Posted on 2017.02.15 by MUSICA編集部

星野源、新春ライヴ2デイズ「YELLOW PACIFIC」、
そして『恋』以降を語る2017年初インタヴュー!

規模の大きさを実感はあんまりしてなくて。
これ、なんでなんだろうね?
なんかほんと、普通に「凄いなー」みたいな、
どこか他人事って感じがしてる(笑)

『MUSICA 3月号 Vol.119』P.34より掲載

 

(前半略)

■『YELLOW DANCER』のブレイクがあったとはいえ、やっぱり『恋』以降、『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』のヒットも含め、去年の10月からの3~4ヵ月での状況の拡大は凄まじいものがあったと思うんです。紅白での主役感を見れば明らかだけど、星野源という存在が、本当の意味で日本を代表するスターになったよね。で、そうなると、一歩間違えたら星野源というものが星野さんの実像から離れていく……たとえばロックスターとかポップスターの偶像崇拝じゃないけど、そういうふうになっていく可能性も当然高まるわけで。そういう予感があるからこそ、カメラの前でもステージの上でもちゃんとナチュラルな自分としてありたい、自然体のままで行ける存在になりたいっていう、そういう意識もあったんですかね?

「あると思います。とはいえ、それって最近始まったというよりも、星野源が自分の手から離れていくっていうのはずっと昔から、もっと小さな規模で活動していた頃からあったから。『星野源らしさ』っていうことって……」

■「『星野源らしい』って言われるのが一番嫌いなんです」って、前から言っていたし、YELLOW MAGAZINE(星野源の2016年をまとめたオフィシャル・イヤーブック)でも書いてましたね。

「そうですね(笑)。『星野源らしい』って一見いいことのようですけど、それを言われることイコール、今後の活動に制限が生まれるということだと思うんです。そこから外れることをすると、『らしくない!』っていうふうになる、活動の自由度を狭める言葉なんですね。人は時間とともに変わっていきますから、『らしい』と言われ出す時には、もうそこには自分がいないことが多いわけです。その時点で誤解されちゃってますよね。でもそこに関して、自分を誤解されないようにとか、星野源というものを100%誤解が生まれずに伝えたり、みんなに捉えてもらうっていうことは無理なんだなっていうのは、ずっと前から凄く思ってたことで。とはいえ、まだ自分は誤解されてないほうの音楽家だとは思うんですけど」

■はい、そう思います。

「それはこれまでの活動の成果なのかもしれないですね。それでも今まで誤解されてきた部分も多いし、レッテルも張られてきた。そこに関しては諦めてるんです。誤解が生まれない活動はないというか、どんな場所にもどんなことにも、よい受け取り方をする人もいれば悪い受け取り方をする人もいるので。それをコントロールしようっていうのはそもそも無理というか、疲弊していくだけなので。だから、一歩出た先のことは俺はもう知らないぞって感覚です。でも、そう言ったものに惑わされず、自分のやりたい音楽とか、活動において自分が大切にしたいものを、自分自身や、あるいは自分のチームの中ではしっかり大事に共有できるようにするには、好きだという気持ちを見失わずに、やりたいことをやっていくしかないんだと思います。そういう意識は、凄くありますね。自分の心持ちにおいてもチームにおいても、自分が音楽を嫌いになったり、活動に対してもう嫌だなとか思わないためにも、ちゃんと居心地のいい状態を作っておきたいな、と。だから、今バーッと広がったから急にそうしようっていうよりは、前から積み重ねたものがあるから、ナチュラルでいられるという感じ。……今、本当に“恋”が凄いことになってるじゃないですか(笑)」

■凄いことどころじゃないレヴェルで凄いことになってますよ、本当に。完全に社会現象化しちゃったもんね。

「130万ダウンロードを超えたとか言われて『へぇー』みたいな、全然自分のことって感じがしないっていうか(笑)。でも、そういう社会現象みたいなものなのに、音楽の面白いところとか楽しいところがちゃんと伝わってる気が凄くしてて。自分がこういうものを作りたいって思い描いて、こういうものにワクワクしながらこの音楽を作ってましたっていうところがちゃんと共有できている……これだけ凄い大きな規模になってるのに、その部分が届いてるなって感じることが多いんですよ。それがとても嬉しくて。それは『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』に関してもそうなんですけど。楽曲にしてもダンスにしてもドラマにしても、チーム全体で面白いと感じながら作っていたものが社会現象になって、普通に楽しんでいる人達にも自分達が伝えたい芯の部分が伝わってる。規模の大きさから考えたら結構正確に伝わってる気がするので、それはとても幸せだなと思います」

■自分のことのような気がしないっておっしゃいましたけど、実際のところ、“恋”が社会現象になるくらいの国民的ヒットになったことは、ご自分にとってどういう感覚で受け止めてるんですか。それこそ紅白でも、星野さんも曲中で「日本の皆さん、踊ってますかー!」って叫んでたけど、本当にテレビの前であの曲を待ち構えて一緒に踊ってる人は間違いなく日本中にたくさんいたわけですよね。そういう反響っていうのは、自分的にはどういうものとして受け止めているんですか。

「とっても嬉しくて最高に楽しいです。気持ちよくてしょうがない。でも、その規模の大きさを実感はあんまりしてなくて。これ、なんでなんだろうね? なんかほんと、普通に『凄いなー』みたいな、どこか他人事って感じがしてる(笑)」

■それは『YELLOW DANCER』のヒットの時とも違う感覚?

「あー、『YELLOW DANCER』の時はどうだったかな?…………あの時は、(CDのセールス)枚数でじわじわと喜びを感じつつ、ツアーで各地の会場に行って、お客さんの反応を目の当たりにすることでだんだん実感していく、みたいな感じだったんだけど。今回は、テレビとか見てても急に自分が出てきたり、自分の曲が流れたりっていうことが凄く多くて。あと今、普通に街を歩けなくなってるので(笑)。そういう意味では実感はしてると思うんだけど……でもそれってドラマだと思うので」

■というか、音楽家と役者という両軸が最大出力でグワングワン回ってて、かつ両者がバッチリ化学反応を起こしたことで、星野源という存在がここまで押し上がっているところは凄くあるよね。こういう形は本当に珍しいし、真似しようと思っても真似できない。

「でも、俺がやったったぜ!っていう感じよりは、どっちかっていうとみんなよかったねって感じなんです。一緒に制作をしてくれているミュージシャンやスタッフのみんな、デザインのみんな、そしてドラマのみなさん、全部がほんと上手いこと噛み合って合ってここまでのことになってる感じがするので。だから、俺が凄い!っていうのはまったく思えない(笑)。もちろん、自分にとって凄く自信になってるのは、『恋』の発売がドラマの放送前で、その時点で10万枚を超えてたっていうことではあるんだけど。ちゃんと音楽だけの魅力としてもヒットしたんだという事実があって、それが『逃げ恥があったからでしょ』って言わせない力強さみたいなものになってるような気がしますね」

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text by有泉智子

『MUSICA3月号 Vol.119』