Posted on 2017.05.17 by MUSICA編集部

デビュー20周年に突入したDragon Ashから、
新しい感触に満ちた感動の名盤『MAJESTIC』が到着!
バンドの神髄と今を解き明かす、Kj単独インタヴュー!

自惚れてたんだろうね、俺は世界を変えてやるんだって。
俺にとってTHE BLUE HEARTSとかの音楽が
そういうものに聴こえてたんだと思う。
でも、実際は、ひとりの人間が些細な世界で歌ってることが、
結果的に俺にとっては超大きいことだったっていうことなんだよ

『MUSICA 6月号 Vol.122』P.26より掲載

 

Interview with Kj

 

7人でのインタヴューでも話した通り、予測していた以上に新たな挑戦や実験を取り入れた、新たなDragon Ashの音楽像が響いてくるアルバムになったなと感じてるんですけど。『光りの街』と『Beside You』のインタヴューでも話は聞いていますが、改めて、そもそもKjの中では、『THE FACES』という集大成から次へと向かうにあたり、いつ頃からどんな意識とイメージを持って取り組んできたんですか。

3年ぶりって言っても、『THE FACES』のツアーやった後もずっとライヴやってたし、同時にソロアルバム出したりそのライヴもやったりしてたから、自分が『よし、やろうか!』みたいになる前にDragonをやらなきゃっていう時期が来ちゃって。だから最初は全然定まってなかったんだけど。ただ、基本的に、Dragonってきちんと前を向いて意志を持ってやるために、常にその時々に少しずつ衣替えしていくって感じだから。下に着てる服は変わらないんだけどアクセサリー替えてみたりとかさ、そういう形で変えてるっていうか。で、今回もそれをやったっていう感覚なんだけど」

■つまり芯は変えることなく、自分達にとっての最新のモードを纏ったと。

「そうね。わかりやすいとこだと、大幅にダウンチューニングにしてみたりとかさ。あとやっぱ、賢輔が入ることでグルーヴが変わるってのはわかってたから、それに伴って少しずつ変えたい点――ドラムの音だったりBOTSくんの役割だったりについて話しながら、“Circle”から始めて。で、“Circle”、“Headbang”って録った感じがよかったから、その時点では今回は速めのBPMで剛腕的な曲で押し倒そうかなと思ってたんだけど」

■なので、当初は次は完全にゴリゴリなラウドで行くと公言していた、と。それが変わっていったことは前の取材でも話してくれましたけど。

「うん、ラウド一辺倒にしたかったのは実は俺だけだったっていう話ね(笑)。やっぱり俺はソロやってるから、メロディを作ることに対してとか、こういう音を入れたいみたいな音楽的欲求っていうのは、今はそっちで満たされてるし。かつ他の人の曲も書くし、最近だと舞台の音楽もやったりしてるから、アコースティックの曲とかも作ってるし。となると、自分がDragonでしか出さないアウトプットってラウドなものだけなんだよね。逆に言えば他の要素は全部表現できている生活だから、だからこそDragonはラウドなものにフォーカスしてやろうと思ったんだけど、それをやってるのはあくまで俺だけであって、みんながラウドなものだけでいいと思ってるわけじゃなかったっていうのが大きい。で、それもそうだなと思って(笑)。メンバーやスタッフが思うことって、俺も言われりゃ納得するみたいな(笑)。それで、自分の中にあるDragonの輪っかの濃い部分をもうちょっと大きくして、このアルバムを作った」

■その中で、この前の取材でサクさんも言ってましたけど、シンセやシーケンスが多用されているというか、久々にエレクトロニックな要素がガンガン入ってきていて、それとラウド感、肉体的なグルーヴとの融合が非常に新鮮に感じられる要因になってると思うんです。このサウンドが刷新された感覚って、それこそ『Río de Emoción』でラテンミュージックを導入した時以来のモデルチェンジ感を感じるんですけど。元々デジタルと生音の融合っていうことに関しては早い段階から意欲的でしたけど、今改めてこういうモードになったのはどうしてだったんですか?

「そこはもう、徐々に徐々に分量増やしていったら自分達なりにモノになってきたというか。でも、フレッシュな感じだよ。ソロじゃ絶対ああいう音使いはやらないし。あとソロはピアノソング多かったから、鍵盤を少し練習するようになって見方が変わったっていうのはあるかな。ちょっとだけだけど触れるようになったっていうのが大きい。これって楽器として面白いな、みたいなさ。そういうことなんだよ、すべては。だからそんなに特別に意識したことじゃないんだよね」

■ただ、『光りの街』の取材の時に、「『THE FACES』とそのツアーは、これを作るために今までの歴史があったって言っても過言ではないレベルまで行けた。だからすげぇ達成感があったし、あのツアーが終わった時点で俺の中では1Dragon Ashは終わってて」と話してくれた、つまり今回は明確に区切りがついた上での一歩であるという意識はあっただろうし、前回の取材でも「もう1回チームみんなで一緒に手を取り合って、薄明りの中で手探りで歩いてる感覚のほうが強い」とおっしゃってて。それを考えても、この7人の新しいバンドとして鳴らすDragon Ashの新しい音を求めていく部分が凄く強かった、それがこういう形で表れたっていうことなんじゃないかと思うんですけど。

「そうね……答え方が難しいな。悪く捉えられちゃうかもしれないけど、前も言ったけど、Dragonはもう『THE FACES』でやり切ってるんだよ。これ、別にDragonに対して冷めてるとかってことじゃ決してないよ」

■はい、凄くよくわかってます。

「もちろんDragonをやり続けたいっていう想いはある。で、そのために、自分達と観に来てくれる人・聴いてくれる人が楽しくやり続けるために、変化していってるってことなんだよね。だから正解かどうかはわからないけど、今はこれが楽しいからこれをやるって感覚。俺らの根底にあるのは、大好きなことだから一生懸命楽しくやるっていうのをまず自分達がやって、その結果として、観てる人とか聴いてる人も楽しくなったり、それぞれの中に何かの意志が芽生えたりするっていう――それって精神的な方法論としては一番シンプルだけど、でも一番大事に思ってることでさ。そのために、今回自ずとこういう形で変化したっていうこと。……ただまぁ、やっぱ『THE FACES』と比べれば、作り終わった後の摩耗感とか疲弊感と今回は全然ない。単に楽しく作ってたから。ほんと、まだまだできたと思うんだけど、気づいたら『あ、もう時間いっぱいか』みたいな感じだった」

■タイムアップか、みたいな。でも満足してないわけじゃないんでしょ?

「それはもちろん。『THE FACES』みたいな達成感はないってだけ」

■その達成感のなさっていうのは、これが新しい始まりの1枚だからっていうことは大きいのかなと思いますけどね。ここから先が見えてる状態というか、ここから先に進むための1枚ができたっていう手応えが、そういうふうに思わせてるんじゃないかと思うんですけど。

「そうね。だから取り組み出して形になってきてっていう、その充実じゃない? 体は1個しかなくて時間も24時間しかないんだけど、やりたいことと思いついてるアイディアは膨大にあるから、それやってたらあっという間に期限が来た、みたいな」

 

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text by有泉智子

『MUSICA6月号 Vol.122』