Posted on 2015.03.17 by MUSICA編集部

クリープハイプ、
ライヴハウスツアー高知キャラバンサライ公演密着
&新曲“愛の点滅”最速インタヴュー!!

ツアー「一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう 前編」に
べったりと密着ドキュメンタリー。
尾崎世界観の第二の故郷での初のワンマン、
その満願なる想いはどんなロックとして降り立ったのか?
新曲“愛の点滅”最速インタヴュー込み、特別企画「尾崎写真観」!?

『MUSICA 4月号 Vol.96』P.28より掲載

 

 前日の朝に尾崎からメールが届いた。

「明日楽しみにしてますね! 高知は田舎だから今日ひとりで前乗りして、1日ゆっくりします!」

 読解力のない僕はここに書いてある田舎という文字の捉え方を間違っていた。彼が東京人なのは知っていたので、田舎という文字を「ホームタウン」という意味ではなく「カントリーシティ」という意味で捉えてしまったのだ。失礼。

 ライヴ当日、肌寒い高知の龍馬空港に降り立ち、15時30分頃にライヴハウスへ入ろうとしたその時、前を走っていた軽自動車から見慣れたヘアーとコートの男性が降りて、ぬっとライヴハウスへ入ろうとしていた。――間違いなく尾崎世界観、その人である。ただ、とても地元感のある軽自動車から何故彼が降りたのかわからないし、その彼を降ろした車が横を通り過ぎるのを見たら、なんともおっとりとした優しそうな叔母さまがふたり乗っている。しかもメンバーいないし。

 それはさておき、まずはライヴハウスへ入った。今回のライヴハウスは「キャラバンサライ」。350人ほどが入れる、楽器店を兼ねたライヴハウスだ。

 楽屋へ入ると、メンバーがまだ到着しておらず、尾崎ひとりだけがちょこんといる。とても穏やかでリラックスした柔らかい表情でいるので声をかけると、「鹿野さんに食べさせたいたこ焼きがあったんだけど、店が開いてなかったんですよねぇ。もしかして潰れちゃったのかなあ」と唐突に言い出す。あ、高知ってたこ焼きの名所だったんだ?と訊ねると、「いや、そういうことじゃなくて、子供の頃から、別に何が美味しいってわけじゃないんですけど大好きなたこ焼きがあって、それを食べて欲しかったんですよ」と話す。

 ん? 子供の頃から??

「あれ、今まで言ってなかったでしたっけ? 母由美子の実家が高知なので、僕の田舎なんですよ、ここ。だからいろいろ思い出もあるし、それこそこのライヴハウス、子供の頃に従兄弟がやっているハードコアバンドのライヴを観にきたことがあったんですけど、それが人生初のライヴハウス体験だったんですよね。だから、ここで今日やれるのも信じられない部分があるっていうか」

 ここで初めて尾崎にとっての高知の重みに気づかされた。彼の大切な故郷での初めてのワンマンライヴが、この日だったのである。その後も、「昔はもっと賑わっていたと思うんだけど、最近はシャッター閉まっちゃってますよね、商店街も。イオンができたり、いろいろ変わっちゃってるんだけど、おばさんもいるし、従兄弟もいるし、自分にとっては大切な場所なんですよね」と談笑しているうちに、小川、カオナシ、小泉の3人が楽屋に入ってきた。ここがライヴハウス然としたライヴハウスだったからかもしれないが、以前に増して4人が「バンドマン」然として見えたのは、気のせいなのだろうか?

 15時45分。入ってくるや、いきなりシリアスなミーティングが始まる。内容は今後のリリースや露出に関するものなので、まだ詳細はまったく明かせないが、バンドにとって大事な次の一手に関するもので、いきなりみんな眉間に皺を寄せて話し合っている。そんな張り詰めた空気の中、まだミーティングが終わったのか終わってないのか、正確に言うと内容的には終わったことは終わったんだけど、まだそのことについてみんなで話し合っている輪の中から、小川ひとりが無表情で気配を殺して抜け、横にあった弁当をひとつ掴み、そして3人に背を向けてひとり食べ始めた。

 お腹が空いていたんだね、きっと、ずっと。

「相変わらず音を立てて食べるんだから」と尾崎にからかわれながらあっという間に完食した小川の横で、3人はそれぞれ歯を磨いたり、ライヴで着る服を確認したり、カオナシは何やらずっとパソコンに向かって作業をしていたり、みんな淡々と余念がない時を過ごしている。そんな中、尾崎は「今年はどうなるんだろうなぁ。このツアーはきっと大事だし、今作ってる曲も大事だし……でもなんで大事かって言うと、今年は巻き返すって決めているからなんですよ。去年は音楽よりも他の出来事のほうが話題になって。そういう話題を作りたくてバンド始めたわけじゃないし、レコード会社入ったわけでも移籍したわけでもない、もっと言えば、音楽が話題にならないなら、こんなことやっててもしょうがないって思ったし。だから今年は音楽で必ず巻き返しますから。そのためにも、ワンマンライヴでどれだけみんなに特別な想いをしてもらうのかってことは、大事だと思ってるんです」と、静かに淡々と伝えてくれた。

(続きは本誌をチェック!

text by 鹿野 淳

『MUSICA4月号 Vol.96』