Posted on 2017.06.19 by MUSICA編集部

flumpool、3度目の武道館公演に密着!
攻めの姿勢を貫いた圧巻のライヴ・ドキュメンタリー

3度目の日本武道館ライヴは、
彼らの活動史上最も根深い闇の歴史への大リベンジだった――。
およそ優等生ポップバンドにはやり切れない
大胆にして斬新な演出力と実行力。
今までのflumpool観を完全に覆えす背水の陣で臨み、
そして見事乗り越えた一夜を完全密着ドキュメント!

MUSICA 7月号 Vol.123P.52より掲載

 

 521日、 flumpool3度目にして本当の勝負の日本武道館2デイズの2日目。

 いや、別に無意味に最初から煽るわけではない。ただ、今回の武道館に密着したかったのは、初回の武道館に密着したからでもあるし、それ以上にシングル“ラストコール”のインタヴューで隆太が話していたことが、心に刺さったからだった――。

「とにかくまずは武道館です。3度目の武道館っていうのもあるし、まずここでケリをつけたいって気持ちがあるんですよね。そうしないと何も始まらなくて。武道館にいい思い出が1つもないんですよ。まず『作られたバンド』として1年目に歌ったし、5年目に歌った2度目の武道館は自分達がやりたいことがあったのに、感情的に関係が難しくなって事務所を離れそうになりかけていた時期で。自分達が一番気にしているふたつの重要な時代のライヴが武道館だったりして、flumpoolのブラックなところを色濃く全部背負ってる場所なんですよね。それを今こそ断ちたい。3度目にまた何かを背負ってしまうのか、それともこれまで背負ってきたものがあったからこそ、やっとここに立てたって気持ちになるのか、そこに懸ける気持ちっていうのは本当に大きいものがあります」

 ここまで明確に武道館に「負」を持ち込んだアーティストもいないだろうし、複数回出演したにも関わらず、未だその呪縛から逃れていないのも相当だ。そのことを踏まえ、バンドとして一からリセットしながら、ドラマの主役級への挑戦までしながらもがき続けているバンドの3度目の正直をできるだけ間近で目撃したくて、このような企画を投じさせてもらった。

 結果から話すと、今までの負が募り詰まったからこそ、斬新という言葉を超えた武道館ライヴを彼らは今回やってのけた。そのドキュメントを届ける。

 

 11時に武道館内に入ると、既に一生(G)と元気(B)が楽屋でまったりしていた。彼らの後ろにあるモニターに映っている武道館のアリーナ部分、というかステージの形が妙に変なので建て込み中かと思い、「あれ、今日2日目だよね? 昨日とは別企画でステージ作り変えてるの?」と問い掛けると、いきなり2人が笑い出す。「いや、その気持ちわかりますが、今回、こんな変なステージ作っちゃったんですよ。これで完成してるんです」と自嘲気味に話してくれた。

 P54中央の写真にもある通り、まともな発想からは絶対に生まれない歪なステージデザイン。とても大きくて立体的で、ドラムを中心に楽器が置いてあるところ以外のスペースががらんとしていて、まったく意味がわからないステージデザイン。

元気「リハーサルを見てもらうとわかってもらえると思うんですが、これひとつのステージであると同時に、ふたつのステージでもあるんです。つまりは、エンドステージ(いわゆる通常のステージ)とセンターステージ(最近、アリーナライヴとかで割とある、アコースティックなどをアリーナ真ん中や後方で行うためのミニステージ)がひとつに合わさったステージを作っちゃったんです」

■ん? ふたつも何もひとつじゃない。なんか巨大な昔の鍵穴というか、そうだ、これ、仁徳天皇陵みたいだ。あれ大阪? 堺? それ繋がり?

元気「いやいやいやいや(笑)。確かに――」

一生「前方後円墳かもしれない(笑)、その見え方どうかと思いますけど」

元気「だから、プロの目線では絶対に作らないステージを作っちゃったんですよ、しかも武道館という大切な場所で。まず今回、360度でやりたかったんです」

■後ろに幕を敷かないで、ステージ後方にもお客さんが入って、ステージがぐるっと囲まれる感じでライヴをやることね。

元気「そう、その360度やりたくて、でもステージを真ん中にするのが嫌で、最初はしっかりエンドステージからやりたくて。でもセンターステージも欲しいんだけど、そのステージ間の移動を花道作ってやるのが嫌で――ってやってったら、鹿野さん曰く墓みたいなステージ(デザイン)になっちゃって(苦笑)」

 その斬新なステージデザインに若干呆然としている中、11時半に隆太(Vo)が入ってきた。「あ、ステージのことですか? なんかね、こんなになっちゃって。マネージャーも乗っちゃって、U2とか参考にしたみたいなんですけど」

■言っている意味はわからないでもないけど、でもU2の演出で驚くことはあれど、ここまで唖然としたことは――。

隆太「ないですよね、わかってます(笑)。何もステージだけでなく、とにかく今回、やり過ぎちゃって。想いが強過ぎるもの全部を自分らで考え、投じてますので、まずは楽しみにしてください」

 と、リラックスしながら話してくれる。12000人もの人々が(2日間共ソールドアウト)、このステージをどう見るのか?と思い浮かべながら楽屋を出て実際にステージを見に行く。が、やはり言葉を失う。言葉を失ったまま再び楽屋に戻ると、一生が誇らしげに「ほら、素人の勝利でしょ?」と話しかけてくる。彼らはこの武道館こそ、やりたいことを妥協せずにやり抜く場所として、そして「作られた場所から作る場所へ」とバンド自体が変わったことを証明する場所だと確信したのだろう。気合いが今までのどのライヴとも違うし、何より高まっていた。

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.123』