Posted on 2013.01.21 by MUSICA編集部

2013年新鋭特集―きのこ帝国

音楽シーン全体が健全な魂ばかりを引き寄せるこの時代に、
何故、きのこ帝国は容赦なく
怒りと悪意が渦巻くエモーションを撒き散らすのか?
ブライテストホープの座を決定づける
ケタ外れのファーストアルバムが完成した今、
バンドの首謀者にして絶対的リーダー、
佐藤の心の闇と音楽的野心の真相に迫る!

『MUSICA 2月号 Vol.70』P54に掲載

■前作『渦になる』の衝撃は1枚のアルバム以上のものがあったので、「あ、言われてみればそうか」という感じではあるんですけど、フルアルバムとしては、今回の『eureka』が初めての作品になりますね。

「はい」

■これがまた、さらなる衝撃というか、本当にとんでもない作品で。

「ありがとうございます」

■『渦になる』はバンドが凄まじいスピードで進化している最中の作品ということもあって、曲を作った時期によって音作りにバラつきのある、いわばバンドのドキュメント的な作品でしたよね。

「そうですね。今回は、自分達が今やってるライヴの音をそのままCDに反映させたいという思いがあって。バンドの演奏を全部同時にレコーディングして、最終的にも納得できる音になったかなと思ってます」

■本作の『eureka』でひとまず、きのこ帝国の音楽の世界というのが確立されたと思っていいんでしょうか?

「ソングライティング的にはまだいろいろとやってみたいことはあって、そういう意味ではバンドはまだ過渡期だと思うんですけど、自分達のサウンドの方向性はここでひとつ提示することができたかな、と。今回、ライヴでのサウンドを作品に反映することができたことで、次にやってみたいことも見えてきたし」

■僕自身、きのこ帝国の音楽の魅力を伝えるキーワードとしてこれまで使ってきた言葉なので、これは自戒を込めて言うんですけど、前作はシューゲイザーとかマイブラ(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)とかって言葉で語られることも多かったじゃないですか。そうレッテルを貼られたことに対する反発のようなものはありました?

「いや、いい意味で捉えてそう言ってくれてるんだったら全然嬉しいですよ。実際、マイブラって凄いバンドなんで、有り難い話というか(笑)。でも、逆に『全然シューゲイザーじゃねぇだろ』とか書く人もいて、『自分達もそう思ってないよ』っていうのはあるんですけど(笑)。ただ、聴く人が感じたことで、こっちからしたら『それは勘違いだよ』って思うようなことでも、その勘違いがプラスに転がることもあるかもしれないから、まぁそういう勘違いもどんと来いみたいな。結局は自分らがどんな音を出すかだけだから、聴いてもらえるなら、それをどう捉えられても言い訳しようがないですよね」

■なんでそんなことを訊いたかというと、『渦になる』でシューゲイザー的なサウンドに接近したと思ったら、今作『eureka』では早くも次の段階へとサウンドが進化していると思ったからで。

「単純に、日々曲を作ったりライヴをやったりしている中で、『こういうのがカッコいい』っていうのがちょっとずつ変わってきてるんですよね。それによってバンドのモードも変わっていくから。今回『eureka』に収録した曲の約8割は前作以降に作った曲だから、それだけリアルタイムでのバンドの変化が反映されていると思います」

(続きは本誌をチェック!)

text by 宇野維正

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