くるり、ポップミュージックに革命を起こす大傑作!
ニューアルバム『THE PIER』を
岸田繁単独インタヴュー&3人での全曲解説で徹底解明!!

<§1 岸田繁 単独インタヴュー>
音楽でだったら何をやってもええのよ。通例としては許されへんけど、
自分達の音楽やったらそれをファンタジーとして成立させることもできるし、
リアルにその気持ちもわかるっていう感じで作れる
『MUSICA 10月号 Vol.90』P.38より掲載
■『THE PIER』というアルバムが遂に出ます。これがとんでもない傑作だということは、それこそアルバム発売情報が出る前からウチの雑誌やSNSでフライング気味に騒いできてしまったんですが――。
「ありがとうございます」
■いえいえ(笑)。初めて聴いた時から音楽雑誌としてこのアルバムはどうしても表紙でやりたい、やるべきだと思って、今回の特集に至りました。
「気変わってないですか? 飽きたりしてない?」
■これがもう、まったく飽きないんですよ。私6月の頭くらいからずっと聴き続けてるんですけど、未だに興奮と感動の嵐です。
「ああ、そうですか。ありがとうございます」
■というわけで、今日は岸田さんソロと3人での全曲解説インタヴューと2本立てでいろいろ訊いていきたいので、よろしくお願いします。
「はい、よろしくお願いします」
■本当に革新的かつ独創的、それでいて普遍的でもあるというもの凄いアルバムができ上がったわけですけど。まず、岸田さんの感触は?
「うん………まあ、別に普通?」
■え! これ作っておいて、「別に普通」?(笑)。
「ははははは。自分としては普通やけど、みんなが『いい』って言ってくれるから、『いいんだな』と思ってて。もちろん自分でも凄く好きなアルバムができたなと思いますけどね。なんかこう、『上手くいった』って感じなんかな。前作とかと比べるとやることがはっきりしてたような感じ」
■これをもって前作を振り返ると――前作は新しいバンドになってたっていうことや、あと震災からそんなに時間が経ってなかったことも含めて、瞬発力というか、反射的に音楽を作っていたところもあったのかなと、今作を聴くと思いましたけどね。
「うん……まぁ前作がどういう作品だったんかは忘れましたけど。でも、毎回違うバンドやからね、よくよく考えたら」
■そうですね。
「まあ、今できることのうちのひとつっていうか、そういう感じなんかな。『こういうのが作りたかった』とかそういうのでもないのかもしれん。曲でそういうのはあるかもしれないですけどね」
■くるりはずっと、革新的であることや、自分達なりの解釈と感性で音楽を作るっていうことをやり続けてるバンドだと思うし、だからこそ1作1作いろんなベクトルの作品を作ってきたと思うんですけど。ただ、今回は音楽的にはっきりと新しいもの、くるりにとっても世の中にとって革新的なものをちゃんと作ろうとして作り上げたっていう印象があるんですけど。
「ずっとそういうことやってたつもりやったんですけど、レコーディングってなるといろいろ制限があって。ライヴの制限はライヴの制限であるんやけど、レコーディングっていうのもやっぱり制限があって。そういうことをここ何作かは、どっか『もうええか』みたいな感じでやってたっていうか………周りもこうやし、自分らもある程度合わせた上でやってみようとか、そういう感じもあったんですけど。でも今回は『周りがこうやし』とか『自分達を取り巻く状況はこうやから』っていうのに合わせてると、音楽として成り立たなくなってくるっていう危機感があったんですよね。そもそも、周りの人達が『音楽は不況で』とか、制作費云々とか言うてんのを聞いちゃったら、もう作らんでええやんっていうことになるんで。それは嫌なんで、そういう状況を斜めから見ながら、逆襲の方法を考えたっていうか。せやからルールを批判しまくってるアルバムでもある。そういうのは自分らの性には合ってたかもしれないですね」
■『ワルツ(を踊れ Tanz Walzer)』の後の『魂のゆくえ』からの3作って、もちろん実験や冒険もやっていたとは思うんですけど、どちらかと言うとバンドアンサンブルでできることを突き詰めていた作品で。
「うん、基本はライヴ録りですよね。『魂のゆくえ』なんかはダビングもほとんどしてないし。それはそれで凄くいいなと思うんですよ。もしかしたら、それが一番いいのかもしれないし。実際あのアルバムはいい音で録れたしね。でも、今回はもっとああいうシリアスさとは違う、もっと遊びながらって言うとちょっと違うんですけど、ふざけながらっていうか……質の悪い冗談、悪意のあることを本気でやったっていう感じ?(笑)」
■その「悪意」っていうのは?
「……今ってバカバカしい世の中で、バカバカしいものにまみれながら生活してて、もう怒ってたらキリないわけですよ。俺もおっさんやし、いちいち突っ込み入れんのも疲れるから、もう仙人みたいになって仙人みたいなアルバム作ることもできるんですけど、でもそれも違うなと思って。たとえば、このアルバムのジャケットってファンファン(Trumpet&Key&Vo)がiPhoneでシャキーンって録ったやつなんですよ。今ってそんな感じでもこういうもんが作れるんですよね。で、だったらそんな感じで作ったらええやん、みたいな(笑)。ただ、そこは適当ではなく、プロとして、プロ意識を持ってやろうっていうことで本気でやったっていう感じ。上手いこと説明できないんですけど………たとえば、食べ物なんかにしても本当はそのまま齧ったりとか、生で食うのが一番美味いっていうやないですか。で、それはそれで正解だと思うんですよね。でもややこしいのは、放っといて、干からびて、ちょっと腐ってる魚を食ってみたら美味かったっていうのが一夜干しになったりとか、何かと何かを混ぜ合わせたら美味かったっちゅうので料理になっていくみたいなこともある。発酵食もそうやし、カレーとラーメン混ぜてみましたとかね。で、僕らはそういうことを基本にして音楽をやってきてたんです」
(続きは本誌をチェック!)
text by 有泉智子
『MUSICA10月号 Vol.90』




