Posted on 2016.04.15 by MUSICA編集部

銀杏BOYZ、新たな始まりを告げる
シングル『生きたい』リリース。
峯田の決意と覚悟を問う

自分のこと「アーティスト」ってあんま言いたくないけど、
ひとりの「アーティスト」として、今回の“生きたい”をまずやっつけねえと、
なんも始めらんねえっていうか。
俺自身にとっても、「銀杏BOYZどうなってんだ!?」ってファンに対しても、
これはケジメなんですよ。
銀杏BOYZとして本当の新しい一歩を踏み出す前に、
絶対この曲を歌わなきゃいけなかった

『MUSICA 5月号 Vol.109』より掲載

 

■昨年も映画関連の仕事でインタヴューはさせてもらいましたが、『MUSICA』でインタヴューをするのは2年ちょっとぶりになります。

「アルバムの時以来?」

■そう。

「銀杏で2年っていうのは早いね!」

■自分で言いますか(笑)。

「なんでも訊いて。音楽の話じゃなくてもいいし」

■今日は音楽の話をしますよ!

「(笑)」

■『光のなかに立っていてね』と『BEACH』、2年前にアルバムを出して、そのあとひとりになってしまったことでツアーとかはできなかったけど、作品は絶賛で迎えられました。

「そうなの?」

■そうですよ(笑)。

「自分としては、あの作品を持って、一緒に作ったメンバーと日本全国をツアーして回れなかったこと、それがとにかく無念だった。2年前のインタヴューの時は、それがとにかく悔しかった」

■うん。

「だから、この3月に『愛地獄』ってライヴ映像作品を出したのも、それの代わりっていっちゃなんだけど、『俺ら4人はこんなだったんだよ』っていうのをちゃんとしたかたちで残したかったからなの。ドキュメンタリーとかは一切入れないで、ライヴ映像だけの2枚組で。『光のなかに立っていてね』の銀杏BOYZを感じてもらうことができなかったファンに、映像だけでも観てもらいたくて」

■なるほど。あの作品をこのタイミングでリリースしたのには、そういう理由があったんですね。特にDISC 2に盛岡公演の全編が収められてた2011年の東北ツアーは、『光のなかに立っていてね』に最も近いサウンドを4人で鳴らしていたライヴだった。

「あの東北ツアーは4ヵ所でやって、3公演目の前の日かな、みんなで被災地のボランティアに行って、ホテルに戻ってきて『みんなでゴハンでもいくか』ってところで、アビちゃんが思い詰めてたのかな、ホテルの部屋に残って。『あぁ、明日のライヴに向けて、気合い入ってるな』って思ったのを今でもよく覚えてますね。それで、DVDに収められているのは最後の4公演目だけど、3公演目と4公演目はすっごく手応えがあったの」

■その時は誰も想像してなかったけれど、それがあの4人での最後のライヴになってしまった。

「そうだね」

■ある意味、あの4人の銀杏BOYZとしての到達点と言えるような、壮絶なライヴでしたよね。今思えば、それはものすごくセンシティヴでフラジャイルなバランスで成り立っていたのかもしれないけど、あそこにいたのは間違いなく『光のなかに立っていてね』の銀杏BOYZだった。

「あの時点で、アルバムのレコーディングも半分は終わっていたからね。で、東北から東京に戻ったその足で、そのまま“ぽあだむ”をレコーディングした。だから、もうかなり光は見えてきていて、『もうそろそろレコーディングが終わるな』って思っていたんですけどね。あの時は……」

■今回リリースするシングル『生きたい』は、どのタイミングで作った曲なんですか?

「この曲も、あの時に東北ツアーから帰ってすぐに書いた曲なんですよ」

■あ、そうなんだ。でも、アルバムに入らなかった。

「その時点で、アルバムに入れる曲はもうほぼ決まってたの。あとは録るだけで。それとは別に、新たに作り始めたのがこの曲。だから、最初の段階では震災直後の日本についてだとか、原発のことだとか、そういうことについてもっと書いてた。曲名も違ったし」

■そっか。

「それが、時間が経つにつれてだんだんパーソナルな歌になっていった」

■最終的に完成したのは?

「去年の5月。VIVA LA ROCKに出る直前。歌詞が完全にできたのは、VIVA LA ROCKに出る前の日、ほとんどその日の朝だった。そのまま会場行って歌ってやろうと思って。確か、MCでも言ったんだよな。『昨日できたばっかりの曲をやります』って」

■ということは、足かけ4年。リリースまでは足かけ5年。

「いくら俺でも、1曲にそこまで時間をかけることはあんまりないんだけど。この曲はそれだけかかった」

■この“生きたい”って曲は、銀杏BOYZの歴史で言うと、“人間”“光”に連なる曲だと思うんですけど。

「そう。作り始めて2年くらい経って、もっとパーソナルな曲にしようって思った時に、『あぁ、これは“光”と繋がる曲なんだな』って気づいて。そこから、『3番(曲の終盤)はバンドで鳴らさないと』って、そこまで見えてて」

■なるほど。いや、思うんですけど、やっぱり“人間”“光”“生きたい”のラインっていうのは、銀杏BOYZの他の曲とはちょっと違うチャンネルというか、より峯田くんの生理に近い特殊なメカニズムから生まれてくる曲だと思うんですよね。

「うん。だから、ライヴでやるのも、“光”ができたら“人間”はもうやらないし、“生きたい”ができたら“光”はもうやらないし」

■まぁ、フェスやイベントで“生きたい”をやると、4曲くらいしか聴けないんですけどね(笑)。

「長いからね。でも、これをやらなきゃ気が済まないっていうのがあって――」

(続きは本誌をチェック!

text by宇野維正

『MUSICA5月号 Vol.109』