Posted on 2016.07.17 by MUSICA編集部

lovefilm、初のアルバム『lovefilm』リリース!
バンドに宿るかけがえのない青春性の所以を、
石毛と江夏の言葉から紐解く

しっしが歌ってくれるから、俺も素直に蒼さを出せたところは絶対あります。
実際、俺も曲を作ってる時は頭の中では走って泣いてるから。
そういう心がなくなったら、こういう曲を作らなくてもよかったしね(石毛)

『MUSICA 8月号 Vol.112』P.78より掲載

 

■バンド結成からわずか半年でファーストアルバムが完成しました。蒼い衝動に溢れまくったギターポップ満載の、とうに青春を過ぎた自分みたいな世代でも思わずキュンキュンしてしまう甘酸っぱい青春感が迸っていて。自分達ではファーストが完成して、今どんなことを思っていますか?

石毛輝(Vo&G&Prog)「僕は人生2度目のファーストアルバムを作ったわけなんですけど、the telephonesの時よりもファーストアルバムらしいファーストアルバムが作れて、凄く気分がいいです」

■どういう意味でthe telephonesの時よりもファーストアルバムらしいの?

石毛「作品自体の実感としてなんだけど。the telephonesの時は今回のしっし(江夏詩織)みたいに、もう何が何だかわからない状態で録っていんだよね。そもそもレコーディングって作業自体に慣れてないしさ。でも10年間やってきたから、レコーディングという作業にも慣れてきて。ロックバンドって、ワケわかんないまま進んでいってもいいんだっていう衝動ってあるじゃん? その部分はしっしに任せて、俺はここにある衝動がちゃんと衝動として聴こえてくるためにどうしたらいいのか?ってことを客観的に見ることができたんだよね」

■つまり、本当に初めてのバンドで初めてのアルバムを作る詩織ちゃんのフレッシュな衝動や、あるいは結成まもないバンド自体が放っている衝動というものを、自分自身がちゃんと作品としてプロデュースすることができた。それによって、ロックバンドのファーストアルバムというものが持つ輝きを音楽的にここに封じ込めることができたと、そういうこと?

石毛「そうそう。そういった意味でバランスがよかったと思う。細かいディテールではこだわった部分は凄くあるんだけど、でもたどたどしいところとか粗くなるところとか、そういうのはそのまま活かしてて。直していくと、それこそ作品から衝動性とか蒼さが減るんだよ。それは減らしたくなかったから、だからそもそも今回はクリックも使ってないし。自分で聴いてて恥ずかしくなる箇所はたくさんあるんだけど、そういう照れとか自己評価よりも、聴いてる人がどう感じるかを重視したかな。たどたどしさとか粗さも含めたロックバンドの衝動感って、聴いてる人をワクワクさせるところもあると思うから。だから完璧なものというよりも、聴いている人が入り込める余地がある世界観を目指したんだけど」

■というか、実際演奏は拙い部分もあったりするんだけど、そのたどたどしい部分、未完成な部分をこのバンドの「音楽」として鳴らせてるよね。ただ、そういうプロデュース力もありつつも、石毛くん自身もかなり衝動的というか、自分の中のピュアな衝動を解放してる感は強いよね。

石毛「そこはやっぱりしっしを見て『俺もファーストの頃、こういう気持ちだったな』って思ったから、そこに引っ張られたところはある(笑)。で、実際そういう気持ちで歌ったりしたね。そうやって、自分のキャリアを使うところと使わないところを客観的に見たつもりではある」

■詩織ちゃんはどうですか?

江夏詩織(Vo&G&Syn)「私は本当に、作ってる間は右も左もわからない状況だったんですけど(笑)。でも、今の私ができる100%は出せたと思います。レコーディングまでに歌詞の意味を読み込んで考えたり……やっぱり、私が歌詞にキュンキュンしながら歌わなきゃ、聴いた人をキュンキュンさせるようなものにはならないと思ったから」

■今の流れで訊くと、21歳の詩織ちゃんから見たらおっさんと言っていい32歳の男性が書いた歌詞がこれだけロマンティックなものだっていうのは、実際どんな感覚だったんですか?

石毛「おいっ! なんだよその質問!(笑)」

江夏 「(笑)私的には凄く嬉しかったです。言い方は悪いですけど、最初の段階では歌わされている側じゃないですか。提供される側というか」

■人が書いた歌詞とメロディを歌うわけですからね。

江夏「はい。私は性格上嘘をつけない人なので、自分がよくないと思ってると本当に楽しくなさそうなものになっちゃうことがあるんですよ。でも石毛さんの歌詞は、歳も性別も違うのに全然違和感がなくって、自分のものとして歌うことができたから。確かに32歳の男性が書いた歌詞とは思えないような甘酸っぱい青春感が溢れる歌詞だと思うので(笑)、凄く歌いやすいし入り込みやすかったです。だからありがたいな、と」

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text by有泉智子

『MUSICA8月号 Vol.112』