満を持してベスト盤をリリース!
NICO Touches the Wallsの現在地に迫る
やっぱり、俺らはずっと、
この王道感をとにかく人と共有したかったんだよね。
それを確かめられたのは大きいし、
これからもこの曲達を共有していきたいっていう気持ちが強くなった
『MUSICA 2月号 Vol.82』P.76より掲載
■1曲目に収録された“ローハイド”という新曲が、会心の一撃って言えるくらいの素晴らしさなんだけど――。
全員「ありがとうございまーす(笑)」
■その辺りは後ほど話すとして。まずはバンドとして初のベストアルバムをまとめてみて、どんな手応えを持っていますか?
光村龍哉(Vo&G)「非常に気持ちよかったですね」
■それはどんなところが?
光村「やっぱり、当初は不安もあって。今回はライヴにおける必須チューンみたいなものを選曲基準にしたんだけど、それぞれ作ってる時期がバラバラだから――曲を作る時の核心は常に変わらないんだけど、でもその時々によって用いた手法とかレコーディングのムードとか、そういうのは全然違うわけで。だから1枚に集まった時に、もの凄く凸凹したベストになっちゃうんじゃないかなっていう不安があったんです。でも最後、曲が全部出揃って、新曲も含めて曲順も決めてみんなで聴いた時に、『ひとつも気持ち悪いところがない』という気持ちよさがあったというか」
坂倉心悟(B)「非常に腑に落ちた感じがしたよね」
■坂倉くんが腑に落ちたというのは、具体的にどういうところが?
坂倉「うーん……俺も凸凹するだろうなって思ってたし、アップテンポな曲ばっかりだなって思ってたんですよ。だけど、実際に聴いたら純粋にいい曲が多いなって思えたし、自分達らしいなって思えて。最後の最後に裏切ったなっていうのもあるし(笑)」
■もう1曲の新曲、“パンドーラ”ね(笑)。
坂倉「そう(笑)。あれも含めて自分達らしくて腑に落ちたっていう」
■対馬くんはどうですか?
対馬祥太郎(Dr)「……個人的に、ベストってあんまり惹かれなかったんですよ。営業的な作戦を凄い感じるので(笑)」
■ま、ビジネス的な事情で出されるベストも多々あるからね。
対馬「はい。でも今回、“ローハイド”という新曲を頭に時代を遡る形で曲順を考えて、いざこのベストが仕上がった時に『ベストっていいもんだな』って心から思ったんすよね(笑)。明確に今の自分達っていうものをよく映せたというか、NICOのメッセージをど真ん中ストレートで出せたような、そんな感覚があって」
坂倉「出すべくして出せたなって思えたよね。今までのをまとめたっていうよりも、今の流れに必要なものとして作れた感覚がある。だからこのベストって、今までのベストというよりも、現在進行形のアルバムなんですよ。俺らの『今』の感じが凄くするんですよね」
古村大介(G)「うん、本当に『現在進行形のアルバムだ』って言えるのが凄くいいなと思います。あとは、俺らはいい曲が本当に多いんだなって思えたのが純粋に凄く嬉しかったですね」
■今回、初回特典のDVDにスタジオライヴが収録されているんだけど、それは今の4人が2006年のインディーズデビュー盤『Walls Is Beginning』を演奏しているもので。この曲達を作った時はまだ10代だったと思うんだけど、こうやって改めて聴くと、当時の名曲の揃いっぷりにちょっと慄いた。凄いよ。
光村「自分達でもびっくりしましたけどね。しかも最近の曲よりも断然渋いっていう(笑)。遡れば遡るほど渋くなっていくっていうのも、おかしな話ですよね。“ローハイド”が一番瑞々しいもんね」
古村「ほんとそうね(笑)」
坂倉「厄介なバンドだったんだなっていうのが凄いわかる(笑)」
光村「やっぱり、最近の瑞々しいムードで作ってる曲と当時の曲とでは、まったくセオリーが違うんですよね。……ただ、今回やってみて、曲が全然古くなってないなぁと思って。だから今演奏してても凄いワクワクするんですよ。それは凄い嬉しかった。当時も『何年経っても演奏してて楽しい曲、何年経っても残っていく曲にしたい』と思いながら作ってたんだけど、それを今回実際に確かめられたってだけでも、俺らとしては十分な意味があった」
■私がこれを観て思ったのは、変な話だけど、曲が持ってるポテンシャルだったり世界観っていうものに、8年経ってバンドが――。
光村「追いついた感じするでしょ?」
■うん、そう思った。
光村「それは俺らも本当に思いました。やっぱり当時と今とでは、自分達がインプットしてきたものに対する自信が全然違うんでしょうね。だから当時の曲って、それなりに経験値を積んだ人がやらないと輝き切れなかった曲達だったのかなって思った(笑)」
(続きは本誌をチェック!)
text by 有泉 智子
『MUSICA2月号 Vol.82』