Posted on 2017.10.17 by MUSICA編集部

BUMP OF CHICKENのツアー
「PATHFINDER」に完全密着!
北海きたえーる公演を徹底ドキュメント

12ヵ月ぶりのツアー「PATHFINDER」開幕!
開拓者、火星探査機という意味を持つツアータイトルがもたらすものは?
新たな4人の息遣いに触れる、本誌名物独占企画「ツアー完全密着」
まずはツアー2ヵ所目、924日札幌きたえーる編

MUSICA 11月号 Vol.127P.52より掲載

 

(前半略)

 早朝9時に早くもきたえーるに着いてしまった。

 随分早く着いてしまったと思い、スタッフ含め、お客さんなんてひとりもいないだろうと思いきや、札幌駅から地下鉄にはしっかりバンプシャツを身に纏った人々が乗り込んでいたし、既に50メートル以上の人々が、会場横のグッズ売り場に行列をなしている。

 楽屋に入ると、ちょうどPAスタッフが入るところで、「こんな時間に来たってメンバーはあと2時間来ないし、鹿野さんの仕事はご飯食べるしかないよ」と笑われたので、まずはおっしゃる通りご飯を食べて会場の雰囲気を見ながらお腹も心もいっぱいになる。大会場の、しかも2日目の朝方というのは、既にそこにたくさんの人が準備にかかっているのだけど、でも初日ほどバタバタしていないし、それなりにみんな疲れているしで、とても不思議な雰囲気に包まれている。

 ちなみに筆者はスタート地点である幕張メッセを観ていないので今回がこのツアー初参加となるが、ステージを眺めるとここ最近のアリーナ&ドームツアーと比べてシンプルに見えた。そう、シンプルでダイナミックなステージデザインに見えたのだ。が、楽屋口の駐車場には20t超えのいわゆる特大トラックが24台もそびえている。わかりやすく言えば、これだけのトラックがすべての機材を乗せて全国を走る巡るわけで、それはもういうまでもなく大ごとである。24台のうち、多くのトラックが赤色なので、まるで火事現場に消防車が集まっているようにも見えた。昨日の札幌は北上した雨前線により豪雨が降り注ぎ、メンバーもスタッフも「幕張メッセからそのまま北海道に豪雨を運んでしまった」と苦笑いしていたらしいが(幕張メッセの2日目も相当な豪雨の中で開催された)、今日は完全に晴天なり。きっといいライヴになる気配しか漂っていない朝だ。

 PAスタッフと雑談していると、今回のツアーは最初から調子がいいし、会場全体含めて、いつも以上にいい雰囲気で楽しいと話す。調子がいいのはもちろん偶然ではなく、ツアー前のリハーサルの時間や気合いの入り方が素晴らしかったからなんだということを朗らかに話してくれた。

 そんな中であっという間の1102分。4人一緒に1台の車で入ってくる。そのままフジが各スタッフのところにおはよう挨拶をしながらご飯チェックをし、チャマとヒロと升は楽屋で待ち構えてリハーサルの曲決めをしようとしている舞台監督と共に「フジくーん!! どこ行った??」とおどけながらフジを探し、その声に反応して帰って来たフジと一緒に「今日はどの曲をリハーサルでやるのか? 本番のセットリストも本当にこのままでいいのか?」を決める。

 同じ場所での2日目のライヴだし、そんなに確認ごとが少なそうな雰囲気で会話は進んでいくが、11曲丁寧に確認をしていく。

 みんなそれぞれどこにその曲の注意点を置くか?という話をするが、その時に4人ともよく、「コーラス」の話をしていた。今回のツアーも随分と事前リハーサルを重ねて気合いが入っているので、すでに演奏面はそれぞれ自分の「型」への確信はできているようで、後はコーラスをしっかりその会場ならでは、もしくはこの日の喉の調子ならではの感覚で合わせたいようだ。もちろんいい演奏をすることは必然だが、それと共に「いい歌」を「みんな」で響かせるのが今のBUMP OF CHICKENだと思わせてくれたのは、WILLPOLISツアーの中盤ぐらいからだろうか。今回のツアーもそれを万全の状態で響かせようと入念に話し合っている。

 そんなリハーサル&本番確認が終わると、テーブルを囲んでの「ご飯会」が始まった。

 正午。升とチャマのリズム隊がご飯を食べながら、ずっと“embrace”を聴いて、口ずさんでいる。「久しぶりに聴くと、面白い展開だよな」、「ライヴだと大体62ぐらい(BPM、リズムの速度)がちょうどいいんだよね」と会話しながら、コーラスのハモリのところになると、綺麗なファルセットヴォイス(いわゆる裏声)でチャマが音源に合わせてハモっている。時折「うーん」と言いながら、何度も何度も聴いてはハモる。

<明かりの無い部屋で 言葉もくたびれて/確かなものは 温もりだけ>

 「抱擁」という意味を持つタイトルで、強い意志が強い覚悟を持って、敢えてゆらゆらする船を漕ぐようなリズムの上を強いメロディでなぞる名曲だが、その曲が楽屋で何度も何度も流れ続けている。その横で、ご飯を食べ終えた升が、馴染みのゴムパッドをタカタカ叩き始めた——と思いきや、そこにマネージャーが「白飯」を持ってくる。まさかのお代わりである。そのお代わりくんを淡々と見つめながら、今度はチャマがベースのチューニングを始めた。そして今度は、ベースで再び“embrace”を奏で始めた。ちなみに先に話しておくが、この日のセットリストに“embrace”とはどこにも書いていない。選曲候補にあるの?と問うてみると「まあ突然ね。実は事前のリハーサルでもやってこなかった曲なんだよ(笑)」と意外なことを話してくれた。

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA11月号 Vol.127』