Posted on 2017.06.19 by MUSICA編集部

indigo la End、文句なしのアルバム『Crying End Roll』完成!
美しい衝動と麗しい抒情が迸る新作をメンバー全員で語る

タフじゃないと今ここにいれないですからね(苦笑)。
バンドでいい曲ができていくことが何よりもの原動力だったんで。
『音楽家としてこれを完成させたい』だけで今はずっと動いてる(川谷)

MUSICA 7月号 Vol.123P.68より掲載

 

(前半略)

■僕が今回のアルバムの中から感じたものを大雑把に言うと、「快楽」と「虚無」だったんですね。たとえば前作って、「命の歌を書きたい」とか明確にコピーライティングできるようなコンセプトがあったと思うんですけど、今回はどういうものをイメージしてたの?

川谷「そもそもコンセプトがないからなぁ。本当にその場その場だったし――でも歌詞に関しては、休止してる期間に考えてたことがあったんで、それが色濃く反映されてるかなとは思います。それこそ右半身は休止前に作ってましたけど、その後の歌詞に関しては、休止中の僕の生活が反映されてるなって」

indigo la Endって言ってみればラヴソングが多いじゃない? ああいう時期を経て、そして休止期間を経て、ラヴソングを作るのをやめようと思ったり、もしくは自分が何を歌うべきか考えることはなかったの?

川谷「いや、俺は本当にそういうのを気にしないタイプなんで、作りたいものをその場で作るっていう感じでしたね。もちろん書きたいことが曲に合わないんだったらやめるし、でも書きたいことがあるなら、世間がどう思おうと関係ないというか。書きたいものを書くだけなんです」

■それは素直に受け取れるんだけど、そう言い切れるのって非常にタフなことだとは思うんですよ。

川谷「……でも、タフじゃないと今ここにいれないですからね(苦笑)。タフっていうより、ひとりじゃないというか、バンドでいい曲ができていくことが何よりもの原動力だったんですよね。音楽家として『これを完成させたい』とか『これを聴かせたい』みたいな、それだけで今はずっと動いてるっていう。……でも、みんなと違って俺はずっとずっと、完全にスイッチオフになってました」

■さっきみんなは「休止してる時も活動をしてたから、この作品の制作も地続きだった」っていう話をしてたけど――。

川谷「俺はもう完全オフになってましたね。曲を作る時は全然作れるんですけど、自分の中でよくわかんないスイッチがあって、そこが完全にオフになってて」

■……全然わかんないわ。

川谷「俺もよくわかってないんですけどね(笑)。で、最近までずっとオフになってたんですけど、昨日やっとオンしたっていう感じです」

■ん? 昨日?

長田「その前もライヴとかやってたよね?(笑)」

川谷「だから、ライヴやってる時も完全にオフだったの(笑)。オンにしたいんだけど、どうしてもスイッチが入らないっていうか、体が完全に動かなくてずっと困ってたの。別にいろいろなことや報道があったから意図的にオフにしていたんじゃなくて、ただただオフになって抜けれなかった」

■あ、でも今の話で全部わかりました。確かにこれはそういう作品になってるよね。『藍色ミュージック』とこの作品の雰囲気の違いって――『藍色~』は凄く圧があるし、オラー!っていうバンド感があるんですよ。でも、このアルバムはもっと音楽的なんだよね。でもだからといって、この作品がシンプルなトラックに変わったかっていうとそうじゃなくて、今まで以上にドンガラガッシャンやっていて。今の話を聞いて、そういう人間的なムードが出てるんじゃないのかなと思った。

川谷「うん、それはあるかもしれないですね。『藍色ミュージック』の時は、もちろんスイッチオンにしてたんで。昨日スイッチが入ったっていうのはなんでかって言うと――俺、家で一切やる気が出ないんで、家でギターを触ることなんてまずないんですよ。でも昨日突然、何も考えずにわざわざハードケースからギターを出して、部屋で3時間籠って弾いてたんです。そこでようやくオンになったんだって思って(笑)。昨日、THE NOVEMBERSのライヴを観たんですけど、そこで完全にスイッチが入っちゃったみたいで」

■ははははははははははははははは。あの壊れた美、みたいなものにヤラれたのかな。

川谷「はい(笑)。そのライヴが凄くよくて、『やっぱりこのバンド愛してるわ』っていう気持ちになって。ライヴで小林さん(小林祐介)がMCで『美しいものっていうのは、そのもの自体が美しいんじゃなくて、それを認識して、『美しい』と名づけた時に美しいものになる』って言ってて。その話を聞いた時に、俺が作ってる音楽も自分では美しいって思ってるけど、その曲自体が美しいわけじゃなくて、聴く人がそれを『美しい』って思ったり、作った本人達が聴いて『これは美しいものだ』って判断してくれてるんだって思って。そういうことをバーッと考えてたら、衝動的にバコーンッとスイッチが入ったんですよね。でも継続的に言うならば、もっと前からオフってたんです。2016年の頭からずっと」

■報道がなされてからですね。

川谷「はい。その時期から自分のスイッチをオンとオフでパコーンッて分けちゃったんですよね。………なんか、第六感的なものがなくなってた感じなんです。たとえばCDってレコードの周波数のいらないところを切って、CDっていうフォーマットに収めてるじゃないですか。でも、実際はその人間に聴こえない周波数が大事で、その周波数があるからこそレコードっていい音のように聴こえるんですよね。それと同じで、聴こえない周波数みたいな第六感が抜け落ちてたんです。そのスイッチがずっと欠落してて、そこが今やっと入ったっていう」

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text by鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.123』