Posted on 2016.11.16 by MUSICA編集部

THE ORAL CIGARETTES、渾身のシングル『5150』発表。
自身の王道を更新したバンドの1年とこれから

自分の中に化け物が1匹潜んでて、
シングル書く度にそいつがデカくなってて。
今はそいつをどう手懐けるか割り切れるんで、不安はまったくないな(山中)

『MUSICA 12月号 Vol.116』P.48より掲載

 

■アルバム『FIXION』以降2発目のシングルです。いろいろな状況の変化と進化から生まれた曲なのはわかりますが、まずは思うことから始めましょう。

中西雅哉(Dr)「確実に新しいTHE ORAL CIGARETTESの新境地というか、新しい武器を手にした強みを感じています。前までリスナーに委ねていた部分があったけど、明確に伝わりやすい曲ができたのでストレートに伝えるアプローチが一番大きいかなって思います。特に”5150”に関してはストレートの中にクセを出したり、どう今までと違うやり方を詰められるかってことを意識的に考えましたね」

■大腸のように入り組んでいたところに個性があったこのバンドの楽曲が、なんでストレートになったの?

中西「大腸(笑)。一番大きいのは拓也の歌詞だと思います。最初に作り出した時にサビのリズムがすぐ出てきたっていう初期衝動があって、それが僕の中でもハマってたし拓也の中でもハマってて。僕が曲づくりの段階で1回フレーズを変えた時、拓也も違和感があったみたいで『最初のイメージでよかったんだ』っていう、初期衝動そのものがよかったんでしょう」

鈴木重伸(G)「前のシングル”DIP-BAP”は結構頭使って、自分にないジャンルをしっかり表現した形だったんですね。今回のシングルは自分の中で原点に帰ったフレーズをつけられているんで長年聴いている人にとっては『あ、オーラル帰ってきたな』ってシングルにもなるんじゃないかなって。まぁもちろん、まさやんが言ったように新しいことをやってはいるものの、自分のギターフレーズとしては”DIP-BAP”以降全然いいフレーズができないなぁって悩んでで。それでふと原点に戻ろうと思って、セッションの中でこの“5150”のリフもできたり、そういう2、3年前の原点の感覚が僕は凄くこのシングルにはあるなぁ」

■悩んだ末の原点回帰に到った部分をもう少し話してもらえるかな。

鈴木「ちょうど1年くらい前のシングルから凄く自分自身がギタリストとしてまだまだ足りないなって悩んでて、いろんな曲を聴いて勉強していて————もちろんそれもいいことだったんですけど、楽しんで作っていけなくなってしまっているなって気づいて。何やっても何作っても自分の中でドキっとするものができなくなってて……。『元々どういう時が一番楽しくできてたんだろう?』って思った時に、やっぱり自然にできてた時が1番楽しいなと思って1回リセットしてセッションしたら本当に上手く行って、心の持ち方ひとつでこの曲のフレーズができたので。みんなに『あ、それいい!』って言ってもらえた感覚も凄く懐かしくて、気持ちも含めていろいろないい意味で原点に戻ったなと思いました」

山中拓也(Vo&G)「僕はこの曲では新しい王道を作り上げれたんじゃないかなってちょっと思ってて。『オーラルのこれぞ王道!』ってことをずっと言い続けてきたけど、その確固たるものが“5150”はちゃんと形になったんじゃないかなと思ってます。今一度“DIP-BAP”って曲で自分達のルーツとかそういう部分をもっともっと深く探って音楽と向き合って、じゃあその次は何をすんねん?ってなったら自分達が提示していくものっていうのは、昔も今も何も変わらずこの場所なんだろうなってことを、この曲で改めて確認しました」

あきらかにあきら(B&Cho)「曲を作っていく時に、まだまだいろんな作り方があるんやなぁってもう1回考えさせられた曲で。みんなと似たようなことですけど、“DIP-BAP”は結構考えて整合性取ったりとか凄い頭を捻って作った曲やなって思ったんですよ、左脳的というか。でも“5150”は拓也が持ってきたフレーズに対して、どうしたらシンプルにそれを活かせられるのか?っていう右脳的なエモさだけで作ったところが大きくて。僕らがここ最近のアルバムを作っている時に伸ばしてきた伸びしろの部分を自然に曲に導入できたんですよね。だから難しく考えずに引き出しの中にあったものでちゃんとフレーズを引き立てられるんだなって思ったし、とにかく自分を信じて直感で作ったって感じなんですよ。『これはいい、これはよくない』って」

■『DIP-BAP』は収録曲3曲がすべてバラバラというか、野球で言うと1曲目がシンカー、2曲目がシュート、そして3曲目がナックルボールくらい不思議な感覚を持つものというか、とにかく3曲とも違うキメ球みたいに聴こえたんだよね。要するに今回の3曲は全部がキラーチューンになっていて、非常に攻めているとも言えるしバンドとして勝ちを獲りにいってるシングルだと思ったんですけど、これは曲づくりをする段階で考えていましたか?

拓也「元々“アクセス×抗体”と“ミステイル”は“DIP-BAP”と同じくらいのタイミングで作っていて、元々はこの2曲のどっちかを“DIP-BAP”以降のリード曲にしようって思ってたんです。今までの自分達だと曲ができたタイミングでリード曲と思ったら1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月経ってもリード曲だって言えたんですけど、今回はできたタイミングではリード曲だって思えたけど、1ヵ月後に聴いてみたらやっぱ違うってなったんです。それが今までにない新しい感覚で、『なんでなんだろう?』って考えたんですが……悪い言い方をしたら『ただのオーラル』だったんですよね(笑)。2曲目も3曲目も今までのオーラルの方程式に当てはめてきた楽曲だし、歌詞の世界観とか今まで自分が書き続けてきた1番やりやすい方法でできた曲だったから、そこまで苦労しなかったし。でも実際自分達の状況は2、3年前とは変わってきてて、今年自分達が何をしなくちゃいけないのかって考えた時にこの2曲はやっぱり違ったんです。もっと覚醒を実感しないと、この状況に見合う曲にならないと思って。とはいえ、その時自分達が今なにを提示しなくちゃいけないのかっていうのも別に見えているわけじゃなくて。だから“5150”を生み出すまでに凄く時間がかかったんです」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA12月号 Vol.116』