Posted on 2013.01.18 by MUSICA編集部

BOOM BOOM SATELLITES、革新の先で普遍を鳴らした『EMBRACE』


このビートも、この歌も、このサウンドも、
すべては「生=世」を受け止め、進むために鳴る。
革新の先に鮮やかに開き、新章突入を告げた
絶対無比の最高作『EMBRACE』、
川島、中野ソロインタヴューにて徹底究明。
そして川島の現状も――。

『MUSICA 2月号 Vol.70』BACK COVER SPECIALに掲載


INTERVIEW WITH MASAYUKI NAKANO

■完成直前にアルバム初回特典用の映像インタヴューをしたんですけど、その時の中野さんは「正直なところ、まだこれがどんなアルバムなのかわからない」と前置きしつつ、「あの時期の僕らの人生を割とそのまま映した作品だと思う」とおっしゃっていて。

「そうですね。今回は本当に1曲1曲、最後までどんなアルバムになるかわからないまま突き進んでいたので………というか、そんな余裕がなかったというほうが正しいんだけど(笑)。だからこのアルバムって音楽的なコンセプトがないんですよ。そういうことって今までなかったと思うんだけど。ここまでスタイルとかに囚われず、フリーフォームに作ったのは初めてなんじゃないかな」

■そうですよね。音楽的な自由度と振り幅が凄く高いですよね。心のあるがままに作っていたような、そんな印象がある。まぁ実際はそんなに簡単なものではないというのはわかってるんですが。

「いや、でもそうだと思う。まぁそれくらい手探りだったというのもあるけど、音楽って実はそういう簡単なこと――心のあるがままに作っていくものなんだと思う。年齢的にもそういう作り方になっていくべきなのかなって思うしね」

■今は完成から1ヵ月半ほど経ち、様々なリアクションを受ける中で、ご自分の中でも整理されてきたんじゃないかと思うんですが。現時点で中野さん自身がこのアルバムをどう捉えているか?から伺えますか。

「振り返ってみると、聴いた人にどういう作用があって何が残っていくか?っていうことを一番に考えて作ってたんだなって思いますね。もちろんどの作品でも、発信する側の意志と、聴き手が何を感じるかのバランスは考えてたと思うんですけど、今回はそれが今までで一番リスナー寄りというか。それはセールスとかマーケティングとかいう意味ではなくて、聴く人の人生なり、生活なりを凄く意識して作ってたんだなって思って」

INTERVIEW WITH MICHIYUKI KAWASHIMA

■以前、完成直前にこのアルバムについて伺った際、川島さんは「音楽的に包容力のあるアルバムになったと思う」とおっしゃっていて。

「うん、そうですね」

■音楽的なバラエティという意味でも、包括する感情の幅という意味でも、とてもスケールの大きな感動を覚える作品になったと思います。改めて、ご自分達にとってどういう作品になったと思いますか?

「作ってる途中、何曲か上がってきた時に『これは『TO THE LOVELESS』の先にある音楽だな』と思ったんですよ。正直言うと、僕らの歴史はあのアルバムで終わりなのかもしれないと思っていたところもあったんですけど」

■なるほど。確かに『TO THE LOVELESS』は到達点であり集大成だったと思いますけど、そこまで思っていたんですね。

「そうですね。今までと同じような感じであっては自分達でもつまらないし、そういうものを人に聴かせるわけにはいかない――それは自分達の信念として、そう思ってるから。これぐらいのキャリアになってくると、同じような作品を何枚も出し続ける人もいるじゃないですか。もちろんそういう在り方もあるんだろうけど、僕はそんなことを続けるくらいなら辞めたほうがいいと思っていて。だから、本当にあの先があるのか?っていうのは、正直わからなかったんです。でも、いろいろなことがある中で中野とふたりで作り始めて………今回は大きな何かに向かうというよりも、1曲1曲作っていくという感じだったんですけど、そうやって何曲かできてきた時に、『TO THE LOVELESS』で培ったスキルやフォーマットみたいなものを使いつつも、その先のことをやれているなぁという実感があったんです。それで『ああ、知らない間にちゃんと先に進めてたんだな』と思って…………その印象は、でき上がった今も変わってないんですよね」

■その「先」っていうのは、具体的にはどういうところに感じたんですか?

「言葉では上手く説明できないんですけど………でも、BOOM BOOM SATELLITESという音楽の純度が凄く高くなったアルバムだと思うんですよ。何か特定の音楽やシーンを意識していない作品だし、そういうところとは離れた、凄く純粋な自分達の音楽というか………これまで様々なスタイルを消化してくる中で、僕らは僕らならではのオリジナリティ溢れる音楽経験を培ってきたと思うんだけど、そこから純粋に生み出された音楽だと思うんですよね」

(続きは本誌をチェック!)

text by 有泉智子

『MUSICA 2月号 Vol.70』のご購入はこちら