Posted on 2016.11.16 by MUSICA編集部

RADWIMPS史上最も強い光と肯定を放つ『人間開花』。
メンバー全員&野田単独取材の2本立てで、
その軌跡とすべてを紐解く
――Interview with 野田洋次郎

もう一回、自分達でちゃんと納得したかったんですよね、
バンドをやっている意味を。
俺らはなんでロックバンドをなんでやってたの?っていうことを。
それを納得した上で、また当たり前の顔してやりたかった

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.28より掲載

 

■『人間開花』に至る過程や全体に対する話は3人でのインタヴューでも話してもらったんですけど、ここからはさらに洋次郎くんひとりで、今回のアルバムに対する話を聞いていきたいなと思います。このアルバムに至るにあたって、智史くんのこと、そして『君の名は。』はとても大きなことだったという話は3人インタヴューで聞いたんだけど、そもそも、楽曲自体は前作が終わってから作り始めていたんですよね?

「うん、そうですね」

■そもそも洋次郎くんの中で、『×と◯と罪と』を作った後、次のアルバムに対するイメージや音楽的なコンセプトみたいなものは、何か浮かんできていたんですか?

「うーん………いや、そういうのはいつも通りないまま始まったかな。やっていく中で『君の名は。』で作ってた曲が何曲か入るだろうっていうのはイメージしてたし、バンドをできる喜びっていうのも最後にまとめてグワッときた感じだったけど、そもそもいろんなことが起きる前、一番最初に作ってた段階では “棒人間”とか“週刊少年ジャンプ”みたいな、言葉をメインに伝える曲がイメージにあって。そういうピースは早い段階で何個か既にあったんだよね。で、『君の名は。』をやって、あの曲達がだいぶ明るく開けたほうにこのアルバムを持っていってくれるだろうっていうのがわかったから、じゃあ最初にあったピース達とその空気感をひとつの作品にするためにはどっちに行こうみたいなことで、残りの曲達がどんどん固まっていったっていう感じはあるな」

■“週刊少年ジャンプ”と“棒人間”は、曲調は違えど、どちらもほぼ歌一本で勝負するような曲だもんね。音像自体、歌をいかに聴かせるのかってことに意識が向かっていて。

「うん、結果的にアレンジもそうなりましたね。だから最初の段階から実は結構割り切ってたというか、ギミックを廃した方向にはなってたのかもしれないな。この2曲は前回のアルバムが終わってすぐ、3年前とか2年前ぐらいには原形ができてた曲だったんで。その時からアレンジをどうしていこうかみたいなのは結構いろいろ考えてはいたんだけど、いざ録ったのは今年の頭だったから、もう智史がもう抜けた後で。だから余計に、たとえば“~ジャンプ”は元々ドラムを入れるアレンジだったんだけど、もうそれもなくしてしまおう、歌を伝えるためだけの曲にしよう、みたいなベクトルに進んで。“棒人間”もどんどんアレンジがシンプルになっていったしね。だからそういうイメージはあったけど、いろんなことが起きていく中で実際に作っていくうちに、どんどんそっちに振り切っていった感じだったんじゃないかなと思う」

■歌声自体もめちゃくちゃソウルフルだよね。

「そうですね(笑)。ミックスから何から、とにかく歌を伝えようっていうことになっていったし………作っていくうちにどんどん、じんわりやんわり、余計なものを削ぎ落とす方向にはなっていった」

■『×と○と罪と』までで、自分達の音楽的な達成感と、音楽として本当にオリジナルなものを作れているっていう確固たる自信ができたからこそ、次のステップとしてそういうシンプルな方向に目が向いたのかもしれないなと思ったりもするんですけど。そこはどうですか。

「そうだと思います。だから極めて真っ当なプロセスだなと思いますね。曲単位でも今までそういう行程を繰り返してたし、複雑なものへ振った時の反動でシンプルなほうに行ったり。明暗もそうだし。でもやっぱり前回までの手応え含め、あの先をどう突き詰めるかはだいぶ見えづらいものだったから。だから凄く冷静な判断の中でこっちに行くべきだなっていうのはあったし。そういう感覚は自分で自信があるというか。その直感の正しさを信じてるんで」

■ただ、世の中的に洋次郎くんは言葉のイメージも強い人だと思うんだけど、でも実は、歌と言葉をメインで伝えたいっていうことが音楽を作る最初の動機としてくるっていうのはもの凄く珍しいことだよね。

「ほんとに珍しい。だって、今回のミックスの最終チェックの時にみんなで笑いながら話してたけど、『今回は歌がデカいね』っていう話をまずして。昔は本当に――『アルトコロニーの定理』の辺りがピークかな――ミックスのたんびに『歌もっと下げて、もっと下げて』って言ってて。だから歌を上げたいディレクターとの闘いが凄かったんだけど(笑)。歌はほんとにひとつの要素でしかないっていう意識だったからね」

■音のひとつというか、他の楽器と同じ感覚というか。

「そう。言葉なんて嫌でも入ってくるんだから、歌を上げる必要はないってずっと言ってた。で、ディレクターに『いや、もうちょっと歌を聴きたい』って言われる、みたいな。本当にその闘いだったんだけど、今はちゃんと歌を歌として大事にできるようになったというか。それこそ歌のためにオケをシンプルにしてみたり、歌のために音がどういるのがいいのか?っていうのは、今回のアルバムでは凄いテーマだったんだろうな。その辺は前回のアルバムからちょっとずつ変わってきてはいたと思うんだけど――だからこそ“週刊少年ジャンプ”や“棒人間”ができたんだろうけど、でもやっぱり、“前前前世”みたいな歌ができたことで、その部分がより前に前に引っ張られていったんだろうなとは思いますね」

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text by有泉智子

『MUSICA12月号 Vol.116』