Posted on 2013.12.16 by MUSICA編集部

さらなる快進撃を描き出す裏で意外にも抱いた悔恨
――クリープハイプ尾崎世界観、独白

 

“憂、燦々”は本当に希望だったし、
絶好のチャンスだったから。
無駄にしたとは思ってないけど、
そこで行き切れなかったのが
本当にショックだったんですよ

 

『MUSICA 1月号 Vol.81』P.54より掲載

 

■去年に引き続き、年末特集に登場です。ここに登場してもらうっていうことは、2013年に素晴らしい実績を残したということで。今年は、昨年以上に晴れ晴れしい活動をされたと思いますが、どう?

「そうですね……晴れ晴れしい活動をした……とは思います」

■なんか歯切れはよくないんだけど(笑)。去年だと、メジャーに行った新人バンドとして非常に象徴的な活躍をした1年だったわけで。それで今年は、真っ向からクリーンナップを打つための旅に出た1年だったと思うんです。振り返ってみて、どれくらいまでできたっていう感じなんですか?

「……ふぅ、去年の感じとは違って、凄く悔しかったんです、ずっと。そういう1年だったと思います」

■それはなんで?

「(思ってるところへは)やっぱり届かないんだっていうことを実感したし。今年は見ているところが高くなったというか、天井がなくなったし、いろんな大きなものと闘わなくちゃいけなかったから。そんなのは初めからわかっていたことだったけど、実際にそうなると……『二軍では成績を残せるのに、一軍に上がった途端打てない』みたいな感じがわかって。メジャーデビューした1年目(2012年)に『最初なのに凄いね!』って言われていたのもなくなって。そこから上がっていくしかない状況でCDの売り上げが不安な状況もずっとあったんです。『こんなふうにプロモーションしてるけど、これでいいのかな』とか、『忙し過ぎるし、時間に余裕がなさ過ぎる』とか――キャンペーンの時や取材を受けている時には安心できるんですけど、家に帰った途端、『本当にこれでCDが売れるんだろうか?』って思ってしまったりして。そういうので凄くモヤモヤしてて……そのモヤモヤが結果的にセカンドアルバムの曲に繋がっていったんですけど。その延長で今年の頭に『社会の窓』を出して、一旦のピークを迎えて。そこから『憂、燦々』の『大きく上がっていくぞ!』っていうタイミングの時に、自分の中で『……なんかなぁ』って。……リリースのペースが早過ぎて、忙し過ぎて、勢いのまま乗せられてしまっていたというか。気づいたら『こんなに出すんだ!?』ってなってしまってたんですよ」

■なんか、やたらネガティヴだね。去年の年末特集のインタヴューの時はピースサインもんだったんだよ?(笑)。「今年俺を呼ばないで誰を呼ぶんだ!」くらい言ってたけどね。

「あぁ……(笑)。随分と実感が違う1年でしたね………今日だって、『(年末特集に呼ばれることに対して)あ、そうなんだ?』っていう感じでしたもん」

■ははは。もうちょっと時節に沿って丁寧に訊いていこうと思うんだけど。まず、去年から“憂、燦々”のタイアップ(資生堂『アネッサ』のCM)は決まっていたよね。

「はい、そうですね」

■それはつまり、「夏とクリープハイプ」っていう組み合わせによる、大きなタイアップという絶対的な賭けだったというか。で、『憂、燦々』が光だとしたら、それに対して最高の影を作ろうとして先に出したシングルが、今年3月の『社会の窓』だったわけだよね。これは効果てきめんだったと思うんですよ。

「あれは驚きましたね。『こんなにやりたいことやって伝わるんだ!?』と思って。『これで認められたんだったら、当然もっといくだろう!』と思っていたんですけど……それがあったからこそ、『憂、燦々』の時に『あぁ……』って思ったんです」

 

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text by 鹿野 淳

『MUSICA1月号 Vol.81』