Posted on 2014.09.18 by MUSICA編集部

横山 健、
激しく揺れ動いた人生の証、
そして2014年のロックと自分を語る

自分が今まで作ってきたアルバムとか、
Hi-STANDARDを含めた実績や地位、お金とか、
何の役にも立たないんですよ。
自分の生活を潤わせてくれるのは、
新曲と、手元で鳴ってるギターだけなんです

『MUSICA 10月号 Vol.90』P.74より掲載

 

■まず、新曲が素晴らしい。今回はドキュメンタリー映画のDVDがメインではあるんですが、一緒についてくる新曲の“Stop The World”が本当にいい曲で感動しました。

「お、いきなりそっちですか。ありがとうございます!!」

■3拍子で、世界の争い――たとえばガザ、ウクライナ、アフリカの内戦、日本と中国と韓国――その全部を含んで嘆いている、「反戦ソング」と言ってもいい曲だと思うんですけど。

「そうですね。歌詞のない状態で、曲は去年からあったんですよ。もちろん、それは『Ken Bandの次のアルバム用に』っていう気持ちで書いたんですけれども。だけど、『アルバムの中の1曲』って考えると、ちょっと変わってるのかな?って思ってたんですよね」

■変わってるっていうのは、ワルツ的なビート感も含めて?

「そうです、やっぱりビート感が大きかったですね。歌詞を書く前から、あの曲に当てていくべき世界観がちょっと違うなって。それで、今回のDVDを出そうとなった時に、映画の公開から1年近く経った今、新しい要素も足したいと思って、思い切って新曲をつけてみようと。それで、『この曲しかない』という感じで、今回のDVDにつけることになったんです」

■健くんは今までもたくさんの闘争ソングがありますが、こういう明確な反戦ソングを歌う意味って、どういうふうに考えているんですか?

「……確かに今まで、ここまで明確な反戦ソングは僕にはなかったと思うんですよ。やっぱり、3.11以降いろんなことが身近に表面化したし、メディアも繋がりやすくなったし……それによって、大殺戮がすぐ目の前に見えるようになったじゃないですか。そういうことが、みんなにとって『他人事じゃないぞ』っていうふうになったと思うんですよね。だから、僕がこのタイミングでこういう歌を歌うのは、凄く自然だったんですよ」

■3.11があって、『Best Wishes』を作ったよね。あの作品の“This Is Your Land”という大切な1曲で、健くんは国旗を纏ったじゃないですか。

「はい。そうですね」

■このDVDの内容も、その中での健くんもそうなんだけど――日本っていう国は、3.11以降で失ったものと魂の内戦をしていると思うんですよ。だけど、この“Stop The World”は明らかに外の世界へ目が向けられている。つまり、国旗を纏ったところから明らかに次のフェーズに行っているという気がして。そこにハッキリとした自覚はあったんですか?

「うーん……自分にとってはそれが自然なことだった、としか言えないんですよね。……メンバーも最初はこの歌詞を見た時に『そこまで言っちゃうんだ?』って驚いてましたけど、『Best Wishes』であそこまで変わった自分を出して、それを持って回ったツアーで感じた手応えがあって――それを形にしたらこうなるっていう気持ちだったんです」

■これは必ずしも一極化してるっていう話ではないんだけど――音楽の今を考えると、「震災が起こりました、悲しみと救済を歌にしましょう」っていう時代は終わって、「もう一度、HAPPYとLOVEに目を向けていこう」っていう対極的な流れが生まれていると思うんですよ。世の中に対して言いたいことはあるけれど、だからこそ音楽はハッピーにいこうよっていう。でも、健くんはここで改めて気が引き締まることを歌ってる。それが「らしいなぁ」と思うと同時に、やっぱり異端だなと思ったんだよね。

「はい(笑)。僕も、その『対極の流れ』は見えてるし、こんな時代だからこそハッピーな音楽を、っていうのもわかるんですよ。だけど――僕の思うロックっていうのは、やっぱりこれを言っていくことなんです。異端だと言われることも凄くわかるんですけど、僕にとっては『当たり前のこと』で。『Best Wishes』からここに至るまで――少なくともこの曲までに関してはそういう想いが強かったんですよね」

■この“Stop The World”はBPMが遅くて、歌のためにある曲だと思うんですよ。そういう曲が出てきたっていうのは、健くんのどういうモードを表してるんだと思いますか?

「………それが、普段だったらもっと自分の曲のことはわかるんですけど、この曲に関しては、どうして出てきちゃったのかが全然わからないんですよね。だけど、歌っている内容にしても、今後自分にとって大切な曲になっていくとは思うんです。こうやってレコーディングしてみても面白い曲だと思うし……うん、だから、こうして1曲だけ録ってみたんだろうなぁ」

■今回のDVDは、言ってみれば健くんのライフストーリーじゃないですか。そのエンディングの、さらなるエンディングみたいな曲にも聴こえてくるんだけど――そういう意志とは別に生まれてきたものなの?

「あぁ……でもたぶん、あの映画の持つ世界観を曲として具現化したいっていう想いもどこかにはあったのかもしれないですけどね」

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text by 鹿野 淳

『MUSICA10月号 Vol.90』