Posted on 2014.11.15 by MUSICA編集部

BUMP OF CHICKEN、
新曲2曲と「WILLPOLIS 2014」映像作品、
そのすべての情報・批評と共に彼らの1年を振り返る

『3月のライオン』とのコラボ楽曲“ファイター”、
映画『寄生獣』主題歌“パレード”リリース。
映画『BUMP OF CHICKEN“WILLPOLIS 2014”劇場版』ロードショーと
LIVE DVD & Blu-ray『BUMP OF CHICKEN「WILLPOLIS 2014」』
リリース。

――2014年の暮れから2015年へと一気に駆け抜けるBUMP OF CHICKEN。
そのすべての情報、内容、批評と共に、
稀代まれなる活動ラッシュだった彼らの一年を、がっつりと振り返る!

『MUSICA 12月号 Vol.92』P.32より掲載

 

 今年のBUMP OF CHICKENは、ファンの方なら誰もが感じていることだが、いつになく活発な一年を過ごした。平気で何年もシーンに出てこなかった時代もあったバンドが(もちろん音楽制作を放棄していたことは一度もないことが前提の話だが)、今年は久しぶりにして待望のアルバムをリリースし、演出面を含めて例年にないほどアクティヴなツアーを展開し、しかもメディアへの露出も地上波を含めて積極的に果たし、その上でツアーのファイナルでは東京ドームという、スタジアムライヴの象徴なる場所でのライヴを果たし、終了後の24時には“You were here”というツアーへの想いが含まれたダウンロードシングルをドロップした。

“You were here”を聴いた時、まだ2014年の上半期を過ぎた辺りであるにもかかわらず、彼らがこれ以上ないほど、とても綺麗に一年を仕上げたなあと思っていた。これで残りの5ヵ月間はバンドはオフなんだろうと。できることなら、海外にでも行って英気を養いながら、“(please)forgive”のように異国の地で感じたことが、再び最高の楽曲になればと、勝手な邪推を働かせたりもした。それほどまでに2014年のBUMP OF CHICKENは完璧なストーリーを東京ドームまでで描いていたのだ。

 いや、びっくりした。

 この展開には、とてもびっくりした。リリースが控えていたのは知っていたというか、容易に予想していた。WILLPOLIS 2014へのメンバーの愛着を見れば、このツアーが映像作品になるのは明らかだったし、最近の彼らとスタッフの行動原理からすると割と早くドロップされるのではと思っていた。だから「実はリリースがありまして」と夏に話を聞いた時に、「ツアーの映像なの? それとも東京ドームだけのドキュメンタリーなの?」と返したら、「そうじゃないんです、新曲です」という話になり、それはもう本当に驚いたが、その時はまだ、こんな大胆なリリース計画があるとも思わなかったし、しかも映画のタイアップまで控えているとも思わなかったし、さらに言えば、ツアーが映画になるとも思わなかった。こんなことになってしまうと、来年以降がどうなるのかを逆に心配してしまうが、そんなことは置いといて、新しい楽曲“ファイター”と“パレード”を聴いたので、そのレヴューと、映画やDVD & Blu-rayとなる『BUMP OF CHICKEN「WILL POLIS 2014」』の映像について――実はこのドキュメンタリーに関しては、メンバーへのインタヴューを担当したので、その時のことを踏まえて――ありったけのことを綴ろうと思う。

 

 まずは11月28日にドロップされる“ファイター”。これは、羽海野チカの漫画『3月のライオン』とのコラボレートのために書き下ろされた、画期的な試みとしての音楽である。漫画がアニメになったり映画になったりすると、そこに「音」が発生するためにテーマソングや挿入歌が必要となり、タイアップが導入される――というパターンとは異なり、音も動画も必要とされない漫画自体に対してのインスパイアから新しい音楽が生み出され、その漫画の単行本(第10巻)とCDがセットで販売されるというもの。ある意味漫画がノベルズや映画に変換されるのと同じように、漫画が音楽自体になったかのようなコラボレートがここに誕生した。ちなみに漫画+CDは出版元の白泉社からリリースされるが、28日の0:00よりダウンロードシングルとしてもリリースされる。これには『3月のライオン』のスピンオフが読めるシリアルナンバーがついていて、つまりは電子書籍が音楽にセットとしてついてくるものとなっている。一出版人としても、今回の漫画と音楽の純粋コラボレートは未来が見える画期的なものだと大賞賛させてもらいたい。

 今回の意義を置いといても、この『3月のライオン』とBUMP OF CHICKENが表現を重ね合わせたことを、どれだけ多くの人達が喜ぶか? それを考えるだけでこのコラボレートの素晴らしさが伝わってくる。「臆病な自分に早くから気づいてしまったが故に、いや、生きることを知ってしまったが故に示し出すその一歩の大きさと重さを前に躊躇し続け、それでもなおも前へ進もうとする自分と対峙する中で、時に残酷な、時に真摯なる出逢いを果たす」――そんな両者の本質を人生の糧にしている人が多いことは、2010年代に入る前から手紙やメッセージ、そしてネットの中から気づいていた。

(続きは本誌をチェック!

text by 鹿野 淳

『MUSICA12月号 Vol.92』