Posted on 2017.06.16 by MUSICA編集部

デビュー30周年を迎えたエレファントカシマシ、
47都道府県ツアー「THE FIGHTING MAN」を敢行!
岐阜&四日市公演に独占密着した表紙巻頭特集!

 

バンド史上初にして念願の47都道府県ツアー「THE FIGHTING MAN」
日本が誇るロックバンドの唯一無二の魂が燃え上がる迫真のその様を
岐阜公演&四日市公演にリハから密着して徹底レポート!

『MUSICA 7月号 Vol.123』P.10より掲載

 

5月27日(土)岐阜・長良川国際会議場

 

 エレカシが岐阜でライヴを行うのは今回が2度目。前回は1990年2月10日、御浪町ホールというキャパ100人の会場だったそうで、実に27年ぶりの岐阜公演となる。この47都道府県ツアーはエレカシにとって初めての土地も数多く含まれていて、その「30年目にして初」という言葉が持つインパクトも凄いが、「27年ぶり」という言葉が放つインパクトは、なんだかそれ以上に凄い。

 まずは宮本が颯爽と登場。挨拶をすると、「わざわざ遠くまで来てくれてありがとう!」と、とてもいい笑顔を返してくれた。この日でツアーは14公演目をカウントしていて、全48公演あることを考えればまだ3分の1に満たないのだけど、でも、実はすでに彼らの通常の全国ツアーよりも多いくらいの本数を行なっている。が、宮本の顔に疲労の色は見えない。ツアーと並行してシングルの制作やプロモーションも行なっているし、体調的にハードではないのか?と訊くと、「これが全然大丈夫なんですよ。むしろツアーの時のほうがご飯も食べるし、割とリズムがある生活になっているのがいいのか、今のところ凄く元気ですね」と。きっと気力が充実しているのもあるんでしょうねと言うと、「それは本当にそう! だってどの会場も(お客さんが)いっぱいなんですよ。今日もソールドアウトなんです。こんなこと、ちょっと信じられないですよね!?」と、その言葉以上に心底驚いていることが全身から伝わってくるくらいような様子で目を見開きながら話す。

 そうなのだ。今のエレカシは、なんとデビュー30年目にして全国各地で過去最高のライヴ動員を記録しているのである。もちろん貴重なるアニヴァーサリーツアーであることも関係しているのだろうが、でもそれだけではこの状況は生まれ得ない。今もなお最前線で闘い続け、名曲を生み出し続け、広く深くその信頼を獲得し続けているからこそのこの状況であることは明白だ。それがどんなに特別なことなのかは、言うまでもない。

 宮本の入りからしばらくして石森、高緑、冨永、そしてサポートギタリストのヒラマミキオ、キーボーディストの村山☆潤が会場に到着。石森はギターを担いでやって来て、ということはつまり、おそらくホテルの部屋でも練習をしていたのだろうなと思う。みんな楽屋に荷物を置くと、そのままステージへ。会場到着から6分後には、もうステージから冨永の叩くドラムの音が聴こえてきた。高緑も石森も、音は出してはいないけれども自分のアンプやエフェクター周りの確認を始めている。早い。そのままそれぞれにセッティングを整えていきながら、徐々に音出しが始まっていき、やがてあのバンドサウンドがホールいっぱいに響きわたっていく。宮本もステージに登場し、メンバー並びにスタッフに「よろしくお願いします!」と声をかけ、リハがスタートした。

 今はまだガランとした客席に、宮本の歌声がしっとりと響く。“風に吹かれて”だ。本番のような圧はないけれど、力を抜いた状態で歌っている分、歌声自体が持つ繊細な美しさが際立って響いてきて思わずハッとさせられる。発声練習も兼ねているのだろう、時折♪ラ〜ラ〜ラ〜ララ〜、あああああ〜ぅあ〜、おおおお〜おお〜♪と喉を開いていくように歌いながら、ひとまず通して演奏が終了。すると、宮本がくるりと冨永のほうへと向き直り、ここからひたすらドラムと向かい合う時間が始まった。フィルの入れ方や力加減など、ドラムの細かい表情について宮本が指示を出し、「そこだけ1回ひとりで叩いてみて」という宮本の言葉に答えて冨永がBメロからサビに向かう部分を演奏。「もう1回」。また叩く。「もう1回」。また叩く。宮本が「そこは頑張り過ぎない、もっと力を抜いて!」等と指示を飛ばす以外は物音のしないシンとしたホールに、冨永のドラムの音だけが何度も何度も響く。その上で、もう一度バンド全員で頭から演奏。そして次の曲へ。

 次の曲も宮本がじっくりと歌い上げるタイプの曲だったのだけど、一度通した後、またしても宮本がくるりと冨永のほうへと向き直り、先ほどとまったく同様に、またひたすらその曲のある1箇所を繰り返し練習していく。「そこのタタットトッダンっていうところの最初のタタッは、2個目のタじゃなくて1個目のタを強くして欲しいんだけど」と宮本。歌の叙情にも大きく関係してくるリズムの表情/ニュアンスについての言及が多く、じっと冨永のプレイを凝視しながら何度も何度もやり直しては理想の形を追究していく。見ているこっちのほうが手に汗握るというか、勝手に緊迫感を感じてしまうやり取りなのだけど、でも彼らにとってはごくごく普通のやり取り、いたって日常的な光景なのだろう。誰も1mmも動じることなく淡々と繰り返されていく。

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text by有泉智子

『MUSICA7月号 Vol.123』