Posted on 2014.11.15 by MUSICA編集部

SEKAI NO OWARI、TOKYO FANTASYレポート&
今こそその独自のバンド論を考察する

確かな進化と共に無二の音楽エンターテイメントを繰り広げた
野外ライヴイベント「TOKYO FANTASY」@富士急ハイランド?。
そのレポートと共に、今だからこそSEKAI NO OWARIを再び考える
「SEKAI NO OWARIという存在、音楽、その夢と信念の現在地とは」

『MUSICA 12月号 Vol.92』P.38より掲載

 

 ちょうど1年前に開催した、初めての野外ワンマンフェスティバル「炎と森のカーニバル」。それは、SEKAI NO OWARIというバンドの歴史において、おそらくclub EARTHを作ったことに次ぐと言っていいほどのエポックメイクな出来事であり、ターニングポイントとなった重要な出来事だったのではないかと思う。彼らのライヴにおける手の込んだ演出とエンターテイメント性/ファンタジー性はそれ以前のワンマンでも発揮されていたものだったけど、30mにおよぶ巨大樹を配したステージセットはもちろん、敷地内の造形やスタッフの仮装まで含め、あれだけの規模の野外広場に自分達だけの「王国」を創造し、SEKAI NO OWARIというファンタジーを具現化してみせたことは、本人達の達成感はもちろんのこと、世間の彼らに対する評価や見方を更新するだけの出来事だったに違いないし、それはこの世界の中に彼らの居場所を確立する上でとても重要なことだったと思う。実際、あれが終わってしばらくの間は誰と話していても「炎と森のカーニバル」の話題になったし、現場がどんな様子だったのかを聞かれることがとても多かった。

 昨年と同じ地に再びその王国を出現させ、行われた「TOKYO FANTASY」。本来であれば10月4日、5日、6日の3日間にわたる開催だったのが、残念ながら台風の上陸を受けて最終日は公演中止に。とはいえ、その2日間で彼らが魅せた世界は昨年のそれを明確に更新するものだった。しかもその更新が、演出手法や演出規模の拡張という形でではなく、音楽的な側面でのレベルアップによって果たされていたということが何より意義深かったし、初期の頃から変わらぬ自分達のヴィジョンと信念を大切に貫いた上で確かなる進化を果たしていっているSEKAI NO OWARIの現在地を、雄弁に物語っていたと思う。この記事は「TOKYO FANTASY」のレポートと、今だからこそSEKAI NO OWARIというバンドの軌跡と本質を考察する原稿の2本立てで構成しているのだけど、まずこの原稿では4日の公演について書いていきたい。

 入場ゲートを潜ると、そこは昨年同様、森の中に開けたSEKAI NO OWARIのワンダーランド。ウサギのスタッフや茂みに蠢く巨大ドラゴン、ステージにそびえ立つ巨大樹などはもちろん、彼らのライヴではすっかり当たり前となったたくさんのオーディエンスの仮装が大きな異境感を作り出している。彼らもまた、SEKAI NO OWARIのファンタジーを構成する大切なファクターなのだ。

 今回のTOKYO FANTASYは、ゲストアクトとしてOWL CITYが全日程に出演。近年のエレクトロポップにおける代表的存在のひとりであるアダム・ヤングのソロプロジェクト=OWL CITYとSEKAI NO OWARIは、すでにリリースされたOWL CITYの新曲“TOKYO feat. SEKAI NO OWARI”にSEKAI NO OWARIがフィーチャリング・アーティストとして参加したり、SEKAI NO OWARIの新曲“Mr.Heartache”のプロデュースをOWL CITYが行ったりと活発なコラボレーションを見せており、今回の出演はその幸福な必然によるものだ。

 ギター、シンセ、ベース、ドラムというバンド編成でステージに登場したOWL CITYは、音源よりもダイナミックかつ肉体的なバンドサウンドでもってエネルギッシュな躍動感に溢れるライヴを展開。“Fireflies”や“Good Time”といったメガヒット曲のアッパーで狂騒的な昂揚感はもちろんのこと、ミドル~スロウナンバーではシンセ・ストリングスと共に凛とした美しいサウンドスケープを描き出すなど自身の世界を豊かに音像化していて、世界のポップミュージック・シーンを牽引する確かなる度量を響かせていく。終盤ではFukaseがステージに呼び込まれ、アダムと共に“TOKYO”を熱唱。Fukaseはやや緊張しているように見えたけれど、バウンシーなビートに乗って飛翔するふたりの解放的な歌声がフィールドを駆け抜け、大きな歓喜を描き出していた。

 OWL CITYが終わり、次第に夜の闇に近づいていく空の下、まるで現実とおとぎの国の狭間を繋ぐようなメランコリックなSEが静かにループし、「その時」へのカウントダウンが始まっていく。そして17時38分。高らかに鳴り響く鐘の音と共に、いよいよSEKAI NO OWARIのショーが開幕。両サイドのヴィジョンに映し出された時計の針がぐるぐると回り、やがて近未来の東京であろう景色を描いたと思ったら、荒涼とした大地にそれぞれメンバーの名を刻んだ4つの墓石が登場する――という非常に示唆に富んだオープニング・アニメーションが展開した後、巨大樹のてっぺんから弾幕が上がり、それを合図に“炎と森のカーニバル”からライヴはスタートした。

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text by 有泉智子

『MUSICA12月号 Vol.92』