Posted on 2016.11.17 by MUSICA編集部

BLUE ENCOUNT、シングル『LAST HERO』を発表!
バンドの現在地と本質を田邊と徹底討論

ネガティヴな気持ちさえなけりゃいいこと言えるし、
いいライヴができるのにって思った時もあって――
でも、そういう気持ちもここで改革を起こさないと、
BLUE ENCOUNTとして次の1年を走れないなって思って

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.60より掲載

 

■とても忙しそうですね。スケジュールを取るのに苦労したみたいで。

「いやいやいやいや! まぁ忙しくはさせてもらってます(笑)」

■それは自ら仕事で隙間を埋めるという、隙間恐怖症みたいな強迫観念があるからなんですか?

「いきなりこじ開けてきますね(笑)。まぁそうなったってことなんですかね。デビューした時とかインディーズの最後らへんとかは時間がいっぱいあって、それこそ“もっと光を”を作ってた時期は3ヵ月で100曲ぐらいできてたので。その時は楽しいなっていう反面、空き時間に何しよう?って感じだったんですけど、今は逆ですね。『明日休みです』とか言われたら、『そんなんいいんで、スケジュール入れてください』って感じになってるかもしれないです。常にフルスピードで行ってるっていうことには慣れたし、楽しいんですけど……今年はさすがに厳しかったです(笑)」

■ははははは。本当に勝負の年だったもんね。

「勝負の年だったし、いろんなところに僕らの音楽が広まっていった年だったので。でも、さすがにツアーやりつつ制作もやるって――今年は4枚シングル出したし、それプラスアルバムの制作もあったし、さらに33ヵ所のツアーもやったりしたんですよ。それで喉もガッツリ疲れちゃいまして、夏フェス終わりぐらいに結節ができちゃいまして。それで9月に入ってから1週間お休みをいただいたんですよ。その1週間はひと言も喋らずに、呼吸しかせずに過ごしたら、奇跡的に結節がなくなって、万全の態勢で武道館に臨めたんです。だから、単純に今走り回ってるっていうのは、1週間の休みのスケジュールのしわ寄せがグッときてるっていうのもあるんですけど(笑)」

■バンドの調子がいいことやスタッフの尽力も含めて、このバンドの場合はシングルにタイアップがつくわけで。シングルとしての機能をことさら意識するメンタリティも持たれてるだろうし、それどころじゃなく自分達は勝負の年だから、それを自分達の武器にもしなくちゃいけないよね。それを4発やって、そして年明けにはアルバムが出て、しかもそのタイトルが『THE END』って――これ、完全に解散するバンドの流れだよね。

「あはははははははははははははははははははは!」

■何笑ってんだよ、俺は真剣に訊いてるんですけど。

「いや、絶対鹿野さんそう言うだろうなって思ってました(笑)。でもそうですよね、生き急いでるってことですよね。1月、3月、6月って上半期だけでシングルを3枚出してるんで、『あ、もう俺死ぬな』って思いましたよ。『THE END』って別に解散って意味ではないんですけど、単純に『死ぬな』って意味は実は入ってます(笑)」

■終わりという名の「死」ね。

「もう人生のエンドが来るんじゃないかと。だって1月からツアーファイナルでZepp2デイズやらせていただいて、『ミュージックステーション』に出させていただいて、埼玉スタジアム(第94回全国高校サッカー選手権の決勝戦前のライヴパフォーマンス)で歌わせていただいて――1年でやることを1月に全部やらせてもらうぐらいの感覚だったんで。で、1月だけで燃え尽きんじゃねぇかってみんなで話してたら、ありがたい話、2月や3月もいろんなスケジュールとかタイアップの話をいただいて、そこからずっと走り続けてたんですよね。………実は、さっき言った33ヵ所ツアーファイナルのワンマンシリーズが(新木場STUDIO)COAST、名古屋のElectricLadyLand、大阪のBIG CAT、(地元の)熊本のワンマンだったんですけど、俺、名古屋のライヴ終わった後に倒れたんですよ。それぐらい自分の中では気張ってました。その後病院行ったら、『すべての疲労が出る時があるんだ』って言われて、それがその時だったらしくて。僕自身もその時に『あ、死ぬな』っていうのは予期してたんですよ。本当に1年いい流れで動いたっていう実感があったからこそ――それこそ喉に結節ができた夏の終わりとかも含め、僕の中での『THE END』感が凄くて(笑)。貴重な体験をさせていただいてる反面、体が追いつかなかった部分も正直ありましたし。僕、策がない人間で、常にその場勝負ですからね。なので、その都度力を出していけば出していくほど、次にどんなことを出せばいいのか不安になった時期もあったりして」

■今日は訊きたいことがひとつあるんですよ。今言ってくれた通り、田邊は貯金をしないタイプじゃないですか。

「はい、まさにそうですね(笑)」

■でも、その場しのぎではないし、素晴らしい活動をしてるし、素晴らしい音楽を作られると思うし、それがちゃんとストーリーになっていると思うんですよ。ただ、言いたいことはすぐに歌詞にする、言いたいことはすぐMCで言う、やりたいアレンジは1曲に全部詰め込む、やりたいライヴはそこに凝縮させるっていうことを全部やっていった上で、今年に関しては隙間がない活動をしているじゃない? この「貯金をしよう」っていう発想がないのは何故なんですか?

「……それは単純に4人共々不器用だからってことだと思うんですけど。僕らの場合、その場で思った時に言わないと、衝動感がどんどん薄れてきちゃって、言いたいことに対して理屈が入ってきちゃうんですよね。それこそ去年ツアーの時とかって、ツアー前にMCの内容とかをいっぱい考えて、それを言おうとしたんですけど、去年のZepp Nagoyaの初日で『あれ? 俺、嘘っぽい?』って思っちゃったんですよ。だから、そこで『ごめん、ちょっと待って』って言って、その場で言いたいことを変えたんです。昔からそうなんですけど、僕らは考えると何も生まれないバンドで。それは別に音楽とかじゃなく、パッションの部分とかエモの部分に関してのことなんですけど。曲はもちろんみんなで考えてますし、その中でいいものを目の前に出すっていうスタンスは変わらないんですけど、だからこそ伝えたい衝動に関しては浪費し尽くさないとって思ってて。で、ありがたいことに、浪費し続けたその先でいいものが生まれてるんで、これが枯れた時にどうするのかっていう不安はあるんですけど――」

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text by鹿野 淳

『MUSICA12月号 Vol.116』