Posted on 2017.05.19 by MUSICA編集部

Suchmos、目覚ましい勢いで新風を巻き起こしていく
彼らの姿をツアーの模様とYONCE単独取材から紐解く

ロックはサウンドに名前が付いてるわけじゃない。
そんな狭いところでロックがどうのこうのって
言われるのは俺は嫌だし、そんなふうにロックを語る奴には、
俺はまったく負ける気がしない

『MUSICA 6月号 Vol.122』P.54より掲載

 

(前半略)

■まず、今回はどんなツアーだったと思います?

「単純に短いスパンでこれだけライヴをこなすっていうのが、6人の人生で初めてのことだったんで。これまでのツアーは本数が少なかったんで、ただ楽しいねっていう感じだったんですよ。でも今回は酸いも甘いもあって、『これがいろんなバンドマンがやってきたツアーってやつか!』っていうのを初めて堪能することができたなって。スタッフ含めたチームで全国周って、その土地土地で古着屋行ったり飯行ったりして各地の風土に触れる時間も取ることができたし。まぁ、それと引き換えに地元で過ごす時間を犠牲にしたんですけど。『早く家で寝てえ』みたいな気持ちもちょいちょいあったんですけど(笑)」

■湘南の海が恋しいみたいな?(笑)

「そう(笑)。でも、それも含めて楽しむことができたツアーかなって思いますね。自分達のステージに対するモチヴェーションの作り方も、今までは『ぶっ倒すぞ』みたいなところで気合い入れてたのが、『俺らを求めて集まってくれた愛すべき音楽好きのみんなに、極上のグルーヴをお届けするぞ』っていう、ミュージシャンシップ的なモチベーションでステージに立つことができるようになったのも凄く進歩したなって思うし。あと、自分達は自分達だっていうことをキープして周ることができたのは大きかったですね。『大阪はこういう人が多そうだから、こういうテンションで行こう』とか、そういうことをまったく考えずに、自分達のライヴをするっていうのだけは心がけて。今回ツアーで20本ライヴをやって自分の中で明らかになったのが、土地によってお客さんのノリが違うのは当たり前じゃないですか。だからこっちもそれをちゃんと楽しめばいいってなれたのは、デカい発見だったなって思いますね。それも含めてライヴというものが愛おしく感じるようになって」

■去年1年間はいろんなカラーの違うフェスやイベントに出て。当時はそれを楽しみながらも、どうSuchmosのノリに巻き込んでいくかがひとつのテーマでもあったじゃない?

「そうっすね。やっぱり去年のフェスシーズンは道場破り的なスタンスだったんで。短時間で何か残るモノをお客さんに与えたかったし。そこで気合い入れて臨めたって意味では、道場破りのスタンスはすげぇよかったって思うんですけど。でも、今回はお客さんに対するスタンスも、『喰らえ!』みたいな感じじゃなく、『よく来たね!』みたいな感じで周ることができましたね」

■それはやっぱり、『THE KIDS』が大ヒットしたことで道場破りに成功したというか、この国の音楽シーンに自分達が一番カッコいいと思うものをちゃんとカッコいいと認めさせた、証明した上でのツアーだったってことも関係してるの?

「うーん……話題になってるという事実はもちろん自分達の耳には入ってるんですけど、それが自分達のステージに影響を与えたかというと、やっぱり、ないですね。それよりもこの期間中に得たいろんな感性というか、いろんなアーティストが過去に言ってたことややってたことに感銘を受けて、それをちゃんと引き継ごうっていう意志が生まれたとのが大きいっすかね。そこを継承する人が日本には今いなくなっちゃったなって思って。そういうことを『MINT CONDITION』を出した頃から考えるようになったんですよ。たとえばジョン・レノンとかボブ(・ディラン)とか、そういう人達が言ってきたことを純粋にリスペクトする心の余裕ができたのかな。この人達は凄いことをやってたんだな、作ってる音楽も凄いのに、なおかつその中に人々をよりよい方向にガイドするものを入れてるなんてすげえ!って真剣に思って。それって日本人だと(忌野)清志郎以降いないなって思うんですよ。だから俺はそれをやろうと思ったって感じですね」

■つまり、自分が表舞台に立って歌を歌うこと、ステージに立って音楽を鳴らすことに対する想いや役割を改めて見つめ直したっていうこと?

「そうですね。去年の夏くらいから、本当にいろんな出会いと別れがあって。その中で――まぁいわゆるロックバンドという存在に助けられてた中学2年の時からずっとそうだったんですけど、やっぱり音楽って人生のいろんな局面で手を差し伸べてくれるものだと改めて思ったし、かつ、この1年は、自分が音楽で誰かに手を差し伸べることができてるんだっていう実感をたくさん感じ取ることのできる1年だったんで。単純に、この手で掬い上げるものをもっと増やせたらいいなって思うし、それが、俺が音楽で得たものを還元する最良の方法かなっていうふうに真剣に思うようになったんですよね。で、それをより具体的に曲にしたり、今回のツアーを経てステージ上の発言だったりでも素直に出せるようになった気がしてて――」

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text by有泉智子

『MUSICA6月号 Vol.122』