Posted on 2014.08.20 by MUSICA編集部

andymori、復活、そして最後のワンマン――
大阪&東京2公演完全密着!!

青い空をいつか僕らは忘れてしまうけれど、
でも、あのバンドワゴンが駆けた輝く空は、
きっといつの日も忘れない――
andymori、復活にして最後のワンマンライヴ
2日間のバックステージからオンステージまで、独占完全密着

『MUSICA 9月号 Vol.89』P.12より掲載

 

 andymoriは、本当だったら昨年の9月24日に日本武道館公演を行い、それを最後に解散するはずだった。でも、昨年7月に壮平が重傷を負い、目前に迫っていたラストツアーと武道館公演をキャンセル。当時は壮平の容態を心配する声と共に「このまま解散になってしまうのか」という声も聞かれたが、約1ヶ月におよぶ集中治療室での治療を経て退院し、通院治療に切り替わった壮平とメンバーが出した結論は、「壮平が回復したらもう一度必ず素晴らしいライヴをやって、andymoriを最後までやり遂げよう」というものだった。

 あれから1年――。奇跡的にひとつの後遺症も残ることなく回復した壮平と共に、andymoriは遂に最後の旅に出た。2014年夏、6本のライヴをもって、3人はandymoriに終止符を打つ。

 MUSICAはここから2号連続でandymoriを追いかけます。まずは7月21日&27日に行われた最後のワンマン「ひこうき雲と夏の音」、この2日間の完全密着ドキュメントを、どうぞ。

 

7月21日 大阪城野外音楽堂

 

 どこまでも青い空に強い太陽が輝き、遮るもののなく降り注ぐその熱が茹だるような暑さをもたらしたこの日。11時30分に会場に着くと、すでに物販の開始を待つ人の列ができていた。場内ではいつもアンディのライヴを支えてきたスタッフチームが準備を進めている。ステージ上にはすでに3人のマイクやアンプ、ドラムセットが定位置に組まれていて、袖にはギターとベースも並んでいた。「ああ、3人はやっとここに帰ってくるんだな」。そんな実感が、静かに胸に湧き上がる。

 そして、12時22分。メンバーが会場にやってきた。すっと楽屋口に滑り込んできたタクシーの窓から、満面の笑顔の壮平が見える。今年の6月に30歳になったとは思えない少年のままの笑顔で車から降りてきた壮平と、その後から朗らかな笑みを浮かべてやってきた寛と健二と「おはよう」の言葉を交わし、そのまま一緒に中に入った。

 まず3人が向かった先はステージ。スタッフと挨拶を交わしながら、今はまだガランとした客席を見渡す3人。壮平は持ってきた追加のエフェクターをローディーさんに渡し、何やら話し込んでいる。寛がいかにも暑そうな顔で「暑いねぇ」とつぶやく。健二は黙って、でも優しい顔をしてドラムセットから客席を眺めている。1年の月日が空いていることを忘れる、いつも通りの3人。であるかのように、この時は見えたのだけど――。

 しばしの時をステージで過ごした後、楽屋に入り、用意されたお弁当でランチタイム。今どんな気持ちなのか訊くと、寛から「正直に言うと、まだ実感がないんだよね(笑)」という言葉が返ってきた。健二が「晴れてよかった」と笑う。

 雑談をしながら、穏やかな時間が流れていく。壮平が傍らのギターケースからアコギを取り出し、何を歌うでもなくポロポロとギターを弾いている。しばらくそのまま隣で彼の手から零れるギターの音に耳を傾けていると、壮平が突然、ぽつりとこんなことを言った。

「……この1年間ひっそりと暮らしていた人間がさ、いきなり3,000人くらいの人の前に放り出されるんだよ。これってさ、凄いことじゃない?」

 ちょっとびっくりした。普通に考えたらその通りなんだけど、なんとなく壮平からそんな言葉が出てくるなんて思ってなかったのだ。ほとんど反射的に、私は「え、っていうことは壮平、緊張してるの?」と問い返していた。

「うん。だって本当に久しぶりだからね。緊張っていうか……昂揚してる。凄い昂ってきてる。前からわかってたことだしさ、もっと落ち着いてできるかなって思ってたんだけど、やっぱり今日ここに来たら全然違う気持ちになってきた……」

(続きは本誌をチェック!

text by 有泉智子

『MUSICA9月号 Vol.89』