Posted on 2017.02.16 by MUSICA編集部

水曜日のカンパネラ、
メジャー1作目のフルアルバム『SUPERMAN』完成!
彼らの2017年を3人取材でディープに暴く

歌うことって……泣くみたいなことなんです。
泣いたら『泣きたい』と思った気持ちが薄らぐのと同じで
思ったこととか強い気持ちを自分の中に
どんどん積み重ねていけるんです(コムアイ)

『MUSICA 3月号 Vol.119』P.62より掲載

 

(前半略)

■今回の『SUPERMAN』はメジャーファーストアルバムになるわけなんですけど、前作の『UMA』とは根本的に体裁が違うところがたくさんあって。まず、『UMA』をもって今回どういう作品にしていこうと思ったか、というところから教えてもらえますか。

コムアイ「『UMA』はストーリーみたいになってて私は結構気に入ってるアルバムなんですけど、意外と周りの評判がよくなくて。『好き』って言ってくれる人は、結構渋い人ばっかだったんですよね」

■あー、俺みたいな。ごめんね、渋くて。

コムアイ「ははははは! そうなんですよ、おじさんとか音楽知ってる人から『UMAよかったよ』って言われることが多くて(笑)。私は単純に女の子が歌ってればほぼ何でもポップだと思ってたんだけど、全然ポップじゃなかったんだって思ったんですよね。で、今回のアルバムでやりたいと思ってたことは、2017年はどういう年にするかってことを踏まえた上でこの作品を作りたいってことで。それはいつも考えてるんですけど、今回は時代性を最初から意識してました」

■具体的に、どういう時代性を切り取ったんですか?

コムアイ「今の時代って、山でも谷でもなく狭間にいると思うんですよ。私はバブルが崩壊した瞬間に生まれたんで、谷のどん底の時だったんですけど、物心ついた時の新聞が真っ暗だったのを覚えていて。今は全然暗い時期ではないと思うんですけど、明らかに政治とか世の中の情勢がポジティヴじゃない方向に向かっているじゃないですか。まだ現実化はしてないけど、何かが起こる予兆みたいなものがすでにあって。だから、次に来る波はいいものであって欲しいなって思ったんですよね。私は変化は歓迎しているので、その変化を起こしてくれたり、個人の力で変化をさらに10年早く起こすことも可能だと思っているから。スーパーマンってそういう人だなと思ってるんです」

■ダイレクトに言うと、タイトルの『SUPERMAN』には「曖昧な時代への救世主」っていう意味が含まれてるってことですね。

コムアイ「そうです。今はそういう人がいないから、『スーパーマン不在の2017年の日本』っていう前提が自分の中にあって。このジャケットもそうなんですけど、危機感を煽るようなイメージになってるような気がしますね。ポジティヴでもネガティヴでもない、淡々と、やることやっていかなきゃいけないっていう気持ちがあるっていうか。あと、音楽業界的にも自分達は今狭間にいると思っていて私達はこれからCDという形態でガンガン売っていくつもりはないですし、むしろ早くみんながCDを買わなくなったら、私達も早く移行できるのにって思ってるんですけど(笑)。でも、そう言えるほど次のメディアを提案できてない、もどかしい状態があって」

■今のこの国の音楽業界はずっと階段の踊り場にい続けていて、なかなかアップデートが完成してないってことね。世界レベルで行くと、もうCDが終わってる国はたくさんありますから。

コムアイ「そうそう。その中で、今年最低限できることを更新していこうという感じで作ったのがこの盤で。今回はCD盤とUSB盤を出していて、これがUSB盤なんですけど(と言って、パッケージを取り出す)。仕様はふたつともほぼ一緒になってるんですけど、USB盤のほうはプラスチックのCD型になっていて、端っこのところを折り返して、パソコンに挿してもらうとUSBになるんです」

■うぉっ! 凄いね、これ。USBが音楽というモノとしても楽しめる。つまりUSBとCDの狭間感をこの1枚で表現したってこと?

コムアイ「そうです。CD盤とUSB盤で違うのは、USBだと取り込み時間がないっていうのと、データに傷がつかないってことで。あと、USBのほうはCDよりも少しだけ音質がいいっていう、そういう違いにしました。このふたつを並べて突きつけてみたかったんです。たぶんこんなの出したいって思うの、今年だけだと思うんで」

■明らかにコストを度外視したUSB盤になってるけど。ケンモチさんは、『UMA』という作品をどういうふうに総括した上で、今回の作品に向かっていったんですか?

ケンモチ「さっきもコムアイが言ってたんですけど、『UMA』が内向的な感じの内容で、音数とかも引いて引いてソリッドなイメージで作ったEPだったんで――」

■実験的であるってことに自覚的だった作品だってことですよね。

ケンモチ「そうですね。むしろ『実験』っていうのが主題でしたし、それをあのタイミング(メジャーデビュー)でやるっていうことに意味があるんじゃないかっていう話をしていたので。それを踏まえた上で、『SUPERMAN』は逆にカンパネラの明るい面を見せようかなと思って。水曜日のカンパネラのイメージって、時期によっていろいろあるじゃないですか。“桃太郎”の時期は面白いことをやったりとか、『ジパング』の時は新しめのベースミュージックをやったりとか、『UMA』では内向的な音楽をやったりとか。そういう今までのカンパネラのイメージで聴いて、『俺はあんまり好きじゃないユニットだな』って思った人達に向けて『まだこういう一面もありますよ』っていう感じも届けたいなって思って、開かれた感じのアルバムにしたかったっていうのはありましたね。歌詞の内容も、今回はおバカなことをいろいろやっちゃおう!っていうのもあったりして。……『UMA』の時は、逆にあんまりふざけたことをしなくていいんじゃないかなとも思ってたんですよね。外部のアーティストさんもいるし、僕だけがふざけてるとバランスが崩れちゃうっていうのがあったんで。今回はそこを解禁しようっていう気概があって――」

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text by鹿野 淳

『MUSICA3月号 Vol.119』