Posted on 2017.07.18 by MUSICA編集部

10-FEET、TAKUMAの最深部が露わになった
シングル『太陽の月』リリース!
名曲誕生をメンバー全員で語り合う

“太陽4号”は自分の核の部分に近いのかなって思います。
今まで夏服やったり冬服やったり、モッズやったりパンクやったり、
いろんな服装をしてきましたけど、海パン姿だけはやってなかったなって(笑)

MUSICA 8月号 Vol.124P.68より掲載

 

(前半略)

■“太陽4号”はとても10-FEETな名曲だなと思うと同時に、凄くビックリしました。一番ビックリしたのが、歌い出しの歌声で。これ、街中で突然聴こえてきたら、TAKUMAが歌ってるとは思わないと思います。

TAKUMA「あ、ほんとですか」

■はい。とはいえ曲としては自分の殻の中のものを全部出し切ったような感じもするし、バンドとしてはまたひとつ殻を破ったような曲でもあるし。とても不思議な感じで聴かせてもらった、素晴らしい曲なんですけど。どういうところから生まれてきた曲なのか、教えてもらえますか。

TAKUMA「メロディと、ゆっくりなテンポ感と、コードだけは最初にあって。サビ以外のメロディは最初はちょっと違ったんですけど、でも、それを持って3人でああでもないこうでもないって言いながら始めたんですよ。最初は、できたらこれも僕らの得意としてる速いテンポ、激しい感じでやりたいなって思いながらアレンジを始めて。だから途中で凄く速くなったりもしたんやけど(笑)、でも、これを速くしても他の速い名曲に負けたりするし、得意でやりやすいんやけどドキドキせえへんなっていうのもあって。だから遅い曲として生まれて速くなって、また遅くなって、それで最後の最後に『速いパターン、もう1回やってみいひん?』って言ってやってみて、最終的にこのゆっくりなテンポに戻ってきたっていう(笑)。僕らって遅い曲には腰が引けてしまうところがあるんですけど、2回確認を経たことで、『やっぱりこの曲はこのテンポなんや』って信じて集中できたのは大きかったですね。……僕らにしてみたら、速い曲も遅い曲も作ってる時は同じだけ楽しいし、やり甲斐も同じだけあるんですよ。だけど、特にキッズにとってはテンポの速い・遅いは凄く大事なんやろうなっていうのは思っていて。だけれども、別に僕らの気持ちが落ち着いたわけでもなく、ゆっくりな歌モノをやりたいっていう気持ちになってたわけでもない中なかで、それでも自分達がいいと思えるゆっくりな曲が生まれてきた時に……正直、それがみんなにとってもいい曲なのかどうか、一度聴いてみて欲しいっていうのが大きかったんですよね。……今までゆっくりな曲はそんなにやったことがなかったんで、僕ら自身は凄く新鮮な気持ちでアレンジできた曲やったんです。まぁ“シガードッグ”とか“風”とか、過去にゆっくりな曲はありましたけど、その時は『これは頭捻らんといい曲は生まれへんぞ』って意識でやってたんですよ。だけど“太陽4号”は変な煮詰まり方もせず、凄く集中して作れたんです。せやから、普段俺らのライヴに来てくれてる人達がこの曲を聴いてくれた時に、速い曲とか遅い曲とかを超えてちゃんと届くのかどうかっていうことを知りたい。僕自身はそういう力を曲に感じてたので、それを知りたい気持ちは強いですね。ただ、実は“太陽4号”をシングルにしようとは決めずにレコーディングに入ったんですよ。今回の2曲目に入ってる“月〜sound jammer せやな〜”が表題になったかもしれんし、他にも手をつけてる新曲が6曲くらいあったので」

KOUICHINAOKIは、“太陽4号”の原型を聴いた時にどういうことを思ったんですか。

KOUICHI「まぁテンポが遅かったのでびっくりはしましたけどね。でも、メロディもいいし、これをやることによってまた新しい10-FEETを見せられるなとは思って。……こういうゆっくりな曲ができ上がる時の話は他のバンドから聞いたりはしてましたけど、実際に自分がやってみたら、ほんまに難しくて(笑)。だけどこれをモノにできたら、バンド的にも自分的にもいいなっていうのは思いながらやってましたね」

NAOKI「最初にこの曲をスタジオで合わせていた頃は『これがシングルや』っていう感覚もなかったので。今まで“シガードッグ”みたいな曲があった上で、これをアルバムの中の1曲として入れようっていうのが自然な流れやなと思ってたんですけど、曲の構成ができ上がっていく中でシングルの候補に挙がっていって。さっきTAKUMAが話したテンポをいろいろ変えていった時は、やっぱり速いテンポもいいんですけど、なんか普通やなっていう感覚があったんですよ。で、この曲は遅いテンポのほうが面白くなるんやろうなって思って。そういう中で少しずつ、これは10-FEETのシングルとして出してもおかしくないんやろうなっていう曲に仕上がっていった気はします」

■『アンテナラスト』から3枚目になるシングルなんですけど、その楽曲達のバランスの中で、もっとハッチャケたアンセミックな曲のほうがいいんじゃないか?みたいな気持ちとか、逆に俺らはここまで成熟してきたんだっていうことを曲で伝えたいんだ!みたいな気持ちとか、そういう部分ではどういう気持ちだったんですか?

NAOKI「『アンテナラスト』、『ヒトリセカイ×ヒトリズム』と続けてきた上では、僕はハッチャケた感じの曲で行くべきやと思ってましたね。ただ、ハッチャケた曲ならなんでもいいっていう感じでもなく、ハッチャケる中でも突き抜け切ったものならアリやなって思ってて……最初はそう考えてました。けど、何曲か作っていく流れの中で少しずつ考え方は変わっていきましたね。そういうことに囚われず、曲として今どれがいいのかを一歩引いた感じで落ち着いて見られたというか」

■これまでも10-FEETっていうバンドは、いい意味で、心の中にある弱い気持ちをちゃんとスタイルにしてきたと思うんですね。

TAKUMA「はい、そうですね」

■それは毎回考え抜いた上でやってきたことだと思うんだけど、この曲の歌は、そのスタイルさえも外したなと思うくらい、ただただ丸裸なんだよね。そこが凄く新しく聞こえて聴こえてきたんです。

TAKUMA「ああー、はい(笑)。まさに僕もそう思います」

■歌詞もメロディとピタッとハマッていない、フォーク的な字余りがたくさんある歌詞だし、いろんな意味で10-FEETの曲として新鮮なんですよ。で、その上で圧倒的なサビのメロディの素晴らしさがあって。僕はこの曲をシングルにした決断は素晴らしいことだと思う。

TAKUMANAOKIも言ってましたけど、僕も頭で考えたら、次はハッチャケた曲やろ!って思ってたんです。イケイケやろ次は!って。だけど曲って……どんな曲を作ろうとしても、思ったように行く部分と思ったように行かへん部分が半々くらいなんですよね。たとえば『勢いはあるけどパッと来ぃへんな』って思ってた部分も、レコーディングが終わってみたら『めっちゃパッとくるやん!』ってなってたり。逆に『デモの段階では耳に残る曲やったのに、でき上がってみたら抽象的やな』みたいな印象になったり。そういう、完成した時に曲が色を変えてることもあったりするんですよ。ただ、そういうことを超えた、曲そのものの力っていうのを今回の1曲目にも2曲目にも同じくらい感じてて。……なんかね、どれをシングルにするか迷ってた時に『次のシングルが最後やったとしたら、どれにします?』って言われて。そしたら、やっぱりこの“太陽4号”やったんです。前回の2作品からの流れとかも考えず、今回できた中で純粋に曲の力を信じてどれを打ち出すかって考えたら、やっぱりこの曲やったんです。正直めちゃくちゃ迷いましたけど、“太陽4号”を選ぶことで、これから作っていく曲が広がっていく奥行きを感じてドキドキしましたね」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.124』