Posted on 2014.01.16 by MUSICA編集部

「歌」、そして「音楽」を見つめ直したplenty
新たな始まりと変化を語る

俺はこれまで歌を歌っていながら、歌っていうものを履き違えてた。
…………俺じゃなきゃいけない理由があるわけじゃないですか。
その俺じゃなきゃいけない理由を、もっと歌でちゃんと表したい

『MUSICA 2月号 Vol.82』P.88より掲載

 

■間に『 r e ( construction ) 』を挟みつつ、新曲としては『this』後一発目の作品となるわけですが。アレンジ面でここまでの集大成的な完成度を感じつつ、1曲目の“これから”というタイトルが表す通り、また新たな始まりを表した作品だと思ったんですけど。

 

「うん、そういう感じですね。『 r e ( construction ) 』と半ば同時進行みたいな感じで作ってたから、そういう思いは特にあるかな。これを作ってる時は夢中でしたけどね。前のインタヴューで話した『バンドになりたい!』っていう想いがどんどん凄く強くなってて……とはいえ今回も江島さん(江島啓一/サカナクション)に叩いてもらったんですけど、でもバンドっぽくないですか?」

 

■郁弥くんが言う「バンドっぽい」ってどういう部分?

 

「ドライな感じではない感じにしたかったんですよ」

 

■なるほど、それは生身の衝動やエモーションをより強く感じられるモノってことですよね。

 

「そうそう。『this』はもっとドライというか、緻密さを求めていたところがあったから。でも今回は多少演奏がよれたりミスしたりしても、それよりもバンドで演奏してる感じを大事にしたというか」

 

■今回もアレンジは緻密なんだけどね。ただ、より削ぎ落されていて、バンドの骨が聴こえるサウンドになっていて。今回一発録りでレコーディングすることに重点を置いたって聞いたんですが、それも緻密さよりもバンド感を大切にしたいっていう表れなんだね。

 

「そうですね、そこは大事にした」

 

■ただ、私がその生身のエモーションや衝動性をより強く感じたのは、サウンドよりも実は歌の部分だったんですけど。

 

「あ、もちろん歌もあると思います。そこも含めて………やっぱり『 r e ( construction ) 』を作って、バンドや自分のことを考えてハッと思って。俺はバンドなんだな、俺はバンドがあって初めて伸び伸びするんだなって。そういう話を江島さんともして、今回こういう形になったんですけど………だから凄くいいと思うんだよなぁ」

 

■私はこの作品を聴いて、『this』と『 r e ( construction ) 』を経て音楽性を広げ、いろんなスキルも身につけた今のplentyが、初期のモードというかスタンスで曲を作ったんじゃないかなっていう印象があったんですけど。

 

「そうかも。でも、初期レヴェルアップ版ですよね?」

 

■そう。“先生のススメ”のような怒りや苛立ちを衝動的に表した曲が生まれたことがわかりやすいけど、“これから”や“good bye”にしても歌詞の具体性が増していて。『this』が俯瞰的、抽象的な歌詞の書き方だったのに比べると、テーマや切り取り方が近いというか。

 

「そうそう、そうなんですよ。変な意味じゃなく個人的っていうか、生々しいっていうか。……そういうふうにしたかったんですよね。『this』は俯瞰的なアプローチで書いてたんだけど、今回はもっと俺の想いの丈をそのまま歌おうって感じだった。アレンジも時間はかけたけど、でも、何を歌うかとか、どういう気持ちで曲と向き合うかとか、plentyをこの先どうしようかとか………今回はそういうことばっかり考えてましたね。小手先じゃなくて、もっと自分の想いっていうところで曲を作ろう、それでみんなを巻き込もうって………またそういうところに帰ってきたんです。もちろんアレンジは凄く大事だし、曲も凄く大事だけど――でも、『 r e ( construction ) 』でアレンジだけやってみて、やっぱりアレンジは自分周辺のものなんだよなって感じて。一番堂々としなきゃいけないのは歌なんですよね。アレンジがどんなによくても、歌がよくないと、結局何も伝わらないっていうか……まぁ当たり前のことなんですけど(笑)。それで、じゃあ自分は何を歌いたいのか、どうやったら気持ちよく歌えるのかを一番に考えて曲を作って。アレンジも、歌を第一に考えた上で『じゃあここはギター要らない』、『ドラムは単純過ぎたら歌っててもつまんないから、変なやつでループしよう』って感じでやっていって………その結果、叩けない!みたいなリズムになったんだけど(笑)」

 

(続きは本誌をチェック!

 

text by 有泉 智子

『MUSICA2月号 Vol.82』