Posted on 2013.03.17 by MUSICA編集部

凛として時雨、『i’mperfect』で拓いた新たな扉と「変わらぬ」進化

破壊の果てで 孤独と
孤高が織りなす光の音群、
さらに鋭く射抜く――
ニューアルバム『i’mperfect』
第一声インタヴュー

■新作を聴く度に新鮮な思いをさせていただいてますが、今回は特に新しいなという印象を持ちました。完成直後の今、このアルバムに対して自分自身どんな印象を持っていますか?

「こんなに直後に取材することもなかなかないくらい、本当に直後なんですけど(苦笑)」

■昨日の夕方にマスタリングでしたもんね(笑)。

「はい(笑)。……僕の中では、また変わらなかったなっていう感じがあって。制作中は時雨が今出せる音っていうのを再認識できたと同時に、逆に変わらない新しさみたいなものを感じました。それはソロをやっていた時期があったからということもありますし、他のふたりもいろんなところを経由した上でこの3人で集まったということもあるんですけど。……決して初期の作品に近いということではなく、3人の剥き出しな感じが出ていて。そこは前作とは違うところかなと思います」

■その変わらなかったというのは、この2年半の中でいろんなことを経由したから変わるんだろうなという予感があったけど、結局は変わらなかったなという感じなんですか?

「変わらなかったということは、自分にとっては凄くいいことでもあって。変わりたいという欲求は、時雨に関しては実はそんなにないんです。それに、変わらないことというのは時雨特有の変化でもあるのかなとポジティヴに捉えてもいます」

■タイトルの『i’mperfect』は、「アイムパーフェクト」とも「インパーフェクト」とも読めるんですが、読み方次第で丸っきり反対の意味を表すものになっていて。どちらの読み方なんですか?

「インパーフェクトですね」

■つまり未完成ね。このタイトルに至った経緯から教えてください。

「これまで作品を作って人に聴かせた時に、『凄くいいね』、『ばっちりだね』って言われることに凄く違和感を感じることがあったんです。自分はまだまだ未完成だなと感じているのに、どうして人は違う見方をするんだろうって。そのギャップが埋まることは一生ないと思うし、それはそれでいいと思っていて。だけど、そういう違和感を今回の制作中は特に強く感じたんです」

■絵描きの方が昔からよくおっしゃるんですけど、自分の絵が額縁に入っていることへの違和感とずっと闘い続けることが絵を描き続けることの一番のモチベーションになってると。それってTKが今言ったことと同じ話だと思うんです。自分にとっては完成品じゃなくても、一旦額縁に入るとみんなが完成形として見る。そこで自分が何か言ってもしょうがないから、また描くしかない。

「なるほど。……音楽や音というものは、本来ずっと鳴り続けているものだと思うんです。それに無理やり区切りをつけることで曲というものやアルバムというものが生まれてくるのかなと僕は思っていて。絵で言えば、描いている途中のものを人に見られてるような感じが凄く強いんですよね。アルバムは昨日完成しましたけど、やっぱりまだ聴けないですし。自信がないってわけでもないんですけど、あまりにも服を着る途中の自分を見ているような感じがしてしまって………だからほんとに『i’mperfect』っていう感じですね。毎回、作品を作り終えた後は、作り終えたっていう現実と、作り終えてないんじゃないかっていう自分の中での思いが交錯するんです。だから歌詞のチェックのために聴き返すのもキツくて(笑)」

■相当だね。

「だから今回はみんなに歌詞を送って、『間違いがないか見といて』って頼んだし、自分でやるならヴォーカルトラックだけを聴いてチェックするほうがまだ楽って感じですね」

■それは音楽という生物じゃなくて、その一部のパーツだから聴けるってことだよね。

「そうです。まあ逃げてるとも言えますけど(笑)」

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text by 鹿野 淳

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