Posted on 2016.03.17 by MUSICA編集部

NICO Touches the Walls、
経験と感性のすべてをひと繋ぎにした
アルバム『勇気も愛もないなんて』完成!
万感取材にてその傑作を祝す

この気持ちは一生変わらないというのはわかっているのに、
それを伝え切れぬまま死にたくない。
そう思うことがこの3年間で凄いあったから。
ここで勇気振り絞らなかったら俺は終わるなと思ったんですよね

『MUSICA 4月号 Vol.108』P.70より掲載

 

■アルバム、もの凄くいいですね!

「あ、ほんと? よかったぁ、ありがとうございます!」

■音楽の楽しさと深さも、ポピュラリティもフェティッシュさも、このバンドの人間性も、全部が手を取り合って素晴らしいアルバムになっていて。この数年の間にNICOは本当にいいバンドになったし、みっちゃんは本当にいい歌唄いになったし、本当にいいコンポーザーになったなってことを凄く強く実感できる作品だと思いました。自分ではどうですか。

「結構がむしゃらにやってたから、今できるベストって感じですけど。ただね、終わってみたら意外と憑きものが取れたような感じがしてて。この調子でまだまだやらなきゃいけないこといっぱいあるじゃん!っていうのが今の正直な気持ちかな」

■その憑きものが取れた感っていうのは、感じた上で作ってたわけじゃなく、でき上がってみて感じたことなんだ?

「うん。というか、憑きものを取らなきゃ!っていう気持ちで作ってはいたんですよ。今回はできるだけ寄り道しないようにしようとはしてたから、アルバムのタイトルも先につけちゃったし。収録曲よりも先にアルバムのタイトルが決まりました(笑)。今回は、今までのアルバムとはちょっと違って、こんなことをやってみよう、挑戦してみようというよりは、今できることの中で『自分の一番得意なものはなんだろう?』みたいなことを突き詰めるっていう作業が長かったから。その集中力は凄い高かったと思いますね、今までと比べると」

■その「寄り道をしない」っていうのは具体的に言うと?

「たとえば今回アルバムの最初の段階で決めたのは、歌詞を書いてからアレンジしようっていうことで。まあ、小さいことなんだけど(笑)」

■いや、それ結構大きいでしょ。つまり音楽性よりも先に、まず自分が何を歌いたいかってことを突き詰めたっていうことでしょ?

「まさにそう。今までの俺だったら、まず音楽的ジャンルから固めていくっていうふうになりがちだったんだけど――まさに1個前の『Shout to the Walls!』はそういうアルバムだったし。でも、今回はそれをやってるとキリがなかったんですよ。というのも、去年の1月の時点で、すでにデモが50曲分ぐらいあったから」

■50曲! そういえば取材の度にいっぱい作ってるって言ってたね。

「そうそう(笑)。だから言ってみれば、ここからどうにでもできるぞっていうくらいに曲はたくさんある状態だったんだけど、でも、それをみんなでスタジオでやって、音楽ファン的な自分の欲求を満たしていくだけでは最早作れないというか、アルバムにならないなと思って。それで考えた結果、音楽ジャンル的な観点から曲を選んだり仕上げていくということをやめて、その代わり、この3年間は歌詞のストーリーとバンドのストーリーを重ね合わせて1曲1曲作ってきたわけだから、その延長線上にある曲だけをやろうっていうふうに思ったんですよね。で、改めてこの3年間、俺はシングルで何を歌ってきたのか?っていうことを整理した上で、次は何を歌おうか、何を歌いたいのかっていうことから考えていって……それで歌詞から書いていこうっていうふうに方向転換したんですけど。そういうやり方だったから、寄り道もするにも逃げ場がなかった(笑)。ほんとに『今、俺は何を歌う? 何を歌いたい? 何を歌うべき?』っていうことばっか考えてた。それで出てきたのが『勇気も愛もないなんて』っていう言葉だったし、一番最初にできたのが“エーキューライセンス”だったんです。ま、その方向に至るまでにめちゃくちゃ時間がかかったんだけど(笑)」

■ちょっと話を戻すけど、50のデモはどういう状態だったの?

「俺のiPhoneで録ったヴォイスメモみたいなやつもあるし、割とちゃんとバンドでプリプロまでしてるやつもあるし、形は本当にいろいろ。そういうのがダーッと放ったらかしにしてあったんですよ。気に入ってる曲なのにそのまま放置しちゃってたのもあったりして」

■なるほど。で、まず歌詞を書くところから始めようってなった時に、その50の中からどう選んで歌詞をつけていったの? それとも書きたいことにハマりそうなものをピックアップして歌詞を書いたの? それともまさか、また新しく作ったの?

「新しく作ったんですよね。今回の中にその50は1個も入ってない」

■えー!!!

「50のデモを整理したのは、もちろんその中からやりたい曲が出てくるかもしれないなと思ったから整理したんだけど、いざ並べてみたら案外アルバム即戦力系の曲がなくて(笑)。みんながいい曲だ、いい曲だって言うのばっか集めてたら、これもう1回ベスト盤出すんじゃないかぐらいの勢いの、シングルベストみたいな雰囲気のアルバムになっちゃったし。まぁそれもそれで、ご時世的にはありなのかもとか言ってたんですけど、でも俺ら的にはちょっと違うよなって」

■アルバムという作品性を大事にするアーティストとしては。

「そうそう、アルバム至上主義者としては、それは違うなと。あと、とにかく暗い曲が多かったんですよ。でも俺、とにかく今は暗い曲を聴きたくなくて。それは普段からそうなんだけど。で、リスナーとしてこういうの聴きたくないんだよなと思ったら、自分の作ってる曲でも暗い曲はどんどん排除していくことになって……だから結局、その50のデモはそのまま放置した(笑)。だから、すでにあったものに歌詞をつけていくっていうのとは別の感覚で、まったく新しく作っていった感じでしたね」

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text by有泉智子

『MUSICA4月号 Vol.108』