Posted on 2015.07.16 by MUSICA編集部

SHISHAMO、
まだ誰もSHISHAMOの本当の姿は知らない
と語る真意を“熱帯夜”から紐解く

私以外の人は誰もSHISHAMOの音楽をわかってないと思うんですよ。
もっとSHISHAMOでできる音楽が私の中でたくさん順番待ちしてるんです。
今までの曲から「SHISHAMOらしいね」
って決められるのは嫌だし、違うなって思う

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.52より掲載

 

■初めてのファッションポートレートを撮らせてもらいましたけど、どうだった? 今までと少し雰囲気が違ったと思うけど。

「恥ずかしかったです……私なんかがこんなふうに撮ってもらって……カメラマンさんが凄い人だったから、いつもは美人な人をいっぱい撮ってるんだろうなぁって……(笑)」

■いや、そういう話をしたかったんじゃない(笑)。今回の撮影は我々にとっての“熱帯夜”のイメージだったんです。そこはどう? 的は外れてた?

「いや、特に。……あ、『特に』って言い方はよくないですね(笑)。全然外れてないです。とってもよかったです。素晴らしいイメージです」

■要はムードのある曲だから、ムードのある写真を撮りたいなと思って。だってさ、1年前は“君と夏フェス”って言ってたんだよ?

「ふふふふふふふ、ほんとそうですね。そこが比べるところとしては一番大きいですよね」

■そうだね、音楽的にも夏フェスの曲から、湿った夜に独り思う歌に変わって、必然的にトラックもリズムも大きく変化した、というか成熟した。今回もコンセプトはサマーソングだけど、これはサマーソングの必需品的な抑揚がなくて、何しろ上がらない曲っていう。

「そうです! 上がらないんです」

■そういう曲をシングルにしたわけですけど、その辺思っていること教えてください。

「……特にないんですよね。確かに曲を聴くと変わったって感じる人が多いと思うんですけど、そこは私はあんまり重要視してなくて。……やっぱりシングルを出すのは曲が一番だし、今の私が作ったからちょっと雰囲気が違っていたってだけで、やることは変わってなくて。でもちょっと考えていたのは、去年“君と夏フェス”が出ていろんな人が聴いてくれてて、SHISHAMOの夏の歌は“君と夏フェス”ってなっているのが嫌っていう程じゃないんですけど、別にそうじゃないんだけどなぁ……って(苦笑)。別に『SHISHAMOと言えばこの曲!』って代名詞にできる曲は、まだ持ってないと思ってるんで」

■1曲で自分達の音楽性やバンドのことが語られるのが嫌だってこと?

「そうですね。私以外の人は誰も SHISHAMOの音楽をわかってないと思うんですよ。私だってSHISHAMOがどこまでできるのかわからないところもあるし。……なんかそういうのって周りが勝手に決めちゃうところってあるじゃないですか? それ以上にもっとSHISHAMOでできる音楽っていうのが私の中でたくさん順番待ちしているんです。実際にはその全部をバーンって出せるわけじゃないから、今までの曲で判断されるのはしょうがないんですけど、そこから『SHISHAMOらしいね』って決められるのは嫌だし、なんか違うなぁってずっと思ってて。“君と夏フェス”とかは特にそう思います」

■今話してくれたことが、“熱帯夜”を作る上ではどう影響していたの?

「うーん……作る時にはそんなに考えてないです。嫌だなとかそういう気持ちは全然なかったです。別にシングルにしようと思って作ったわけじゃなかったですし。……いつもシングルを作る時って、シングルを作ろうと思って作れないんですよ。大体はそういうのは関係なく作っていた曲がシングルになっていることが多くて」

■“君と夏フェス”も? あれは狙いに行ったでしょ?

「あの時は何曲か作っていて、最後の最後にできた曲なんです。今回は特に何にも考えないで、どんな曲にしようって悩んではいたんですけど……去年よりさらにパーンとした曲を作ろうっていうのも考えていたし、逆に裏切るのもいいよなって思って。でも作ったきっかけは全然そういうのとは関係なかったです。なんか夜にベランダに出たらぬるい感じの気温になってて『あぁ、熱帯夜が来るんだな』って思って。私、熱帯夜が好きなんですけど、その時のベランダの空気感をそのまま曲にしたいなって思ってすぐに作った曲だったんです。だから全然シングル作ろう!って考えて作った曲じゃなかったんですけど、いろんな人に聴いてもらったら『これいいね』ってなったんで、じゃあ(シングルでも)いいのかなって(笑)」

■去年は「夏フェス」って言葉も使って勝ちにいった曲を出したし、あの曲がもたらしてくれたものは大きかったっていう現実もあるよね。そこから1年経ってそことは違う、とてもアンニュイで、お洒落なコード進行とカッティングに、後半にはボサノヴァのリズムアレンジまであって。こういう引き出しもあるってことを提示した楽曲だよね。

「そうですね。やっぱり“君と夏フェス”があったのは大きいと思うし、あの曲があったから “熱帯夜”は引き立つのかなって思ってます。あの曲でSHISHAMOを知ってくれた人がたくさんいたからこそ、今回はこういう曲が出せるのなのかなって。……安心しているわけじゃないんですけど、ちょっとだけホッとしながらこのシングルが出せるっていうのもあります」

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text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.100』