Posted on 2013.11.14 by MUSICA編集部

THE BAWDIESアジアツアー密着。
苦難を乗り越え彼らが手にしたものとは?

言葉の壁を越え、ロックバンド不遇の逆境に逆らい、
汗とソウルで体当りした旅の過程――
バンドにとって初のアジアツアー、
その口火を切った韓国公演を完全密着レポート!

『MUSICA 12月号 Vol.80』P.52より掲載

15時15分、ホテルのロビーでメンバーと待ち合わせる。メンバーは20日(日)に韓国内でも有数のフェス・Grand Mint Festivalへ出演し、この日で韓国も4日目。この日の午前中は全員で南大門市場へと繰り出し、観光なども楽しんでいたようだ。全員が揃い、歩いて5分程度のサンサンマダンへ向けてみんなで出発。ホテル周辺は連日の食事などで何度も出かけ、地理も完璧に覚えているらしく、MARCYは「ひとりで地図がなくってももう迷わないぐらい」と笑ってみせた。

 数分後、到着したサンサンマダンの建物は、カフェやアートスクール、本やグッズを扱うショップが入ったアート系の総合施設で、地下2階がライヴハウスになっている。地下1階にある楽屋に荷物を置いてすぐ、まずはTAXMANがステージに向かった。空っぽのフロアに向かって音の鳴りを確かめるようにギターを弾いたり、かと思えば、フロアの一番後ろのほうへと駆け下りてステージ全体を舐めるように見渡したり、初めて訪れたハコの感触を噛み締めている。その後、ほどなくしてMARCY、JIMも楽屋から降りてきて、同じようにステージの左右を動き回ったり、楽器を弾いたりしている。「まるでクラブみたいだね。音がパーンッと響く感じ」――“THE SEVEN SEAS”のイントロをさらさらと弾きながら、JIMが言う。確かに音の返りや響き方がやや硬質で、クリアだが余韻や味わいには欠けるようだ。階下のステージでそんな話をしている中で、ふとROYだけが降りてこない。どうしたんだろう?と思って楽屋を覗いてみると、真剣な顔をしてセットリストを決めていた。本編とアンコールの曲数、アッパーな曲やMC等の間の置き所のバランス、新しい曲と比較的昔からある定番曲……大多数が自分達を初めて観ることになるお客さんに向けて、どの曲でどうアピールすればいいか、丁寧に考えていた。最終的にでき上がったセットリストは、アンコールまで入れて合計20曲。90分間でみっちりと自分達の音楽を曝け出す、攻めのセットリストだ。

 ひと通り感触を確かめ終え、ベンチに座りながらタバコを吸っていたJIMとMARCYに、一昨日のフェスがどうだったのか訊いてみると――。

 

JIM「最初はすっげぇヤバかった。会場が広い体育館みたいなところなのに、100人ぐらいしか人いなくて(苦笑)。でも、やってるうちにお客さんも増えてって、ノリがどんどん出てきて」

 

MARCY「別に俺ら、韓国で露出してるわけじゃないし、そんなにお客さんが入んないんじゃないかってのは思ってたけど、でも興味本位で観てくれる人もいるのかなって思ってて。そしたら、『マジか、どうしよう?』ってビビッてたもんね」

 

 聞けば、最初は100人に満たなかったフロアが、ライヴ中にどんどん増えていき、最終的には500、600人近くまでに膨れ上がったそうだ。コーディネイトを行っている韓国側のスタッフに訊くと、それでもTHE BAWDIESはよく盛り上がったほうだという。今の韓国の音楽シーンは、ただでさえクラブミュージックやアイドル文化が強い上に、数年前の流行が落ち着いて以降は、ラジオでも雑誌でも日本のバンドを取り上げなくなったため、アニメ等のテーマソングになってない限り、取っ掛かりがないのだという。いまだに韓国で一番人気のある日本のバンドは、X JAPANなのだそうだ。

  (続きは本誌をチェック!))

 

text by 寺田 宏幸

『MUSICA12月号 Vol.80』