Posted on 2013.11.15 by MUSICA編集部

SEKAI NO OWARIが現世に生み出したファンタジー空間
「炎と森のカーニバル」完全レポート

終わりなき「夢」を「世界」に変えた夜――
「壮大なるファンタジーの具現化、「炎と森のカーニバル」

『MUSICA 12月号 Vol.80』P.58より掲載

 

 

でも本当は夢ってさ 叶えるモノじゃなくってさ

共に泣いたり笑ったりするモノなんだ

――SEKAI NO OWARIがまだ世界の終わりだった頃からライヴで演奏していた“yume”という曲には、こんな一節がある。10月12日~14日の3日間にわたって開催されたセルフプロデュースによる野外ワンマン「炎と森のカーニバル」。それは、バンドのワンマンライヴという領域を遥かに超えた、まさに「夢」の具現化としか言いようのない壮大なファンタジーでありながら、その場限りで消えてしまう魔法とは明らかに異なる感触を持った、確かなるひとつの「リアル」だった。

 「炎と森のカーニバル」の開催が発表されたのは今年の2月、「ARENA TOUR 2013 『ENTERTAINMENT』」のツアーファイナルでのこと。けれど実際に構想が動き出したのは去年だったというから、ほぼ1年がかりで準備し、実現させたプロジェクトということになる。時々スタッフから「こんな感じになりそうです」という話を聞かせてもらったり、イメージ図のようなものを見せてもらったりもしたけど、発想があまりにも壮大過ぎて現実的な予測がつかないというか、本当に実現できるのか勝手に心配になってしまったくらいだった(もちろん今となっては、その心配は完全な杞憂だったとわかるのだけど)。実際、開催を約2週間後に控えた9月末に都内のスタジオでライヴのリハーサルに励む4人の様子を見に行った際も、Saori(SEKAI NO OWARIのステージは毎回そうだが、今回も彼女がメンバーの意見をまとめ、総合演出を務めました)が「いろんなアイディアを出したし準備やチェックもしてるけど、そういうものが実際にどんなふうに見えるのか、どんなふうに機能するのかは、私達にも現地に入ってセットを組んでみるまでわからなくて」と話していて。Fukaseのこだわりであったステージに「生える」高さ30mの巨大樹と共に今回の目玉となった巨大なウォータースクリーン(特殊ノズルから水を滝のように落として作る水幕スクリーン。映像や文字を映し出すことができる)を使った演出も、当然だけど都内のスタジオでは試すことはできず、現地で実際にステージを設営してから確認する以外に術はないのである。

 とはいえ、リハで会ったメンバーからは、不安な様子はほとんど感じられなかった。ここに至るまでに話し合い(と、おそらく「闘い」笑)も散々したし、考え得る準備はやっているし、あとは制作に励むスタッフ陣を信じ、自分達は音楽の練習に励むだけ……とでも言うような、地に足のついた自信が滲み出るような落ち着いた雰囲気があった。唯一、アリーナツアーの「空中散歩」に続き、今回の目玉演出のひとつとしてマイケル・ジャクソンへのオマージュのごときダンスを「魅せる」ことになったDJ LOVEだけは、ちょっと不安そうで、他のメンバーよりも先にスタジオに入って一生懸命ダンスの個人練習に励んでいたけれど。

(続きは本誌をチェック!))

 

text by 有泉 智子

『MUSICA12月号 Vol.80』