Posted on 2013.06.22 by MUSICA編集部

パスピエ、新たなポップの宝物『演出家出演』を
徹底的に掘り下げる

パスピエです、
初めまして。

『MUSICA 7月号 Vol.75』P88に掲載

■初めてMUSICAに登場していただくんですけど、非常に面白いポップマエストロ、ミュージシャンにしてプロデューサーでもあるアーティストが久しぶりに出てきたなとお見受けしてて。今日はお話するのを楽しみにしてました。

「ありがとうございます(笑)」

■いきなり大枠から入りたいんですけど、自分が音楽をやる理由ってなんですか?

「僕、5歳くらいからピアノをやっていて。当時、体が弱かったんですよ、病気を持っていたのもあって。で、姉がピアノをやっていたので家にピアノがあったし、外でなかなか遊ぶこともできなかったので、必然的に弾き出したんですよね。そこからは音楽一筋でやってきて……コンクールや大会に出て、みんなに『頑張りなよ』って言われたりして、それなりに自負も持っていたんですよね。だから結果的に、自分の人生の95%以上が音楽なので、自分を表現するためのツールが音楽だったっていう感じで」

■小さい頃から相当ピアノが上手かったんだ?

「うーん……一般的に見たら上手いほうだったんですかねぇ」

■音楽の授業の時に「成田くん、凄い!」って囲まれるような感じ?

「まさにそういう感じですね」

■それが自分の中で嬉しくて、音楽やピアノに依存していく部分もあったんですか?

「そうそう、そうでしょうね。元々体が弱くて長距離走やサッカーとかもできなかったし、選択肢が限られていたっていうのもあったんですけど。でも、やっぱりそれ以上に自分の存在意義が出てくるというか……」

■当時やってたピアノってクラシックだったんですよね? 世の中に流れている大衆音楽とイコールじゃないわけで。そこで人気のある音楽と自分のやってるピアノとの距離感っていうのは、どういうものだったんですか?

「子供の頃はまだクラシックが何か?とか、ベートーヴェンが何か?とかはわからなかったから、『ピアノが弾ける』『わぁ、凄い!』っていうところで終わっていたんですよね。でも、中学校とか高校に入って『ピアノ、どういうのをやってるの?』って訊かれた時に、『こういう感じのをやってるよ!』って言いながら弾いたら誰にも響かなかったことはありましたよね(笑)。クラシック界では凄い有名なものでも、全然響かなくって。とことん別の世界なんだなって身に沁みてわかってきたというか」

■そこでの孤立感みたいなものって、自分にとってはそこまで大きな問題じゃなかったんですか?

「その時、自分は『クラシックだし、みんな知らない曲なんだけど、それでワッと言わせるためにはどうしたらいいのか?』っていうことを考えていましたね。たとえば、ピアノを弾くっていう行為自体でワッと湧くのであれば、メチャクチャ速い曲を弾いてやろうとか、凄く難しく見える曲を弾いてやろうとか。あとは、“子犬のワルツ”とかベートーヴェンの“月光”みたいな誰でも知っている曲を凄くカッコよく弾いてみよう、とか」

■それは、成田くんにとって自分のやっている音楽を認めさせたかったのか、モテたかったのか――女の子との恋愛っていう意味だけではなくて、もっと広い意味で人気を集めたかったのか、どういう気持ちだったんですか?

「両方あると思いますけど……モテたいって気持ちよりは、前者のほうですね。自分が高校生の時点で10年くらいピアノをやってたので、やっぱりその10年間を何とか肯定させたかったというか」

■やっぱりそうなんだね。何故こういう話を最初に訊いたかっていうと、成田くんの音楽って、気持ち悪いくらいにポップっていうものに対しての欲望と執着があるなぁと思うからなんです。で、その執着の根っこには何らかの「復讐心」に近いものがあるなと思ってて。

「えっ、あ、はいっ」

(続きは本誌をチェック!)

text by 鹿野 淳

『MUSICA 7月号 Vol.75』のご購入はこちら