Posted on 2016.05.16 by MUSICA編集部

indigo la End、『藍色ミュージック』完成。
ラジカリズムと大衆性を独自の境地まで昇華した名作を
メンバー全員で解き明かす

僕のせいでどうしても今は色眼鏡で見られる状態にあるし、
そういう目で見ている人達はindigoのことを知らない人が大多数だと思うんです。
だからこそ、このアルバムによって
ちゃんと硬派に音楽をやってるバンドなんだってことを知ってもらいたいし、
音楽で示していくしかないとも思ってます(川谷)

『MUSICA 6月号 Vol.110』P.34より掲載

 

川谷絵音(Vo&G)「あ、このアルバムの取材、これが初めてだ」

■それがその寝癖に表れてんのか?

川谷「あ、いや、これはまだ起きたばっかりなんで……(笑)」

■第一声インタヴューで、リラックスし過ぎでしょ。

全員「はははははははははははは」

■(笑)遂にできましたね。このメンバーになってから初めてのアルバムになりますけど、そのファーストアルバム感が如実に表れている作品だと思いました。まずは、おめでとうございます。

長田カーティス(G)「ありがとうございます(笑)。去年の10月からこのアルバムを録り始めたんですけど、栄ちゃんが去年の1月から叩き始めて10月にレコーディングが始まるまでの間に結構ライヴもこなしてきて、お互いのいいところ/悪いところがわかり始めてきた時期だったので、みんなで差し引きもできるようになって。僕自身に関しても、今回は自分のツボがわかってきた上で作れたアルバムだったので、そういう意味でも凄く手応えは感じてます」

後鳥亮介(B)「正直、これはもう一生できないんじゃないかってぐらいずっと録ってたんで、やっと完成したなって感じなんですけど(笑)。本当に、この4人でちゃんと作った作品だなっていう感じがしてます。前とは全然作っていく過程も違ったし、歌詞とかも全然違うし、まったく違うものだなって思ってるんですけど。僕、このバンドに入った時はできるだけやってやろう!と思ってたんですけど、栄太郎が入って、彼と一緒にリズム隊としても1個の作品にしなきゃっていう意識が生まれたことで立ち位置がだいぶ変わってきてて。それで戸惑ったことも大変だったこともいっぱいあったんですけど、この作品で答えが出たなって感じがします」

■と言われていますが?

佐藤栄太郎(Dr)「(笑)僕、普段は自分でプレイリスト作って音楽聴いていて、アルバム聴きを全然しないんですよ。そんな僕でも、久しぶりにアルバムを通して聴くことの感動があった作品で。あと、僕からしたら始まりのアルバムなんですけど、みんなからしたら今までを踏まえた最新作っていう位置づけじゃないですか。でも、みんな的にも今までとは全然違うっていう意見もありつつちゃんと最高傑作で、ここから始まるんだっていう感覚があるアルバムになったっていうことが素晴らしいことなんじゃないかなって。そこに凄く感動してます」

■そして、絵音くんはどうですか?

川谷「……今までで一番いいものができたなっていう感想しかないです」

■え、以上!?

川谷「いや、さっき起きたばっかりなので……」

長田「はははははははははは!」

■そこに逃げるな(笑)。

川谷「(笑)。でも本当に、ギター2本、ベース、ドラムっていう編成だと、これが最高レベルの音楽なんじゃないかと自分でも思うくらいのものができたなと思ってて。あんまりこういう音楽って聴いたことないし、完全にバンドとして独自なところに行けたアルバムだと思います。他に形容できないっていうか。音楽的にも優れてるし、かつポップミュージックとしても成り立ってるっていう意味でも、自分がやりたかったことがやっと具体化できたなって。(前作)『幸せが溢れたら』の時はできなかったことが今回できたかなと思います」

■前作の『幸せ~』は「悲しいっていうことはこんなにもセンチメンタルなことだ」っていうことを音楽的に表していたアルバムだと思ったんですけど、この『藍色ミュージック』は「悲しいっていうことはこんなにもエモーショナルなんだ」っていうことを表している作品だと思うんです。

川谷「はい。『幸せが溢れたら』は最初から『失恋のアルバム』っていうテーマを決めて歌詞を書いてたんですけど、今回はテーマを決めずに、自分が書きたいことをその都度書いて。その中で自分の気持ちもコロコロ変わっていったし……だから成長記録みたいなところもあるんですよね」

■実際にそういう詞になってますよね。何曲かは、純粋なラヴソングや失恋ソングっていうよりは、違う次元の歌詞になってるし。

川谷「はい。前向きな歌詞も書いたほうがいいのかなって、自分の中で変わってきてて。失恋の曲はやり切った感があったんですよね。aikoさんみたいにずっとそういう曲を書き続けるのは、僕にはちょっと無理かなって。悲しい歌詞を書いていくと、だんだん自分の気持ちも悲しくなるんで」

■そうなんですか、失恋の歌とかって、書いていけば書いていくほどどんどん客観的になっていくものじゃないんですか?

川谷「そういう時期もあったんですよ。『幸せが溢れたら』の時は歌詞を全然客観的に見れてたんですけど、だんだん客観的に見えなくなってきて。前に桜井和寿さんと宇多田ヒカルさんの対談を読んだことがあるんですけど、桜井さんが『自分が書いた歌詞が本当になった』っていう話をしてて。それに対して宇多田さんも『あるある。書いたらそうなるよね』みたいなことを言ってたんですけど、僕もあるわって思って(笑)。で、スガ(シカオ)さんとこの前呑んだんですけど、『そういうことありますか?』って訊いたら『あるよ』って言ってて」

■スガくんは、ある/ないじゃなくて、自分が作った歌詞に人生を持っていくんじゃないかな。あるんじゃなくて、そこに行きたくなっちゃう。

川谷「ははははは。で、スガさんが言うには『ある人はある』ってことらしいんですよ。それ聞いて、僕は完全にあるほうだったんで、そろそろ幸せな曲を書いといたほうがいいかなって(笑)」

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text by鹿野 淳

『MUSICA6月号 Vol.110』