Posted on 2012.11.29 by MUSICA編集部

古川本舗、郷愁のフォークトロニカに秘められた衝動

別れこそが写す、始まりの物語。
静謐な音色に込められた
生命の衝動――
実はメタル/パンクから始まり
繊細なるフォークトロニカへと至った、
ネットから飛び出した次世代型アーティスト。
その異色の背景と核に迫る

■とても繊細で美しい世界を綴る方だなと思って。アコギや鍵盤にしても、エレクトロニックな音色にしても、まるで一枚の絵画を描くように音楽を紡いでいきますよね。ご自分では、今回の作品はどういったところを目指していったんですか?

「ファーストアルバムは、そもそもアルバムを想定して作っていたわけではなく、それまで作ってきた曲を整理したカタログ的な作品だったんですよ。だから今回は、まず自分はどういうものを作りたいのかというところから考えて……2枚目って凄い大事だなと思うんです。音楽的には1枚目より成熟していなくちゃいけないし、かつ、3枚目以降に何をするのかにも繋がなくちゃいけない。その中で今回は、自分の中で美しいメロディとはどういうものなのかっていうことをきちっと形にしてみようというのがコンセプトとしてあって」

■何故メロディに特化しようとしたんですか?

「僕自身が音楽を聴いてて一番何に引っかかるかと考えたら、やっぱりメロディだったんですよね。アーティストの個性を位置づける要素は音色やアレンジもあるけど、やっぱり一番はメロディだと思う。あと、僕はとにかく好きな音楽が多過ぎて、出したいものがいっぱいあるんですよ。だからこの時点でどこかの音楽性に特化して、そういう人だと思われるのも嫌だというのもあって(笑)」

■作品を聴いて、これは相当音楽を聴いてきた人だと思ったんですけど。キャリア的にはいわゆるボカロPとして認知されたところから始まってますが、その頃から、当時まだボカロ曲としては少なかったポストロック、フォークトロニカの音像の上で初音ミクに歌わせていて。一貫して、非常にアーティスティックで文学性の高い世界を描いていますよね。そもそも、音楽的なバックグラウンドはどういうところにあるんですか?

「音楽をやろうと思ったのは14歳の時で。スポーツも勉強もできなかったんで、このままだと将来が危ない!と思ったんですよね。変な言い方ですけど、音楽で何かしら生計を立てないとまずいぞって感覚になって」

■中学生でその意識を持つのは相当早いというか、生き急いでる感じがするんですけど(笑)。

「何に怯えてたのかわからないですけど、危機感みたいなものを持ってたんですよね(笑)。で、当時は流行りのヴィジュアル系を聴いてたんですけど、『ヴィジュアル系の人達がカッコいいと思っていたものを聴けば、自分も同じようになれるんじゃないか?』と考えて、ルーツを掘り下げるようになり。それでメタルとかハードロックに行って、テクニック寄りの音楽雑誌を見て知らないギタリストがいたらその人のコピーをしたりして」

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text by 有泉智子

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Posted on 2012.11.28 by MUSICA編集部

渋沢 葉、狂い咲く可憐な花の正体を探る

この歌が呼び覚ますのは、
あなたの中に残された無垢なる子供か、
それとも孤独なモンスターか。
憤りを孕んだ激しき情動と、儚くも切なる祈り――
必然的に抱えたロックとポップ、
ミニアルバム『花はここに咲いています』で、
その両極を露わにす

『MUSICA 12月号 Vol.68』P128に掲載

■前回の取材から約5ヶ月が経ちましたが、その間にライヴ活動も始めて。どんなふうに過ごしながらこの作品に向かってきたんですか?

「あっという間だったんですけど、ライヴをするようになって実際に聴いてくれる人達に会って……最近まで最前列の人の顔って絶対見れなかったんですよ。だけどライヴをするごとに、そこにいるお客さんとコミュニケーションしなきゃって思うようになって、少しずつ変わってきていて。頑張りたいなと思うし、楽しみだなとも思うし……それに、誰かに届くんだと思うと余計燃えて(笑)。毎日毎日、曲を作ってますね」

■前回のインタヴューで、音楽を始めたことによって、自分の中にいたもうひとりの自分がやっと話を始めたっておっしゃってたんですけど。その子がいよいよ世の中に出ていっているわけで、その部分で思うことは何かあります?

「………まだ、とにかく正直にいこうっていうことでいっぱいいっぱいで。でも“ダーリン”のMVを撮ったんですよ。監督を番場さん(番場秀一)がしてくださったんですけど、そのMVには、私以外にモンスターとちっちゃい子供が出てくるんです。それで、『ああ、お見通しだ』と思って(笑)」

■ははは。まさに、小さな子供とモンスターというのは渋沢さんの中に共存しているものであり、表現の核を成しているものなわけですけど、今回の『「花はここに咲いています」』は、その二面性がより明確な形で表れていますよね。“ダーリン”という非常にポップな楽曲を真ん中に、激しいロックソングと祈りを捧げるような繊細な曲が強いコントラストを放ってる。こうなったのは何故?

「“破壊BOSSジャム聖飢魔Ⅱメイク”と“ARE YOU PANPI?”は、1年半ぐらい前に作った曲なんです。だからなるたけ早くに出したいなって思ってて。『せきららら』の次は、頭はこの2曲にしたいっていうのは決めてあったんです」

■その時の心情がダイレクトに表われてる分、鮮度が高いうちに出したかったってこと?

「そうですね。今の状況と歳を考えると、早いほうがリアルに伝わるものだと思って。で、“祈り”と“悪魔再生”をアルバムに入れたのは、聴いてくれる人に人間の美しいところも感じて欲しいというか………汚いところも美しいところも全部含めて、輪っかみたいにグルンと回る作品にしたかったからなんです。“~PANPI?”と“破壊~”で打ちっぱなしにするんじゃなくて、ちゃんと戻ってこれる曲をアルバムの中に入れたかった」

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text by 有泉智子

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Posted on 2012.11.27 by MUSICA編集部

さめざめ、素顔と真意を曝け出す

ルックスとか、メジャーとか、
愛とか夢とか
恋とかセックスとか、
もう全部全部解禁!!!!!

『MUSICA 12月号 Vol.68』P124に掲載

■正直、笛田さんの人間性と空気感も含め、ここまで速く駆け上るとは思わなかったタイミングでのメジャーデビューなんですけど。あなたは何を頑張ったんですか。

「あはははは。私は何も頑張ってないんですけど、ただ下積みが長過ぎたんで(笑)、ステップアップした時に、その分みなさんに協力していただけて。ひたすらビックリしましたね。メジャーの方でもこういうのを受け入れていただけるんだなと思って。元々、インディーでも罵声を浴びやすい音楽だったし、メジャーでこれからますます行き交うんじゃないかなって(笑)」

■ただ、今回の楽曲も含めて、世の中、もしくは男子へのリベンジ心っていうものが音楽を作らせてる部分、そしてそれが多くの人に聴かれることによって果たされていく部分も強くあるんじゃないかなぁと思うんですけど。

「そうですね。特に“愛とか(夢とか恋とかSEXとか)”っていうのはインディーズの時にも一度出しているものなので、そういう曲をメジャーデビューシングルの一発目で出すっていうのは、ファンの方からすると『この曲なんだ?』って思われるかもしれないんですけど、さめざめを作るきっかけになった、それくらい凄く大事な曲なので。もちろん録り直しもしましたし、この曲によってさめざめを好きになってもらえたりとか、総合的にいろんな人と共感できたり、何かを感じ取ってもらえるものが多いんじゃないかなと思ってます」

■笛田さんの曲を二極化すると、「静の狂気」と「騒の狂気」とふたつあると思っていて。「静」の代表曲がこの“愛とか夢とか~”で、「騒」のほうが“コンドームをつけないこの勇気を愛してよ”だと思うんですよ。そういった意味で、静かにそこはかとなく、でもじわっと体から離れない毒牙というか粘液というか、そういう曲を新しいメジャーの最初に持ってきたのは、どういう気持ちの表れなんですか?

「さめざめは、やっぱりそれがごく当たり前に入っているものなので。さめざめだからこそ、<SEX>っていう言葉自体がタイトルに入っている曲であり、さめざめのテーマソングと言っても過言ではない1曲で勝負したかったんです。いろんなことがあったけど今から頑張ろうっていう曲なので。……さめざめを始めるちょうど1年くらい前に、自分も同じ境地に立っていたんですね。友達がどんどん結婚していく、出産していく、出世していく……でも、自分だけ何も変わらずに時給850円とか900円のアルバイトで同じ日々を繰り返して、音楽頑張ってるけど上手くいかないし、みたいな。その時に『もっといけると思ってたんだけどな。私、これからどうなるんだろう?』って凄く悩んだんです。彼氏もいないし、なんてつまらない人生なんだって思った時に、『でも、このまま人生終わるわけにはいかないな』って。だったらって、私そのものを書いたんです、この曲は。明日何が変わるわけじゃないかもしれないけど、もしかしたら何か変わるきっかけがあるかもしれないし、とりあえず今日は終電に乗って明日頑張ろう、みたいな感じで、本当に渋谷から終電に乗っている時にできた曲なんです」

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text by 鹿野 淳

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Posted on 2012.11.26 by MUSICA編集部

HAWAIIAN6、変わらないメロディックパンクの雄

混迷を越え、完全帰還!
己の肉を削ぎ、その骨まで曝した、
紛うことなき「HAWAIAN6」
世界を嘆き、それでも人間を愛し、歌う――
エヴァーグリーンな想いのもとに放つ
本質作『The Grails』
その光を今、俺達とパンクが呼ぶ!

『MUSICA 12月号 Vol.68』P120に掲載

■今までHAWAIIAN6が見せてきた楽曲や音の表情が凝縮されている作品だと感じて。こういうものを目指してスタートしていったのか、試行錯誤の末なのか、どういう感じだったんですか?

YUTA(G&Vo)「今回の曲を作るにあたって、作曲や考え方も変えたかったんです。RYOSUKEが新しく入って、せっかくだから一緒に作りたいと思って、なるべく一緒に曲を作るようになったんです」

■具体的な作業がガラッと変わったんですか?

YUTA「実際にやる作業自体はあまり変わっていないんですけど、僕に、懲りすぎたり詰め込みすぎたりするクセがついちゃっていて。RYOSUKEと一緒に作業していく中で、『ここまでやらなくてもいいんじゃない?』って言ってもらって」

■RYOSUKEさんは、デビュー当時から同じシーンで闘ってきた仲間であるからこそ、HAWAIIAN6を客観的に見られていたんですか?

RYOSUKE(B&Cho)「そうですね。今もまだ僕はファンだと思うし、そこは抜け切らないと思うんです。大勢のお客さんの中のひとりの僕が、『こういう曲がいい』って横から言ってる感じでしたね」
HATANO(Dr)「僕はそれを見守ってる感じで。今まではYUTAがいろいろやりたがって、『それはやらないで』って僕が止めたりしてたけど、そこで口を出さないことで『今までこういう展開はなかった』っていう曲も生まれたし、逆によかったと思います」

■今作に向かうまで、乗り越えてきたものの質と数が今までと全然違ったと思うんです。昨年メンバーの脱退もあって、ストップしたのもバンドにとっては初めてのことだし。その道程はバンドにとってどういうものだったんですか?

YUTA「本当に、RYOSUKEが入るって声をかけてくれるまで、俺は結局何がしたいんだろうって凄く考えて………というか、『わかんない!』って状態でしたね。自分が何がしたいのかさえ、わからなかったんですよ」

■バンド云々以前に、生きていく道を考える上での初めてのカオスだったんですか?

YUTA「それまでも考えてないことはなかったですけど、実際に直面すると違いますよね。考えてたことと、目の前にあること。それに驚く自分にも気づかないというか」
HATANO「ちょうど震災があって、何もできなかったことも凄く悔しかったですね。メンバーが見つからないとか、そんな話じゃなかった。音楽を仕事だとは思わずやってきて、それさえ止まった時に自分の将来ひっくるめてワケがわからなくなったんです。バンド以前に、どうやって生きていきたいんだろうって初めて考えさせられて、それが表現できなかったんです。だから、今はとにかくやれることが嬉しくて。やりたいことが目の前にあって追いかけてきた何年だったのが、今はやっと、やりたいことを探せる状態になったというか」

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text by 矢島大地

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Posted on 2012.11.25 by MUSICA編集部

OverTheDogs、ちくっと胸に刺さる恒吉からの贈り物

どこにでも、どこまでも飛ぶための翼を手に入れるため、
丸裸になりながらポップを突き進んだ『プレゼント』。
キラキラと軽快な音像の裏にある、真摯なる意志と覚悟を紐解く

『MUSICA 12月号 Vol.68』P108に掲載

■今年のホワイトデーにプレゼントされた『トイウ、モノガ、アルナラ』以来、約8ヵ月ぶりの贈り物がバンドから届きまして。

「あ、あれってホワイトデーだったんだ!」

■なんだ、狙ったのかと思ったのに(笑)。

「気づいてなかったです(笑)」

■というわけで、アルバム『プレゼント』について久しぶりのインタヴューです。

「よろしくお願いします」

■フルアルバムとしてはほぼ1年ぶりになる作品でが、特にサウンド面の変化が大きいんだけど、より聴き手を選ばないポップネスを追究するというところに腹を括った作品だと思いました。自分ではどんなものを目指してきたの?

「そんなに意識はしてないんですけど、ただ、たとえば無人島に行くってなった時に選ばれるCDにしたかったというか。だから、夜でも聴けるし朝でも聴けるし、疲れてる時にも元気な時にも聴けるアルバムにしたいっていうのは思ってて。それで、あんまり尖った音にしないっていうのは意識しました。サウンドにしてもアレンジにしても、尖り過ぎない、凝り過ぎないものにすることで、どんな人でもどんな場面でも聴けるようなものにしたいなって」

■だから非常にシンプルだし、ある意味、素朴なサウンドが鳴ってますよね。それもあって歌が凄く前に出てきてるんだけど。どうして、どんな人でもどんな場面でもってことを強く思うようになったんですか?

「たまに取材とかで『どこの年代に聴いて欲しいですか?』とか、『誰に聴いて欲しいですか?』とか訊かれるんですけど、それって僕にとっては凄く違和感のある質問で。そんなの60億人いたら60億人に聴いて欲しいに決まってるじゃん!っていう。そう考えた時に、60億人の中には疲れてる人もいれば楽しい人もいるわけで。そのみんなに聴いてもらうために、凄くスタンダードなというか、ある意味フラットな、でも逃げ腰じゃないアルバムを作りたいなと思って。前からそういう気持ちはあったんですけど、そこをさらに突き進んだっていう感じですね。だから自分の中では結構攻めてるんですけど。……凄いことを言ってしまえば、自分らの音楽的なアイデンティティなんて捨ててしまえっていうのが、結局、僕の中では思ったことなんですよね」

■それはどういう意味で?

「音楽的なアイデンティティにこだわるよりも、自分達の人間性がちゃんと音楽に表れたほうがOverTheDogsの場合はいいなと思って。結局、音楽性って日々変化していくものだと思うし。そこに固執するよりも、その時その時に自分が『これカッコよくない?』って思ったものをちゃんと大事にしたほうがいい。それは、僕は歌詞とメロディには自信があるっていうのも大きいんですけど。歌詞とメロディさえ変わらなければ、どんな音楽性になっても絶対にOverTheDogsになるっていう自信があるんで。だから今回入ってる“愛”のアルバムバージョンって、プロデューサーの江口(亮)さんにアレンジ全部任せて好きにやってもらったんですけど――」

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text by 有泉智子

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Posted on 2012.11.24 by MUSICA編集部

BIGMAMA、進化を遂げるラジカルポップの真髄

実は大胆な筋肉改造を
遂げつつあるBIGMAMA、
そして、
「バンドは絶好調だけど、
僕は絶不調です」と説く金井政人。
ポップへのダイレクトな執着と
ロックバンドとしての
美学と進化が結実した、
シングル2作のラジカリズムについて――

『MUSICA 12月号 Vol.68』P102に掲載

■アルバム以来のインタヴューだね。あれからいろいろなことがあったし、訊きたいこともたくさんあるけど。ともあれまずは新曲の話から。アルバム以降の2枚目のシングルなんですけど、やたら弾けた曲になった理由から教えてもらえますか。

「単純にアルバム出して以降、絶不調で絶好調なんですよね」

■うーんと、何が絶不調で、何が絶好調なの?

「……金井政人が絶不調で、BIGMAMAが絶好調って感じです」

■ははは、言い得て妙です。

「アルバムを出してツアーやって以来、個人的に人生が上手くいかないというか、いろんなところで悔しい思い、格好つかない思いをして……フラストレーションを抱えこんでて。でもそれをきちんと音楽に向けるだけの誠意やモチベーションを自分の中に持っていられたからこそ、それを音楽的に消化することはできたんです。だから作りたい曲や作りたい音楽はたくさんあって、それをひとつずつバンドで形にしていけているから、そういう意味では絶好調だなと思っていて……」

■そんな個人的に絶不調な金井くんがこのバンドのソングライティングを手がけているわけで、その割にはアルバム以降にシングルとして作った4曲は物凄くハイでフレッシュで、弾けたものになっているんだよね。これはやけっぱちですか?

「ははは……自分の中でバイオリズムがあったとして、割と底辺にいる時って、普通のことや当たり前のことがハイに見えるというか。一番どん底の状態から見てるから、どこが普通でどこがハイなのかあんまり見極められてないのかもしれない。でも、底辺を知ってる人間だからこそ描ける幸福感――それは単純な幸福感じゃなくて、普通であることの喜びや幸福感であったりして……。僕の中ではその日常的な幸福こそが、今までよりも鋭利というか過剰というか、そういうニュアンスで取ってもらいたいんです」

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text by 鹿野 淳

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Posted on 2012.11.23 by MUSICA編集部

plenty、ますます極まるその鋭いメッセージ

生命はどうしようもなく残酷で、
けれど、だからこそ強く、美しい。
plentyの音楽はまさに
そんな生の様、そのものだ――
鋭くタフなダイナミクスが色濃く出た4thEP。
ロックの深みと高みを
一挙に駆け上がるplenty、
今、彼らから目を離すな

『MUSICA 12月号 Vol.68』P96に掲載

■一昨日ツアーが終わったばかりなんですけど。最終日のZepp DiverCityでのライヴを観て、バンドの鳴りが鋭く強くなってるし、表現のスケールも説得力も上がったなぁと思って、興奮しながら楽屋に行ったんですが、当の郁弥くんは、この世の終わりみたいな顔して叫んでまして――。

「………はい(苦笑)」

■何がそんなに悔しかったの?

「いやぁ………個人的には反省点がいろいろあったかなっていう。もっと行けたと思うんですよ」

■でも、成長は自分でも感じてるでしょ?

「前回のツアーと比べたらよかったと思います。でもやっぱり課題はあるし。……まだまだですね。大きい会場は慣れてるわけでもないし………でも、そもそも満足したことってないんですけどね」

■そうだよね。自己評価が凄く厳しいよね。

「うーん………………成長してますかね?」

■間違いなく、してます。それは断言できます。

「あー、それだったらよかった。………でも自信になったこともあって。僕らって音楽しかやってないじゃないですか。テレビで流れたりしない、CDと音楽雑誌だけなのに、徐々にお客さんが増えてきてる。それも、ちゃんと音楽が好きで、ちゃんと音楽を聴いてくれるお客さんが増えてる。……っていうのは、自信になりますよね。凄く地味なほふく前進バンドだけど、これは間違ってないんだなと思いました。それはよかったです」

■plentyのライヴって、曲と曲の間に郁弥くんがエフェクター踏み替えるカチッカチッていう音が2階席まで聴こえるくらい、本当に静かで。

「え、あの音って聴こえてるんですか!?」

■聴こえてる(笑)。みんな、それこそ固唾を呑むかのように聴き入ってますよね。Zeppクラスになってもあの状態を維持してるって本当に稀だと思う。特に今回のツアーは初めてワンマンに来る人も多かったと思うけど、でもその様は変わらなくて。自分の音楽の何が、あんなにも人を引き込むんだと思います?

「自分が、同じ気持ちだから。やっぱり作る時から、自分がそういう気持ちで作ってるんですよ。僕はお客さんを鏡だと思ってて。多少の差はあれど、自分達が音楽とどう向かい合ってるか、何を思ってるかっていうのと同じことを、お客さんも思うはずだって思ってる。それはお客さんの顔を見たらわかりますね。自分が真剣にやれば真剣に聴いてくれるし。そのせいでシーンとなっちゃうんですけど(笑)」

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text by 有泉智子

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Posted on 2012.11.22 by MUSICA編集部

ドレスコーズ、ようやくその全貌を表す

不安と懺悔にうなだれ、
期待と浪漫に突き動かされながら、
未知なる可能性に身震いした激しい胎動の季節――
志磨遼平率いるドレスコーズ、
吹っ切れた野望と覚悟を手に、遂にその本性を現す

『MUSICA 12月号 Vol.68』P90に掲載

「アルバム、どうでした?」

■凄く率直に言いますね、上手く軌道修正したなって思いました。

「へぇーっ、なるほどね」

■うん。この間のシングルって、それまでの毛皮のマリーズや志磨遼平を期待していたファン達にとっては、よくも悪くも高尚過ぎるというか、斬新が過ぎる作品だったのかなと思っていて。そこから、このアルバムは前衛アートっぽさもありながら、もうちょっとストレートなロックナンバーもあるし、全体的にメロディがしっかり立っているし、上手くバランスをとって幅を出してきた作品なんじゃないかなっていうのがアルバムの正直な感想でした。ご自分的にはどう思ってます? 「全然そんなことないよ!」っていう感じ?

「どうだろう……もし僕がこのバンドの主導権を握っていたとしたら、もっと複雑でもっと難解でもっとアヴァンギャルドなバンドになると思うし、そんな作品を作ってたと思います。でも、軌道修正されているとしたら、それは制作の中でメンバーが僕にしてくれたいろんなおしゃべりとかのおかげかなと思います」

■それは、志磨さんはもっとアヴァンギャルドなものを望んでいたけど、みんなで話し合いながら作っていった結果、このアルバムに落ち着いたっていうことですか?

「僕がメンバーに言われたのは、何年先に聴いても凄くいいと思えるようなアルバムを作りたいっていうこと。あと、僕のメロディを大切にするっていうことかな、要約すると。それがこのアルバムの方向性を決めましたね、きっと。はっきりスタジオの後にされた記憶があるんですけど、あれいつやったかな……毎日スタジオ入ったし、ずっと4人でいたから。たぶんそれは“Trash”録り終わってからでしょうね。だから、軌道修正っていうのも、もしかしたら言い当てられてるのかもしれない。2月末にベースの山中治雄が入って初めて作った曲が“Trash”で、それはシングルを録るっていうのとかね、映画の主題歌やっていうのとか、はっきりと世に出すって決めて作った曲で。それ録り終わって、『じゃあ、ここからはいずれ出るであろうアルバムを目指して(スタジオに入ろう)』っていうのがあったんだと思いますけどね、たぶん」

■アルバムを意識する中で、他のメンバーからは、ずっと聴くことができるものを作りたいっていうことと、志磨さんのメロディを活かしたいっていうリクエストが出てきたんだ?

「そうですね。出てきたっていうよりは、最初から思ってたっていう感じのニュアンスだった気がするんですよ。そのことに僕だけ気づいてなかった、みたいなニュアンスがありましたね。『君は何故、君のメロディを主張しないのか?』というような」

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text by 寺田宏幸

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Posted on 2012.11.21 by MUSICA編集部

トクマルシューゴ、その脳内世界を解き明かす

独りの天才の脳内世界が鮮やかに溢れ出す
現実と異郷の狭間に打ち立てられた
純度100%の万華鏡ポップ
『In Focus?』。
交錯する光と陰、開放と閉塞、自由と統制――
カラフルに舞い紡がれた世界、その深淵を覗き込む

『MUSICA 12月号 Vol.68』84に掲載

■『Port Entropy』の時に、「これを作ってしまえば後はどこにでも行けるっていう、基盤になる作品を作りたかった」とおっしゃってましたけど。

「うん、そうですね」

■そういう作品を作った上で、次にどこへ向かおうというイメージはあったんですか?

「とにかく、今までやってない面白いことをいろいろやろうっていう意識でしたね。『もうなんでも作ってしまえ!』と思いながら作っていたんですけど、そうしたら本当にいろいろでき過ぎてしまって(笑)。何十曲もできてしまって、『これ、アルバムにする時どうやってまとめればいいんだろう?』というのはずっと考えてたんですけど……でもある時、『そのままでいいんじゃないかな』という気がしてきて」

■それはどういう意味合いで?

「自分の殻に閉じこもってずっと曲を作ってたら、自分の国みたいなものができてきたような気がしたんですよ。であれば、いろんな国の人達を自分の国に住まわせて、ちゃんと政策も法律も決めて、しっかりと各々が生活できる環境を作るような感覚でアルバムを作ってみたらどうなるんだろう?っていう感覚にだんだんなってきて。そうしたら、現実世界も結局同じなんですけど、(アルバムをまとめなくても)このままでいいんじゃないかなっていう気もしてきて」

■それってつまり、多様性を受容しながら緩やかに統合させるみたいな、そういうこと?

「はい。ただそれと同時に、本当にこのままでいいのか?っていう気もしてきて。なんとかしないといけないんじゃないかなという想いと、でも、このままでいいんじゃないかなという想いが混在してる。それでタイトルに『?』がついてるんですけど(笑)。でも、そういう形でアルバムができたら、凄く混沌としたような、とにかくいろいろなものが入ってる作品ができるんじゃないかなと思ってやってみましたね」

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text by 有泉智子

『MUSICA 12月号 Vol.68』のご購入はこち

Posted on 2012.11.19 by MUSICA編集部

tricot、今最も注目を集めるニューカマーの正体がいよいよ明らかに

シーン爆破のカウントダウン、開始。
飽和を食い破り、退屈を蹴散らし、
ステレオタイプを燃やし尽くす怪物、tricot!
無添加の衝動と確信犯の意志が生む獰猛なポップネス、
その正体に初取材・初ロングインタヴューで迫る

『MUSICA 12月号 Vol.68』P72に掲載

■tricotっていうバンドの音楽性って、一般的に「ポップ」と言われるものではない要素が満載ですよね。変拍子も多いし、キメも多いし、ポエトリー・リーディングもあるし。ただ、それを最終的に非常にポップなものとして爆発させてしまうところが魅力であり、武器であると思うんです。自分達ではどう捉えてるんですか?

中嶋イッキュウ(Vo/G)「結成して2年、今のところは自然にできてきたっていう感じで。スタジオで合わせて作った曲ばかりで、誰かが最初から最後まで作ってくるとかも今まで1回もないんですよ。キャッチーなものもそうじゃない部分も、本当に自然に、勝手に出てきたっていう感じなんです」
キダ モティフォ(G/Cho)「別にポップなものを作ろうとも思っていなくて。特に聴きやすさとかを意識したこともないし。かといって、変なものを意識しているわけでもなくて。ただ単に好きなようにやってるっていうだけで、それが意外と受け入れられているという……不思議な状況(笑)」
ヒロミ・ヒロヒロ(B/Cho)「特に『こう』って決めつけるわけではなく、自然にそうなっていた感じなんですよね。ただ、『おお、グッとくる!』みたいなポイントは、自分達では重要視しているんです。なんて言ったらいいか難しいんですけど……『おお!』っていうポイント(笑)。キメとかもそうなんですけど、『そこでそう来るか』っていう――」

■自分達がグッと盛り上がるポイントをきっちり入れるっていう?

ヒロミ「はい。たとえばAメロは単調やのに、サビでメロディが立ってくる感じとか。自分らはそういうのが好きなのかなっていう気がします」
komaki♂(Dr)「3人が言ったように、いい意味で聴き手のことを考えずに曲を作ったり、ライヴをしたりしているんです。でも、どこかでは、キャッチーでポップな要素があればいいなと思ってはいるんですよね。ただ、それ無理して作るというよりは、滲み出てきたものがキャッチーなものであったり、メロディックなものであればいいな、と思いながらやっている感じで」

■楽曲はどういうふうに作ってるんですか?

キダ「私がリフやコードを持っていって、スタジオで好きなように弾いて、勝手に合わせてくれっていう感じなんです。そこから広げていって、まずオケを作ってから後で歌を乗せるっていう感じで」

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text by 矢島大地

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