Posted on 2015.09.17 by MUSICA編集部

flumpool、地元大阪で万感の想いと共に
やり遂げた初の単独野外ライヴ
「FOR ROOTS~オオサカ・フィールズ・フォーエバー~」に密着

すべてここからもう一度始めよう! 必ず上手く行く――――。
バンドの誕生地、大阪松原市に35,000人を集めて行われた初の野外ワンマン。
まさかこんなドラマが待っていようとは!?なアクシデントと
感動が降り注いだライヴに完全密着!
見てくれ、flumpoolはこんなにもタフで人生を牽引するバンドになっている

『MUSICA 10月号 Vol.102』P.68より掲載

 

彼らが関西出身なのは知っている人がほとんどだろうが、その中でも隆太と一生と元気の3人が大阪の松原市出身で(誠司は神戸出身)、この街の路上や広場で3人で弾き語りを始めたところからバンドの物語が始まっているのは、もしかしたら知らない人もいるかもしれない。

 メジャーデビューから5周年を過ぎた彼らは、その後いろいろと自分らの足元や足跡を見直して、いろいろなことを考えたり行動していたが、その総決算というか結晶のようなものが、この地元凱旋野外ライヴである。

 

8月7日(金)ゲネプロ日

 

 事前にあまり情報を求めずに会場に向かったので、大泉緑地がどんな公園かもわからず、おまけにタクシーの運転手がその公園を知らなかったり、中心部分からは随分と時間がかかったので、とても不安になったが、いざ着いてみると美しき緑に囲まれた最高の、しかも相当大きな公園で、びっくりした。

 その公園を彷徨いながら10分程かけてライヴエリアをようやく見つける。広大な円形の芝生の広場で、そこに巨大なステージと各施設が設営されている。これは相当盛り上がるんじゃないかと、予想外のスケールにまずは圧倒された。

 今年の猛暑を象徴するこの日、暑さに顔を真っ赤にして動いているメンバーに「このお宝のような公園はなんだ。何で今まで、フェスやイベントがなかったのか?」と訊ねると、「そもそもそういう場所じゃないんですよ。割とすぐに家もたくさんある住宅地ですし」と一生が話してくれる。「僕、この公園におばあちゃんに連れてきてもらったり、小さい頃からめっちゃ世話になってるんですよ」と、自分の家族を紹介するように話をする。そこに髪をバッサリと切った隆太が入ってきて、「僕も自転車で何度も――」と、お国自慢かよという様相を呈して来た中、気温は軽く35度を過ぎていった。

 前例がない野外公園でのライヴ。だからこそ、リハーサルでも音の問題に細心の注意をはらい、控えめな音量から始めていった。たぶん、デシベル値でいくと、「60」ぐらいしか出ていないのではないかと思うのだが、そもそもゲネプロというのは音の調整以上に演出面の確認、つまりは特効や、映像と楽曲のシンクロなどを計るものなので、寂しいわけではなく、逆にステージにダンサーが何十人、マーチング・ブラスバンドが何十人と、演出過多と言ってもおかしくないほどの豪勢なゲネが続いていく。野外でライヴやるのが目的でも、故郷に錦を飾ることが目的でもない。彼らは野外で、しかも故郷で、ゼロから自分らで作ったステージと演出と進行をもって、ポップスとしてのエンターテイメントをやり切るという、バンド史上最高にスペクタクルでスペシャルなライヴを行おうとしていることが、ゲネでわかった。

 17時頃になると暑さも若干和らぎ、涼しい風が入ってくる。このほどよくなってきた快適な天候の中で、アコースティック的な特設サブステージでのリハを行い、メンバーみんな調子がよくなってくるが、そこで元気が気づいた。「でも本番、14時から始まるから、17時には終わってるんじゃない?」。一同、本気でがっかりしながら、なおもリハに励む。テレキャスターを抱えながらマンドリンを爪弾く一生を見ながら、彼らも30歳になってこういう姿が似合うようになってきたなと、少しばかりに感慨にふける。

 テキパキとメンバーをはじめとしてスタッフにも指示や要求を示し続ける隆太を見て、彼がバンドのプロデューサーになってきたことを実感した。奴はこの1年で随分といい男になってきた。

 この大泉緑地は松原市と堺市の両方にかかっている緑地化計画の一環となっている場所で、だからこそ都会の公園らしからぬ豊かな自然に囲まれている。その樹々に溶け込むようなステージはとても穏やかな表情を浮かべているが、後半戦の盛り上がり&アンセム連発タイムになると、そのステージに大きな大きなバルーンの花が咲くという仕掛けがある。いざ花が咲くと、まるで公園の樹々がこの花を咲かせたんじゃないかというイメージになり、とても気持ちがいい。

 ゲネプロは15時から18時半まで続き、その後バックエリアで今一度打ち合わせをした後に、オープニングの演出を再度全部やり直した。

 夜の帳が降りた公園で、メンバーは明日に向けてかなりの手応えをこの日に感じたようで、満足げな表情を浮かべている。すっと隆太がやって来て、こう言った。

「やっぱりここでできてよかったです。こんな大きなところでこんなリラックスしてライヴができそうなのは初めてだから、どこか守られてる気もするし(笑)。今までとは明らかに違うライヴを見せられそうです。あとは天気だけかな。どこまで暑くなるのか、お客さんが大丈夫か、それが心配です」

 この話をもらった時は、まさか天気が初日のライヴにここまで大きなものをもたらすとは、しかも暑さとは違う「あれ」がやってくるとは思わなかった……。

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA10月号 Vol.102』