Posted on 2017.10.17 by MUSICA編集部

奇跡のような「蒼き日々」に終止符を打ったplenty。
日比谷野外大音楽堂でのラストライヴに完全密着

果てなき広野に僕だけの世界、僕らの世界を追い求め続けた、
かけがえのない蒼き日々の終わり――
2017年9月16日、plentyラストライブ「拝啓、皆さま」密着

『MUSICA 11月号 Vol.127』P.70より掲載

 

(前半略)

 ラストライヴ当日、メンバーは14時集合で最後の舞台である日比谷の野音へとやってくることになっていた。

 14時を回った頃に楽屋へ行った時、そこにはもう郁弥と新田がいて、少しだけ遅れて一太もやってきた。みんな特に変な緊張感もセンチメンタリズムもなく、いつもと変わらない表情で、いつもと変わらずにごくごく緩やかに時間を共有しながら、それぞれの時間を過ごしてる。

 楽屋の壁に、ちょっと大きめのパネル写真が飾られている。そこにはお客さんのいない状態の野音の全景が写されていて、ステージと客席を囲むようにしてplentyの歴代のすべてのアーティスト写真がプリントされていた。デビュー時の写真が目に止まり懐かしいなと思って近づいてみると、そのパネルにはたくさんのメッセージが寄せ書きされている。東京圏の担当イベンター会社のスタッフ達からの、今日のラストライヴへの激励と、そして今日で解散する彼らへの感謝の言葉達だった。こういうメッセージは、何箇所か訪れたラストツアーの現場でも見た。愛されてるな。手書きのメッセージを見ながら「みんな最後になってこんなに愛を見せられてもさー」なんてことを言う郁弥の顔は、けれど、とても素直な笑顔だった。

 サウンドチェックまでゆったりとした時間が楽屋に流れている。新田はいつものようにひとり喫煙所に向かったり。一太は穏やかな表情で楽屋の椅子に座っていたり。郁弥は今日の終演後に流すSEについてスタッフとやりとりしたり。あのパネル以外は、いつもの楽屋風景と変わらない。

 ステージを覗きに行くと、喫煙所に行ったと思っていた新田がそこに座ってた。6月にラストツアーの福岡〜鹿児島公演を観に行った時、新田が「いつも通りにしようとは思ってるんですけどね。俺、元々そんなに楽屋で過ごさずに、ひとりでベースいじったりタバコ吸ったりして過ごしてるんですけど、今回もそういう、今まで通りの感じで過ごしてて。でもやっぱり、ライブ中は今までとは違う思いが巡って……でも、それでいいんじゃないかと思いながら弾いてます。今を大切に生きるっていうか、そういう感覚で弾いてます」と話してくれたことを思い出す。

 今日の進行表ではサウンドチェック〜リハーサルの開始予定時間は15時30分だったのだけど、14時50分くらいには郁弥と一太もステージに出てきて、楽器を触ったりスタッフと雑談をしたりしている。どんよりと曇った空を見上げながら、「いつ頃から降るのかなぁ」と口にした郁弥に、スタッフが「本番は確実に雨予報だけど、リハはもつかもね」と同じく空を見上げながら答える。「最後の野音も雨なんて、plentyらしいよね。でも俺はほんとは晴れ男なんだよ!」と、郁弥がまったく説得力のない言葉を放つ。

 15時18分、サウンドチェック開始。ドラムの外音(客席側のスピーカーからの音)が鳴り始めたところで、ポツポツと冷たいものが顔に当たった。近くにいた新田が「やっぱり降ってきましたね」と苦笑しながらステージに登っていく。小雨だけど、本当に降ってきた。凄いタイミングだ。

 15時43分、最後のリハがスタート。最初に奏でられたのは、“理由”。リハと言っても、事前にスタジオに入っているので、楽器やエフェクターなどのPAチェック的な目的が主だから、全曲がっつりやるわけではない。でも、今日は最後のライヴ。今日が終われば彼ら3人でplentyの曲を鳴らすことはない。さっきの楽屋でスタッフから本番のセットリストに入ってないけど聴きたいとリクエストされてた“プレイヤー”と“幼き光”を演奏。そう、なんだかんだ優しいのだ。

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text by有泉智子

『MUSICA11月号 Vol.127』