Posted on 2017.06.21 by MUSICA編集部

ビッケブランカ、圧倒的なエネルギーに満ちた
アルバム『FEARLESS』リリース!
歌う意義と音楽が存在する新作を語り尽くす

マイケルもフレディもMIKAも、
「俺達は無力だ」って言ってるように聴こえるんです。
でも、それが生きることでその先に希望があるから、
僕もまったく同じように歌ってるつもりです

MUSICA 7月号 Vol.123P.102より掲載

 

■『FEARLESS』、本当に語りどころがたくさんある素晴らしい作品です。凄く衝動的な作品だとも思いましたし、グラマラスでセクシーさもありながら、それでいてしっとりと聴かせる部分もあるアルバムになっていると思いますが、ご自分ではどんな1枚になったと思いますか。

「どんな1枚だろうなぁ……なんか変な感じなんですよね、作るとわかんなくなるっていうか。これは捉え方を間違って欲しくないんですけど、もう今は作ったものに対して興味があまりないんです。作る時の熱量っていうのは物凄いものがあった。でも今こうしてでき上がってしまったら、あとはみなさんに聴いてもらって、聴いてくれた人がどう歩み出していくかっていうことに僕は完全に興味がいってるから。どういうふうに捉えてくれて、どの曲を好きって言ってくれて、どの曲に背中を押されてくれるのかっていう、そっちの期待しかないんですよね」

■『FEARLESS』っていうタイトルはどこから来てるんですか?

「そもそも『こんなアルバムにしたい』みたいなものは設けず、今ビッケブランカができることやろうっていうのは変わらずなんですよね。そうやっていく中で今回は2曲目の“Moon Ride”が生まれ、“Take me Take out”という曲があり、バラードの“さよならに来ました”っていうのがあるってなってきたところで曲順から決めてくわけです。で、一番最後を飾る曲がないなぁって思って、じゃあ“THUNDERBOLT”を作ろうってなってなったんですけど。その“THUNDERBOLT”ができた時に、この曲がアルバム名を引っ張ってきたんです」

■この曲が「恐れない」っていうインスピレーションをもたらしたと。

「はい、単語の意味だけ見ると『怖いもの知らず』だとかそういう意味ですよね。その点で言えば、ビッケブランカのライヴを観てくれた人からはキャラに合ってるとか心が強そうとかって言ってくれる人もいるだろうし、その解釈でも僕としては全然構わないんですけど。でもここで僕が本来の意味としてつけたのは、本当に強い人はFEARLESSではないんですよ。本当に強い人はSTRONGだしPOWERFULGREATなわけです。だから強いマッチョマンとかは、FEARLESS マッチョマンとは言わずSTRONG マッチョマンであり、POWERFUL マッチョマンなわけで、じゃあFEARLESSって言葉をどこで使うのかって言ったら、FEARLESS ファイヤーマン(消防士)なわけです。つまり、火事の現場っていう恐ろしいもの、本来なら誰もが怖いと思うようなものに立ち向かっていくその行動こそがFEARLESSなんです。ただ単になんでも無茶しちゃうぜ!っていう、上辺だけものではないんですよね。そういう弱さだったりっていう、ネガティヴなものからの1個反動があるっていう、そこが僕にとっては『FEARLESS』の一番重要な部分かなと思います」

■弱さっていうのは、ビッケさんが抱えているものでもあるんですか?

「それはねえ(笑)………いや、もう僕が自分のことを弱いとか、辛さがあるっていうことをもう言う必要もないのかなって凄く思います。このアルバムができた経緯がどうだとかそういうのはもう野暮過ぎる。可能であれば、このインタヴューでもむしろ僕のほうが意見をどんどん聞きたいぐらいだし、このアルバムについての想いはみなさんにはなんとか曲でわかって欲しいしから。『僕はこんな思いをしました。それを曲に落とすことでこういうことができています』と。『そしてそれをみなさんに聴いてもらって同じように何か乗り越えてもらえたら――』っていうような言葉はもういらないっていうふうに今はなっています」

■たとえば、ネガティヴなものをポジティヴなものに反転させたいっていうのはずっと変わらずあると思うんです。

「それはずっと変わらないですね」

■でも初期のように、ビッケさん自身が先の見えない孤独とか暗闇感を抱えてる感じはあんまりなくなってきてるように見えるんですよね。

「そうかもしれないです。自分の中でのモヤモヤっていうものがどんどんなくなってるし、本当に好きなように作らせてもらってるので、その現状に感謝が止まんないから。というか、むしろ今は『人間が生きるっていうことがもう悲しみである』みたいなところに行ってる。自分の置かれている現状がどうとかじゃなくて、当たり前に人間は悲しいものであり、当然みんなが悲しみを抱えているわけであって、それを転覆させようっていうのはつまり希望に向かって行くことなんだって。そうやってもっと大きいもので捉えるようになったんです。“THUNDERBOLT”はまさにそういう気持ちが出た曲で、ラストはこんな感じで終わりたいって思ったんです。悲しみを抱えた人間――俺達みたいな者が最後にはちゃんとひっくり返るっていうふうにやりたかったんです」

(続きは本誌をチェック!

text by黒田隆太朗

『MUSICA7月号 Vol.123』