのスケジュール調整して……みたいな感じで結構臨機応変にやってもらっていて」

■なるほど。星野さんの場合、自分で歌だけ歌えばあとはお任せでいいやってタイプのアーティストではないじゃないですか。それこそすべての音のプロデュースはもちろん、ミックスの細かい調整まで含め、音楽の隅々にまで自分の神経を張り巡らせながら作品を作り上げていくアーティストだから。そう考えると、その中でドラマとアルバム制作という、まったく異なる作業を平行してるのって本当に凄いバイタリティだなと思う。

「そっかぁ……なんか割とずっとそういうふうにやってるから、自分では普通なんだけど(笑)」

■ま、そうだよね(笑)。

「でも、今回は楽曲にしてもアルバム全体にしても、やっぱり今までと違う感じが凄くあって。自分の挑戦だったり、やりたいことが最初から割とハッキリしてるんですよね。で、それに向かって作っていくっていうやり方だったから、やりやすかったと言えばやりやすかったかもしれない。目指す音楽の容量が前より大きいから、大変は大変なんだけど。でも『Stranger』の時の大変さとは全然違ってて。あの時は、自分の範囲以上を目指すというか……」

■それまでの自分の上限を超える、自分の殻を破るっていうことを、ひとつ目標に置いていたところもありましたよね。

「うん、まさにそう。だから割と闇雲にやっていたというか、ムダなことが多かったというか(笑)。とにかく必死で、なんか『とにかく大変でいればいい!』みたいな、むしろ『もっと大変じゃないとダメ!』くらいの感じだった気がしていて(笑)」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA11月号 Vol.103』