Posted on 2015.04.16 by MUSICA編集部

クリープハイプ、“愛の点滅”で手にした確信と
再びの飛躍を誓う

去年は結構絶望的で、今まで音楽やってきて一番キツかったかなぁ。
……そうそう、あの頃はメンバーが俺のことを
無視する夢をよく見てたんですよ。
申し訳ないって気持ちがあったから、
誰かに殺される夢とか変な夢ばっかり見てました

『MUSICA 5月号 Vol.97』P.70より掲載

 

■前号で密着させてもらったライヴハウスツアーが終わって。今はホールツアーが始まり、これがまた心地よく行っているらしいとのことで。

「いやぁ、なんかいいんですよねぇ」

■そして今回、名優真木よう子主演映画のタイアップ(『脳内ポイズンベリー』)もついたシングルも出る、テレビつければ超ヘヴィローテーションでブチュー!とばかりに焼きそばCMの裏で異彩を放つ音楽が流れていて。ようやくサイが投げられ始めた感じがします。

「ほんとそうなんですよ。嬉しいです」

■この1年間積み上げてきたものが、だんだんだんだん咲き始めてる感みたいなものはあるんですか?

「『頑張ってたけど、もうダメなのかな?』とかずっと思ってたけど、意外とここにきてよかったなあって思い始めて。今年は結構ヤバい1年になるだろうから、ちょっともう1回しっかりやらなきゃなあと思ってたけど、ちゃんと伝わるところには伝わってたんだなあと思いました」

■その辺はまた、新しい形で期が熟してきたんだなあと思う?

「うーん……手応えは相変わらずないですけどね、そんなに。去年の年末とかは本当にヤバいと思ってたから、アルバムの結果も含めて」

■自分の中で納得のいくものじゃなかった現実にさらに直面し。

「はい。でもこうやって今年また闘って勝負していくって時に、こういういい状況で向かえるのは嬉しいですね。もうヤバいなと思ってたけど、いろんな人達がチャンスをくれたんだと思ってます。まあ映画の人だったりCMの人だったりそれをちゃんと大事にしつつも、でも一番応えなきゃいけないのはライヴにきてくれたりCD買ってくれたりするお客さんなんで。もう1回そこで勝負したいなと思いますね。そこに関しては去年ほんと悔しかったから。かと言ってバンドの音楽性を変える必要はないし、そういう気持ちもないんで、だから同じようなやり方でもう1回勝負したい。もう1回行くからって『何か作戦があるのか?』って言われたら、今まで通り竹槍一本でぶつかってくしかできないんですけど。でもそれをまたやろうって」

■この“愛の点滅”のセカンドセンテンスに<何かが起きるかもしれない>って言葉があって。先行きへの不安もあり、尾崎の中での危機みたいなものも点滅してたんだよね? その中で敢えてこの言葉を綴った。

「ああ、そうですね」

■自分の中ではかなり黄色信号にはなってたんですか?

「うん。いやもう、完全に赤でしたね」

■何か起きないじゃない、赤じゃ(笑)。

「でも、この曲とかは去年もう(タイアップが)決まってたから、進めるしかなくて。とりあえず死んでもいいから『最後に傷跡残してやる……!』って気持ちで作りました、実は(笑)。結構精神的にもギリギリで本当にヤバかったからなあ。『もうやめるからな!』ってメンバーに本気で言ったりしてましたから。理不尽なことで『ふざけんな!』って簡単にキレたりも」

■ははは。「やめる」って言うと、なんて言われるの?

「何も言われないですね」

■あぁ、ね。

「台風みたいなもんですからね。『止まってくれ!』とか言ったって無理じゃないですか。(メンバーは)ひたすら待ってますよ。雨ガッパ着て」

■逆に言えば、自分は10年以上それをくり返してるんだよね。

「はい(笑)、そうなんですよ。でも『もう帰るわ』って言いたいんすけど、いやでも『帰ったらスタジオ代がもったいないな』ってなるんすですよね」

■はははははははは。

「だからとりあえず今日は練習して帰ろってなって、30分くらい時間置いてやり始めて。そうすると結局、やめずにやる感じになっちゃうんですよね。でも『頼む。もうやめさせてくれ』っていうのは本気で言って。……もう今回は本当に帰りたかったんですけど」

■うん。これ真面目に話す――。

「いや真面目な話ですよ!(笑)。これ本当に言ってる話なんですからね、鹿野さんも真剣に聞いてくださいよ!!」

■そうだよね(笑)。その現場にいないから笑ってられるけど、その現場にいたらたまったもんじゃないよね。

「『このまま帰ったら機材、誰が片づけるのかな?』とか考えたり」

■だから言ってみれば移籍もしたし退路も断ったしっていう中でフラストレーションが溜まって、「ああ、上手く行ってないな」と思う。これは自分の中で袋小路にハマっていく感じなの?

「そうですね。いい曲作れてるし環境はよかったんで、できてると思ってたから、なんで?って。今だったらわかりますけどね。あのアルバム(『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』)は素直にやり過ぎたなとは思う。あまりにも正直にいいもの作ろうと思ってやり過ぎたから……。でもその当時はわからなかったんですよ。『なんでだよ、なんで届かないんだろ』っていう気持ちばかりで」

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text by 鹿野 淳

『MUSICA5月号 Vol.97』