Posted on 2017.05.19 by MUSICA編集部

THE ORAL CIGARETTES、
「唇ワンマンTOUR 2017」仙台公演に完全密着!
彼らの進化を間近で捉え、全員取材も敢行!

 

武道館への道、アリーナバンドへの道、
日本を代表するロックバンドへの道――
その道を確かな足取りで駆け抜け始めた
UNOFFICIAL DINING TOUR 2017」。
仙台公演に朝から夜中まで完全密着&最新インタヴュー!!

MUSICA 6月号 Vol.122P.68より掲載

 

416日(日)仙台PIT

 

 大阪から飛行機で移動して、正午に仙台の会場に入った。大阪より遥かに暑い快晴の21度。晴れ晴れしたライヴ日和である。メンバーは東京からの当日入りだったが、既にハコの中に吸い込まれていた。会場であるPITのキャパは1200人。ご存知の方もいるかと思うが、このハコは東北大震災以降、プリンセスプリンセスが旗振り役となったTeam Smileの支援によって震災からちょうど5年後にあたる2016311日に建てられたもので、一足早くオープンした豊洲PITとは兄弟分のハコである。

 メンバー楽屋へ赴くと、リラックスしながらご飯を食べていた。「たぶん、しかっぺが食べ出したら止まらないよ、美味し過ぎて」とあきら(B&Cho)が笑っているのでメニューを見ると――「牛タンシチュー、笹かま青菜炒め、仙台牛タンラー油、秋田ひとめぼれご飯、三陸白身魚」など、ハンパない愛と美味と細やかな工夫に溢れたメニューが揃っていて、東北のコンサートイベンターの愛を感じる。もちろん、こういったバックエリアのご飯はライヴを頑張るアーティストやスタッフのためにあって、僕のような人間ががっつくのは完全アウトだが、地方に向かうと、こういった楽屋飯の色とりどりの工夫に心から感心する。1年に何回来るかわからないアーティストやバンドに気持ちのいい日を過ごして欲しい、そしてその街のファンを満喫させて欲しいという願いが詰まったこういう配慮は、地方ならではのものだ。

 山中拓也(Vo&G)に会ったので、「喉の調子はその後どうなの?」と問いかけると、「すべては気の問題なんだなと思うようになりました。実際はたぶんそんなことはないんだろうけど、でも気の問題だと思うことで気にしなくなれることってあるじゃないですか。自分にとっての喉は今、そういうものです。もちろんケアは怠らないけど」と軽快に答えながら、その後、パノラマパナマタウンやSaucy DogなどMASH A&Rの後輩バンドの新しい音源やキャラクターの話に花を咲かせた。そういう話をしている時に携帯を弄っているあきらは、聞いていないようで全部をしっかりと聞いているしたたか者である。関係ないことをやっていながら、時折会話に合わせてゆっくり微笑む彼の表情は、なんだか「日本の弟」みたいな可愛らしさがある。

 楽屋の端っこで中西雅哉(Dr)が背を向けて細かい作業をしているので無理やり覗くと、スティックにテーピングをしている。「こういうドラム専用のテーピングって売ってるんだね」と訊ねると、「確かに売ってるんですけど、それ、高いんですよ(笑)。だから僕はテニスラケット用のテーピングで代用してます。そっちのほうが数が出ているからか安いんで」と、しっかり者な一面を見せる。さすがライヴでグッズの紹介MCを担当するだけのことはあるなと、よくわからない感心を抱いた。

 そして――鈴木重伸(G)がいない。ずっと楽屋の階下にある喫煙可能なエリアで集中したりギターをつま弾いたりしているから、なかなか楽屋に戻ってこない。これもまたシゲのペースであり、4人のバランスなのである。

 1338分からサウンドチェック開始。まさやん、あきらと、だんだんメンバーがステージに吸い込まれてゆく。会場の外は灼熱の中、正午に目撃した時からずっとたくさんの人達が列をなしてグッズを求め続けている。

 自分の仙台入りを告げたインスタグラムへの返信を見ていたら、「最近、大人オーラルファンが増えてます。そんなところも見て欲しいなあと思います」というメッセージがあったので、横にいた拓也に話すと、「そうなんです、このツアーからそれを感じるんですよ」と若干の驚きをもって実感していることを教えてくれた。言うまでもなく、今、このバンドはそういう全国区的な、しかも世代を超えた認知を持たれ始めた状況にある訳で、それもそうなるべき作品をここ1年間で作ってきて、それを丁寧にライヴで育ててきたからだと言う確認をする。ついでに「そもそも拓也の綴る歌詞は世代を選ばないし、むしろ大人ファンの方が肌感でフィットするウェットかつセクシーな世界観も多いよね」と話すと、「確かにそうだけど、でも、自分の声は本当に好き嫌いがはっきりしますけどね」とニタっと笑った。まあ、それは拓也だけのものではなく、このバンドの音楽性にも繋がる話だと思いながら彼の言葉を胸で受けた。彼らのロックは今、加速度的に広がっては爆発し続けているが、それは決して大衆的な要素を意図的に配置したからではなく、幸福な異質感が音楽の中から沸き上がっては、その癖にハマった中毒者が続出しているからである。その異質感や違和感をスケールの大きな音楽で表し、このバンド独自のストーリーを多くの人の視界に入る場所で明確に見せたり魅せたり響かせたからこそ、彼らは今、ロックシーンの最先頭で最高の注目や衆目を集めているのだ。

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA6月号 Vol.122』