Posted on 2016.05.18 by MUSICA編集部

SUPER BEAVERの強靭なる到達点『27』。
ロックにも生きることにも正面から立ち向かう、
そのすべてを渋谷&柳沢と語り尽くす

自分達の過去の見え方を自分達の今の生き方で変えることができたんなら、
今だって、未来の生き方次第でどうにでも変えていけるんだって思った。
そうやって一切疑うことなく、
楽しいことや喜びのエネルギーを人と生きることで生みたいんだよ

『MUSICA 6月号 Vol.110』P.78より掲載

 

■この前の4月10日には、バンド結成10周年〆のZepp DiverCityがパンパンに売り切れました。それから、1月から3月までの連続シングルも、リリースするたびにチャートアクションのベストを更新して。ビーバーを取り巻く熱の高さがいよいよ目に見える形になってきたと思うんですけど、この状況と一気に吹いた追い風は、ご自身ではどう捉えられてるんですか。

渋谷龍太(Vo)「凄く調子に乗ったような言い方をさせてもらえば、こういう状況になってもおかしくないな、っていうのは、去年『愛する』っていうアルバムを出したくらいから、なんとなく感じてたんだよね。自分達の音楽が人に届くための準備はちゃんとしてきたな、っていう気持ちにはなれていたんだよね。だから、凄く地に足の着いた状態でこの状況も喜べてる感じがするんだけど」

■「人の耳に自分達の音楽が届くための準備はしてきた」と話してくれたけど、言い換えてみると、そこで積み上げてきたものが今のビーバーの核になっているものですよね。それはどういうものなんだと思いますか?

渋谷「結構漠然としたものだと思うんだけど――いろんな人に助けてもらってきた、人から与えてもらうものが大きかった、っていうことをずっと大事にして、それを音楽にしてきた部分にあるんだと思う。バンドとして何かを発信したい、っていう想いになれるのは、結局はそうやって人に何かを与えてもらってきたから、っていうところに尽きると思っててね。散々与えられてきたバンドだし、メジャーから離れて自分達で始めたところからたくさん手を差し伸べられてきたバンドだから。それに気づける/気づけないっていうのはあるけど、そういう『人』を取りこぼさないようなアンテナだけはずっと敏感にしてきたバンドなんだと思う。人に対しては絶対に真摯でいたい、だとすればいちいち感謝もしたいし、いちいち共に喜びを感じたいし、っていう欲がどんどん生まれてきて。じゃあそれを何で成し遂げられるのかって考えたら、俺らには音楽と歌しかないから」

■なんでこういう質問から始めたかっていうと、今回の作品には、たくさんの人と共に歌いたい、たくさんの人と自分の意志を表現して生きていきたい、たくさんの人と感情を共有したい、っていう欲求が溢れている曲が多いなと思ったからで。シンプルに言えば、初めから曲の中にたくさんの人がいるような熱があるし、これまでの作品で一番アッパーかつ解放感のあるメロディ・歌・リズムがたくさんの名曲になっている作品だと思ったんですが。ご自身では今作をどういうふうに捉えてるんですか?

柳沢「そうだな……今のぶーやん(渋谷)の話もすべてこれに終始すると思うんだけど、『誠実さ』っていう言葉に終始する作品だなっていうのは思う。『誠実さ』っていうのは真面目くさった言い方だけど、それが、生きる上でも、音楽を作る上でも、俺らの思う『カッコいい』の基準でね。簡単に言ってしまえば、真正面から真剣に接してくれる人をカッコいいと思うし、逆を言えば、俺達も人に対していちいち真剣で在りたいと思わせてもらってきたんだよね。だから、真剣に生きている人に対して誠実に向き合いたい、っていう気持ちをちゃんと曲にしたいと思った。それが、このアルバムを作るに至った一番の核にあるものだと思うんだよね。ライヴにおいてもそうだし、どんな音楽のジャンルでもそうだし、どんな仕事をしてても同じだよね。そこにある真剣さに対して、人として誠実に生きていたいっていう想いが、ずっとビーバーの真ん中にあるものなんだと思う」

■きっと「真剣さ」っていう言葉の意味は人によって全然違うっていうことも承知した上で訊くけど、柳沢くんや渋谷くんにとっての「真剣さ」っていうのは、人のどこに宿るものだと思うの?

柳沢「それは、自分の生き方、自分の発言、その全部にちゃんと責任を持ててるかっていうことなんだと思う。無責任にしゃべること、無責任に人と接することは誰にだってできるだろうけど、ちゃんと自分に責任を持ってしたことなら、しくじった時にも『ごめんなさい』『でも、なんとか盛り返したいと思ってます』って人にも心から言えると思うんだよ。逆に言えばさ、責任がとれないっていうことがわかっちゃってるから、先にふざけたり茶化したりして、後で『冗談だったんだよ』って言えるような防衛線を張ったりすることが人にはあるじゃない? でも、そうじゃねえよなって。そこに『責任を持つ』っていう想いがある繋がりこそが真剣なものだと思ったし、そういう繋がりで人と一緒に生きたいって思った。そこから、『大人』と『責任』っていうテーマが出てきて、それが根底にあっての作品が、この『27』だと思うんですよ」

■そのテーマは、SUPER BEAVERとして重ねてきた作品・活動で考えたら、『愛する』以降を考えたところから始まったの?

柳沢「そうだね。あの作品で<あなたが愛する全てを愛する>って歌った以上は、もう人に対して何ひとつ無責任ではいられないって思ったし、人と人を音楽にすることを突き詰めていったら、自分達がカッコいいと思う生き方をとことん音楽にしたいと思ったんだよ。『こういう人になりたいな』と思える人と出会ってきたことで、『こう在るべきだ』って歌う以上に『我々はこう在りたい』っていう憧れみたいな感覚が曲になってきた気がしたし、そういう人との関係を大切に守れるバンドになりたいとも思ったんだよ」

渋谷「……きっと昔なら、『守る』っていうことが怖いと思う瞬間もあったと思うんだけど。だけど今は、それだけカッコいい人達がたくさん俺らの周りにはいるから。それが、どうしたって崩れないような強みになってると思えるんだよね」

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text by矢島大地

『MUSICA6月号 Vol.110』