Posted on 2015.06.14 by MUSICA編集部

[Alexandros]、
MUSICA恒例の全曲解説で『ALXD』を徹底解明!!

余計なモノがなくなったのかな。余計な力というか。
ウチらはもう備わってる部分で
十分カッコいいはずだから、変な鎧を全部剥がして、
筋肉だけで強さを表現できるなっていうことに気づいたっていう

『MUSICA 7月号 Vol.99』P.46より掲載

 

■前号の表紙巻頭特集は、“Famous Day”――その時はまだ“Gratest Night”という名前だったけど。

川上洋平(Vo&G)「そうだった(笑)」

■その曲、つまり今回のアルバムのレコーディングにおける最後の歌入れを終えた日の午後にインタヴューをしたわけですが。

川上「俺、たしか寝ないで行ったんですよね(笑)」

■はい(笑)。あれから約1ヵ月が経ち、その後マスタリングも済んでいよいよリリースを残すのみとなったわけですが。まずは改めて、自分達にとってどんなアルバムになったのかをそれぞれ教えてください。

川上「充足感で満ち溢れてますね。今までの達成感とは違う、ちゃんと自分達がやりたいことを理解して、それを作品として全部落とし込むことができたっていう満足感が今回はもの凄くあって。勢いと計算の両方で成り立ってる作品になったなっていう感じですね。そもそも、そういうやり方をしたいって思いながら臨んだ制作ではあったんですけど」

■それが完遂できた、と。

川上「そうですね、できたと思います。去年の前半にデモを作って、後半はそれをちゃんと見直しながら、最後まで1曲1曲きっちり作れたので。『自分達がこのバンドのファンだとして、本当にお金を出して買いたいと思えるのか』っていうくらいまで、自分達自身でもちゃんと1曲1曲を俯瞰で見ながら作業をしていけたんですよ。そこは今までと違いましたね。あと、今回は僕の中のモードとしてとにかくいい曲を作りたい、いいメロディを押し出していきたいっていうのが強くあって。そういう部分と後半に出てきたこの4人のロックバンド感を強く出したいっていう部分も含めて、凄く上手くいったんじゃないかなと思いますね。だから本当に満足してます」

■ヒロくんは?

磯部寛之(B)「俺も手応えありますね。今回は自分達の中でカッコいいと思うものをただやるだけではなく、それをどうやったらより広く、より大きな場所でちゃんと自分らのカッコよさとして伝えられるのかを意識して作ったアルバムで。だから今回満足しているのはもちろん、次以降に繋がる作品になったなって思います。今回の制作を通して俺らの中で培われたものが間違いなくこの音楽の中にあるんですよ。だから、手応えプラスこの先に向けての確信を改めて感じたアルバムになりました。次作がいつになるかはまだ全然わからないけど、すでに俺はそこが楽しみ」

■白井くんは、前回の取材時はまだ達成感がやってこないって話をしてたんですけど。

白井眞輝(G)「でしたね(笑)。でもやっぱりマスタリングが終わって、全行程が終わった時に満足感とか充足感、安堵感がドドドッてやってきて……フルマラソン走り切ったような感動がありましたね。1個の仕事が終わったっていうよりも、凄くいいものを作り上げられた充足感というか。で、それから2、3週間経って、やっと最近フラットな状態で聴けるようになってきたんですけど、本当にいい曲が揃ってるなと思うし。今回は音質も凄くいいし、そういった観点から見ても、凄い聴き応えのあるものになったと思いますね」

庄村聡泰(Dr)「達成感という意味で言うと、俺自身は今回は凄く健康的な達成感はありますね。今まではやっぱり、終わった後にかなり肩で息してた感があったんですけど(笑)」

■というか、今までは録ってる最中からそういう感じがあったよね(笑)。

庄村「そうっすね(笑)。でも、今回はそういう切迫した感じとはまた違う、凄くフラットな感覚の中でいいものができたなぁという達成感があって。気合いは入ってるんですが、でもある意味ではカッコつけてない感じがあるし、自然体なアンサンブルでもあるような気もしますし……やっぱり温かみがあるんですよね。今まで以上に我々の姿が見えてくるんじゃないかっていうのは自分でも感じます」

 

1.ワタリドリ

 

■これは直近のシングルになった曲ですが、1曲目に持ってきた意図を含めて、改めて思うところを。

川上「最初はイントロっぽい曲を1曲目に持ってこようと思ってたんですけど、さっき話した『いいメロディを押し出していきたい』、自分が表現したいのはそこなんだっていうモードから考えると、一発目からそこを提示する、ドーンと強いメロディを持ってきたほうがいいなって考えるようになって。で、“ワタリドリ”ができた瞬間に、これは [Alexandros]がこれからどこかに向かう時の突破口になるような曲になるのかなって思ったんですけど、であれば、シングルだけじゃなくてアルバム1曲目として持ってくればいいんじゃないか、それこそ名刺代わりになるんじゃないかと思ったんですよね。で、これを1曲目に置いて流れを想像した時に上手くいったので。イメージとしては、U2の“Beautiful Day”で始まるアルバム(『All That You Can’t Leave Behind』)。あのアルバムもまず何よりも曲がドーンッ!と来て、これからU2がやりたい方向を提示するっていう――あの時って、U2が原点回帰した時なんですよね。それまでいろいろ勝手なことやってきた中で、メロディに帰っていったっていう時期。それが今のウチらと凄い似てるなと思ったんですよね」

■ただ、いいメロディを出したいっていうのは、それこそ前作でも言ってたことだと思うんだけど。改めて今回そう強く思ったのはどうしてだったんですか?

川上「……余計なモノがなくなったのかな。余計な力というか。ウチらはもう備わってる部分で十分カッコいいはずだから、変な鎧を全部剥がして、筋肉だけで強さを表現できるなっていうことに気づいたっていう。あとは自分達が持ってる脆さみたいなものだったり、そういう部分の表現をもっと打ち出してもいいのかなって思ったんですよね。だから、たとえば前作で言うと“Rise”とか“Stimulator”って今でもライヴでやっててめちゃカッコいいし、このアルバムにもそういう部分はあるんだけど、でも一番大事なものを一番最初に持っていくっていうシンプルなことを今回はやりたいなと思って。“Rise”もメロディはいいけど、やっぱりイントロ長いから」

■アルバムのオープニング、プロローグ感あるよね。

川上「そうそう。でも今回はそういうの抜きに、いきなり大事なものを打ち出すっていう。それが本当の自分達にとってのオープニングなのかなと思ったんですよね。何が正解で不正解ってことではないけど、自分達にとってはこれが答えだったんでしょうね」

■聡泰くんは今回のタームでずっと、「いろんなこだわりはあるけど、最終的には俺のドラムは聴かなくてもいい。歌を聴いて欲しいんです」ってことを言っていて。それも今の洋平くんの話と繋がってくるよね。

庄村「そうですね。“ワタリドリ”に関しては1グルーヴで押し切ったっていうのも結構デカくて。1グルーヴの中でメロディが縦横無尽に跳ね回るっていうよさに関しては、洋平のメロディに引っ張られた感じが大きかったのかなって。一番聴かせたいもののためにそこまで引き込む術を教えてくれたような大事な1曲です。あと1曲目っていうところで言うと、俺はそもそも自分がアルバムを聴くのであれば、1曲目って自分が聴いたことのないところから幕開けが始まって欲しいと思う派だったんですよ。なんですけど、今の洋平の話を聞いたり、ならびに次の“Boo!”に行く展開を聴くと、1曲目は知ってる入口だけど、そこからとんでもないジェットコースターが始まるみたいな感じがして。そこで腑に落ちた感じがありましたね」

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text by有泉智子

『MUSICA7月号 Vol.99』