Posted on 2014.08.22 by MUSICA編集部

RADWIMPS、「GRAND PRIX 2014 実況生中継」
ファイナル沖縄公演 ツアー総括レポート

これまで以上の挑戦の果てにこれまで以上の自由を獲得し、
最後まで大きな歓喜の中で音楽と一体化し続けた
RADWIMPS GRAND PRIX 2014 「実況生中継」
ファイナル、7月20日の沖縄公演レポート共に、
素晴らしき「再生と始まり」を提示したツアーを総括する

『MUSICA 9月号 Vol.89』P.64より掲載

 

 7月20日、台風に邪魔されることもなく綺麗に晴れた沖縄の地で、17時35分、RADWIMPSの今ツアー最後のライヴがスタートした。

 アリーナ後方、PA卓のすぐ後ろからニョキニョキとタワーが伸びていき、そこから投射された白いレーザーが鋭い電子音と共にステージ上に光の粒を走らせる。やがてヴィジョンに映し出された宇宙に煌めく無数の小さな光がひとつの生命の光に収束し、その光から零れた一滴のしずくが荒廃した岩地に弾け、そこから水が湧き出していくようにしてカラフルな色が広がり、街が生まれていく――そんなイメージを喚起させる映像が展開し、やがて『×と○と罪と』のジャケットへと結実。同時にメンバーが登場し、1曲目の“ドリーマーズ・ハイ”が始まった。ステージから放たれる複数の真っ白な光の筋が会場を染め上げ、天井にはまるでたくさんの夢の欠片のような無数の光がいっぱいに瞬く。とても幻想的な空間の中を軽やかに舞い踊るようなバンドサウンドが響き、その上を柔らかで透き通った洋次郎の歌声が美しく飛翔していく。その堪らなく心地よい快感に心洗われながら、穏やかな、でも確かなる昂揚感と共にRADWIMPSの音楽世界へと自然と引き込まれていった。そして続く“One Man Live”で、ステージのテンションもアリーナの熱量も一気に爆発。桑原と武田が左右に伸びた花道へと飛び出してエネルギッシュなプレイを繰り広げ、オーディエンスの熱も弾けるように高まっていく。桑原と洋次郎のMCを挟んで放たれた“DARMA GRAND PRIX”では、早くも桑原&武田が激しい掛け合いを披露。ダイナミックなバンドサウンドとオーディエンスを縦にも横にも自在にノセてしまうグルーヴに、アリーナは早くもクライマックスのような盛り上がりを見せる。バンドはそのまま一気に“ギミギミック”まで駆け抜けた。

 2月の熊本公演のレポートで私は、「今回のツアーは根本的に4人が発する『楽しさ』と『開放感』と、そして『自由さ』が違う。こんなにもフラットに4人が音楽を鳴らすことそのものを楽しめているライヴは、今までなかったんじゃないかと思う」と書いた。その感覚は今回の長いツアーを通して一貫して感じられたことだ。とにかく最初の頃からバンドの状態がとてもよかった。熊本で初めて今回のツアーを観た時(まだツアー8本目だった)に、メンバーの表情に笑顔が多く、かつとても活き活きと、無邪気なほど弾けたライヴをやっていることに驚いたのだけど、それは場所をアリーナに移してスケールの大きな表現となっても基本的に変わらなかった。演奏するメンバーの表情はもちろん、その息遣いや体温までを間近に感じられるライヴハウスとは違う、物理的な距離感故にそういったことを感じにくいアリーナという場においても、メンバーが自由に楽しそうに音楽と一体化している様は、確かに伝わってきた。

(続きは本誌をチェック!

text by 有泉智子

『MUSICA9月号 Vol.89』