Posted on 2017.07.16 by MUSICA編集部

独自の進化を続けるSEKAI NO OWARI、
不変と前衛が同居するシングル『RAIN』。
バンドの今を紐解く全員インタヴュー!

俺達はいきなりライヴハウスを作るところから始まってる、
つまり完全に道から逸れまくってやってきたから。
だから、ここで一旦メインストリートに合流して、
その後どこへ行くかはそれから決めよう、と(Fukase)

MUSICA 8月号 Vol.124P.50より掲載

 

■まず、“RAIN”がこうやってバンド史上飛び抜けて一番牧歌的なシングルになったのは、映画に引き寄せられたからなのか、もしくは自分達のバンドの今の気分なのか、から教えてもらえますか?

Saori「やっぱり映画のために作ったっていうのは凄く大きくて。最初のミーティングの時に、映画のプロデューサーのほうから『ビジネス的なタイアップだったら、別に主題歌なんていらないと思います』って言われて。呼ばれて行ったのに、いきなり挑戦状を叩きつけられるような感じで(笑)。自分達がいかに人生を賭けて『メアリと魔女の花』を作ってるかって話を聞いて。監督からもっと子供から大人まで幅広く届くような――それって私達の楽曲のファン層に当たる人でもあるんですけど、そういった人達に届く、映画に寄り添った楽曲が欲しいっていう話をもらったのが始まりなんです。で、Fukaseがミーティングの帰り道にイメージができたって言ってたり、Nakajinが『こんなのどう?』ってみんなにデモを送ってきてくれたりして。Nakajinはフルで作ってきてくれたんですけど、そのAメロを残してFukaseBメロを書いて。その上でNakajinがもう1回サビを書いたんですけど、私が『こんなサビがいいんじゃない?』って言って一緒にサビを作って。それで今回、作曲が共同クレジットになったんですけど」

Fukaseが帰り道で見えたイメージはどういうものだったんですか?

Fukase「どんな感じだったかな……まず、そのミーティングで主人公メアリのことを知ることができたんで。わかんない人のことは書けないんですけど、その人を知ればどういうものを作ればいいかもわかるから。でも最初は、主題歌ってどういうものなんだろうっていうのが僕の中のキーでしたね。要するに、自分達の作りたいものじゃなくて、映画に完璧に寄せてくれっていう感じで言われたのが、実は初めてだったんですよ。今回は映画の制作者側として主題歌を作って欲しいっていう感じだったんで」

■自分らのストーリーではなく、映画と共作する感じだったと。

Fukase「というか、もうスタッフ側という感じだった(笑)。でもそれは監督やプロデューサーと話してるうちになんとなく共有できて。『観た人が何か背中を押されたような気持ちになる映画にしたい』って言われたんで、その中で自分の中では大体の曲の感じも歌詞のタッチもおおよそ描けたっていうか。これはメアリの曲なんだなって思ってたので、自分達の方法論は一旦置いといて……『背中を押すことができる』ってことは、主人公が成長した部分があるってことだと思うんですよね。要するに、成長したことがない人は、人の背中を押せないじゃないですか。メアリは映画の中で、最初はかなりダメな感じなんですけど、それがどんどん成長していくんですよね。そういう物語だって聞いた時に、曲の中で僕も一緒に成長していかなきゃいけないと思って。でも、それは無理があるものではいけなくて。架空の物語だからこそ、ドキュメンタリーじゃないからこそ、リアルに考えていく必要があるんです。何でもなかった女の子がある日突然魔法が使えるようになって、でもそれがいずれ消えてしまった時に何ができるのか?っていうテーマを聞いた時に、僕の中には全然ない感覚だなって思って。もちろん魔法が使えたことがないし、比喩でそういう感覚になったこともないし。SEKAI NO OWARIっていうバンドで観てきた景色が、ある日突然消えるっていう、そこまで重いものではないし――だから今回の曲は、わからないことの想像から始まってるんですよね。これまでは実体験に基づく曲が多かったし、それしかできなかったし、そこだけでここまで来れたんですけど、ひとりの女の子を成長させていくことが、かなり僕の中で必要だなって思ったんで。そうやって帰り道の時にアイディアはおおよそ決まったんですけど……ただ時間はかかるなって思いましたね。炒飯じゃなくて煮物だなって」

■ははは、瞬時に火でババっと勝負するのではなくじっくり煮詰めるという過程が大事だと。

Fukase「(笑)過程も大事だし、じっくり精密に作っていく必要があるっていう。酒だとワインとかウイスキーとかそっち系かな。時間をかけることに意味があるし、時間をかけないと気づけない部分があったりとか。しかもデリケートじゃなきゃいけない。俺の中でカップリングの“スターゲイザー”は炒飯みたいに作った曲なんで。でも、“RAIN”は勢いで一朝一夕で作るものじゃないなって。この曲は時間かかるなってことを確信した帰り道でしたね」

SEKAI NO OWARIは自分達の物語と歌いたいことを明確に持ってるし、今まではその物語やメッセージを作品化することで階段を上ってきたと思うんだよね。それが今回、他者のためというか、明確に主人公がいる中で曲を作ることになった時、どう気持ちが変化したのか教えてください。

Fukase「そこは監督とプロデューサーの熱量によって書いていったっていうか。彼らふたりの中で世界はすべて決まっていたけど、僕らは頭の中までは覗けないんで、彼らの口から出る言葉によってこういうのが合ってるだろうなって思って書いていくというか。だから今回は、メッセンジャーというよりは、音楽家として機能していたんじゃないかと思いますね」

Saori45年前くらいに同じようなオファーをもらって書こうと思ったら、凄い違和感があったかもしれない。今だからこそ、他者の作品に寄せて作っていく余裕があるというか、そういう気持ちになれたのかなって思います。SEKAI NO OWARIとして自分達がこういうものを作ってきたっていう想いがあるからこそ、映画のために作ることができたのかな」

■で、家に帰ってNakajin1曲バーッと書き切ったんだよね。それはどういうイメージを持って曲を作ったんですか?

Nakajin「最初のミーティングを監督とプロデューサーとした時に、まずは『ポノック』という会社を作った歴史――元々ジブリにいたふたりが、どういう気持ちで新しい会社を立ち上げたのかっていうところから、映画のストーリーを説明してくれたりして。その時はまだ映画自体は全然完成からは程遠いものだったんですけど、重要なシーンとか背景を見ながら、その世界観と大筋のストーリーと、主人公がどんな人で、流れはどうやって進んでいくかっていうのを、監督直々に話してくれて。その後に、『ここで曲が流れます』っていうのを教えてくれて、“RAIN”の歌い出しになってる冒頭の部分が自分の中で流れて。だから、割と冒頭のイメージから作ったっていう感じです。鳴ったものがあったっていうか」

SaoriNakajinが最初に曲を上げてきた時に、Fukaseがすぐ『Bメロこうしたほうがいいんじゃない?』って言って、私も『サビはもっとこうしたほうがいいんじゃない?』って言って。そういうのがどんどん出てきたんで、今回は挙手性で作っていったっていうか。『ハイハイ、アイディアあります!』みたいな(笑)」

DJ LOVE「バンバン意見を投げ込んで、混ぜて出すみたいな感じです」

Nakajin「前回の(シングル)“Hey Ho”もそうですけど、個人で作るよりも、ざっくばらんに意見をどんどん言い合って、それをちょっとずつ足しながら曲を作っていくことが多くなったというか。前はもっと大筋をしっかり立てて、そこに各々が肉づけするくらいの曲作りだったと思うんですけど、最近は少しずつみんなで積み上げていく感じで、本当の共作になってきたというか。“RAIN”はその最たるものですね」

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text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.124』