Posted on 2013.12.16 by MUSICA編集部

マジョリティの中のマイノリティをさらに極めた
サカナクション、鮮烈な2013年を語る

 

芸能やエンターテイメントの枠の中にない人達の
音楽がちゃんと認められる場所が必要で。
そこを創るのが俺達の仕事だし、
役割のような気がしてる。
音楽で人をワクワクさせた人達が
表に出れる時代になればいいなって

 

『MUSICA 1月号 Vol.81』P.48より掲載

 

■今日は11月28日なんですが、世の中の旬的に言えば、「紅白おめでとう!」って感じだね。

「うん、ありがとう。でもまぁ、ちょっと遅いけどね(笑)」

■まだまだ旬でしょ。実際、どういう感じなの?

「紅白の中での俺らの位置づけが面白いなと思った。なんて言うか、『バンド』って感じの位置づけでさ。スポーツ新聞も見たけど、やっぱり異質だよね(笑)。自分でもそこを狙ってはいたんだけど、『マジョリティの中でのマイノリティ』みたいなポジションを、普段は自分で言ってるけど今回は外側から露骨に感じて」

■それは自分が予想してた通りのリアクションがあったってこと?

「うん、だって明らかに違和感あるじゃん。泉谷しげるさんとmiwaさんと、3人で並んでたのね。で、泉谷さんは照れ隠しみたいなの得意だし、実際そういう演技もしてて。けど、俺達もそれができるなって思ったんだよね。いい意味で粋がるっていうか……俺らがマスメディアに出た時に違和感を感じてもらいながら、でも、いつも音楽を聴いてくれてるコアなリスナーには俺達のベースにあるものをしっかり感じてもらうっていう。マスメディアの中にいる俺らの違和感を楽しんでもらうっていうかさ。だからMUSICAで言いたいのは、その違和感に読者やリスナーが慣れたらダメだし、そういう場で自分達をどういうふうに見せていくかが重要かなって思った」

■そもそも紅白には自分から積極的に出たかったの?

「というか、出るとしたら今年しかないなと思ったんだよね。今までなかったからさ、こんなにNHKに出る機会が。“Aoi”でNHKのサッカーのテーマ曲もやったし、『SONGS』って番組にも出たしさ」

■でも、もしかしたら今年しかないんじゃなくて、ここが元年で、これから始まっていくのかもしれないじゃん。

「うん。でも、たぶん来年は俺らみたいな『マジョリティの中のマイノリティ』感があるバンドがまた新しく出てくるんだよ、きっと。そうじゃないとダメなんだよね、たぶん」

■そういう意味では、北島三郎が引退する紅白って凄い時代感があるし、そういう年にサカナクションが出るのって、ある意味、NHKのプロデュースが効いてると思った。入れ替わっていく姿を見せるっていうか。他のアクトにも露骨にそれが出ているし。

「そうかもね(笑)」

■だって今はもう、バンドをやること自体が新しいことではないし、ロック=ユースカルチャーっていう時代でもないじゃん。別にロックとかアイドルとか関係なく新しいテーマでちゃんと音楽をやる人達がカテゴライズされてきた中で、サカナクションが紅白に出るっていうのは、凄く意図的に新陳代謝がなされてる年だなって思うんだよね。

「うん、鹿野さんには震災以降特に言ってるけど、『音楽好きな人のために音楽を』っていうことが僕らにとっては凄く重要なテーマで。そういう人達がちゃんとエンターテイメントのシーンの中でも枠をもらえるっていうのはいいなと思った。嬉しい。だって今まではそういう枠組みから排除されてたわけじゃん」

■いわゆる、芸能っていうものからの排除だよね。音楽の中にも芸能って呼ばれるものとそうじゃないロックバンド村みたいな棲み分けがなんとなくあって、紅白やマスメディアに出るのは芸能的なタイプの音楽が多いんだけど――。

「そう。でもそうじゃなくて、芸能やエンターテイメントの枠の中にない人達の音楽がちゃんと認められる場所が必要で。そこを創るのが今の俺達の仕事だし、役割のような気がしてるかな。やっぱ音楽で人をワクワクさせた人達が勝ちっていうか、そういう人達がちゃんと表に出れる時代になったらいいなって」

 

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text by 鹿野 淳

『MUSICA1月号 Vol.81』